演出・本広克行にインタビュー 4年ぶりの若手俳優発掘プロジェクトの舞台『転校生』

2019.7.26
インタビュー
舞台

本広克行

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2019年8月17日(土)〜27日(火)に紀伊國屋ホールで、PARCO Produce公演『転校生』男子校版&女子校版が同時上演される。

平田オリザ脚本、本広克行演出による同公演は、まだ見ぬ才能と出会う「若手俳優発掘プロジェクト」として、出演する21人の女優をオールオーディションキャストで2015年に実施。今回もオーディション選抜メンバーでキャスティングすることとなり、2128名の応募があった。オリジナルの女子高版と平田が翻案した男子校版の新バージョンが同時上演されるため、男女計42名が選出された。

これから、この42人の若手俳優たちと向き合う本広に、合同インタビューを行った。

ーー2015年に上演された時の手応えはどうでしたか?

目立ったスターがいない中、大きな劇場での公演が成立するのか不安でしたが、プロデューサーチームと協力して実現することができました。この時、自分の中ではやりつくした感があって、一度は演劇熱が燃え尽きました。ですが、4年ぶりにまたオリザさんの戯曲をやれることになり、前回は、Zepp ブルーシアター六本木でステージを大きくして上演したのですが、今回は、紀伊國屋ホールと聞いて、プロセニアムの劇場でも楽しめるものにしようと思いました。もしかしたら男の子の方がお客さんが多く来てくれるかもと、男子校版にも期待しています。​

ーー男子校版はストーリーが変わるんですか?

テーマが一部、変わります。女子校編はカフカの『変身』ですが、男子校編は『山月記』です。面白いですね。ただ、男子校版の解読にまた時間が掛かりそうです(笑)​

ーー本広さんが思う、オリザさんの戯曲の特徴ってなんでしょうか?

オリザさんの本って演じる役者によって変わってくるんです。本読みをしているとその変化がよくわかります。​

ーーでは2015年とは違ったものが今回見られるわけですね。

全然違うと思います。

ーー再演が決まった経緯とは?

またやるべき企画だという思いが、​考えがプロデューサーの毛利(美咲)さんと合致したんです。良い企画だと思います。毛利さんはプロフェッショナルとして彼ら彼女らと接し、プロの現場と稽古場を提供します。紀伊國屋ホールで芝居をやりたい人たちが大勢いる中で、デビューしてすぐに出演するという人が何人もいるんです。プロがやっているあの感じを知ってもらい、どんどん上を目指してもらいたいですね。

ーー今回、選ばれた42人に共通している審査の決め手とは?

品の良さですね。いい役者には品があるんです。立っている姿などに表れてきます。例えば『HiGH&LOW』シリーズのようなヤンキーが大勢出てくる作品ならまた別の品が必要ですが、オリザさんの『転校生』には、ちょっと頭のいい私立の学校のイメージがあります。男子校版では頭が良さそうで見た目もちゃんとしていて、でも影で悪いことはやっていそうな子たちを選びました。

制服を着ると、役者の個性がかなり失われます。前回は、動きや顔の表情などで出しましたが、どうやってそれぞれの個性を出していくかという作業がこれからあります。

2015年の舞台に出ていた子たちは、いまだに映像でも僕は仕事を頼むし、僕の後輩たちにもその時の転校生メンバーを紹介します。僕には若い男性の役者と知り合う機会が多くないのでここで知り合える。若手の発掘プロジェクトはそういうメリットがあるので、今後の自分の活動のためにも耕しているのかもしれません。​

ーー配役はもう決まっているんでしょうか?

これから何度も本読みをして立候補制で決めます。私たちにも「この役はこの子」と想定しているキャスティングもありますが、他の役をやることで自分の役の理解が深まるので、必要以上に本読みをやります。男女2回分あるからすごく大変ですよ。

『転校生』男子校版&女子校版 出演者

ーーちなみに、本広さんが初めて観劇したオリザさんのお芝居は、なんだったんですか?

最初は『ソウル市民 昭和望郷編』だったと思います。観た時はとてつもなく感動しました。

そして『東京ノート』を観たときはこんなすごいものがあるのかと。会場にお客さんが入った時にもう役者さんたちは芝居をやっている「ゼロ場」を見た時に、どこが境界線でどこが始まりの合図なんだろうって。何回か観ていると、客席の照明が落ちて芝居が始まっているんだと分かって……。

一時期、本気で青年団の演出部に入ろうと思っていたんです。そうしたらオリザさんが「青年団の役者を使って、本広企画の演劇を作ればいいじゃない。あなたはもう映画監督をやっているんだから」と言って、それで2010年にオリザさんのベストセラー『演劇入門』を舞台化したんです。とてもお客さんが来て、毎日何十人という人に入れなくて帰っていただいたほどでした。このときはすごいヘロヘロになりましたね。演劇ってこんなに疲れるんだって。

ーーそこまで消耗するほど燃えるのはなぜですか?

中途半端なことはできないからですね。本気でぶつかっていかないと。映画は監督のものですが舞台は役者のものなので、そこをどうコントロールするかが戦いです。疲れるけど面白いですよ。

ーー前回の『転校生』は具体的にどのような演出をされたんでしょうか?

2015年は「第三者の目線の感動」をやりました。観客は泣いている人を見て泣くのではなく、泣いている人を見て泣くのを我慢している人の顔が一番泣けるんです。

芝居をしていない子たちはみんな、舞台上で座って芝居中の子を見ています。最後の2人のシーンでは、19人全員が見ていました。別れのシーンを見て泣いている子や涙を我慢している子がいて、それを見てお客さんが泣くんです。前回は「拡散波動砲」って言っていました。ガンダムでいう「ソーラ・システム」ですね。

ーー同時多発する会話劇は若手の役者さんには難しいのではと想像しますが、どのように指導されているんでしょうか?

もちろん毎日、発声練習をしてもらいますけれど、みんながみんな綺麗な滑舌で話す芝居じゃないと思っています。学校の中ってノイズがすごいじゃないですか。休み時間にあちこちで会話が多発していて、それを演出して、お客さんが座った位置で子ども達が話している話しを感じ取れるようにします。

ーー今回新たに試したいことはありますは?

今のところぼんやりと考えているところですが、紀伊國屋ホールの入り口に入った時にすでに舞台は始まっていて、どこからが芝居なのか境界が分からない演劇をやってみたいんです。

あと、役者の情報があちこちに貼りめぐされているようにするつもりです。昔の映画館って、例えば東映の映画館に行くとごつい顔の役者の写真が並んでいたじゃないですか。今、撮っている写真を使ってああいう演出をやってみたいと思っています。前回スカウトが結構あって、キャスティングの方達もたくさんいらっしゃるので、若手俳優の見本市のような感じにしたいですね。

ーー改めて、『転校生』という戯曲にどのように向き合うお気持ちですか?

いろんな方が演出されていて、名作と言われているものもいっぱいあります。じゃあエンターテイメントやっている僕らがどう『転校生』をやるか? については、すごく悩むところです。台本のままやればいいんですけれど、台本通りにやればいいというものでもない。そういうジレンマがあります。​

前回もそうでしたが、物語が彼ら彼女たち自身の夏の出来事のようになると涙が出てくるんです。公演が終盤に近づいてくると「ああ、この舞台が終わっていくんだな」と泣き出す演者がたくさん出てくる。ありますよね、文化祭が終わる時とか、部活が終わる時とか。誰もが経験したあの時のノスタルジックな情景が描けたら『転校生』は成功だと思います。

取材・文=石水典子

公演情報

PARCO Produce公演『転校生』男子校版&女子校版

■日程:2019年8月17日 (土) 〜2019年8月27日 (火)
■会場:紀伊國屋ホール
■チケット料金(全席指定・税込):S席 6,000円 A席 4,000円(全席指定・税込)

■脚本:平田オリザ
■演出:本広克行
■出演:
【男子校版・21名】
足立英 荒澤守 荒田至法 飯阪翔 伊藤凜 岩井克之 宇野拓 梅田優作 遠藤龍希 狩野健斗 河合拳士朗
河口勇太朗 佐瀬清隆 佐藤雄大 田中俊介(BOYS AND MEN) 中嶋海央 長畑勝己 那須一南
広田亮平 松本翔太郎 松谷優輝(五十音順)

【女子校版・21名】
愛わなび 天野はな 上野鈴華 小熊綸 金井美樹 川﨑珠莉 川嶋由莉 齋藤かなこ 榊原有那
指出瑞貴 里内伽奈 澤田美紀 田中真由 西村美紗 根矢涼香 羽瀬川なぎ 廣瀬詩映莉 藤谷理子
星野梨華 増澤璃凜子 桃月なしこ(五十音順)
 
公式サイト:http://www.parco-play.com/web/play/tenkosei2019/
公式ツイッターアカウント https://twitter.com/tenkosei2019/
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