BUMP OF CHICKEN『aurora arc』を引っさげたツアーが華やかに開幕

BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark  2019.7.12  メットライフドーム

ニューアルバム『aurora arc』リリースの2日後、7月12日埼玉県・メットライフドームから『BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark』がスタートした。「Aurora」「月虹」「新世界」などの『aurora arc』収録曲を中心に、ポイントポイントで過去の代表曲も披露するセットリストで、超満員（36,000人）のオーディエンスを楽しませた。

そう、「興奮させた」や「感動させた」というよりも「楽しませた」という言葉が、これまでのバンプのツアーの中で、もっともぴったりくる内容だったかもしれない。ステージセット、映像用の画面の設置のしかた、そこに映し出される映像の使い方、曲によって大きく表情を変える照明、ライブのポイントポイントで使われる特殊効果など、総じて、これまでのバンプのツアーでもっとも華やかで、もっとも緻密で、もっとも豪快な演出が施されている。

たとえば映像でいうと、「Aurora」では、同曲のMVを撮った林響太郎監督によるオイルアートが映し出されたり、「新世界」では、この曲を提供したロッテ「ベイビーアイラブユーだぜ」のCMから派生した「ロッテ×BUMP OF CHICKENベイビー・アイラブユーだぜ」のMVのリアレンジ・バージョンが使われたり。でまた、そのリアレンジのされかたが絶妙だったり──という。

ステージ上の4人が「ライブハウス？」って言いたくなるほど近い、アイコンタクトの取れる距離にギュッと固まって演奏し、歌っているのはこれまでと同じだが、それ以外のステージ全体、ショー全体の見せ方の部分に驚きや楽しさが詰まっている、というか。

そもそもどんなに人気沸騰しても、アリーナやスタジアムといった大会場でのワンマンライブをなかなかやらなかったバンドだし、やるようになってからもいきなり大会場っぽいハデな演出に変わったりせず、まるで「これならあり」「ここまでならあり」と確認するかのように、ツアー一回一回でジワジワとそうした演出も取り入れてきたバンドである。なんでそんなに「ジワジワと」だったのかというと、「ハッタリ」「おおげさ」「虚飾」「身の丈じゃない」というようなことが混じってこないように、とにかく慎重に事を進めてきたからだと思う。

そういった一歩一歩の積み重ねが、ついにここまで来た──とまで言うとおおげさかもしれないが、でもそんな達成感を、観ていて僕は感じた。待望のニューアルバムを引っさげてのツアー、というだけでなく、バンプが“スタジアム・バンド”になってからの十数年のひとつの到達点が、このツアーなのかもしれない。

それから。メットライフドームで観るBUMP OF CHICKEN、というのが、とても新鮮で心地いい体験だった。ちょっと意外なくらい。直井由文や増川弘明もMCで、初めてやる会場であることに触れていたので、当人たちにとってもそうだったのだろう。直井は「なんか夏の匂いしない？ 開いてるせいで、みんなと青春しちゃってる感じで、キュンキュンしてます」というようなことを言っていた。ちょうどそんなことを感じていたタイミングでそう言われたもんで、「まさに！」と思った。

メットライフドーム、屋根付きの球場だけど密閉型ではなくて、スタンドと屋根の間がぐるっと開いていて、屋外の緑が見える。季節は初夏の夕暮れで、ライブが進むにつれてだんだん陽が落ちていく──という会場の雰囲気も、一種の演出効果として機能していた、そんな心地のいい時間だった。

あともうひとつ。ニューアルバムのタイトルであり、曲名であり、 歌詞やジャケット等のビジュアルにも使われている“オーロラ”というテーマ。これ、特にライブにおいて、最強のモチーフである、ということがよくわかるツアーでもある。

取材・文＝兵庫慎司  撮影＝古溪一道、富永よしえ