東出昌大主演、岩松了作・演出舞台『二度目の夏』が開幕 テーマは“嫉妬”

2019.7.20
レポート
舞台

『二度目の夏』初日前会見

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2019年7月20日(土)から下北沢・本多劇場にて、岩松了作・演出、東出昌大主演の舞台、M&Oplays プロデュース『二度目の夏』が上演される。初日に先立ち、公開フォトコールと初日前会見が行われた。その様子をお伝えする。

フォトコールでは、舞台の冒頭約30分が公開された。

『二度目の夏』公開フォトコール

代々続く田宮家の会社を継ぎ、六代目社長となった田宮慎一郎(東出)は、妻のいずみ(水上京香)と結婚して二度目の夏を郊外の別荘で迎えた。慎一郎が東京へ出張している間、彼の後輩でもあり親友でもある北島謙吾(仲野太賀)がいずみの遊び相手をつとめるが、いずみと謙吾の親しげな様子を見て、田宮家に先代から仕えている相談役の落合道子(片桐はいり)は悪い噂が立つのではないかと心配していた。家政婦の前田早紀子(清水葉月)、慎一郎の秘書・上野忠(菅原永二)といった周りの人々の思いも交錯し、生じた嫉妬から物語は不穏な方向へと進み始める……。

『二度目の夏』公開フォトコール

『二度目の夏』公開フォトコール

美しい別荘で、裕福で穏やかに夏を過ごしているように見える人々の心の中に渦巻く様々な感情が、短い公開シーンからにじみ出てくるようだった。この場面に登場した些細な出来事、小さな感情のもつれが、この後の展開にどのように影響を及ぼしていくのか、物語の続きが気になる。

『二度目の夏』公開フォトコール

東出の立ち振る舞いの美しさと時折見せる鋭さが、良家で何不自由なく育ってきた男の余裕と危うさをのぞかせる。仲野は、親友のためならばと献身的に尽くす人の好さが出ている。水上は奔放な社長夫人のいずみを無邪気な人物像で見せる。清水と菅原は、それぞれ心の中に何か隠している後ろ暗さを感じさせ、物語の不穏さを増長させている。片桐は、長年仕えているからこそ田宮家をあれこれ心配する思いが強すぎてしまう様子が出ており、東出と対峙するシーンには緊張感が走る。

『二度目の夏』公開フォトコール

慎一郎といずみが迎えた「二度目の夏」、そして互いをかけがえのない親友と思っている慎一郎と謙吾が、どのような結末を迎えるのか。本番の舞台でぜひ見届けて欲しい。


公開フォトコールに続き、初日前会見が行われた。

『二度目の夏』初日前会見 岩松了

初日を迎えるにあたりその思いを聞かれ、東出は「岩松組に参加できるというのは、役者にとっての誉れでもありますし、本多劇場でお芝居をできることは『いよいよか』という思いがあります。気負うところもありますが、全力で出し切れればと思います」と意気込みを語った。仲野は「岩松さんの戯曲・演出で本多劇場に立てるという喜びを感じています。少しでも多くの人に見に来ていただけたらなと思っております」、水上は「岩松さんを始めとする素敵な方々と、そして憧れでもあった本多劇場で舞台ができるというのは本当に嬉しいことだな、と日々感じています」、と東出同様、岩松作品で本多劇場に立てることの意味の大きさを口にした。清水は「稽古でたくさん重ねてきたものがあるのですが、劇場に入ってからまだまだ新しい発見があったり、すごく面白い脚本です」、菅原は「岩松作品への出演は初めてですが、お客様からどんな反応があるのか楽しみにしています」と公演を楽しみにしている様子が伝わってくるコメントを述べた。片桐は「岩松さんのお芝居に出るのは15年ぶりで、その間も岩松さんの作品を見てきましたが、あまり見たことない種類のお芝居が出来上がったと思っています。台本を読んで戦慄が走りました。ぜひ皆さんその辺をお楽しみにご覧ください」とコメントし、舞台への期待をますますあおった。

『二度目の夏』初日前会見 東出昌大

今作で大人のための恋愛劇を書こうと思ったきっかけを問われた岩松は、「今回、僕は東出さんと初めてご一緒したんですけど、東出昌大という人を使って嫉妬の話、と考えました。嫉妬っていうのは基本的にドラマになりやすい感情だと思いますが、直接的な嫉妬というよりは、嫉妬を感じる心のあるなしという、そのあたりでとどめた話にしたら、人間のわからなさを突き詰められる気がしました。僕が抱く東出さんの印象が、そういう“わからなさ”を内面に抱えた人物なので、そのテーマを東出さんに託しました」と話した。

『二度目の夏』初日前会見 仲野太賀

出演者たちに、「千本ノック」と称される岩松演出はどうだったか?と質問が飛ぶと、東出は「何回も同じところを出来るというのは、非常に鍛えられるなと思いながらやっていました。毎回稽古のたびに新しい発見があって、新たに生まれて死んでいく、というサイクルがスリリングで新鮮な稽古だったと思います」、仲野は「何度岩松さんの下で繰り返しても、やるたびに自分自身やお芝居の色も形も変わって来て、岩松さんの書き下ろす戯曲の奥深さを毎回感じます。できる事なら何千本でも岩松さんの演出を受けたいです」とそれぞれ岩松演出への思いを語った。

 

『二度目の夏』初日前会見 片桐はいり

 

片桐は「15年前は比喩じゃなく千本ノックだった気がするんですけど、今は30本くらい?」と笑いを誘い、「岩松さんも私も年を経て、若い人たちのキラキラしたお芝居があって、そのバランスが居心地いいなと思っています。今回の稽古場がすごいなと思ったのが、若い人とご一緒するとほとんどの方が携帯を見ていて誰も私のことを見てくれないんですけど、今回は誰も携帯を見ない素晴らしい稽古場で感動しました。あと、東出さんと太賀さんが、これ付き合ってるのかな?と思うくらいすごい仲良しでした」と稽古場の様子が伝わるエピソードを語った。

『二度目の夏』初日前会見

取材陣から「これまで嫉妬したことはあるか」という質問が出ると、片桐は「菅原永二さんの役を見て、いいなやりたいな、と思いました。男の人の役っていろいろバリエーションがあって楽しくていいな、と思うんです。暴れたり怒鳴ったりする役をやりたいです」、仲野は「僕は人に嫉妬してばかりで、目に映る役者という役者すべてに嫉妬したり、嫉妬にまみれた青春時代でした。高校生のときに、自分で映画を作ろうと思って本を書こうとしたんですが、あまりの才能のなさにすぐにやめました。物を書ける才能という僕にはまったくないものに対する嫉妬というのもあります」、東出は「今回、空席の日もまだ残っているんですが『そういえば太賀、俺らSNSやってないもんね』って話になって、『やってるともっと知ってもらえるのかな』『かといって俺らやんないしな』って、下北沢の路上でチラシを配りまくったんです。そういう地道なチラシ配りをやるしかないね、って言って。だから嫉妬というか、そういうやきもきの原因はすべて自分にあるんですけど、地道にやっていくしかないな、と思う次第です」とそれぞれ意外なエピソードを披露した。岩松は「ときどき若さに嫉妬することがあります。若いっていうことが、エネルギーがあることがどんなに素晴らしいか。千本ノックという話も出ましたが、千本やるともう疲れる、少なくしないと自分の体がもたないということに気づいてくるんです」と、先ほど片桐が、千本ノックの数が減ったんじゃないか、と言ったことに対して答える形になった。

『二度目の夏』初日前会見

今作品は8月12日(月)まで東京公演、その後は福岡、広島、静岡、大阪、名古屋、神奈川と9月1日(日)まで各地を回る。この夏、嫉妬がうずまく岩松作品の世界を多くの人に劇場で楽しんで欲しい。

取材・文・撮影=久田絢子

公演情報

M&Oplaysプロデュース『二度目の夏』
 
■作・演出:岩松了
■出演:東出昌大、仲野太賀、水上京香、清水葉月、菅原永二、岩松了、片桐はいり
■企画・製作:M&Oplays

■日程:
東京公演:2019 年 7 月 20 日(土)~8 月 12 日(月・祝)本多劇場
福岡公演:2019 年 8 月 17 日(土)、18 日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
広島公演:2019 年 8 月 20 日(火)JMS アステールプラザ 大ホール
静岡公演:2019 年 8 月 22 日(木)静岡市民文化会館 中ホール
大阪公演:2019 年 8 月 24 日(土)、25 日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
名古屋公演:2019 年 8 月 27 日(火)、28 日(水)日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
神奈川公演:2019 年 9 月 1 日(日)湘南台文化センター市民シアター
 
■M&Oplays 公式ホームページ:http://www.morisk.com/
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