市川九團次・大谷廣松が自主公演への意気込みを語る 『九團次・廣松の会』取材会レポート

インタビュー
舞台
2019.8.9

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2019年8月17日(土)、18(日)に東京・Bunkamuraシアターコクーンにて『九團次・廣松の会』が開催される。2016年から『九團次の会』と銘打った自主公演を開催してきた市川九團次と、女方を軸に活躍する若手・大谷廣松。新たな自主公演に挑む二人が、都内で行われた取材会で意気込みを語った。

ーーお二人で自主公演を開催することになったきっかけは?

九團次:自主公演の『九團次の会』を4年前から始め、毎回様々な挑戦を行ってきました。今回は以前から一緒に何かできたらいいねと話していた廣松君とちょうどタイミングが合い、二人で開催することになりました。

市川九團次

市川九團次

廣松:前回の『九團次の会』にお声掛けいただき、二人で「棒しばり」をさせていただきました。それがすごく楽しくて。今回「また一緒にやりませんか」と声を掛けていただき、二つ返事でよろしくお願いします! と答えました。今、お稽古をしているのですが、どんどん形になっていくのが楽しくて、またご一緒できて嬉しいです。

ーー今回の演目の選定理由を教えていただけますか。

九團次:意外と二人だけでできる演目を選ぶのが難しく。最初は踊りしか思い浮かばなくて、お芝居もいくつか候補が上がったのですが、ちょっとキャラクターが合わなかったりして、選定が非常に難航しました。そんな時に、たまたまテレビ番組で狂言の「柿山伏」をやっているのを見ました。今まで狂言にはあまり縁がなかったのですが、ずっと勉強してみたいと思っていました。その旨を海老蔵さんの公演でご縁のあった茂山逸平さんにご相談したところ、「柿山伏」をやろうと決まりました。この経験が今後の自分の血肉になるんじゃないかな、と思ったというのもあります。あとは何をしようと考えた時に、今までの『九團次の会』ではほとんど化粧をしていなかったから、今回は化粧をして衣裳やかつらもつけましょうか、と。女方の廣松君もいることだし、綺麗な姿を見てもらいたいなと、「蝶の道行」がすぐに思い浮かびました。踊りだけだとよく分からないところもあるんじゃないかということで、中村京蔵さんにご相談したところ「じゃあ二人のお芝居を作るよ」と快く引き受けてくださいました。お芝居を頭につけて、ちょっと脚色して登場人物の二人が心中したという物語にして、死後の世界を「蝶の道行」にしましょうと。ただし最後が死で終わると暗くなってしまうので、蝶に戯れる獅子が現れ、毛振りをして明るい幕切れになる予定です!

ーー「柿山伏」は元が狂言ですが、歌舞伎らしくアレンジしますか?

九團次:今、逸平さんから習っているものは狂言をベースとしているものです。今はまず逸平さんから教わったことをしっかりと自分たちの中に入れることから始めています。

廣松:狂言という形を残しつつ、せっかくやるなら君達の色を出して、と仰っていただいていますね。根本的にしっかり狂言のお稽古をしてから僕らの方向に持っていかないと、狂言にも歌舞伎にも失礼になってしまうと思うので、しっかりやっていきたいです。

大谷廣松

大谷廣松

九團次:本物を学んで、お稽古して、歌舞伎俳優ならではの『柿山伏』をどう表現するか逸平さんと相談しながら考えていきたいです。今後もまたどこかでできるような形になったらいいですね。

ーーズバリ、見どころは?

九團次:古典を見ていただく、日本が生んだ芸を見ていただくっていうと、少し言い過ぎかもしれませんが、その責任を背負ってやりたい。「柿山伏」に関しては、歌舞伎俳優が狂言師茂山逸平さんのご指導を仰いだ演目に挑戦をしたらどうなるのか、を見ていただきたいです。狂言らしい地声の響かせ方にも注目してください。きっと今までにない僕らの声が聞けると思います。

廣松:九團次さんのお話とも被ってしまうのですが、歌舞伎俳優が狂言師茂山逸平さんのご指導を仰いだ演目に挑戦をしたらどうなるのか、というのを見ていただきたいです。「蝶の道行」は、僕の祖父(四代目)雀右衛門の弟子で、僕が生まれた時からお世話をしてくれている京蔵さんに本を書いていただきます。京蔵さんならではの世界観を形にできて幸せですし、それもまた九團次さんと一緒にというのが本当に嬉しくて。皆さんに見ていただきたいなって思います。

ーーお互いの魅力的な部分をそれぞれ教えてください。

廣松:ここ5年くらい、年間360日くらい一緒にいて、本当に両親よりも長く一緒に過ごしているんです。僕にはないアグレッシブさ、ハングリーさをお持ちで、何より踏んできた場数の豊富さを尊敬しています。僕がまだ17歳か18歳の時に、初めて一緒に楽屋に入らせてもらってからのご縁で、気付いたらずっと一緒にお芝居をしていました。出会った当時からギラギラした目をしていて、ご一緒していくうちにやっぱりすごい人だな、と。僕にはないものを色々と吸収できたらと思っています。

(左から)市川九團次、大谷廣松

(左から)市川九團次、大谷廣松

九團次:廣松君は懐に入ってくるのが、すごく上手いんですよ。稽古初日は緊張しているはずなのに、普段と変わらず、ちょっかいを出してくる。ずっとそうなので、僕は一緒にいると心が和らぐんですね。度胸が据わっていて、頼もしい存在です。あと、すごく細かく気が付く子で。僕は割と細かいようで大雑把な性格なので、ちょうどプラスマイナスが合うような感じです。マメさ、几帳面さにすごく助けられているところがあります。物事も広く知っていて、「これはどうなの? あれはどうなの?」って聞くのは僕の方なんですよ。そういった濃密な時間を過ごしてきた相手と、今回の公演が実現したということがすごく嬉しいです。お互いの個性がぶつかったり、混ざったりしながらいいものになれば、と思っています。

ーー来年の東京オリンピックを控え、エンターテインメントが機運に乗っています。狂言や歌舞伎はまだ観たことがない、という人に面白さや見どころを教えていただけますか。

九團次:僕も元々は歌舞伎の家に生まれたわけではなく、成人してからこの世界に入ったんです。初めて客席で歌舞伎を観た時に、先人たちが何百年もリレーを重ねて今があるという歴史を感じてゾクゾクしました。歌舞伎って実際の事件が題材となっていることが多く、瓦版でもあったんです。この時代はこんな事件があったのか! と当時の様子を覗くことができるんですよ。衣裳の着物や、かつら、セット、音楽も一流のものですし。特に今回挑戦する『柿山伏』は、喜劇のような面を持っているので、楽しんでいただけるんじゃないかな。

廣松:「蝶の道行」は日常的なことではないと僕は思っていて。今時ないじゃないですか、恋い焦がれて心中する人や、それで蝶になりたいっていうカップルなんて。衣裳や道具、かつらなど全てを含めて非日常を提供できたらな、と思っています。

九團次:「蝶の道行」は純粋なラブロマンスですから。

市川九團次

市川九團次

廣松:昔の人は、ここまでのことをしていたのか、これがみんなの憧れる恋の形だったのかな、と考えさせられます。歌舞伎だから触れ合える世界を味わっていただきたいです。

九團次:この物語は、自分たちは本当は蝶で人間だった時の夢を見ていたとか、その逆とか、どっちが現実かわからないっていうようなことが書いてあるんです。中国の荘子が書いた「胡蝶の夢」からヒントを得ているようなのですが、面白い世界ですよね。

ーー今回の公演に限らず、若い方や外国人観光客の方が日本の伝統芸能を観る際のアドバイスをいただけますか?

廣松:伝統芸能と一括りに言っても様々あると思いますが、理解していただくためにはまず見ていただき、その上で判断していただければ。歌舞伎の強みの一つは色彩。先日衣裳を見に行って、この色いいね、この色もパッと映えていいね、といったお話を九團次さんとしました。“衣裳の色味での感情表現”にも注目していただきたいですね。言葉がいらない部分ですし、役者の表現と衣裳の表現が重なった時に、見えてくるものがあるのかな、と。それを見せられるように頑張りたいです。

大谷廣松

大谷廣松

九團次:「蝶の道行」で行われる、“引き抜き”という衣裳の変化も大きな見どころの一つ。舞台上で一瞬のうちに衣裳が変わる手法で、日本独特のものです。ある種の手品のような感じですね。

ーー最後にお客様にメッセージをお願いします。

九團次:歌舞伎をご覧になったことがあるお客様、廣松君のことを知っているお客様に関しては、今まで見たことがないような姿をお見せしたいですし、初めてのお客様には、歌舞伎って面白いな、綺麗だな、また見たいなって必ず思ってもらえるようなパフォーマンスを心掛けたいです。自主公演をするときはいつもお客様に「チケット代安いね!」って言っていただけるくらい充実した内容にしたい、と思っています!

廣松:本興行ではなかなかできないことをさせていただくありがたさと、それをお客様にお見せするハードルの高さを感じています。一生懸命勤めますので、皆様に楽しみにしていていただきたいです。

九團次:生き様を見て納得していただきたい、という思いを僕はずっと変わらず持っています。自主公演は勉強の場でもありますから、たくさんのことを吸収して、本興行にも生かしていけるようにしたい。

(左から)大谷廣松、市川九團次

(左から)大谷廣松、市川九團次

取材・文=永瀬夏海

公演情報

『九團次・廣松の会』
 
【日程】
2019年8月17日(土)12時開演/16時開演
​2019年8月18日(日)12時開演
【会場】Bunkamuraシアターコクーン
 
【出演】
市川九團次/大谷廣松
 
【演目】
一、茂山逸平 監修
『柿山伏』(かきやまぶし)
 
二、ご挨拶
 
三、藤間勘十郎 振付 中村京蔵 構成
『女夫蝶花臺』(つがいのちょうはなのしまだい)三場
「蝶の道行」竹本連中
「石橋」長唄囃子連中
 
【チケット料金】一等席8,000円/二等席4,000円
※税込・全席指定 ※未就学児入場不可
※二等席は特にご覧になりにくいお席です。ご了承の上、ご購入ください。
※車椅子でご来場予定のお客様は、当日のスムーズなご案内のため、
公演前日までにZen-A(ゼンエイ) までご連絡ください。
 
問い合わせ:Zen-A(ゼンエイ) TEL:03-3538-2300[平日11:00~19:00]
ホームページ: http://www.zen-a.co.jp/ticket/kudanji_hiromatsu/ 
 
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【協力】松竹株式会社
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