中山優馬が苦情を処理して地球の平和を守る? 鴻上尚史作・演出の舞台『地球防衛軍 苦情処理係』インタビュー
『地球防衛軍 苦情処理係』メインビジュアル
鴻上尚史 作・演出によるKOKAMI@network vol.17『地球防衛軍 苦情処理係』が、2019年11月2日(土)~11月24日(日)東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA、11月29日(金)~12月1日(日)大阪・サンケイホールブリーゼで上演される。
主演は、昨年のKOKAMI@network vol.16『ローリング・ソング』で鴻上作品に初出演を果たした中山優馬。共演には、原嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.)、矢柴俊博、駒井蓮、大高洋夫といった、ベテラン俳優とフレッシュな俳優の入り混じった豪華キャスト陣が名を連ねている。
「地球防衛軍」と言われると、人類を守るために地球外生物などと戦うSF作品なのだろうか、とまず想像するが、タイトルはそこに「苦情処理係」と続いている。今作は、戦うエリート・地球防衛軍に対して寄せられた苦情を処理する部署、苦情処理係を舞台に繰り広げられるのだ。壮大なSF設定の中の、実に人間臭い部分にフォーカスされた物語は、一体どのような舞台になるのだろうか。作・演出の鴻上と、主演の中山に話を聞いた。
「鴻上さんの作品はスピード感があってスリリング」(中山)
ーー鴻上さんと中山さんは、『ローリング・ソング』に続いてのタッグとなります。
鴻上:優馬は「ローリング・ソング」のときに、すごく熱心にやってくれたし、芝居に対する態度がとても真面目だったので、これはやっぱり一回やっただけじゃもったいないな、と思って今回も出演を依頼しました。
中山:ありがたいです。こんなに早く、再び鴻上さんの作品に出られると思っていなかったので。
ーー『ローリング・ソング』のときの印象的な思い出などありますか。
中山:本番ではすごく緊張しました。鴻上さんの作品はスピード感があって、毎回ずっと気が抜けなくてスリリングでしたね。ものすごく楽しかったのを覚えています。
ーー前作は音楽劇でしたが、今回はストレートプレイでしょうか。
鴻上:ストレートプレイですが、怪獣とかハイパーマンとか出て来ます。ハイパーマンは怪獣を倒そうとするヒーローですが、怪獣と戦うと街が破壊されたりものすごい被害に遭ってしまうんです。その苦情が来て、ハイパーマンとしては困っているんです。
ーーSFファンタジーの設定だけど、描いているテーマ自体はすごく身近なものに感じられますね。
鴻上:やっぱり僕の作品なので、どこか社会性と繋がっていて、全部がただのファンタジーで終わる話ではないです。怪獣と戦う地球防衛軍のミサイルが当たって家がやられてしまったけど、それは地震と一緒で免責事項なので、地震特約みたいに怪獣特約っていうのに入っていないと保険がきかなくて、それは納得がいかない、というクレームを、優馬の役は苦情処理係の一員なので毎日毎日受けるんですね。
ーー中山さんはこのプロットを読んで、どのような感想を持たれましたか。
中山:目の付け所がすごいなと思いますよね。地球防衛軍だけでもすごいのに、苦情処理のところに行くんだ、という。どんな物語になっていくのか本当に楽しみです。
「みんなが自分を主張する時代になっている」(鴻上)
ーー今回もコメディの要素が満載になりそうですが、中山さんの思うコメディの楽しさ、難しさはどんなところにありますか。
中山:楽しさと難しさは一緒だと思っています。笑いはその役の中でやることが大切なんです。演じる役から外れたところで笑いを取るのではなく、その役のままでやるという、そのバランスの難しさは前回感じました。あとは、台本がすごく面白いので、この面白さを自分がどう表現できるのか、自分が動くことで台本の面白さを壊してしまわないようにしなければ、と結構悩みました。
鴻上:「役の中で」という意識を持っているのは、大したものだと思いますよ。だって笑いを取ろうと思ったら、変な顔をするとかいろんなやり方があるわけで、でも「物語の中でどう笑いを取るか」ということが難しいし、それが面白いわけですよ。
ーー今回も中山さんが笑いを取るようなシーンがあるということですね。
鴻上:もちろんあります。ただクレーム処理の話なので、あまり楽しくやっていると苦情が倍増してしまうので(笑)、あくまで真面目にやっておかないと、というのが難しいところですね。
ーーこの設定はどこから着想を得たのでしょうか。
鴻上:今、SNSとかもそうだけど、みんなが正義の使者になっているというか、みんなが自分を主張する時代になっていると思います。だからクレームを言うことで自分が正義だと感じられる、というのもあると思うんですよね。
「演劇にできないものはないと思っている」(鴻上)
ーーSFや特撮で思い入れのある作品があれば教えてください。
中山:僕はずっと『仮面ライダー』を見てました。1号からRXまで、人形も全部持ってました。レンタルビデオ屋で借りて1週間で返すんだけど、返してすぐにまた同じ物を借りて見たりしていました。
鴻上:僕は『ウルトラマン』の世代で、始まったときからリアルタイムで見ていました。『ウルトラマン』より前に『怪奇大作戦』という作品があって、これがまたむちゃくちゃ面白かったです。『ウルトラマン』は怪獣が出て来るのが話の目玉になっているけれど、『怪奇大作戦』はドラマとして話が展開するのでちょっとテイストが違うんです。だからSFなんだけど、いわゆる怪獣ものとかヒーロー物とかの系譜ではなくて、そこが僕は好きですね。
ーー今作では怪獣も出てくるとなると、舞台上でどう表現されるのか期待が膨らみます。
鴻上:そうなんですよね。でも今は作家の時期なので、とにかく好き勝手書いています。怪獣が爆発したり、アナウンサーが「ビルと都庁が壊されています!」って言ってたり(笑)。書いているときは完全に作家モードなので、どうするかは書いた後で演出家として考えます。でも僕は、演劇にできないものはないと思っているので、いかようにもやり方はあるはずです。
ーー中山さんの役は苦情処理係ということですが、戦うシーンはないのでしょうか?
鴻上:ずっと苦情処理だけして終わったら「ふざけるな」って話になりますからね(笑)。(宣伝ビジュアルの服装を指して)何しろこんな格好してますから、ちゃんと優馬のかっこいいところも見られます。それは保証しておきます。2時間苦情処理するだけの話ではないです。そんな話、僕も書きたくないので(笑)。
「一つの顔だけではもう鴻上さんは許してくれない」(中山)
ーー鴻上さんが中山さんに対して、今回期待することは何でしょうか。
鴻上:前作では主人公が3人いたけれど、今回はある意味、優馬一人で引っ張る部分もあるので、気負い過ぎず、優馬の多面的なところが出せると面白いかな、と思っています。
ーー中山さんは、鴻上さんの作家として、また演出家としての面白さはどんなところにあると思われますか。
中山:やっぱり鴻上さんご自身が、人として面白いじゃないですか。何でもズバズバ言うし、裏がない感じがダイレクトに伝わって来ます。演出家としては、指示がすごくわかりやすくて、たまに鴻上さんが演じて見せてくれるんですけど、それがうまいんですよ。あとは、課題をくださるのでやりがいがあります。前作では、もっと喉を開いて楽に発声をするように、という課題をいただきましたが、克服はまだできてないです。
鴻上:優馬は歌手だから、歌う時はすごい開いてるんですよ。だから歌とセリフを別だと思わないで、そこが繋がれば割と簡単に開くと思うんですけどね。
ーー中山さんは舞台に出演する際に、音楽劇とストレートプレイの間に何か違いは感じますか。
中山:基本的にはあまり感じないですけど、音楽劇のときは歌のクオリティも守っていかないといけないので大変だな、と思う部分もありますが、その分、普段セリフではあまり言えないようなことをメロディーに乗せて歌ったりとか、メロディーラインが感情の流れに沿っていたりとか、表現の一つとして音楽ってすごいな、と思いますね。ストレートプレイは、僕はずっと一番やりたいと思っているものなので、セリフや動きの表現だけで物語を進めていくというのが、ちょっと怖さもあるけれど、その怖さが楽しさでもあると感じています。舞台に立って表現する緊張感というのは、何物にも代えられないです。
ーーそれでは、最後にこの作品を楽しみにしている方たちにメッセージをお願いします。
中山:前作も紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAでの公演でしたが、お客さんの空気感が直に伝わってくるサイズの劇場で、すごく見やすいと思います。物語はもう鴻上さんなんで、間違いなく面白いです。だって地球防衛軍の苦情処理係なんですから。誰がそんなこと考えますか。僕はちゃんと苦情を処理して(笑)、一つの顔だけではもう鴻上さんは許してくれないので、いろんな顔、いろんな感情をちゃんと出していきたいと思います。
鴻上:笑いがあって、ダンスもあります。それから怪獣だけじゃなくて、優馬もファイティングすることになるでしょう。演劇的な楽しさに満ちた舞台に必ずなりますから、観に来ていただければと思います。
取材・文=久田絢子
公演情報
<東京公演>2019年11月2日(土)~11月24日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
<大阪公演>2019年11月29日(金)~12月1日(日) サンケイホールブリーゼ
中山優馬
原嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.)
駒井蓮
矢柴俊博
大高洋夫 ほか
【企画・制作】サードステージ
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