劇団☆新感線・高田聖子が竹井亮介と語る<月影シリーズ> 最新作は”おかしみ”揃いの”おしゃべり”な芝居?!

2019.9.27
インタビュー
舞台

左から 竹井亮介、高田聖子

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劇団☆新感線の看板女優・高田聖子が、劇団本公演とはまた別の顔、別の魅力を見せる場として1995年にスタートしたユニット<月影十番勝負>。さまざまな脚本家、演出家、共演者と組み“十番勝負”をやり終えたあと、今度は<月影番外地>として続けてきたこのシリーズも、今回は“その6”となり、初めてノゾエ征爾が脚本家として参加することになった。演出は木野花が手がけ、キャストは高田のほかに、池谷のぶえ、川上友里、大鶴佐助、竹井亮介、入江雅人という個性派がズラリと顔を揃える。果たしてどんな舞台になりそうか、高田と“親族代表”メンバーで<月影シリーズ>には二度目の登場となる竹井に、話を聞いた。

ーー<月影シリーズ>初参加のノゾエ征爾さんに今回、脚本をお願いしたきっかけは。

高田:前回脚本をお願いした福原充則さんにはこのシリーズのために3本書いていただいたんですが、その前の千葉雅子さんにも3本書いていただいていて。好きな人とはとりあえず3本で一度区切りをつけようと思い(笑)、次はどなたに書いてほしいかを考えた時、ノゾエ征爾さんに書いていただけたらうれしいなと思ったんです。ですから単純に私がノゾエさんの作品を観てきて好きだったから、というのが今回お願いしたきっかけになりますね。

高田聖子

ーー竹井さんは、ノゾエさんとは?

竹井:面識はあります。でも、会った時に挨拶するくらいです。この間も、今回ご一緒する川上友里さんが出られている芝居を観に行った時、たまたま同じ回をノゾエさんも観に来ていて。うつむきがちに「12月、よろしくお願いしますー」って、声をかけていただきました(笑)。

ーーノゾエさんの作品をご覧になって、たとえばどういうところに面白さを感じられていますか。

高田:最初のほうで謎や不思議なことをバラまいて「これって、どうなるんだろう?」と思わせておきながら、それを忘れた頃にギュッと“回収”していくというか。いや“回収”というのとも、ちょっと違うかな。でも今って、それこそ伏線をきれいに回収することがなんとなく良しとされる世の中じゃないですか?

ーー回収しないと、なんだか怒られてしまいそうです(笑)。

高田:そういう回収の仕方ではない、もっと感覚的に、でも絶対そうだと思えるような収まり方をするんです、ノゾエさんの脚本って。

ーー自然と、納得できちゃうんですね。

高田:そうそう(笑)。そうやって謎なことが起きても納得させられる感じが、すごく快感だなと思って。今ってとにかく理由を明確にしたがる流れが強いですけど、ノゾエさんの作品の場合は答えを明確にはしないんだけれども、みんな素直に同じことを思えるようなところがあるんですね。そういうところがいかにもナマの舞台だな、物語だなと思うことができるんです。

竹井:僕の場合は申し訳ないですけど、実はノゾエさんの作品を数にするとそれほどは観ていないんです。だけど僕もやっぱり、不思議な見せ方をするなあーっていう印象はありましたね。見せ方が不思議で面白いから、それでつい引き込まれていってしまう。お話の面白さも含めて、その見せ方はすごいなーと思います。

竹井亮介

ーーすごく、手練れな感じもします。

高田:そうですよね。確信犯ですよ、あれは(笑)。不思議な設定や、おかしな出来事に気を取られて油断しているうちに、急に核心をつく、みたいなね。私も、いつもすごいなーと思います。

ーー脚本を依頼する際には、どんなことを注文されたんですか?

高田:具体的に注文するなんてことはなくて、ただ「私は、こういうものが面白いと思いました」とか「こういうものにちょっと興味があります」と、小説や映画のタイトルをいくつか提出したくらいですね。でも、「別に、それを使ってもらってもいいですけど、使ってもらわなくてももちろん全然良くて。」と言っておいたら、結局のところ少しだけ使ってくださったみたいなので、それはちょっとうれしかった(笑)。結構、公演のチラシの写真を見て思いついたこともあったらしいです。

ーーということは、つまり脚本よりチラシが先にできていたということですね(笑)。

高田:そうなんです(笑)。でも、それを見てインスピレーションを得た部分もあったみたいです。

ーーキャスティングに関しては、どういう方に声をかけたんですか。

高田:今回はこういうものをやるから、というのではなく、まず一緒にやりたいなとか、好きだなという人をとにかく集めました。前回は「『細雪』のようなものをやりたい」という理由で姉妹役を集めて、そこにだんなさん役、若い男性役、という風に考えていったんですけど。今回はそういう狙いではなかったので。

ーー枠にはこだわらず、とにかく一緒にものづくりをしたい方を、と。

高田:そうですね。それぞれが個性を持ち寄って、一緒に作っていくことになりそうです。

竹井:ああ、それはいいですね。ちなみに、6人というのは最初から想定していたんですか。

高田:6人くらいが、ちょうどいい人数だなと思ったんですよ。

高田聖子

ーーザ・スズナリという空間に合わせると、6人だったんですね。竹井さんは今回お声がかかった時は、まずどう思われたんですか。

竹井:僕、5年前にこの<月影シリーズ>に出させていただいているんですが(『つんざき行路、されるがまま』2014年)。僕はこれまでにも、いろいろな団体に客演として出ていますが、同じ団体から複数回呼ばれることが実はあまりなくて。だから<月影シリーズ>にも、まさか再び呼ばれるとはまったく想像していなかったのでビックリしました。

高田:あははは。そうですか、そんなにビックリした?

竹井:ビックリしましたよ。「ええっ、本当に?」って(笑)。

ーー前回、参加した時の感想としてはいかがでしたか。

竹井:木野さんの持っている雰囲気というかパワーというか、木野さんから発しているものの量がすごく多くて。とても狭い稽古場で稽古をしていたんですが、木野さんのパワーがその部屋中にみなぎっていることを、本当に強く感じました。

高田:ふふふ。

ーーなんとなく、想像できます(笑)。

竹井:別に怒鳴るとかそういうことじゃないんですよ? そういうことじゃないんですけど(笑)。それとどんどん痩せ細っていく粟根(まこと)さん、というのも印象深くて。その対比が面白かったです。

高田:あはははは! でもね、あの公演が終わったあと、粟根さんがすごく素敵なことをおっしゃっていたんですよ。「木野さんは僕にとって、お芝居の整体師だ」と。

竹井:整体師!

竹井亮介

高田:固まった身体を少しずつほぐして正しい位置に整えてくれている、という風に感じるそうです。

竹井:すごい! それ、ちょっとわかる気がします。演出家だからそういうものなのかもしれないですけど、僕らにはない発想がありますしね。

高田:木野さんは特に、役者との距離が近い演出家なんですよね。それは、実際の距離ではなく(笑)。演出家さんにもいろいろな方がいて「自分は全体の演出をするのが仕事で演技指導ではないから。それは役者の仕事でしょ」とハッキリ線を引く方もいますけど、木野さんは役者と1対1で全員と向き合いますから。ただ、今回はノゾエさんと初めて組むので、少し緊張はなさっているみたいです。挑戦だ、とおっしゃっていますね。

ーーその顔合わせも実に楽しみです。さらに個人的には、池谷のぶえさんと高田さんが二人揃う場面を想像するだけでワクワクしてしまいます。シリーズ初参加、というわけではないですけれども。

高田:そう、二度目なんですよ。前回はそんなにがっつり一緒のシーンはなかったんですけど。

ーー2006年の<月影十番勝負>第十番『約 yakusoku 束』ですね。

高田:その時は、素晴らしくいろんな役を演じていただきました。だけどその後、共演する機会がなかなかなくて。私たちの世代の女優って、けっこう多いじゃないですか。たぶん一公演に二人もいらないんでしょうね、だからなのか一緒の舞台に立てなくて。おばさんが集まるお芝居なら、いいのかもしれないけども(笑)。それにしても今回は、のぶえちゃんを筆頭にどこか謎のおかしみがある人ばかりが集まった感じがします。

竹井:ははは、本当だ。

ーーたとえば川上さんは、どんな印象ですか。

高田:川上さんこそ、おかしみの塊です。おかしみと哀しみの背中合わせの魅力があって。常に雨にずぶぬれなんだけど、でも笑ってる、みたいな。稀有な方だなと思っています。

竹井:くくく。うんうん、そんな感じありますね。

左から 竹井亮介、高田聖子

高田:前から気になって、いいなあって思いながら非常に興味深く拝見していたんですが。ご一緒したことはなかったので、今回が初共演なんです。

竹井:まだお若いけど、独特の雰囲気をお持ちですよね。

高田:どういう生き方をしてきたんだろうと思っちゃって(笑)。

竹井:ははは、それは確かにちょっと聞いてみたい。

ーー大鶴佐助さんは。

高田:とてもカワイイし、素敵なんだけど……なにか、いい意味でちょっと気持ち悪いところがあるというか(笑)。もちろん本当に気持ち悪いということではなく、オモシロくてちょっと薄気味悪い、へんてこりんな生き物だという感じがするんです。その上、お芝居がうまくてね。あ、そういえば木野さんは、竹井さんのことも「彼はうまいから大丈夫よ」っておっしゃっていましたよ(笑)。

竹井:えっ、本当ですか? それはうれしいです(笑)。

高田:ホント、今回はお芝居のうまい人ばかりに集まっていただきました、って感じもあります。

ーー入江雅人さんも、久しぶりの参加ですね。

高田:<月影シリーズ>には二度目かな。二本目(<月影十番勝負>第弐番『月の輝く夜に』)の時に、演出と出演もしていただいたので。若い佐助くんがいて、タイプの違うおじさんが二人いたらいいな、と思ったんですよね。あ、竹井さん、すみません、すごくざっくりと“おじさん”と言っちゃいました(笑)。

竹井:はははは、別に構いませんよ。

竹井亮介

高田:こうして改めて顔ぶれを眺めていると、きっと大人っぽい稽古場になるのではないかなと想像します。チラシの写真撮影の時に感じたお互いの距離感も、いい感じでしたしね。なあなあにはならず、ひとつの目標に向かっていけそうだし。ワーワーおしゃべりする雰囲気ではありませんが、でもこの作品自体は、おしゃべりなお芝居になります。

ーーおしゃべりなお芝居、ですか?

高田:とにかく、しゃべるねえ~!って感じになりそうです。

竹井:へえー、そういう感じですか。

ーーそれぞれに、たっぷりセリフがあるということですか。

高田:そうですね。そしておしゃべりなお芝居は、おしゃべりじゃない人がやるほうが楽しいんじゃないかな、とも思うんですよ。

竹井:うん、そうかもしれないですね。

ーーそのほうが、面白みが増える気がします。

高田:地味な人がセクシーな格好をしていたら、ハッとしますし。そういう魅力が出せたら、と思います。

竹井:おしゃべりだということは、楽しいお芝居になるんですか? それとも?

高田:それはね、きっと……入口は楽しいと思う。

竹井:入口は、そうなんだ。

高田:あとはそれぞれに、思うことがいっぱい出てくるでしょうね。そして、笑えるところもいっぱいあるかと思います。

高田聖子

ーー一色ではなく、さまざまな要素があるような?

高田:はい。たくさんのものを浴びられる芝居だと思う。いろんな要素がたっぷりで、しかもそれをみんな、うまい人たちがやるわけだから。たぶん、気持ちいい芝居になりますよ。

竹井:まだわからないですけど、そういう言葉ばかりがいっぱい溢れるお芝居になるのではないでしょうか。ちょうど年末だということもありますし、観た人がその1年を振り返れるような気持ちになれたらいいですね。

高田:この1年のことはもちろん、これまでのことも含めていろいろと振り返れるかもしれません。さらには自分のこの先を考えることになるかもしれないし、いろいろなものを持ち帰ってもいただける作品になるんじゃないかと思います。

竹井:ちょうど、令和に変わって初めて迎える年末ですから、確かに先のことも考えたいですよね。

高田:ま、果たして先があるのか、ないのか(笑)。

竹井:はははは。

高田:年齢が高い人もまだ若い人も、それぞれに思うことはバラバラだろうけど、みんなに通じる何かってあると思うんです。それをぜひ劇場で、それぞれの立場から感じてみてほしい。そして思うことはそれぞれ違ったとしても、生きていくということに関してはきっとたいして違わないはず。だからこそこれはみんなの物語に重なるんじゃないかな、と思うんです。

左から 竹井亮介、高田聖子

取材・文=田中里津子 撮影=山本れお

公演情報

月影番外地 その6
『あれよとサニーは死んだのさ』
 
日程:2019年12月3日(火)〜12日(木)
会場:下北沢ザ・スズナリ
 
作:ノゾエ征爾
演出:木野 花
出演:高田聖子、池谷のぶえ、川上友里、大鶴佐助、竹井亮介、入江雅人
 
料金(全席指定):5,500円(前売り/当日共)
一般発売日:2019年10月5日(土)
 
イープラス http://eplus.jp/tsukikage/(パソコン)
ファミリーマート店内(Famiポート)
 
企画・製作:月影番外地
主催:月影番外地/サンライズプロモーション東京
お問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (全日10:00〜18:00)
月影番外地 tsukikagebangaichi@gmail.com
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