マリインスキー・バレエ日本公演レポートvol.8〜『ジュエルズ』ゲネプロ
関西公演を終え、文京シビックホール15周年記念公演として26日の一夜限り上演される『ジュエルズ』を皮切りに東京での10公演が始まる。公演を目前に25日夜、ゲネプロ(最終総稽古)が行われた。
(2015.11.25文京シビックホール 取材・文:小田島久恵 写真:M.Terashi/TokyoMDE )
バランシンが3つの宝石をイメージして振り付けたアブストラクト・バレエの傑作は、初演を行ったニューヨーク・シティ・バレエやパリオペラ座での上演も素晴らしいが、やはり振付家の故郷のカンパニーであるマリインスキーに勝るものはないと思わせた。
第一幕「エメラルド」ではフォーレの『ペレアスとメリザンド』の「シャーロック」に合わせて、グリーンのチュチュをまとった女性ダンサーたちが、柔らかな上半身で音楽の優美さを表していく。女性群舞はバランシン独特の抽象化された女性美をシンボライズしているが、マリインスキーのダンサーには独特の温かみが感じられるのが特徴だ。
男性ダンサーは3人登場し、ハーレム的な雰囲気を漂わせながら、女性と融合するような中性的な美を醸し出していく。中心ダンサーのアレクサンドル・セルゲーエフが貴族的で優雅な踊りを見せてくれた。
ラストの数分の盛り上がりは素晴らしく、大勢のダンサーが同時に見事なグラン・ジュテを繰り返すシーンは、極楽浄土を見る想いだった。
第二幕「ルビー」はストラヴィンスキー『ピアノとオーケストラのためのカプリッチョ』が使われ、マリインスキー歌劇場管弦楽団の演奏のすばらしさがさらに際立つ。舞台美術も宝石のようで、鮮やかなレッドのコスチュームをつけた男女のダンサーが、幾何学的でユーモラスな振付を踊り、男性ソロではキム・キミンが活躍した。リズムを取るのが難しく、それぞれのダンサーが素晴らしいセンスで難解な振付をこなしているのに感心する。
男性ダンサー5人が、ディズニー・アニメのように同じステップで移動していくシーンが面白い。音楽に振り付けるというより、音楽をバレエによって新たに「書いている」ような世界で、バランシンの創作の独自性に改めて驚いた。
ダイヤの輝きを彷彿させるホワイトのコスチュームをつけた群舞が壮麗なオーラを放ち、その中心となるカップルを、『ロミオとジュリエット』でも共演する長身のティムール・アスケロフとクリスティーナ・シャプランが踊った。
勇壮なアスケロフと、可憐で儚げなシャプランの組み合わせは、マリインスキーの新しいベスト・カップルの誕生を思わせる。古典のかっちりとした基礎が生きるバレエで、シャプランの正確なポジションが振付の素晴らしさを次々と浮き彫りにしていく。
サンクトペテルブルクの「醜いものが全くない」夢のような街並みが、「ダイヤモンド」の世界だった。バランシンが故郷とチャイコフスキーへの愛を結実させた、天国的でゴージャスなこのバレエを完成させるのは、やはりマリインスキー以外にはない…と感じる。
ゲネプロでは舞踊監督ユーリー・ファテーエフの厳しいチェックが随所に入り、入念なブラッシュアップが行われた。これが上演される唯一の晩である26日の公演を観ることのできるバレエ・ファンは、間違いなく幸運である。
【≪ジュエルズ≫<全3部>予定キャスト】
振付:ジョージ・バランシン
舞台指導:カリンフォン・アロルディンゲン、サラ・リーランド
エリーズ・ボーン、ショーン・レイヴァリー
舞台美術:ピーター・ハーヴィー
衣装:カリンスカ
衣装復元監修:ホリー・ハインズ
初演版照明:ロナルド・ベイツ
照明:ペリー・シルヴィー
舞踊監督:ユーリー・ファテーエフ
指揮:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
<出演>
第1部≪エメラルド≫
音楽:ガブリエル・フォーレ
≪ペレアスとメリザンド≫≪シャーロック≫より
ヴィクトリア・マクラスノクーツカヤ
アレクサンドル・セルゲーエフ
ヴィクトリア・ブリリョーワ
ローマン・ベリャコフ
ナデージダ・ゴンチャール
スヴェトラーナ・イワノワ
エルネスト・ラティポフ
第2部≪ルビー≫
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
≪ピアノとオーケストラのためのカプリッチョ≫
リュドミラ・スヴェシニコワ(ピアノ)
ナデージダ・バトーエワ
キミン・キム
エカテリーナ・コンダウーロワ
デニス・ザイネトジノフ
ワシリー・トカチェンコ
ヤロスラフ・バイボルディン
アレクセイ・ネドヴィガ
第3部≪ダイヤモンド≫
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
≪交響曲第3番≫より(第1楽章を除く)
クリスティーナ・シャプラン
ティムール・アスケロフ
エレーナ・アンドローソワ
エカテリーナ・イワンニコワ
ディアナ・スミルノワ
ズラータ・ヤリニチ
ローマン・ベリャコフ
ヤロスラフ・プシュコフ
アンドレイ・ソロヴィヨフ
アレクセイ・チュチュンニック
【上演時間】約2時間30分
第1部30分 ー 休憩20分ー 第2部25分ー 休憩20分ー 第3部45分
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【公演詳細】
◆マリインスキー・バレエ来日公演
《東京公演》
『ジュエルズ』 11/26(木)18:30 文京シビックホール
『愛の伝説』 11/27(金)18:30、11/28(土)13:00 東京文化会館
『ロミオとジュリエット』 11/30(月)〜12/2(水) 東京文化会館
『白鳥の湖』 12/4日(金)〜12/6(日) 東京文化会館
*詳細については下記ウェブサイトでご確認ください。
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/mb2015/index.html
《三重公演》
『ロミオとジュリエット』 11/20(金)18:30 三重県文化会館
問:三重県文化会館カウンター059-233-1122
http://www.center-mie.or.jp/bunka/event/detail/2238
《大阪公演》
『白鳥の湖』 11/21(土)17:00 フェスティバルホール
『ロミオとジュリエット』 11/22(日)16:00 フェスティバルホール
問:フェスティバルホールセンター06-6231-2221
http://www.ytv.co.jp/event/contents/event_1728497.html?145940
《滋賀公演》
『白鳥の湖』11/23日(月・祝)15:00 びわ湖ホール
問:びわ湖ホールセンター077-523-7136
http://www.biwako-hall.or.jp/performance/2015/02/13/post-21.html
《愛知公演》
『白鳥の湖』11/29(日)17:00 愛知県芸術劇場
問:中京テレビ事業052-957-3333
http://cte.jp/detail/15/151129/index.html