一躍演劇界の新風に~大鶴佐助が月影番外地に初出演!『あれよとサニーは死んだのさ』
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大鶴佐助
三島由紀夫の長編小説を舞台化した『豊饒の海』、串田和美演出による『MANN IST MANN』、横山拓也の人気戯曲を鄭義信が演出した『エダニク』など立て続けに出演。今、演劇界でもっともオファーの絶えない存在のひとりが、大鶴佐助だ。12月3日に幕を開ける『あれよとサニーは死んだのさ』で、月影番外地の初参加を果たす。弱冠25歳にして、蜷川幸雄、岩松了、長塚圭史など錚々たる演出家とのクリエーションを積んできた期待株の俳優だ。唐十郎を父に持ち、唐組公演も多数参加している。憧れの劇場、ザ・スズナリでの出演に向けて、大鶴佐助は何を思っているのだろうか。
■観に行く場所が演じる場所に
――『あれよとサニーは死んだのさ』で月影番外地に初参加です。オファーを受けたときのお話を聞かせてください。
3年前くらい前、木野花さんに見つけてもらいました(笑)。ベッド&メイキングスの『あたらしいエクスプロージョン』の終演後にお会いして、「いつか一緒にやりたいね」と声をかけていただきました。木野さんは唐組もご覧になっていて、両親も知り合いなんですけど、僕をしっかりと認識してくれたのは『あたらしいエクスプロージョン』がきっかけだったみたいです。月影番外地で出演が決まったのは、1年以上前だったと思います。
――『プレイヤー』出演のきっかけも、長塚圭史さんが『あたらしいエクスプロージョン』を観たことがきっかけだったそうですね。
そうなんです。僕にとっては小劇場の演劇関係の人たちと一気に出会えた作品ですね。人生のターニングポイントと言ってしまうと自分でもちょっと早いと思いますけど(笑)、出演できたことは大きいです。
――会場のザ・スズナリは……。
役者として出たことは、これまで一度もないんです。下北沢の劇場に出ることも初めてですね。本多劇場もスズナリもしょっちゅう観に行っています。そういえば木野さんが親父の作品を駅前劇場で演出していました(編注:日本の30代公演『ジャガーの眼2008』/2015年)。下北沢の劇場は、僕にとっては観に行く場所で、それが演じる場所になったのがうれしいです。スズナリの独特のにおいが好きで。観てはいけないものを観に行く場所のように感じる雰囲気がありますよね。そこに自分が立ったときに何を感じるか、楽しみです。
大鶴佐助
■言葉で向き合って、あるいは手を組んで
――初共演の人たちばかりですね。それも実力派のベテラン揃いです。
舞台のうえではなんの遠慮もいらないと思うので、どう言葉で向き合って、あるいは手を組んで、どんな芝居を作れるか。何かしらのアプローチに対してどう返してくれるのか、楽しみでしょうがないです。
――ノゾエ征爾さんの新作書き下ろしというのも話題ですね。
僕はノゾエさんの書いたオリジナル作品は観たことがなくて……。三島由紀夫の原作で、脚本・演出された『命売ります』を拝見しました。
台本は稽古開始までに届くので、今はまだどういう作品になるのか分かりません。A4用紙2枚くらいのシノプシスをいただきましたけど、変わるかもしれないということなので(笑)。それを読むと、看取る人が「ミトリーマン」という存在になって、ビジネス化されるという話で……。看取ることが競争化するなんて、すごく怖いことですよね。もちろん、不条理なジョークとして描くのだと思いますけど、何しろ謎だらけです、今のところ(笑)。
――台本は早く読んでおきたいですか?
それはもう(笑)。だいたい、親父が早く書くタイプなんです。稽古の3カ月くらい前には上がっていました。3日から1週間くらいで書き上げるんですが、そのあいだの緊張感がものすごかったです。家のなかがピリついて仕方ない(笑)。子どもの頃は姉と同じ部屋で寝ていて、起きたときから空気が張り詰めていました。親父は早朝から書いていますから、僕らは静かに準備して、音を立てずに学校に行っていました。帰ってきてもシーンとした空気はそのままなんですけど、1週間くらい経ったら家の雰囲気ががらりと変わって、劇団員たちと大宴会が始まっているという(笑)。それで書き終わったんだと思って家族は安心する。とんでもなく張り詰めた空気でした。
大鶴佐助
■「エネルギー」をどこに向けるか
――昨年から今年にかけて、舞台出演がひっきりなしですね。来年3月には渡辺謙さん主演の舞台『ピサロ』が控えています。外国人演出家とのクリエーションが増えていますが、現場はいかがでしたか?
すっごい楽しかったです。海外は俳優も演出家も大学で演劇を学んでいて、芝居をやるうえでのシステムが完成していますよね。ボディ・ワークショップや、ゼロのテンションを1に上げるような作業にしても、メソッドが確立していて刺激的でした。
『豊饒の海』の演出のマックス・ウェブスターが、「日本の役者は床と芝居をすることが多い」と言っていて、確かにそうだと思いました。つい下を見てしまい、芝居が小さくなることを指摘していたんです。目線をどこに向け、どこにエネルギーを放つのか。お客さんとシーンを共有できるよう、前を向いて芝居をすることが大切だという言葉にすごく納得しました。
――唐組もまさにそうですね。正面を切る芝居がありますから。
むしろ相手役の顔を見ないことのほうが多いくらいです(笑)。でも、親父の考えていることと共通していると感じたことがたくさんありました。前を向くかどうかというより、エネルギーをどこに向けるかということですよね。芝居のジャンルは違っても、大事なことは同じなんだと思います。
――今後、俳優としてどのように活動したいのか教えてください。
プロデュース公演ではルーツの違う俳優さんとご一緒できて、それがものすごい財産になっています。そこから得るものはたくさんあるので、キャリアのある人、自分とは違うところにいる人たちと、もっと共演したいです。
そこで得た財産を、テント公演に持ち帰りたいと思っています。テントは大好きな空間ですし、何より唐組の作品が好きなんですね。親父の芝居を一番面白くできるのは、やっぱりテントだと思います。昔からのファンの方々はもちろんありがたいですけど、まだ唐組を知らない人に体験してほしいです。
――今回の出演で、何か課題にしていることはありますか。
出演者のなかでは最年少なので、誰よりも大きい声を出して唾をいっぱい吐き出すことです。それができたら、第一段階はクリアできたかなと。若さだけは負けないので、思い切り大きな声で台詞を叫びたいです。
撮影・取材・文/田中大介
公演情報
月影番外地 その6
『あれよとサニーは死んだのさ』
■演出:木野 花
■出演:高田聖子、池谷のぶえ、川上友里、大鶴佐助、竹井亮介、入江雅人
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■企画・製作:月影番外地
■主催:月影番外地/サンライズプロモーション東京
サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (全日10:00~18:00)
月影番外地 tsukikagebangaichi@gmail.com