『MOROHA lV RELEASE TOUR 単独』Zepp DiverCityで語った想いーー「これは意地と誇りの結晶です」
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MOROHA 撮影=MAYUMI-kiss it bitter-
MOROHA lV RELEASE TOUR 『単独』 2019.11.8(fri)Zepp DiverCity
吹きくる風に一筋の冷たい線が混じる、秋の終わり。11月8日、MOROHAの「MOROHA lV RELEASE TOUR 単独」ツアーファイナルがお台場・Zepp DiverCityで開催された。UKが「ワンマンツアーでこんなに周ったのは初めてだったから、振り返っても何をしていたか記憶がないくらいで。すごい長く感じました」と話したように、MOROHAはこの日に至るまで夏から28公演を走り続け、その間にも『RISING SUN ROCK FESTIVAL』を始め、多くのフェスやイベントにも出演していた。
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15時20分、UKは自身の楽屋で雑誌のインタビューを受けていた。一方、アフロが僕らスタッフの控え室に来たので、リハーサルまで今回のツアーや近況について話を聞かせてもらった。その後17時30分にリハを終えて、MOROHAの2人、スタッフは開演に備えて各々の時間を過ごす。
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そして19時30分になり、迎えたライブ本番。10代から5、60代までの幅広い観客がフロアを埋めた。客席の明かりがついたままの、まだ薄暗いステージの上にUKとアフロが姿を見せた。会場中の照明が消えると、ステージの上からUKがギターを叩く音が聴こえる。観客が2人の名前を呼ぶが、アフロは何の反応も示さず口にマイクを近づけて第一声を放った。<バカにされるのは 惨めな思いをするのは 俺たちが弱いから悪いんだ>。こうしてツアーファイナルは「ストロンガー」で幕を開けた。
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「一文銭」「それいけ!フライヤーマン」を立て続けに歌い終えて、アフロが「今日、楽しみに来た人はどのくらいいますか」と尋ねると、フロアから無数の腕と歓声が上がった。その様子を見て「そしたら、その気持ちは捨ててください。戦いに来たんだろ、挑みに来たんだろ? じゃあヌルいこと言ってんじゃねえよ」と吐き捨てる。そして「俺のがヤバイ」のイントロが弾かれると、ステージとフロアの生気はますます勢いを増した。
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「リツイートしたら100万円あげますよ、って社長さんいましたね。リツイートした人いますか?」。会場からチラホラと手が挙がると「俺はリツイートして100万円貰うくらいだったら、あの社長の靴底を舐めて500円貰った方がマシだ。それを財産って言うんだぜ。違うのか? 違うんだとしたら、俺はどこへ向かって生きているんだろう……これは俺の歌で、もしかしたらお前の歌だ」。そう言って始まった「tomorrow」。いつかアフロが「痛みや悔しさや、実感を伴うものしか俺は信じられない」と話していたのを思い出した。それでも人間は欲深いから、簡単に大金が手に入るならその誘惑に乗ってしまう。だけど万が一、大金が手に入ったとして、そのときに思うのかもしれない。じゃあ、自分が毎日何十時間も働いて手に入れた金は何なんだろうって。
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「tomorrow」を歌い、真っ暗になった場内。再びスポットライトがゆるやかにステージを照らしたとき、アフロは俯いていた。UKがギターを弾き始めると、アフロはゆっくりと顔を上げて「拍手なんて要らねえ。“あんな自分”が拍手なんかもらえねえ」と漏らす。「あの子が拍手をくれた自分に、もう一度、戻るためにマイクを握り締めて這いつくばってる。この手紙は馬鹿な男を愛した、馬鹿な女が最後の力を振り絞って書いた手紙です……拝啓、MCアフロ様」。光はまだそこかしこにあふれているのに、一番星と月がひっそりと浮かび、雲が刻々と姿を変える。重なることのなくなった長針と短針。男と女が過ごした戻ることのできない時間は、歌という映写機になって心のスクリーンに映し出される——<日当たり悪い部屋ともさよなら 売れないバンドマンともさよなら>。そしてUKがアウトロを演奏する中、アフロは歌詞にない言葉を飛ばす。「俺は、どうしてもお金が欲しかったから、魂を売って仕事をしたことがあります」。遠くを見つめた視線の先に誰かが見えているようだった。「その仕事が終わった後の帰り道、ことの重大さに気づいて、何てことをしてしまったんだって。このままじゃあんまりだから、魂を売って稼いだそのお金で花束を買って、あの子に渡した。そしたら満面の笑みで“ありがとう”をくれました」。さらに声を強める。「その日から俺の魂は、あの子の笑顔になりました。俺の新しい魂は……」。一瞬だけ間を空けた後、力を振り絞るように叫んだ。「俺の新しい魂は、あなたでした」。
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会場から拍手が起きると「拍手は要らない、って言ったのに」と一言添えて、アフロは表情をゆるめた。「俺は俺に拍手は要らない、と言われたら拍手できないので、すごいことだと思います。あなたが何と言おうと、私が素晴らしいと思ったんだから拍手するんだって。そういう戦いが一番カッコイイと思います。この歌を戦うあなたに、戦う君に」そう言って「うぬぼれ」が始まった。2番を終えたタイミングで突然、前方から「ドン」という鈍い音が聞こえた。何かに気づいたアフロは歌うのを止めてスタッフを呼ぶ。「誰か倒れた? すいませんが、周りの方もフォローしてください」と呼び掛ける。客席に明かりが点くと、事態を知ってざわつく観客。「こういうことは必ずありますからね。だけど、彼はMOROHAのライブに来た方なので大丈夫です。外で一休みしたら、また自分の足で立ち上がって。今日は無理だとしても、また次の戦いに向かっていきます。そう信じているから。彼が責任を感じないように、俺らますます力一杯頑張りますので、どうか皆さんも引き続き力一杯向き合ってください」。そう言って頭を下げると、観客から大きな拍手を起きた。突然のアクシデントにも関わらず、瞬時に対応したアフロ。最後まで演奏を止めずに使命を全うしたUK。そんな2人を賞賛する拍手だった。
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その後「革命」「スタミナ太郎」と続け、旅立つ東京と巣立った故郷への想いを綴った2部作「上京タワー」「遠郷タワー」と楽曲を重ねていく。
気づけばライブは終盤を迎えていた。「一昨年にメジャーでやる宣言をして、俺らも色々やってきました。デカいところでやっていくというのが、自分の真実に近づいていくんだろうかと考えたりもしたんです。やっぱり俺は、分かる人だけが集まって、理解者だけが集まって。自分たちの決めたサイズに、分かる人たちだけを集めて分かち合う空間というのは、どうにも魂が燃えないと思った。その外側へ出て、いっぱい悪口を言われて、それでこそ俺たちだという想いがあります。お前に悪口を言われたとしても、俺はお前に歌い続けるから。そういう気持ちを持っていたいなと思います。これは意地と誇りの結晶です」。
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16曲目「夜に数えて」で<バカにされても 見下されても お前は手を抜かなかったじゃないか>と歌ったとき、薄暗いフロアから1本の拳が上がった。それまで大人しくライブを観ていた真面目そうな青年が、泣きながら「ウワァァ!」と叫んで、目の前の柵を力強く掴みガシガシ揺らしている。近くにいたカップルは引いていた。MOROHAの音楽に自分の姿を投影して、言葉にならない鬱憤を吐き出していたのかもしれない。己の傷と向き合って、今、彼の抑えていた理性は壊れたのだと思った。
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そして最後に歌ったのは「五文銭」。UKが表情1つ変えずに激しくも繊細な指使いで最後の楽曲を弾いている。そんな中、アフロは鋭い眼光で、喉から血が出るんじゃないかと思うほど叫ぶ。「夢だの希望だの、綺麗事を言うなって言われた! いい歳こいて夢だの希望だの、綺麗事を言うなって! だけど綺麗ごとはどっちだよと思う」。無数のスポットライトが、まばゆくステージを照らす。「諦めたまま人生を生きていけるほど、俺たちは強くない。夢も希望もなくしたままで生きていけるほど、人生は甘くない! どっちが綺麗ごと言ってんだよ! 夢と希望以外に何があんだよ!」。こうして全17曲を披露して、2人はステージを後にした。
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ライブ前、「今日がツアーファイナルですね」と言われて、UKは「あんまり実感がないんですよね」と笑みを浮かべて答えた。「だって、明後日から対バンツアーが始まるんで」。今、彼らはツアーファイナルの余韻に浸ることなく、新しい旅をスタートさせた。ここから12月まで、11本に及ぶツアーの始まりだ——。
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取材・文=真貝聡 撮影=MAYUMI-kiss it bitter-
ツアー情報
11月17日(日)大阪 味園ユニバース 16:30/17:30 ※MOROHA単独公演
11月22日(金)札幌 PENNY LANE 24 w/ 岡崎体育 18:15/19:00
11月23日(土)名古屋 ReNY limited w/ 立川吉笑 17:15/18:00
11月27日(水)高松 TOONICE w/ THA BLUE HERB 18:30/19:00
11月28日(木)松山 Double-u Studio w/ THA BLUE HERB 18:30/19:00
11月30日(土)高知 CARAVAN SARY w/ THA BLUE HERB 18:00/18:30
12月01日(日)徳島 GRINDHOUSE w/ THA BLUE HERB 18:00/18:30
12月06日(金)仙台 Rensa w/クラムボン 18:00/19:00
12月08日(日)福岡 イムズホール w/ スガシカオ 17:15/18:00
12月10日(火)広島 CLUB QUATTRO w/ SiM 18:00/19:00
ツアー情報
2020年2月16日(日)愛知県・千種文化小劇場 開場19:15 / 開演 19:45 全自由席
2020年2月22日(土)宮城県・誰も知らない劇場 開場 18:00 / 開演 18:30 全自由席
2020年2月28日(金)東京都・中野サンプラザ 開場 18:00 / 開演 19:00 全席指定 w/ 竹原ピストル
リリース情報
発売中
初回限定盤(CD+DVD)¥4,800(税抜)UMCK-7010
通常盤(CD)¥2,800(税抜)UMCK-1620
YAVAY YAYVA RECORDS / UNIVERSAL SIGMA
01.ストロンガー
02.上京タワー
03.遠郷タワー(映画「アイスと雨音」主題歌)
04.米
05.拝啓、MCアフロ様(2017年12月度キャン有線お問合せ月間チャート1位)
06.スタミナ太郎
07.夜に数えて
08.いくつものいつもの(独立行政法人 勤労者退職金共済機構「財形制度認知・理解促進」キャンペーンソング)
09.うぬぼれ(「保育・人材・介護のライク」企業CMイメージソング)
10.五文銭
二文銭
奮い立つCDショップにて
一文銭
俺のがヤバイ
勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ
三文銭
ハダ色の日々
スペシャル
革命
四文銭
tomorrow
バラ色の日々
恩学
ストロンガー
五文銭