ミュージカル『エリザベート』2020年版キャスト情報解禁 熱気溢れる製作発表の全容をレポート

2019.11.12
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ミュージカル『エリザベート』製作発表会見より

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2000年の東宝版初演からついに20周年を迎えるミュージカル『エリザベート』の製作発表が、2019年11月12日(火)に都内にて行われた。製作発表では最初に歴代エリザベートとトートを中心としたオープニングムービーが公開され、その中で2020年版のキャストが堂々と発表された。

エリザベート役に花總まり愛希れいか、トート役に井上芳雄古川雄大、そして3人目のトートとして新たに山崎育三郎が加わるという強力な布陣となった。なお、井上は東京を除く大阪・名古屋・福岡公演のみの出演、山崎は東京公演のみの出演となる。

以下に、当日の詳細を写真と共にレポートする。製作発表には上述の5名のキャストに加え、訳詞・演出家の小池修一郎と東宝取締役演劇担当の池田篤郎も登壇した。

■池田篤郎(東宝取締役演劇担当)

『エリザベート』は1992年にウィーンで誕生いたしました。一大センセーションを起こし、96年には宝塚歌劇団で日本初演を迎えます。これまでに観たこともない世界感の作品の評判は、瞬く間に日本全国に広まりました。2000年には宝塚歌劇団の協力を得て、東宝版の新バージョンの『エリザベート』の誕生に繋がってまいります。本日この場で新しいお知らせをできますことを大変嬉しく思っております。新しいトート役に山崎育三郎さんが登場なさいます。ルキーニ役には上山竜治さん、黒羽麻璃央さんが新しく加わってくださいます。こちらも大いに楽しみにしてくださればと思います。

池田篤郎(東宝取締役演劇担当)

■小池修一郎(訳詞・演出家)

オープニングムービーを見て、歴代トートとエリザベートが見事に歌い継がれる姿にいろいろなことを思い出しました。初演を思い浮かべますと、こんな日が来るとは誰一人思えないような大変な状況でした。感無量と言いますか、よくぞここまで、と思いました。歴代出てくださった皆さん、スタッフの皆さん、そして20年の間に次々と新たなお客様がいらっしゃって、お客様のバトンも繋がれているのかなと思います。この製作発表の一般公募の競争率は、50倍と聞いています。約1万人の応募があったということで、(ここにいる方は)何かの運に恵まれていらっしゃいますから、これからも死ぬまでエリザベートを観続けてください。

小池修一郎(訳詞・演出家)

二人の熱の込もった挨拶が終わると、一般公募のオーディエンス総勢200名が見守る中、5名のキャストが上手から登壇。盛大な拍手で迎えられた。

出席者全員が揃うと、『エリザベート』の脚本/歌詞のミヒャエル・クンツェ氏、音楽/編曲のシルヴェスター・リーヴァイ氏、ウィーン劇場協会CEOを務めるフランツ・パタイ氏の3名からのコメント映像が公開された。

クンツェ氏は、日本の演劇がミュージカルに相応しい理由として「実際の人々の感情を真似るのではなく、ステージ上にある感情そのものを体感するように仕向けるのです」と述べ、日本を個性的な国だと評価。リーヴァイ氏は、得意の日本語を織り交ぜつつ、長年にわたりハイクオリティな舞台を続けてくれたキャスト、スタッフ、そして観客に感謝を述べ、「それはまるで終わりのないおとぎ話のようです」と語った。パタイ氏は作品の成功に必要な要素は3つあるとし、「皆さんもこれから体験するリーヴァイ氏による音楽、クンツェ氏による歌詞、そして小池氏による演出です。全ては揃っています」と、本作の再演を祝福した。

映像が終わると、出演者5名それぞれ挨拶の場が設けられた。以下で一人ずつコメントを紹介する。

■花總まり(エリザベート役)

20周年という節目のときに、こうしてまたエリザベートを演じる機会をいただけたことに感謝の気持ちでいっぱいでございます。私といたしましても、これが最後のつもりで誠心誠意込めて一生懸命務めてまいりたいと思っております。

花總まり(エリザベート役)

■愛希れいか(エリザベート役)

今年3ヶ月間、帝国劇場で『エリザベート』をやらせていただき本当に幸せな気持ちと、まだまだだな、もっと追求したいなという思いで千秋楽を迎えました。東宝版20周年というときに、エリザベートを演じさせていただけることを本当に光栄に思います。

愛希れいか(エリザベート役)

■井上芳雄(トート役)

僕は20年前の東宝版初演の1年程前に小池先生に見つけていただき、そして初舞台を踏ませていただいて、今がある。本当に大切な作品に今年も来年も関われることを嬉しく思います。たくさんの魅力がある、やればやるほど途方もない、先が見えなくなるすごい作品だと思っておりますが、来年も全国各地の皆さんに観ていただけることを嬉しく思います。

井上芳雄(トート役)

■山崎育三郎(トート役)

来年トート役をやらせていただきます。御存知の通りルキーニとして4年間舞台に立たせていただきました。ルキーニという役に出会ったことで、僕の役者としての新しい扉が開いたなと思っておりますし、感謝しております。僕はルキーニとしてずっと舞台に立ってきまして、誰よりも近くで、お客様よりもキャストよりも一番近くでトートを見てきたので、ルキーニを演じた自分だからこそできるトートというのがあるんじゃないかと考えております。

山崎育三郎(トート役)

■古川雄大(トート役)

2019年公演で、ミュージカルをやっていく上でずっと目標にしてきたトートを演じて毎日幸せだったんですけれども、それと同時にトートという役を掴むために悩んだ大変な日々もありました。改めて演じることの難しさを痛感しました。再びチャンスをいただけたということで、前回以上にトートに近づけるように、そして自身の成長に繋がる期間にしたいと思っています。精進して頑張りたいと思います。

古川雄大(トート役)

 

各キャストが緊張した面持ちで挨拶を終えると、報道陣による質疑応答へと移った。ここではキャスト5名に対して行われた2つの質問を抜粋して詳細を記載する。

ーー演じる側にとっての『エリザベート』の魅力とは?

花總:まず音楽の素晴らしさ。そして、エリザベートと同じ時代に生きた人々の人生が、3時間の中でものすごく濃く、どの役に注目しても人生を感じられる。その中から私たちが自分の人生に重ね合わせていろんなことが感じられる、奥の深いミュージカルだと思います。

愛希:女性から見て、現代に生きる私たちにもすごくメッセージがあると思います。あの時代に自分の意思を貫くというのは、特に女性だとなかなか難しいことだと思うのですが、そういう点でメッセージを感じるのは魅力だな、と。

井上:やる度にびっくりするんですが、熱狂のミュージカルだと思います。いつも思うのは、この熱狂っていうのは自分の手柄ではないということを言い聞かせないと、『皆が俺に熱狂している』って思いかねない(笑)。でもそうじゃなくて、初演時に一路真輝さんもおっしゃっていたんですけど、「この作品は本当に特別だから、他の作品に行ったときに同じだと思ったらダメだよ」と。それぐらいパワーを持っている作品だと思います。

山崎:役者の立場から考えると、とにかく歌いたい楽曲が多い。どの役でも、「夜のボート」、「最後のダンス」、「闇が広がる」、「私だけに」……一応「キッチュ」も入れておきます(笑)。ミュージカル俳優たちが歌いたい! と思う曲が多い作品はヒットするんじゃないかなと思っています。楽曲の魅力の力ですね。

古川:『僕はこうだ!』って主張するタイプの人間ではないので、エリザベートの強い生き方や主張に憧れる部分もあるし、魅力の一つだと思います。その生き方が周りの人間を動かして、ハプスブルクという時代まで動かして、さらに死という超越したものまで動かしていくというエレルギーが魅力だと思います。

(左から)山崎育三郎、愛希れいか

ーー『エリザベート』は自分にとってはどんな作品?

花總:自分の人生を変える程の、とても大切な節目となった作品です。初演時はまだ22歳。そのとき初めて演じさせていただいた役を、今こうして演じる機会をいただけることを奇跡だと思いますし、私にとってはなくてはならない作品であり、役になっております。

愛希:ずっと憧れだったので、演じさせていただく中でもまだ夢なんじゃないかと思う瞬間もずっとありました。なかなか乗り越えられない壁というか、登れたと思ったらまたさらに高い壁が待っているという感じです。

井上:奇跡のようなバランスで生まれたミュージカルだと思っています。何十年に一本というくらい、素敵な作品。だからこそ僕たちにチャンスをくれる。作品が素晴らしいことは保証されているので、その分いろんなチャレンジができるんです。僕自身もそのチャレンジの一環で生まれたものだと思います。奇跡の力をもっているからこそ、沢山の人にチャンスを与え続けている、全部ひっくるめて奇跡な作品だと思います。

山崎:毎回ルキーニとして舞台に立つときは自分のセリフから始まるんですけど、何公演やっても緊張する舞台は初めてでした。やればやるほど魅力、そして難しさも感じています。自分を試していく場所です。

古川:僕が今まで出演してきた作品の中で、特に重厚感のある作品です。挑むにあたってとても大変な作品。ルドルフとして初めて出演した東宝ミュージカルで、次で5回目の出演になりますが、共に20代を歩いて成長できた作品なのかなと思います。

(左から)花總まり、井上芳雄、古川雄大

他にも、今回初のトート役となる山崎に対し現時点で考えている役のイメージを聞くと、「恐怖心を与えるというか、氷のように冷たく触ったら火傷しそうな、そんなイメージを持っています」と答え、演出の小池のこだわりで初の前髪真ん中分けのトートであることも明かした。すると井上が「僕たち(井上と古川)も真ん中分けにしようかな」と呟くが、小池から「似合わない!」と断言される一幕も。

『エリザベート』という作品を漢字一文字で表すと? という質問には、率先して井上が挙手して「愛!」と答えると、次々と他のキャストも手を挙げ、まるで大喜利のような状況に。ちなみに古川は井上と同じく「愛」、花總は「生きるの”生”」、山崎は「お客様の熱狂の”熱”」、愛希は「欲」と答え、小池がなるほどと興味深く各々の回答を聞くといった様子も見られた。

質問に率先して挙手する井上(写真中央)

最後に、製作発表後に行われた囲み取材の模様を抜粋してレポートする。囲み取材には製作発表から5名のキャストが登壇した。

驚きのニュースとして、これまでルキーニ役を演じていた山崎が初のトート役という点に触れると、すかさず井上が「髪型が衝撃的ってことですよね? まさか真ん中分けとは! っていう」と製作発表に続けて山崎トートの前髪ネタを引っ張る。山崎は自分のトートのビジュアルを見た感想を求められると「とっても似合ってますね」と自信たっぷりに答え、「トートが決まった頃から、今年のルキーニも実は真ん中分けにしていたんですよ。6:4くらいだったのを、5:5に」と続けた。ただ、この事実に共演者は誰一人気づいていなかったという。

「まさか真ん中分けとは!」と前髪ネタを引っ張る山崎(写真左)

先輩の井上に対し「何かアドバイスくださいよ」と山崎が求めると、井上からは「企業秘密なんで」と手厳しい回答。それでも、2019年の『エリザベート』に出演する前からトート役が決まっていたという山崎は、来年に向けて舞台上でも舞台袖でもトート役をくまなくチェックしていたそうだ。「まあ、見られてるっていうのは僕たちも感じてましたよ」とさらっと答える井上に対し、「元々ルキーニはトートを見ている存在でしょう」と花總が一言付け加えるシーンも。製作発表とは打って変わって、共演経験豊富なキャスト陣のコンビネーションが目立つ和やかな囲み取材となった。

囲み取材を盛り上げる井上(写真中央)

今、日本で最も入手困難な演目と言っても過言ではない、ミュージカル『エリザベート』。20周年を迎える本作には会見に出席した5人に加え、フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝)にWキャストで前年に続いて田代万里生、15~16年に同役を務めた佐藤隆紀。ルドルフ(オーストリア皇太子)に19年に同役を務めた三浦涼介。ルドヴィカ/マダム・ヴォルフ役に15~16年・19年と同役を務めた未来優希。ゾフィー(オーストリア皇太后)役にトリプルキャストで、15年・19年と同役を務めた剣幸、16年・19年同役を務めた涼風真世、15年~16年・19年と同役を務めた香寿たつき。そして、山崎が演じていたルイジ・ルキーニ(皇后暗殺者)役にトリプルキャストで、15年の公演以来となる尾上松也、初となる上山竜治、同じく初となる黒羽麻璃央らが出演する。

ミュージカル史に刻まれるであろう2020年の記念すべき本公演が、一人でも多くのミュージカルファンの目に届くことを願ってやまない。

ミュージカル『エリザベート』製作発表会見より

取材・文・写真 = 松村蘭(らんねえ)

公演情報

ミュージカル『エリザベート』
 
4月9日(木)帝国劇場公演から全国ツアーまで全公演中止
 
脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出/訳詞:小池修一郎
 
出演者:
花總まり、愛希れいか(Wキャスト)
井上芳雄、山崎育三郎、古川雄大(トリプルキャスト)
田代万里生、佐藤隆紀(Wキャスト)
三浦涼介、未来優希
剣 幸、涼風真世、香寿たつき(トリプルキャスト)
尾上松也、上山竜治、黒羽麻璃央(トリプルキャスト)
 
ほか

<東京公演>
日程:2020年4月9日(木)~5月4日(月)
会場:帝国劇場

出演者:
山崎育三郎/古川雄大(トート・Wキャスト)
 
※一般発売開始:2020年2月15日(土)より

<大阪公演>
日程:2020年5月11日(月)~6月2日(火)
会場:梅田芸術劇場メインホール
 
出演者:
井上芳雄/古川雄大(トート・Wキャスト)
剣 幸/涼風真世/香寿たつき(ゾフィー・トリプルキャスト)
尾上松也/上山竜治/黒羽麻璃央(ルキーニ・トリプルキャスト)
 
<名古屋公演>
日程:2020年6月10日(水)~6月28日(日)
会場:御園座
 
出演者:
井上芳雄/古川雄大(トート・Wキャスト)
剣 幸/涼風真世(ゾフィー・Wキャスト)
上山竜治/黒羽麻璃央(ルキーニ・Wキャスト)
 
<福岡公演>
日程:2020年7月6日(月)~8月3日(月)
会場:博多座
 
出演者:
井上芳雄/古川雄大(トート・Wキャスト)
剣 幸/涼風真世(ゾフィー・Wキャスト)
上山竜治/黒羽麻璃央(ルキーニ・Wキャスト)

製作:東宝