ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』マイケル役・河井慈杏「自分のままでいながら面白さとメッセージを一緒に届けられたら」/連続インタビュー⑤
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河井慈杏 (撮影:山本れお)
2017年夏に東京・大阪で上演され大ヒットしたミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』日本人キャスト版が、2020年7月から新たなキャストを迎えて東京・大阪で再演される。
物語の舞台は1980年代のイギリスの炭鉱町。ひとりの少年がプロのバレエダンサーを目指す。その主人公ビリー・エリオットの背中を押す親友マイケル役として、ビリー役同様にクアトロキャストで長期公演に臨むのが、河井慈杏(かわいじあん)くん、菊田歩夢(きくたあゆむ)くん、佐野航太郎(さのこうたろう)くん、そして日暮誠志朗(ひぐらしせいしろう)くんである(五十音順)。
マイケル役もまた、約1年間にわたる厳しいオーディションを経て選ばれた。決定の翌日(2019年12月)、SPICEは個別インタビューを実施。その模様をひとりずつ(五十音順に)シリーズでお届けする。
(左から)河井慈杏 菊田歩夢 佐野航太郎 日暮誠志朗 (撮影:山本れお)
まず今回は、河井慈杏くんから話を聞く。河井くんは2008年生まれ、東京都出身。
ーーマイケル役が決まって、今はどんな気持ちですか?
正直言ってびっくりしています。(オーディション結果を聞いた)昨日の出来事が、今日だったのではないかというぐらい、嬉しさがずっと続いていますが、マイケルに選ばれたからには、しっかりとマイケルになりきって頑張ろうという気持ちです。その準備はできています。
ーー『ビリー・エリオット』のオーディションを受けた理由は?
僕は4歳の頃からシンガポールにいっていて、一昨年ぐらいまで、山城力くん(※前回公演でビリー役)と同じ学校でした。力くんが学校を辞めて、日本に帰っていったことは寂しかったのですが、ビリーのオーディションに受かったと聞き、それはすごいことだなと思って。
僕も『ビリー・エリオット』はDVDで見ていて、生の舞台を見たいなと思っていたので、日本に帰った時にお母さんに頼んで『ビリー・エリオット』の公演を観にいかせてもらいました。そこで圧倒され、鳥肌が立っちゃったんです。それで、大変だろうけど僕もやりたいなと思い、今回のオーディションを受けました。
ーーオーディション中、海外スタッフから何か印象に残ることは言われましたか?
「自分が楽しまないと、お客さんも楽しめないよ」と言われました。そこで、自分が「Expressing Yourself」の振りを踊っている時、みんなとゲームをした時の楽しい気持ちを心に持ちながら踊ってみると、「すごく良かった」と言ってくれたのです。なので、本番でもしっかり楽しみながらできたらいいなと思います。
ーー学校で好きな教科は何ですか?
音楽です。僕は歌が得意で、音符の記号も覚えています。本当に音楽が好きなんです。
ーー何か習ったりはしていましたか?
オーディションを受ける2年前位から歌とバレエとダンスの勉強を始めて、また、オーディションを受ける1年前位から演技の勉強を始めました。
ーー学校での課外活動や部活動はやっていましたか?
今、学校で、ウインドバンドという、吹奏楽のバンドに入っているんですけど、僕はクラリネットをやっています。音楽が好きなので、とても楽しいです。
ーー趣味は何ですか?
それも音楽です。楽器を演奏することも、歌うことも好き。そしてダンスも大好きです。あとは読書ですかね。僕は、現実にあることよりも、例えば「ハリー・ポッター」のような空想的な話が好きです。マイケルも頭の中でファンタジーを繰り広げている役なので、それをイメージしながら面白く演じられたらいいなと思います。
ーー憧れの人はいますか?
山城力くんです。力くんは自分のやりたいことに向かって頑張っていた。そんな力くんはすごいと思うし、僕はすごく憧れています。
ーー将来の夢は何ですか?
ミュージカル俳優です。ミュージカルが難しいものであることはわかっていますが、自分の好きなことだし、やっていると幸せを感じます。例えばアクロバットはまだやったことがありませんが、もしアクロバットが必要ならもちろん挑んでみたい。ミュージカルのためなら、いろいろな難しいことにも挑戦できます。
ーー2020年夏の本番に向けて、自分自身の中で課題だと思っていることはありますか?
タップダンスです。僕にとってオーディションの中で一番難しかったのはタップダンスでした。このオーディションに参加するにあたって初めてやったので、リズムが難しくて……。でも、周りのみんなが協力してくれて、自分でもリズムを理解したことで、出来るようになったのは嬉しかったです。
ーーあなたがマイケルと共通するところ、或いは、マイケルに共感するところは何かありますか?
日本に帰ってきてから服装のことで、学校の友達に「おしゃれうさぎ」なんて言われちゃったんです。だけど自分が好きな服だったので、そのまま着ていたらもうみんな慣れてきてしまったのか、自然と親しい友達になれた。やっぱり自分でいること、ありのままでいることが大事だと思いました。そういうところがマイケルと近いのではないかとおもいます。
ーー舞台では、どんなマイケルになりたいですか?
マイケルは「ありのままの自分で」と言っているので、自分のままでいながら、面白さとメッセージを一緒に届けられたら嬉しいです。
ーー劇中でお気に入りの場面はありますか?
『ビリー・エリオット』は感動するところがいっぱいあって選べないんですけど(笑)、マイケルになったからには「Expressing Yourself」のシーンですね。マイケルはビリーを素で笑わせてしまうぐらい面白い。僕も相手のビリー役の子を心から笑わせられるくらい、楽しめたらいいなと思います。
ーーそれでは最後に、読者の皆様に一言お願いします。
マイケルが持っているたくさんのメッセージと自分自身のたくさんの個性が一緒に届けられたら嬉しいです。作品のメッセージがお客さんの心に残るように、届けられるようにしたいです。
(左から)河井慈杏 菊田歩夢 佐野航太郎 日暮誠志朗 (撮影:山本れお)
ミュージカル『ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~』は、2000年に公開された映画「リトル・ダンサー」をエルトン・ジョンの音楽でミュージカル化した舞台作品。映画版の監督スティーヴン・ダルドリーが舞台版でも演出を手掛けた。脚本は「ロケットマン」を手掛けたリー・ホールが担当。2005年にミュージカルの舞台がロンドンで開幕すると空前の大ヒットを記録し、イギリスで最も権威ある演劇賞ローレンス・オリヴィエ賞で最優秀新作ミュージカル賞を含む4部門を受賞。2008年にはブロードウェイに進出、トニー賞10冠の快挙を成し遂げた。2017年日本初演では、東京と大阪で約4か月に渡る異例のロングラン公演をおこない、16万人を動員し、数多くの演劇賞を受賞するなど大成功を収めた。
取材・文=五月女菜穂
公演情報
ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
■出演:
川口 調 利田太一 中村海琉 渡部出日寿/益岡 徹 橋本さとし/柚希礼音 安蘭けい
根岸季衣 阿知波悟美/中河内雅貴 中井智彦/星 智也/大貫勇輔 永野亮比己
森山大輔 家塚敦子 板垣辰治 大竹 尚 大塚たかし 加賀谷真聡 齋藤桐人 佐々木誠 高橋卓士 辰巳智秋 茶谷健太 照井裕隆 丸山泰右 倉澤雅美 小島亜莉沙 竹内晶美 藤咲みどり 井坂泉月 井上花菜 出口稚子
河井慈杏 菊田歩夢 佐野航太郎 日暮誠志朗 小林 桜 森田瑞姫 森田 恵
北村 栞 下司ゆな 咲名美佑 佐藤凛奈 髙畠美野 並木月渚 新里藍那 古矢茉那 増田心春 柳きよら
石井瑠音 高橋琉晟 大熊大貴 豊本燦太 西山遥都
<ロンドンオリジナルスタッフ>
■脚本・歌詞:リー・ホール
■演出:スティーヴン・ダルドリー
■音楽:エルトン・ジョン
■振付:ピーター・ダーリング
■美術:イアン・マックニール
■演出助手:ジュリアン・ウェバー
■衣裳:ニッキー・ジリブランド
■照明:リック・フィッシャー
■音響:ポール・アルディッティ
■オーケストレーション:マーティン・コック
≪オープニング公演≫
■日時:2020年7月12日(日)~17日(金)
■会場:TBS赤坂ACT シアター
■料金:S席14,000円 A席10,000円
e+プレイガイド最速プレオーダー受付中(2月18日(火)23:59まで)
https://eplus.jp/sf/play/billyjapan
≪東京公演≫
■日時:2020年7月18日(土)~10月17日(土)
■会場:TBS赤坂ACT シアター
■料金:S席14,000円 A席10,000円
座席選択先行:2月22日(土)12:00~3月2日(月)23:59
https://eplus.jp/sf/play/billyjapan
【手数料0円】最終先着先行:2月22日(土)12:00~3月13日(金)18:00
https://eplus.jp/sf/play/billyjapan
≪大阪公演≫
■日時:2020年10月下旬~11月中旬
■会場:梅田芸術劇場メインホール
■料金:S席14,000円 A席10,000円 B席5,500円
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※オープニング公演&東京公演前期(7月/8月)分
https://eplus.jp/sf/play/billyjapan
■公演に関するお問い合わせ:ホリプロセンター
03-3490-4949(平日10時~18時/土曜10時~13時/日祝休)
■主催:TBS ホリプロ 梅田芸術劇場 WOWOW
■公式サイト:https://horipro-stage.jp/stage/billy2020/
1984年、炭鉱労働者たちのストライキに揺れるイングランド北部の炭鉱町イージントン。主人公ビリーは、炭鉱労働者の父と兄、祖母の4人暮らし。幼い頃に母親は他界してしまい、父と兄はより良い労働条件を勝ち得ようとストライキに参加しているため、収入がなく生活は厳しい。父はビリーに逞しく育って欲しいと、乏しい家計からお金を工面し、ビリーにボクシングを習わせるが、ある日、バレエ教室のレッスンを偶然目にし、戸惑いながらも、少女達と共にレッスンに参加するようになる。ボクシングの月謝で家族に内緒でバレエ教室に通っていたが、その事を父親が知り大激怒。バレエを辞めさせられてしまう。しかし、踊っているときだけは辛いことも忘れて夢中になれるビリーは、バレエをあきらめることができない。そんなビリーの才能を見出したウィルキンソン夫人は、無料でバレエの特訓をし、イギリスの名門「ロイヤル・バレエスクール」の受験を一緒に目指す。一方、男手一つで息子を育ててきた父は、男は逞しく育つべきだとバレエに強く反対していたが、ある晩ビリーが一人踊っている姿を見る。それは今まで見たことの無い息子の姿だった。ビリーの溢れる情熱と才能、そして“バレエダンサーになる”という強い思いを知り、父として何とか夢を叶えてやりたい、自分とは違う世界を見せてやりたい、と決心する。11歳の少年が夢に向かって突き進む姿、家族との軋轢、亡き母親への想い、祖母の温かい応援。度重なる苦難を乗り越えながら、ビリーの夢は家族全員の夢となり、やがて街全体の夢となっていく……。