Royal Scandalが描き出す過激で無邪気な童話世界 ツアーZepp Tokyo公演をレポート

2020.1.11
レポート
音楽

Royal Scandal

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Royal Scandal WONDER TOUR 2019 -QUEEN&ALICE-
2019.12.27 Zepp Tokyo <昼の部>

過激で無邪気な、オトナのための童話世界。その根底に流れていたものとは、ある種の純粋な愛であり、人の心の内に潜む欲望であったのかもしれない。

ボーカリスト・luzと、歌うボカロP・奏音69、そしてイラストレーションを担うRAHWIAによる、クリエイターユニット・Royal Scandalが昨年12月にメジャーファーストアルバム『Q&A-Queen and Alice-』を発表し、それもともなうツアーとしてこのたび開催した『Royal Scandal WONDER TOUR 2019 -QUEEN&ALICE-』は、2014年に始動してからというも常にコンセプチュアルな作品とシアトリカルなライブを世に送り出し続けてきた彼らにとって、ひとつの集大成とも言えるような場であったと言えるはず。

ちなみに、Royal Scandalの生み出す世界は2018年に音楽劇『Royal Scandal〜秘恋の歌姫[ディーヴァ]〜』として舞台化までされているほどの色濃いストーリー性を持っているもので、今回のライブにおいてはluzが歌を光らせる魔法使い、そして奏音69が音楽を奏でる魔法使いとしてこの場へと登場することとなった。(注・RAHWIAは実体としての登場はなくぬいぐるみ形態にて奏音69の弾くキーボード脇に鎮座!)

Royal Scandal


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また、楽曲の合間ではRAHWIAの制作した動画が上映されてゆき、この物語の中には美しくも傲慢な王子・アルベール、砂漠に住む貧しい商人・アラム、身寄りのない孤独な少年・ルイス、グラマラスな魅力を持つ金髪の歌姫・ロゼッタなど、個性豊かなキャラクターたちが続々と登場していくことが示されることに。なおかつ、そのナレーションをつとめていたのは、昨年に引き続いての登板となった大御所声優・大塚明夫氏であったのだからなんとも豪華過ぎる。つまり、Royal Scandalの織りなす世界は今回も万全なるものとして我々へと供されることになったわけだ。

そんな『Royal Scandal WONDER TOUR 2019 -QUEEN&ALICE-』の東京公演が開催されたZepp Tokyoで、まず最初に演奏されたのはアルバム『Q&A』でも冒頭を飾っていた、ファンタジックでいてドラマティックなテイルソング「ワンスアポンアタイム」。まさに物語の1ページ目が目の前でめくられていくような感覚が、この場に居合わせた全ての観衆に対して与えられたことは言うまでもないだろう。さらに、この後に続いたジャジーなスイングチューン「ロイヤルフラッシュ」では、歌詞中で『不思議の国のアリス』を思わせるキーワードや<カゲキでムジャキなワンダーランド>というフレーズが繰り出され、ゴージャスでいてファンキーなビートが人々の心と身体を躍らせた「ビタースウィート」では、『シンデレラ』を彷彿とさせる<ガラスの靴を履けば、女[きみ]はサンドリヨンになれる。>という一節が、受け手たちをより一層の夢心地へと誘っていく。

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本編中盤ではもともとluzのソロ名義でのアルバム『Reflexion』にも収録されていた楽曲であると同時に、このたびはアルバム『Q&A』の中で再収録された壮大なバラード「光」や、奏音69が自らボーカルをとりステージのセンターでマリオネットのごときパントマイム要素を取り入れながら単独パフォーマンスを展開した「ネクロの花嫁」が披露される一幕もあり、あらためてluzと奏音69の醸し出す表現力そのものに唸らされることになったのも、今回のライブの大きなポイントであった気がする。これまで、Royal Scandalのライブでは時にゲストボーカリストを迎えたりしていたこともあっただけに、luzと奏音69だけでもこれだけの世界観を呈示することが出来る、という点に圧倒されたのである。

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いよいよ物語は佳境を迎え、エキゾチックな旋律が聴き手に異界の情景を見せてくれた「マジックリングナイト」、アグレッシブで刺激的なロックチューン「ビーストインザビューティ」、ハードボイルドな色合いが滲む「REVOLVER」、スリリングな中にグラマラスな雰囲気が漂う「ファントムペイン」と色とりどりの楽曲たちが放たれ、そのうえでここぞという場面において演奏されたのは、アルバム『Q&A』にも収録されている美しく繊細な「チェルシー」。冒頭でふれた“魔法使い”たちにとって、この楽曲の中で描かれている謎めいた存在感を持つ少女・チェルシーこそ非常に重要な人物であり、我々オーディエンスにとっても今回の物語の謎解きをするうえでのキーパーソンが“彼女”であったことが、この場面になってやっと明かされることになったのだ。

そして、巧妙な仕掛けの種明かしがされたあとに本編のラストを締めくくったのは、ゴージャスな「クイーンオブハート」。ただし、その後にはアンコールとしてluzと奏音69が華麗にしてレアなツインボーカルで「ファーストレディー」を聴かせるところから始まるアンコールもしっかりと準備されていた。

Royal Scandal

「今日はここに来てようやくしゃべりますけど(笑)、皆さんあらためまして。Royal Scandalのボーカル、luzです!」(luz)
「こんにちは!Royal Scandalの音楽担当、奏音69です!」(奏音69)

終始シアトリカルな演出が徹底されていた本編とは一転して、このくだりではラフなモードで客席フロアとのやりとりなども行われ、その中ではカップルで来場していたファンにスポットが当たるという流れが生まれることになったのが、この場面ではluzと奏音69が相次いで以下のようなコメントを投げ掛けたこともここに付記しておこう。

「えっ。ちょっと、カップルで来て大丈夫? 僕らとしては嬉しいんだけど、こんなエッチな感じのライブに彼女を連れてきちゃって気まずくないのかな(笑)」(luz)
「確かに。歌詞でオトコが射殺されたり、毒殺されたりなんだり、っていう曲もけっこうありますしね(苦笑)」(奏音69)

そう。Royal Scandalの描き出す過激で無邪気なオトナのための童話世界には、甘きロマンティシズムだけでなく、その裏側には毒気やセンシュアルなエロティシズムがともなっていることも多いのだ。だからこそRoyal Scandalの生み出す世界に我々はやみつきになるに違いない。

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「今日はありがとうございました。これからも、Royal Scandalをよろしくお願いします! では、最後にロイスキャにとって始まりの曲を皆さんに贈ります!」(luz)

ここで我々へと届けられたのは、それこそ<カゲキでムジャキな>という歌詞が初めて世に向け具現化された楽曲「チェリーハント」。純粋な愛も、人の心の内に潜む欲望も、その全てを秀逸な物語として織りあげてみせるRoyal Scandalの鮮やかな手腕に心酔したひとときは、こうして華やかに幕を閉じたのだった。めでたし、めでたし。


文=杉江由紀 撮影=小松陽祐[ODD JOB]

※「Reflexion」の“o”は、アキュート・アクセント付きが正式表記