ゴスペラーズ黒沢薫&ゴールデンボンバー歌広場淳が熱く語る!『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』プレミアムトークショー
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左から、黒沢薫(ゴスペラーズ)、歌広場淳(ゴールデンボンバー)
2月6日、東京・新宿ピカデリーにて、映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』プレミアムトークショーが行われ、ゴスペラーズの黒沢薫とゴールデンボンバーの歌広場淳が登壇した。
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、アニメーション映画『この世界の片隅に』に、250カットを超える新たなエピソードを追加した作品。第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向き、日々の暮らしを紡いでいく女性・すず(のん)の姿を描く。
2016年公開時以来、『この世界の片隅に』に深い愛情を注いできたという二人。黒沢が「ようやく二人で語れる日が来たね!」と口火を切ると、歌広場も「いま『悲しくてやりきれない』が掛かって会場全体が厳かな雰囲気なんですが、僕は正直『嬉しくてやりきれない』という感じで…(笑)ついにこんな日が来るとは本当に嬉しいです!」とコメント。「アニキ」と慕う黒沢との初トークに喜びを隠せない様子。
左から、黒沢薫(ゴスペラーズ)、歌広場淳(ゴールデンボンバー)
さっそく、「なぜそこまでこの作品について熱く語るのか?」との問いに、黒沢は「最初は、僕ら以上に試写会での反響がすごかったと思います。それで僕も試写会を観に行ったんですね。それで、映画を観終わった後に地下鉄で不意に泣いてしまったんです。世界って愛おしいなって、世の中には観なければならない映画があるなって思いました。その頃、ツイッターを始めたばかりだったんですけど、ゴスペラーズのことは全然呟かないのにこの映画のことばかり呟いて…(笑)」と告白。歌広場は「この映画に最初に興味持ったのは、のんさんが声優をやっていたからでした。それで観てみたら作品が本当に素晴らしかった。それ以降は観るというよりも、会いに行くという感覚でしたね」と振り返った。
黒沢薫(ゴスペラーズ)
そんな中、歌広場が「実はこの映画、うちのボーカルと一緒に観に行ったこともあるんですけど、僕がテンション高すぎるからなのか熱く語り合えなくって…(笑)」と、鬼龍院翔とのほろ苦い思い出を明かすと、黒沢も「ゴスペラーズのみんなも観てて「よかった」とか言ってるのに、誰も俺には感想言ってきてくれないんだよな(笑)」と同作への愛ゆえの悩みを語り、会場は笑いに包まれた。
歌広場淳(ゴールデンボンバー)
歌広場の「僕『この世界の片隅に』は14回観てるんですけど……」との言葉に、「一緒だ!」とすかさず突っ込む黒沢。これに、「え~!マウント取れなかった(笑)」と嘆く歌広場には、会場も大爆笑。加えて「『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』はまだ3回しか観れてなくって……」と畳み掛ける黒沢に対し、「わ!それも一緒じゃないですか!」と歌広場はうなだれる一幕も。映画愛溢れる二人の軽快な応酬に、会場の笑いが止まることはなかった。
「何度見ても泣いてしまうシーンはあるか?」との問いには、黒沢が「やっぱり僕は右手が……!」と語り始める、歌広場の声にならない叫びとともに「それはダメですよ!じゃんけんしましょう!」と、急遽すずの右手のエピソードをかけたじゃんけん大会に発展。無事に勝利を勝ち取った歌広場が「戦争が終わって、白いご飯を炊いてみんなで食べようってなったとき。もしもの時のために取っておいたお米が、明日のためのお米になったシーンで、天国に行ってしまった右手がすずさんを撫でてくれるんですよね。あそこは本当に毎回泣いてしまう」と真剣に語ると、黒沢も大きく頷き納得した様子。黒沢も「最後に少女を背負って呉に帰るシーンで『ここが呉』ってすずさんが呉弁になるじゃないですか。あのシーンは、すずさんと周作が夫婦喧嘩をして電車を降りたシーンと同じアングルなんですよね。喧嘩のシーンは戦争中なので真っ暗なんですが、戦争が終わったあとの街並みが明るく描かれていて、すずも周作と寄り添っていて。そこが堪らない」と本作への思いを熱く語った。
左から、黒沢薫(ゴスペラーズ)、歌広場淳(ゴールデンボンバー)
また、黒沢が「『さらにいくつもの』は女性陣の存在感が爆上げだよね。相対的に男性陣が情けなくなるっていう(笑)」と前作と今作の違いについて語ると、歌広場も「納屋の上ですずさんが言う『うちはあん人が憎い』ってセリフもだいぶ意味が違って聞こえてきますよね」と深く頷く。「すずはリンであって、リンはすずでもある。二人は表裏一体だったってことは『さらにいくつもの』じゃないと分からない」と語る黒沢に続き、「もしかしたらそちら側の人生を歩んでいたかもしれない。ってことが今作でははっきり浮き彫りになる。だから前作の想像させる余白があるのも大好きだし、知らなかった感情が見えてくる今作も好きなんです」と歌広場も思いを重ねた。
歌広場淳(ゴールデンボンバー)
この日はTwitterで募集した質問に答える場面も。「今作で自分しか気づいていないであろうシーンは?」との問いに、黒沢は「すずさんがカレー粉を嗅ぐシーンが個人的に気になって、監督にLINEしたんです。『あれ、僕のためですよね?』と。そしたら『あれは運命です』とお返事をいただきました」と、カレー好きで知られる黒沢らしい回答。すると歌広場は、カレーをさておき「え!? 黒沢さん、監督とLINEしてるんですか!羨ましい」と狼狽し、会場はまたもや大きな爆笑に包まれた。そんな歌広場は「『悲しくてやりきれない』もそうだし、女学生たちが歌うシーンや、リンさんや周作が口ずさむ歌が全部サトウハチローさんの歌なんですよね。なぜ、こんなに登場するのかと思い調べたら、弟さんを原爆で亡くしている方だったんですよね」と真剣に語る。黒沢も「もともとサトウハチローさんは国威発揚の軍歌を作ってた方で。だからこそ『悲しくてやりきれない』だったんだろうなって思うよね」と応える。歌広場は、「それを知ると余計泣けるんです」と胸を熱くした様子だった。
また、「この映画を応援してご自身が変わったことは?」との質問に、黒沢は「映画の見方が変わりましたね」と即答。「アニメとか実写とか関係なく映画自体が好きになって、映画館に通う回数が増えました。本当に素晴らしいということを周りに伝えていたら、自分の思っていた以上に上映が続いて、こんなにもたくさんの人に見てもらえたということが、すごい経験でした」と明かした。歌広場は「なんでそんなにその映画に夢中になってるの?それ応援して何かいいことがあるの?みたいなことを言われることがあるんですけど、良いことがあるから応援しているわけではなくて、純粋にいい映画だから応援していて。損得関係なくこの映画を応援している人がたくさんいるということが素晴らしいことだと思えるんです」と語った。
最後に黒沢は「今日は色々な界隈の片隅にいる人々が集まっていると思うんです。いつもは別々のジャンルにいる人たちが一緒に同じ映画を観て、いろんなことを感じて。だからこのような会に参加できて本当に幸せです。これでもう一度観ようと思ったら、ぜひお友達を誘って観にきてください。そしてこの映画をより広めていってください」と呼びかけた。
また、歌広場は「この映画はすずさんが居場所を見つける話なんですよね。僕もバンドの中で居場所を見つけたいという気持ちがあったので、だからこそこの映画が好きになったんじゃないかなとも思ったんです。誰しも居場所について考える機会が来ると思うんですが、そんな時にそっと寄り添ってくれる存在です。皆さんも胸の奥にある感動がいつかまた出てくると思うので、その時に僕や黒沢さんがいっていたことを思い出してくれれば嬉しいです」と締めくくった。
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、1月31日(金)から東京・新宿ピカデリーを始め、全国67館で拡大公開。2月12日(水)には新宿ピカデリーにてテル役の声優・花澤香菜と片渕須直監督が登壇するプレミアトークショーの実施も決まっている。また、片渕監督は2月13日(木)川越スカラ座(埼玉)、2月23日(日)福知山シネマ(京都)、2月24日(月・祝)出町座(京都)&塚口サンサン劇場(兵庫)にて舞台挨拶を行う。
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は公開中。