間もなく開幕! 寺山修司の音楽劇『レミング』溝端淳平インタビュー
2015.12.4
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音楽劇『レミングー世界の涯まで連れてって』
寺山修司作品を維新派の松本雄吉が、独自の世界観で演出した音楽劇『レミングー世界の涯まで連れてって』が、2年半ぶりに新キャストで帰ってくる。12月6日から20日までの東京芸術劇場プレイハウスを皮切りに、北九州、愛知、大阪と公演が行われる。
──ある日、主人公のコックが住んでいる下宿屋の壁が消えて、
映画の撮影所や病院、牢獄などが部屋になだれ込んでくる──
この音楽劇『レミング』は、寺山修司らしい現実と妄想の錯綜する作品で、初演は1979年。寺山率いる演劇実験室◎天井桟敷で上演され、1983年に47歳の若さで急逝した寺山修司の遺言ともいえる最後の演出作品となった。また、演劇実験室◎万有引力が1992年と2000年に上演し、2000年の公演では大浦みずきが大女優役で出演したことで大きな話題を呼んだ。
映画の撮影所や病院、牢獄などが部屋になだれ込んでくる──
この音楽劇『レミング』は、寺山修司らしい現実と妄想の錯綜する作品で、初演は1979年。寺山率いる演劇実験室◎天井桟敷で上演され、1983年に47歳の若さで急逝した寺山修司の遺言ともいえる最後の演出作品となった。また、演劇実験室◎万有引力が1992年と2000年に上演し、2000年の公演では大浦みずきが大女優役で出演したことで大きな話題を呼んだ。
その戯曲を2013年、松本雄吉がパルコ劇場で上演。壮大な野外劇を得意とし、変拍子のリズムに乗せて言葉を再構築する「ヂャンヂャン☆オペラ」の松本が、寺山の美しくシュールな言葉とイメージの連鎖に新解釈で挑み、独自の世界観で観客に衝撃を与えた。今回はその再現に留まらず、さらに上演台本の改訂と新たな演出を加え、新キャストを生かして、東京芸術劇場プレイハウスの空間にふさわしい、スケールアップした『レミング~世界の涯まで連れてって~』として生まれ変わる。
新キャストの顔ぶれは、部屋の仕切り壁が消えてしまったアパートに住むコック見習いのタロに溝端淳平、同じくコック見習いジロに柄本時生、アパートの畳の下に住むタロの母親には麿赤兒、銀幕の大女優・影山影子には霧矢大夢と、個性的で実力のあるメンバーが揃った。その作品の主役に挑む溝端淳平が、テラヤマ・ワールドへの熱い想いを語った演劇ぶっく12月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
【溝端淳平インタビュー】
溝端淳平(撮影/岩村美佳)
──今回、この作品に出演しようと思った決め手は?
舞台を生で見ていないのが残念と思うほど世界観に惹かれたんです。セリフや表情だけでなく全身で感じてもらう世界で、これを伝える表現方法や、言葉に出来ない何かを自分も体験してみたいと。さらに、僕は和歌山出身なんですが、大都会に呑まれていく、浸食されていくという感覚を、僕自身実感しているんです。田舎にいたときにあったうねりが削られて、どこか平坦になっていく自分を打破したい。それに、今までの経験だけでは解釈できないものに、どんどんチャレンジしようと考えていた時期だったことも大きいです。
──寺山作品についてはどんなふうに思っていましたか?
蜷川幸雄さんが演出された『身毒丸』を観て、とても惹かれていたのでぜひ出てみたかったんです。寺山さんといえば演劇界の巨匠であり、詩人で、その美しい言葉は、意味はわからなくても何か響くものがあるんです。人それぞれ感じ方や解釈の仕方は違ってもいいんだよという大きさを感じます。
──溝端さんも感覚的な部分で興味がわいたのですね。
人間って普通は理論や言葉の左脳で生きていますが、この作品は感性の右脳を使うような感じです。今の僕は新人の頃よりは理屈がわかってきたぶん、本当はまだわからないことだらけなのに、自分の理解できる範囲でやってしまう部分もあると思うんです。でも、もっと深めていきたいし、前に進むためにすごくいい作品に出会えたなと思います。
──松本さんの世界観はどう感じていますか?
前回公演を拝見した限りでは、これが俺の寺山修司だというような押しつけもなく、かといって無責任に寺山さんの世界をそのままなぞるわけでもない独自の感覚があって、観る人を心地よくその世界に誘導してくださる方だなと思いました。
溝端淳平(撮影/岩村美佳)
──役について考えていることは?
無垢、純粋、どこにでもいるような青年です。そういう青年が突拍子もない世界にいることが、見ている人には入りやすい糸口かもしれません。言っていること、やっていることは独特ですが、一緒にいて距離を置きたいと思うような青年ではない。前回、八嶋智人さんが演じられたときは、八嶋さんの色が濃く出ていたと思いますが、僕に求められているのはまた違うタイプで、和歌山の田舎で育って「寺山修司って誰!?」って言っているような青年が、寺山さんの世界に入ってしまうような(笑)。松本さんからも「自分が思う寺山修司という部分を大事に、若い感性でやってほしい」と言っていただきました。
無垢、純粋、どこにでもいるような青年です。そういう青年が突拍子もない世界にいることが、見ている人には入りやすい糸口かもしれません。言っていること、やっていることは独特ですが、一緒にいて距離を置きたいと思うような青年ではない。前回、八嶋智人さんが演じられたときは、八嶋さんの色が濃く出ていたと思いますが、僕に求められているのはまた違うタイプで、和歌山の田舎で育って「寺山修司って誰!?」って言っているような青年が、寺山さんの世界に入ってしまうような(笑)。松本さんからも「自分が思う寺山修司という部分を大事に、若い感性でやってほしい」と言っていただきました。
──共演者についても聞かせてください。
コック仲間を演じる(柄本)時生とは同い年なんです。彼は家族全部が演劇人で、演劇するのが当たり前のように育ってきた。そこは羨ましいですし、一緒にいて刺激し合える間柄です。霧矢大夢さん、麿赤兒さんは初めてご一緒します。おふたりとも関西出身だそうで、嬉しいです(笑)。麿さんとは先日お会いしましたが、歩いていらしただけで空気や雰囲気が別格のすごさがありました。
──最後に作品への意気込みをぜひ。
寺山さんの作品は、僕らの世代にとっては、日常に当たり前のようにあるものではなく特別な世界です。でも、書かれた時より情報化社会がさらに進んだ今だからこそ、寺山さんの世界観が必要で、そこに平成生まれの僕が挑むことはすごく意味があると思います。今なら寺山さんを実際に知っていた方から直接教えて頂けるチャンスがあるので、僕自身も寺山さんを体感しながら、少しでも多くの人にこの世界を伝えていければと思っています。
溝端淳平(撮影/岩村美佳)
みぞばたじゅんぺい○和歌山県出身。06年「第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得しデビュー。07年『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』で注目された。現在、映像、舞台で活躍している。主な出演舞台作品は、二兎社『こんばんは、父さん』、蜷川幸雄演出の『ムサシ』『ヴェローナの二紳士』など。
【溝端淳平インタビュー:取材・文・撮影/岩村美佳】
〈公演情報〉
音楽劇『レミング~世界の涯まで連れてって~』
作◇寺山修司
演出◇松本雄吉(維新派)
上演台本◇松本雄吉/天野天街(少年王者舘)
出演◇溝端淳平、柄本時生、霧矢大夢、麿赤兒 他
●12/6~20◎東京芸術劇場 プレイハウス
●12/26・27◎北九州芸術劇場 大ホール
●2016/1/8◎愛知県芸術劇場 大ホール
●2016/1/16・17◎森ノ宮ピロティホール
〈お問い合わせ〉パルコ 03-3477-5858