玉置玲央と白石隼也に独占インタビュー 彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』で初共演

2020.4.23
インタビュー
舞台

(左から)白石隼也、玉置玲央

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シェイクスピア全37戯曲の完全上演まであとわずかとなった彩の国シェイクスピア・シリーズ、その第36弾となる『ジョン王』が着々と準備中だ。主人公の“私生児”役を、このシリーズに14年ぶりに参加する小栗旬が務めることでも話題の本作。演出は蜷川幸雄の遺志を継いだ吉田鋼太郎が手がけ、キャストがすべて男性のオールメール版としての上演となる。その中で本シリーズにも吉田演出作にも初参加となるのが、玉置玲央白石隼也だ。玉置は、正当な王位継承権を持つ息子を王にすべく奔走する女性“コンスタンス”役を、白石は、吉田演じるフランス王の息子の“皇太子ルイ”役を演じる。今回が初共演、しかもこの取材日が初対面だった二人に、作品への想いや意気込みを語ってもらった。

ーー『ジョン王』への出演のお話が来て、どういう感想を抱かれましたか?

玉置:まず、純粋に鋼太郎さんと一緒に作品をつくれることが、個人的には感慨深かったです。いろいろな現場でご一緒させていただいてきましたが、演出を受けたことは一度もなかったので。そして、まさに白石さんともそうなんですが、今回は初めましての共演者が多いのと、この『ジョン王』はものすごく可能性をはらんだ作品だと思うんです。シェイクスピア作品とはいえ、日本ではそれほど上演されてこなかったものでもありますし。その舞台で自分は何ができるんだろうと、自分の役割、自分が出る意義を考えられるというのはとてもいい経験になると思います。僕、この間35歳になったんです。結構な年齢になってきましたので。

玉置玲央

白石:そうは見えないですけど(笑)。

玉置:いやいや、そうなんですよ(笑)。それに僕、ターニングポイントの時期にいつも鋼太郎さんと一緒になることが多くて。

ーーでは35歳の節目も、ターニングポイントに?

玉置:そうなったらいいなと。神頼みみたいなところもありますけど(笑)。すごくおこがましい話なんですが、鋼太郎さんにとっても何か自分の存在が良く作用したらいいな、とも思います。それは鋼太郎さんに限らず、この座組のみなさん、この作品全体に対しても、そういう作用が生まれたらうれしいです。

白石:僕は厳密に言うと、出演のお話が来たというのではなく、オーディションで選んでいただいたんです。これまで蜷川さんの演出作品にはご縁がなかったですし、自分がこのシェイクスピア・シリーズに出るなんてことはほとんどイメージしていなかったんです。今もまだ、心の準備が完璧にできていないのに決まってしまったみたいな状態で。正直、ビビっています(笑)。

ーーオーディションは、どういう形で行われたんですか。

白石:鋼太郎さんが相手役をしてくださって。きっかけゼリフを言ってもらい、それに合わせて僕が演技をするという形でした。

白石隼也

ーーそれは『ジョン王』の台本を使って?

白石:そうです。一場面だけですけど。

玉置:ルイのシーンを読んだの?

白石:そうなんです。だけど物語の途中のワンシーンを切り取っていたので、前後がどんな流れなのかわからぬままに読んでいたんです。一応、事前にあらすじだけはウェブサイトで確認はしたんですけど。

玉置:なるほど、こういう話か~とだけは把握して?

白石:はい(笑)。それで、たぶんこういうシーンなんだろうなと自分なりに想像して演技をしました。そのあとで改めて『ジョン王』の脚本を最初から最後まで読んでみたら、オーディションの時の自分の演技の入り方のテンションは、まるで間違っていたように思えてきて。

玉置:へえ、そうだったんだ。

白石:そんなにアツくなってなさそうな場面なのに、アツいテンションで始めていたんです。でもそこはあまり気にされなかったみたいですけど。

ーー『ジョン王』の脚本を読んだ時の、最初の手応えはいかがでしたか。

玉置:これはシェイクスピア作品に総じて言えることですけど、「いや、もっとハッキリものを言えば?」って、僕はいつも思っちゃうんです(笑)。「そんなにまわりくどい言い方をしなくてもいいのに」って。この『ジョン王』の場合はある意味わかりやすくて、誰かに対する憎悪とか、成り上がっていってやるぜみたいな出世欲とか、誰かを蹴落とす、殺す、暗殺する、みたいなことで芝居が進むわけではないんですね。だけど、そこにシェイクスピアフォーマットじゃないですけど、すごく修飾された言葉たちがのっかってくると、今、何をしゃべろうとして、何を語りたくて、何が問題点になって、何がこの人たちにとっての議題なんだろうというのがどんどん薄れていくというか、そがれていく気がするんです。だから、そういうことを手繰り寄せつつ、うまくやっていかないと自分もわからなくなっちゃうし、そうなったら観ているお客さんはもっとわからないだろうし。

(左から)白石隼也、玉置玲央

ーーそのあたりは吉田さんが演出として、わかりやすく導いてくれそうですね。

玉置:そう思います。あと、松岡和子先生が翻訳してくださっているということも大きいと思います。どこまで鋼太郎さんとすり合わせして仕上げたかはまだわからないですけど。これまで僕は松岡先生の翻訳で芝居をやることが多かったので、いつも思うことでもあるんですが、生命力を吹き込みやすい翻訳、俳優に寄り添う翻訳をしてくださる方だなと思っているので。今、僕らがもらっている台本は、あれはまだプレーンな状態なんだって。

白石:そうなんですか。

玉置:だから、あそこからもう少し刈り込まれる可能性もあるみたいで。前半は情報出しというか、人間関係や登場人物の説明が多くて、後半はシェイクスピアの戯曲によくある、いわゆる若い世代たちがこの先何をしていくか、そして何が残されているか。この者たちが今後を引っ張っていくんだという示唆というか。『リア王』にもあるような、そういう描写が強いように思います。そう考えると、あまりカットのしどころはなさそうな気がしますね。

白石:いや、僕のところとか、切られるんじゃないかなあ。

玉置:なんでだよ(笑)。大事なところだと思うよ。僕らは、出番としてはバトンタッチみたいな状況になるんだよね。前半は、コンスタンスの出番が結構多くて。ポイント、ポイントでポンポンと出て来ては狂気の沙汰を演じ、その強烈ぶりをアピールして去っていくという(笑)。後半は、若い世代に託した何かがどう育まれていくか。戦うのか、争うのか、寄り添うのか。恋愛なのかなんなのか、みたいなことが描かれていて、どちらかというとルイはたぶん後半パートの人なんですよ。だから僕としては、途中でバトンタッチして「後半はまかせた!」ということになるのかなと思っています。

ーー白石さんは、台本を読んだ感想としてはどうですか。

白石:僕は、まったくシェイクスピア作品に詳しくなくて、『ジョン王』というタイトルも今回の話が来るまで知らなかったくらいなんです。あまり上演されたことのなく、人気がある作品ではないという話は聞いていて、その状態で戯曲を読んでみたんですが、すごく面白かったので「全然、面白いじゃん!」と思いましたね。それぞれのキャラクターにもちゃんと感情移入ができそうだし、なんでそんなにつまらないって言われるのかなと不思議でした。あっという間に、読めてしまいました。中でもコンスタンスと私生児が、とてもアクが強い感じで。

玉置:キャラクターが強烈なんだよね。

白石:他のキャラクターに関しては、あそこまで役柄の個性が出ているようなセリフはないけど。そういう意味ではジョン王を含め、いかようにもなる脚本だなとも思いました。僕の役も、その点は同じで。でもこれだけ素敵な俳優さんたちが集まってこの作品を演じたら、僕が想像しえないところまでたどり着けるんじゃないかなという気もします。単純に、みなさんがどういう風に役を作っていって、この作品をどんなところまで飛躍させるのかということには僕自身も興味津々です。その姿を稽古場で間近で見られるなんて、とても贅沢なことだなと思っています。

ーーお二人とも吉田さんの演出作品は初体験ということなので、稽古場がどんな雰囲気かも今日の時点では。

玉置:そう、まだ全然知らなくて。それこそ、今回の座組の中には鋼太郎さんの演出を受けて来られた方も何人もいらっしゃいますし、このシリーズに出ていた方も多いでしょうし。きっとそういう方が、空気を作ってくださると思っているんですけど。なにしろ、僕らは右も左もわからないから。

玉置玲央

白石:玉置さんには、そんなこと言わないでほしいな。

玉置:え? 僕が? だけど転校生みたいな立場という意味では一緒だねって、ついさっきも話していたじゃない。

白石:はい。でもやっぱり僕のほうは、たぶん新入生なんじゃないかと思い始めて。

玉置:なんで?(笑)。微妙に違うの?

白石:だって僕はシェイクスピアをやったことがないし、鋼太郎さんともそれほど面識がないし。

玉置:いや、そこはあまり関係ないんじゃない?

白石:でも僕は、きっと新入生なんですよ。

玉置:え~、じゃ、僕も新入生がいい!

白石:いや、玉置さんは転校生なんですよ。

玉置:そうなの? どこかの学校には通ってたんだ。

白石:そう、どこかの学校には友達がいるんです。だけど、僕にはまだいないんですよ。

ーー全員と「初めまして」で、ゼロから始まるから。

白石:そうです。だからランドセルを背負って、黄色い帽子をかぶって(笑)。

玉置:低学年として入学するんだ(笑)。そんなことないと思うけどなあ。

白石:まあ、そんな風に若干思ってはいますけど、そんなことは気にせずに楽しくやりたいなとも思っていますよ。

白石隼也

玉置:うんうん!

ーー顔ぶれとしてはみなさん、優しそうな方ばかりですし。

白石:そうなんですよね。失敗して怒られることは多少あっても、本気で嫌われることはなさそうだなという安心感はどこかにあるので。僕の勝手なイメージですけど。

玉置:僕も、そう思うよ。

ーーしかも今回はオールメールですから、男子校みたいな空気になりそうですね。

玉置:もう、稽古場がオッサン臭くなりそう(笑)。男性しかいない稽古場って僕は何度も経験あるけど、でもこれまでと風合いがかなり違う気がしているんです。年齢的なこともあるけど、この作品ならではの強度みたいなものも感じるし。それこそ、このシリーズが続いてきている歴史みたいなものもありますからね。そう考えると当然ながら、男子たちが学園祭で集まって、イエーイってやってる延長線上でやれるようなことではないので。だけど、稽古場に行っても劇場に行っても男子しかいないって思うと……。

白石:ねえ、ちょっとイヤですよね(笑)。

玉置:アハハ。やっぱり、どうしても華やかさが違うよね。僕、精一杯がんばるわ、女役として(笑)。

白石:なんか、イイ匂いとかさせたらどうですか。

玉置:そんなことでいいの?

白石:玉置さんとすれ違った瞬間に「あれっ?」ってなったら、それでリフレッシュできそうじゃないですか。

玉置:そっか、わかった。がんばるわ。よし、まずはイイ匂いだね(笑)。

(左から)玉置玲央、白石隼也

取材・文=田中里津子 撮影=池上夢貢

公演情報

彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾 全公演中止
『ジョン王』
 
<キャスト>
小栗旬 横田栄司
中村京蔵 玉置玲央 白石隼也 植本純米
間宮啓行 廣田高志 塚本幸男 飯田邦博 二反田雅澄 菊田大輔 水口てつ 鈴木彰紀* 竪山
隼太* 堀 源起* 阿部丈二 山本直寛 續木淳平* 大西達之介 坂口舜 佐田 照/心瑛(Wキャス
ト)
吉田鋼太郎
*=さいたまネクスト・シアター
 
作: W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)
 
制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団、ホリプロ
企画:彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピア企画委員会
 
<埼玉公演>
日程:2020年6月8日(月)~6月28日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場  大ホール
主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
 
料金(全席指定・税込み):
一般 S席 10,000円、A席 8,000円、B席 6,000円
SAF メンバーズ S席 9,300円、A席 7,400円、B席 5,500円
U-25(B 席対象)2,000円(劇場のみ取り扱い)
※U-25 は公演時、25歳以下の方が対象です。入場時に身分証明書をご提示ください。
 
お問合せ:彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(休館日を除く 10:00-19:00)
公式サイト:https://www.saf.or.jp/
 
<名古屋公演>
日程:2020年7月3日(金)~7月6日(月)
会場:御園座
主催:御園座
 
料金(全席指定・税込み):A席 11,500円、B席 8,000円
お問合わせ:御園座 052-222-8222(10:00~18:00)
 
<大阪公演>
日程:2020年7月10日(金)~7月20日(月)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
主催:梅田芸術劇場
 
料金(全席指定・税込み):全席 13,000円
 
お問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3888(10:00~18:00)
公式サイト:https://www.umegei.com/schedule/884/
 
※公演日程など変更の可能性があります。
 
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