このキャラクターから目が離せない!魅惑の国内ストレートプレイ編/ホーム・シアトリカル・ホーム[Vol.3] ~自宅カンゲキ 1-2-3<演劇編>
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このキャラクターから目が離せない!魅惑の国内ストレートプレイ編
ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ 1-2-3 <演劇編>
(文:こむらさき)
不要不急の外出自粛をはじめ、制限だらけの日常をいかがお過ごしですか? 観に行こうと思っていた舞台が次々と中止・延期となり、漏れ聞こえる出演者、スタッフの想いに触れては涙を流し、いつか復活するその日を待って耐え忍んでいる日々。でも「やっぱり観劇したい!」な演劇中毒症状を抑えきれないのは皆同じかと。
いきなり私事ですが、筆者は以前入院&手術で1ヶ月ほど病院に監禁(?)されていました。その時主治医とよく話していたのが「劇場に患者を連れていくサービスがないだろうか」「いやむしろ劇団ごと病院に招き、院内で上演してもらうサービスがないだろうか」という事。どこに移動しても同じような色合いの壁と家具に囲まれた病棟生活と、今の状態が非常に重なるなあと思うのです。TV放送やネット配信で芝居が観れる事は、例え部屋から出られなくても一瞬、外の空気を吸える、そんな気がするのです。別次元のダイナミックな作品であればあるほど!
今回、いずれも観劇中に体内に入ってくる情報量が圧倒的に多く、見慣れた自室から3時間ほど、別世界に連れ出してくれる、そんな作品を選んでみました。ぜひお試しいただきたいです。
第1回は「このキャラクターから目が離せない!魅惑の国内ストレートプレイ編」です!
■劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season鳥 注目キャラクター:贋鉄斎(池田成志)
(C) TBS/ヴィレッヂ
Paraviで配信中の『髑髏城の七人』シリーズ。この世を支配しようと企む天魔王と捨之介たち市井の人々が阻止しようと死力を尽くす物語。花・鳥・風・月(上弦・下弦)・極の中からあえて選びたいのは“鳥髑髏”ことseason鳥。阿部サダヲ演じる捨之介はじめ、濃すぎるキャラクターの中でも特に目が離せないのが池田成志演じる贋鉄斎! 贋鉄斎の初登場シーンからすでに胡散臭さ満点! 刀を打つカーン、カーンという音が会場中に響き渡ると「くるぞ、くるぞ」と思わず忍び笑いが漏れ出てしまうくらい。贋鉄斎というキャラクター自体ビジュアルも設定も無茶苦茶。自分が打った刀の切れ味を自らの身体で試す狂気ぶり、そして捨之介との漫才のようなやり取りも見どころ。そこにいるだけでもう腹筋崩壊間違いなし!
このキャラの魅力が200%輝く秘密は、演じる池田成志、いや成志センパイ(愛と尊敬を込めてこの名でお呼びします)の役者力、特に「声」の力にあるのではないだろうか。セクシーでシブイ低音からアホさ際立つ高音まで使い分ける七色の声色、そしてどんなに早口&長台詞になっても客席の隅々まで聞き取れる滑舌の良さ。この最強の武器を持った成志センパイだからこそ、贋鉄斎の魅力を最大限に引き出しているのではないかと思うのだ。贋鉄斎の力を借りつつ捨之介が挑む百人斬りの場面に皆が大興奮し喝采を贈るのもうなづける話だろう。
ちなみに、この他の花・風・月(上弦)は配信中、月(下弦)・極も追って配信予定だ。時間がある今こそ、全シリーズを観比べて、芝居巧者の役者たちがそれぞれのキャラクターをどのように演じているか、チェックしてみてはいかが?
■南座 スーパー歌舞伎II(セカンド)『新版オグリ』 注目キャラクター:照手姫(坂東新悟)
スーパー歌舞伎II(セカンド)『新版 オグリ』 ※新橋演舞場での上演時のチラシビジュアル
4月13日から19日までYouTube松竹チャンネルにて、その後CS衛星劇場で5月2日に放送される『新版オグリ』。武芸学問に通じた美貌の若者、オグリは束縛を嫌い集まった若者たちとともに心のままに生きてきたが、やがて絶望と挫折を味わい、そのなかから光を見出す生命と歓喜の物語。
この『オグリ』で注目したいのは坂東新悟演じる照手姫だ。オグリと出会って相思相愛となり、やがて様々な運命に翻弄されていく照手姫が可憐さ、美しさが際立つ娘時代から並々ならぬ苦労を経て、人への優しさと芯の強さを身に着けていく。そんな照手姫の姿は一人の女性の人生という意味からも目が離せない。演じる坂東新悟は女形では珍しい長身の持ち主。そのせいか舞台に出るとすぐ目に留まり、その美しい姿に吸い寄せられる。「舞台映え」という表現はまさに新悟のためにある言葉だと感じさせる。これからのさらなる成長が期待される若手の一人だろう。
照手姫に強い嫉妬心を持った者によって河に流される場面は、まるで一枚の錦絵の様に美しく切ない。その姿は運命という川の流れに身をまかせる照手姫の人生をなぞるようでもある。ぜひ瞬きを止めてその瞬間を観ていただきたい。
■コクーン歌舞伎「三人吉三」<NEWシネマ歌舞伎> 注目キャラクター:お嬢吉三(中村七之助)
NEWシネマ歌舞伎「三人吉三」予告 渋谷篇
5月3日にWOWOWで放送される本作は、中村勘九郎、中村七之助、尾上松也という歌舞伎新世代を担う3人が、河竹黙阿弥の名作「三人吉三」に挑んだ作品。三人の吉三が出会い、義兄弟の契りを交わし、やがて悲しい運命に身を落としていく。
本作で心奪われるのは、男に生まれながらも振袖姿で盗みをはたらくお嬢吉三。とにかくすべてが美しく、ほんの少し首をかしげ、身をひねって誰かをすっと見つめる目線から放たれるフェロモンにクラクラ。それでいて「男」としての啖呵も凛々しく雄々しく威勢よく。どちらの性も存分に生き抜こうとするお嬢吉三の生き様に思わず息をするのを忘れてしまいそうになる。演じる七之助は父から受け継いだ天分の才だけでなく自らもたゆまぬ努力を積み重ね、今美しい花を咲かせている。まさに脂がのったいい役者ぶりだ。
お嬢吉三が、和尚吉三(勘九郎)、お坊吉三(松也)と繰り広げるラストシーンはこの世のものとは思えないくらい美しく、儚い。ひと時の夢幻に浸ってみては。
〇他にもオススメしたい作品はこちら!
・20thCentury『TWENTIETH TRIANGLE TOUR vol.2 カノトイハナサガモノラ』(ブルーレイ、DVD 発売中)
V6の坂本昌行、長野博、井ノ原快彦による「トニセン」が描く不思議な世界。サカモト、ナガノ、イノハラが自身の存在の意味、お互いの関係、そして過去、現在、未来をトニセンの曲にのせて描く。持ち歌をベースに描かれたこの物語は、彼らにしかできない新たな形の「演劇」を作り上げたのではないだろうか。
・舞台『パタリロ』(衛星劇場 5月4日放送)
漫画からそのまま飛び出したかのような加藤諒のパタリロ姿は、もはや彼以外の役者で想像する力をすべて奪うくらいハマリ役。個性豊かなキャストたちと奇想天外&言語道断&酒池肉林(?)で繰り広げるぶっとびコメディだ。
次回は、国内ミュージカル作品のオススメを語ります!
文:こむらさき
作品情報
清水葉月/梶原善/池田成志 他
2019/12/13(金)18時 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season花
2020/1/13(月・祝)18時 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season風
2020/2/13(金)18時 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 上弦の月
2020/4/13(月)18時 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 下弦の月
2020/5/13(水)18時 劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』
■配信内容:
スーパー歌舞伎II(セカンド)『新版 オグリ』
フルバージョン(藤原正清後に小栗判官:市川猿之助)
ハイライトエディション(藤原正清後に小栗判官:中村隼人)