ヤユヨ 本格ブレイク前夜の3人組が早耳リスナーを惹きつけるワケ【SPICE×SONAR TRAX コラム vol.3】

2020.6.6
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ヤユヨ

バンドは生き物だ。だからこそ、鳴らす音に血の通っていないバンドには熱くなることができない。とはいえ、情熱一辺倒で来られても、それはそれで嘘くさく感じられて逃げたくなってしまう。そんな天邪鬼気味のあなたに今おすすめするとしたら、私はこのバンドを選ぶだろう。

大阪の3人組バンド・ヤユヨ。2019年1月、高校の軽音仲間によって結成。メンバーは、リコ(Vo/Gt)、ぺっぺ(Gt/Cho)、はな(Ba/Cho)で3人とも現役女子大学生。そこにサポートメンバーのすーちゃん(Dr/Cho)を加えた4ピース編成で活動している。バンドの公式ホームぺージによると、「ジャンルに縛られずに音楽がしたい。日常を音にしたい。音楽は永遠に楽しい!」という気持ちを大切にしながら活動しているとのこと。

自主制作シングルに収録されている「さよなら前夜」という曲が、早耳のリスナーにバンドの存在を知られるきっかけとなった。弾むようなシンコペーションのリズムが印象的なアッパーチューンで、キャッチ―なメロとシンプルな構成は確かに親しみやすいが、「明るい曲」とは一口に言いづらい。ボーカルは空気成分多め。がならずともバンドサウンドから浮き上がってくるが、それゆえにどこか悲しげに聞こえる。小節を跨ぐときに母音を伸ばし、「あーあ」と発音している箇所がいくつかあるが、声質も相まってそれらはため息のように聞こえる。

歌詞で描かれているのは恋の終わり。よく考えると、「さよなら前夜」というタイトルはシンプルながら奥深い。「(相手と)さよなら(をする)前夜」とも読めるし、「前夜」という概念に別れを告げる=「こんな状態になる前の頃まで戻れれば……」的なことを考えるのはもうこれで終わりにするから、というふうに解釈することも可能だ。

「明るくも切ない」と言葉で言うのは簡単だが、ほんの少しでも分量を間違えば、どっちつかずに終始してしまう危険性がそこにはある。その絶妙な匙加減を早い段階で――しかもナチュラルな温度感で実現していることが、このバンドのすごいところだ。驚くべきことに、「さよなら前夜」は、バンドを結成してからリコが初めて書いた曲とのこと。およそ半年前に公開されたMVは、現時点で再生回数87万回超。全国デビュー前の新人バンドとしては異例の数字を記録している。

さらに面白いのが、バンドの中にソングライターが2人いること。先に紹介した「さよなら前夜」はリコが書いた曲だが、たとえば「メアリーちゃん」という曲はぺっぺが書いている。そしてメジャーキーでシンプルな構成をした「さよなら前夜」に、マイナー調でテンポが揺らぐ場面もある「メアリーちゃん」というふうに、曲のテイストが全然違っている。このように、ソングライターが2人いるという特色は「ジャンルに縛られずに音楽がしたい」と謳う彼女らにとって大切な要素となっているようだ。

現時点ではまだ見えない部分も多いが、初の全国流通盤『ヤユヨ』ではこのバンドが持つさらなる表情も確認できそうだ。CDはタワーレコード限定で8月5日にリリース、配信リリースおよびストリーミングでの配信は6月10日からスタートとのこと。まずはこの作品を楽しみにしていたい。


文=蜂須賀ちなみ

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リリース情報

Debut Album『ヤユヨ』
8月5日(水)発売予定(タワーレコード限定)/6月10日配信

『ヤユヨ』

TALTO / murffin discs
1.kimi_no_egao
2.いい日になりそう
3.メアリーちゃん
4.今度会ったら
5.さよなら前夜
6.七月
※CDのみ
7.ユー! (acoustic ver.)
8.さよなら前夜 (acoustic ver.)
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