第31回清里フィールドバレエ、ゲストに小野絢子、上野水香らを迎え全日程『白鳥の湖』で開催

2020.6.13
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清里フィールドバレエ『白鳥の湖』


2020年7月30日から10日間にわたり、第31回清里フィールドバレエが清里高原萌木の村特設野外劇場(山梨県北杜市)で開催される。31回目となる今年はフィールドバレエの中でも人気の高い『白鳥の湖』を上演。昨今の新型コロナウィルスの影響から密を避け、座席数は500席弱と例年の半分になるが、30年以上にわたりこのフィールドバレエで舞台を務めてきたバレエ・シャンブルウエストをはじめ、すっかりおなじみのゲストとなった小野絢子福岡雄大(いずれも新国立劇場バレエ団プリンシパル)は初日を含め2日間登場。さらに今年は上野水香柄本弾(いずれも東京バレエ団プリンシパル)が清里で初の全幕出演をするなど、顔ぶれは豪華だ。(文章中敬称略)


■バレエ団と地元関係者の熱意育てた歴史ある野外バレエ

「清里フィールドバレエは野生のバレエだ」と以前、実行委員長の舩木上次が語ってくれたことがある。「野生」というといささかワイルドな印象を抱くが、室内環境など人工的に管理された、いわゆる箱の劇場とは違い、フィールドバレエは作りものではない本物の森や満天の星空に月の光という天然の照明やセットが得られる一方、風や変化する気温、時には雨など、人間がどう手を尽くしても抗うことのできない自然条件との戦いでもある。さらに高原という「高地トレーニングのような条件の中で」ダンサーは全神経を研ぎ澄まし、集中力を高めながら、大いなる自然との一体化を目指した美の創出に挑むのである。そうしたバレエダンサーの姿は優美であるとともに時にはリアルに妖精に、あるいは月明りを受けて輝くしなやかな野獣のようにも思え、「野生のバレエ」というのも「なるほど」と納得するのである。

そもそもこの「清里フィールドバレエ」が生まれたのは1990年のことだ。きっかけはフランスで野外バレエの魅力にふれ、日本でそれを上演し根付かせたいという思いを抱いていたバレエ・シャンブルウエストの今村博明総監督と川口ゆり子芸術監督らと、清里に芸術文化の灯をともし育てたいと考える舩木とが出会ったこと。1990年第1回の観客は2日間でわずか350人だったが、フィールドバレエは地元関係者やバレエ団の熱意のもと、文字通り努力を積み重ねながらコツコツと堅実に、愛情をこめて大切に育て上げられてきた。地元の夏の風物詩として次第に定着し、野外バレエの魅力に感動したファンがその魅力を口伝えで広め、2003年には公演日数が14日間に、2004年は全日程来場者数が1万人を超えるほどまでに成長。2019年には30周年を迎えたのである。


■野外だからこその舞台演出を存分に駆使した『白鳥の湖』

31回目となる今年上演される『白鳥の湖』はフィールドバレエの中でも人気の高い演目で、宵闇の中に青白く浮かび上がる白鳥たちの白いチュチュ姿はこれ以上ないほどに幻想的だ。さらに上手下手の舞台袖だけではなく舞台正面奥や天井のない縦の空間も存分に利用した、野外ならではの演出も魅力の一つである。限られた時間の中での上演でありながら、ポイントとなるシーンはしっかりと抑えるなど、随所に今村総監督と川口芸術監督のこだわりがうかがえる。さらに3幕冒頭の地元花火師による打ち上げ花火も物語を華々しく彩り、クライマックスの4幕は……屋外ならではの実に感動的な結末が待っているのだ。フィールドバレエの魅力をとことん堪能でき、「この清里白鳥ならば何度も観たい」と思わせられる、実にクセになる演目なのである。

キャストはゲストの小野&福岡、上野&柄本ペアのほか、第1回からフィールドバレエをけん引してきているバレエ・シャンブルウエストのメンバーらがほぼ日替わりで登場する。先頃第68回舞踊芸術賞を受賞した芸術監督川口ゆり子もオデット役で出演し、その熟練の芸を披露。吉本真由美や江本拓らのベテラン、バレエ団の主力として一層魅力を増す松村里沙や川口まり、土方一生ら、さらに昨年白鳥の湖でデビューした柴田実樹など、どの日もそれぞれに味わいがある。

野外バレエゆえに天候のリスクはあるが、中止の際はの払い戻しも行われる。鑑賞時の天候はどうしても運次第であるのは否めないが、仮に雨天中止となっても蒸し暑い都会を離れ、涼しい高原の空気と新鮮な野菜など高原グルメを楽しもうという、心のゆとりを持って足を運んでみるのがいい。無事上演となったときに目にする夢幻の世界は、いつまでも心に焼き付く情景のひとつとなるに違いない。

文=西原朋未

公演情報

第31回清里フィールドバレエ
『白鳥の湖』

■日時:2020年7月30日(木)~8月8日(土)
■開演:19:00(開場18:15) ※8月5・6日は19:30開演
■会場:清里高原萌木の村特設野外劇場
■音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
■原振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ
■演出振付:今村博明、川口ゆり子
■出演:
〇7月30日(木)小野絢子《オデット・オディール》/ 福岡雄大《ジークフリート王子》(新国立劇場バレエ団)
〇7月31日(金)山田美友《オデット》/石原朱莉《オディール》/京當侑一籠《ジークフリート王子》
〇8月1日(土)吉本真由美《オデット》/土田明日香《オディール》/土方一生《ジークフリート王子》
〇8月2日(日)松村里沙《オデット》/川口まり《オディール》/江本拓《ジークフリート王子》
〇8月3日(月)柴田実樹《オデット・オディール》/芳賀望《ジークフリート王子》
〇8月4日(火)上野水香《オデット・オディール》/柄本弾《ジークフリート王子》(チャイコフスキー記念東京バレエ団)
〇8月5日(水)※橋本尚美《オデット》/柴田実樹《オディール》/芳賀望《ジークフリート王子》
〇8月6日(木)※川口ゆり子《オデット》/土田明日香《オディール》/橋本直樹《ジークフリート王子》
〇8月7日(金)小野絢子《オデット・オディール》/福岡雄大《ジークフリート王子(新国立劇場バレエ団)
〇8月8日(土)松村里沙《オデット》/川口まり《オディール》/江本拓《ジークフリート王子
バレエ・シャンブルウエスト
■公式サイト:https://www.fieldballet.com/
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