世界を騒がせるミステリアスなアーティスト、バンクシーについて知りたい! 『バンクシー展』開催中
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『バンクシー展 天才か反逆者か』展示風景
作品を発表するたびにさまざまな話題を巻き起こすアーティスト、バンクシー。世界中がコロナウイルスの影響下にある昨今も積極的に作品を更新しており、多数の作品をInstagramに上げ、数万ものコメントが寄せられている。そんなバンクシー作品を紹介する横浜・アソビルの大規模展『バンクシー展 天才か反逆者か』は3月15日に開幕。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から同月28日より臨時休業していたが、この度5月30日より再開し、多くのファンを喜ばせている。
『バンクシー展 天才か反逆者か』展示風景
バンクシーとは何者か?
多彩な活動と根底を貫くグラフィティ
バンクシーは遊園地《Dismaland(ディズマランド)》の演出、映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』の映画監督、イスラエルとパレスチナ地区を分離する防壁に面した《THE WALLED OFF HOTEL(世界一眺めの悪いホテル)》の開業など、実に多彩な活動をしている。美術館へゲリラ的に作品を残すような実験的な試みを行うなど、さまざまなプロジェクトを仕掛けているが、彼の幅広いキャリアの根底にあり、最も広く人に知られているのはやはり、ステンシルを使ったブラックユーモアあふれるグラフィティだろう。
『バンクシー展 天才か反逆者か』《Dismaland》展示風景
『バンクシー展 天才か反逆者か』《THE WALLED OFF HOTEL》展示風景
『バンクシー展 天才か反逆者か』《THE WALLED OFF HOTEL》展示風景
ライティング、ストリートアートなどさまざまな呼称があるグラフィティは、“ストリート”の名から分かるように、壁や掲示板、橋梁や公園、ときには建物や電車など、公共の場をキャンバスにして描かれた絵や文字、もしくはそれらを描く行為や文化を指す。描く手段はスプレーやペンのほか、バンクシーのようなステンシルなど多岐にわたり、文字や線だけに見えるような単純なものから巨大で複雑な絵まで、多種多様な作品がある。グラフィティは多くの場合無許可で行われるため、行為自体が違法とみなされる。そんなこともあって、グラフィティのアーティストは顔を出さず、本人について分かることは少ないというのがほとんど。バンクシーも匿名で活動しているうちの一人である。
『バンクシー展 天才か反逆者か』「アーティスト・スタジオ」展示風景
『バンクシー展 天才か反逆者か』展示風景
バンクシーは新型コロナウイルス流行中の5月、少年が看護師の人形を手にして遊んでいる《Game Changer》を発表。また、Black Lives Matter運動が広がる6月、黒い影の遺影のようなものとその上には星条旗、そして星条旗に炎が燃え移っていくロウソクが描かれた作品をSNSに投稿した。この件はメディアでも報道され、それによって「バンクシーって何者なの?」と興味を持った人も少なくないだろう。
強烈なインパクトを持つバンクシー作品
クールでホットな絵が放つ魅力
バンクシーの絵はキャッチーだ。例えばハート型の風船に手を伸ばす少女が描かれた《GIRL WITH BALLOON》や覆面男性と花束のギャップが衝撃的な《LOVE IS IN THE AIR》、プラカードを持ったネズミのシリーズなど、バンクシーのアイコンともいえる作品はいずれもスタイリッシュである。少女やネズミなどのキャラクターは愛らしく、花束のようなモチーフはどこか詩的で、そこに覆面男性が組み合わされるとギャップが生まれて目をひく。テーマや背景、メッセージ性が分からなくても強烈なインパクトがあり、記憶に残る。
『バンクシー展 天才か反逆者か』展示風景
『バンクシー展 天才か反逆者か』展示風景
グラフィティの場合は製作に時間をかけられないこともあってか、型紙を使ったステンシルで描かれており、シンプルで共有や判別がしやすい。“街なかに突如現れる”というグラフィティの特性上、年齢や国籍も不問で不特定多数の人に見られるが、その背景を深く知らない子どもや世界情勢に詳しくない人でも「何が描かれているか」は理解できる。その場では作品が出現した(投稿された)背景を知らなかったとしても、人々がさまざまな経験や情報を得た後にきっと、バンクシーの絵が持つ意味を理解するだろう。また、バンクシーの作品を入り口にして、その作品にて風刺しているメッセージを知りたいと、作品が訴える問題や社会情勢などといった背景を調べる人も多いのではないだろうか。
『バンクシー展 天才か反逆者か』展示風景
バンクシーの作品は世界中に存在し、あらゆる人に開かれており、絵を見た時点ですべてが分からなくても後で理解できる可能性がある。見た人の感性を刺激し、もっと知りたいとする気持ちを強めるのだ。その意味でバンクシー作品は“クールでホットな作品”であるといえよう。
新型コロナウイルス感染症対策を施し、
安心できる環境でスリリングな展示を楽しむ
世界中が注目するバンクシー作品だが、彼の絵の多くは公共の領域に描かれるため、消されてしまい残っていないことも多い。しかし横浜・アソビルの『バンクシー展 天才か反逆者か』は、ポスターや映像、インスタレーションや、スクリーン・プリントなどを数多く展示している。バンクシーの息遣いを感じられる作品を鑑賞し、彼のキャリアをまとめて知ることができるこの機会は貴重だ。会場は換気と消毒液の設置や消毒清掃がなされ、スタッフは体調管理・マスクの着用を徹底、展示室内もソーシャルディスタンスが守られるための工夫が凝らされており、安心して鑑賞できる。また、入場は完全事前予約制となっており、オフィシャルサイトから日時指定の
『バンクシー展 天才か反逆者か』展示風景
本展は、スマートフォンに指定のアプリをダウンロードすることで音声ガイドを無料で聴くことが可能なのも、衛生面でもうれしい点の一つである(イヤフォン等はご自身でご用意を)。また、公式SNSではこれまで不定期にバンクシー作品を紹介してきており、音声ガイドと併せれば、会場にいなくても作品について学習できるようになっている。自宅で予習をした上で来場すれば、バンクシーの反骨精神あふれるスリリングな作品を、厳重に守られた環境でたっぷり堪能できるだろう。
文=中野昭子、写真=オフィシャル提供
イベント情報
期 間:2020年3月15日(日)~9月27日(日)
※3月28日(土)~5月29日(金)まで新型コロナウイルス感染症拡大防止策として休業、5月30日(土)より再開
会 場:アソビル(神奈川県横浜市西区高島2‐14‐9 アソビル2F)
主 催:BANKSY~GENIUS OR VANDAL?~製作委員会
企画製作:IQ ART MANAGEMENT CORP
オフィシャルホームページ:https://banksyexhibition.jp/
イギリスを拠点に活動する匿名の芸術家。世界中のストリート、壁、橋などを舞台に神出鬼没に活動している。アート・ワールドにおいてバンクシーは、社会問題に根ざした批評的な作品を手がけるアーティストとして評価されている他、テーマパーク、宿泊施設、映画の制作など、その活動は多岐にわたる。バンクシーの代表的な活動スタイルであるステンシル(型版)を使用した独特なグラフィティと、それに添えられるエピグラムは風刺的でダークユーモアに溢れている。その作風は、芸術家と音楽家のコラボレーションが活発なイギリス西部の港湾都市ブリストルのアンダーグラウンド・シーンで育まれた。