みんなのシリーズ第5弾『能でよむ~漱石と八雲~』を配信にて開催、、7/26にはスペシャルトークも

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2020.7.23
「みんなのシリーズ」第5弾『能でよむ~漱石と八雲~』(あうるすぽっと)

「みんなのシリーズ」第5弾『能でよむ~漱石と八雲~』(あうるすぽっと)


昨年2019年の秋、「みんなのシリーズ」として上演された『能でよむ~漱石と八雲~』が、さらにパワーアップして帰ってくる。ただし、今回は新型コロナウイルス感染防止のため「オンライン配信」だ。〈おうちで見よう! あうるすぽっと2020夏〉として、動画配信プロジェクトになった。

■異なる芸能から集まった3人の達人

 能楽師の安田登、浪曲師の玉川奈々福、そして、琵琶奏者の塩高和之。

 日頃は異なる芸能で活躍している3人が、異種格闘技戦のように一堂に会して、文学作品の舞台化を試みる。

 能の謡、浪曲師の語り、琵琶の音色──それぞれの分野の第一人者による競演である。

 どれもが聴覚に強く訴えるだけでなく、心の奥まで染み渡る芸能をぜひ感じとっていただきたい。
 

■夏休みにふさわしいお話3作

 上演されるのは、昨秋と同様、夏目漱石の小説2作からの抜粋と小泉八雲の怪談である。

 今回は夏目漱石の『夢十夜』から「第一夜」、『吾輩は猫である』の第5章から「鼠(ねずみ)の段」、そして、小泉八雲の『破られた約束』と続く。

 まず、『夢十夜』の「第一夜」は、「『夢十夜』の中でも最も美しく幻想的な作品だ」と安田は語る。

 『夢十夜』は、「第一夜」は前回上演された「第三夜」と同様に、「こんな夢を見た」という一文で始まる。そして、「第一夜」は、男の前で仰向けに寝ていた女が、いきなり静かな声で「もう死にます」と告げる。すさまじい無茶ぶりがきわだつ、不思議で、幻想的なお話だ。そう告げられた男はその後どうしたのか、とても気になる設定だ。

 夏目漱石の『吾輩は猫である』の第5章「鼠の段」は、猫による鼠捕りを描いた場面である。

 鼠捕りについては「かくまでに元気旺盛な吾輩の事であるから鼠の一疋や二疋はとろうとする意志さえあれば、寝ていても訳なく捕れる」と豪語する猫だが、実際にはどうだったのか。猫が鼠を捕ろうと大奮闘するようすを、ぜひ確かめてもらいたい。

 なお、小説中では、猫が鼠を捕ることを「鼠と戦争する」と表現しているが、当時、日本がロシアのバルチック艦隊と戦っていたことともイメージを重ねて描かれている。

 小泉八雲の怪談「破られた約束」は、安田によると「もっとも怖い」と断定されている。古今東西の怖いを熟知している安田の発言は重い。続けて「小泉八雲の『怪談』は怪異な話という意味で怖い話ではないのですが、これは怖いです」と語る。

 どれも暑い夏の夜に聴くのに、ふさわしい話ばかりではないだろうか。

前回公演『能でよむ~漱石と八雲~』(あうるすぽっと)左から、安田登、塩高和之、玉川奈々福。 撮影/山本未紗子(BrightEN photo)

前回公演『能でよむ~漱石と八雲~』(あうるすぽっと)左から、安田登、塩高和之、玉川奈々福。 撮影/山本未紗子(BrightEN photo)


 

■ふたつの声と三味線・琵琶の音色で紡ぐ「語り」の世界

 そんなお話を、能楽師の安田が「能のメソッド(方法)を使って、能の視点で考える」ことで新たな作品を生みだす試みが「能でよむ」である。

 3つの文学作品を「能」をキーワードに読み解いていく。

 そのとき、能楽師・安田登と、浪曲師・玉川奈々福の鍛え抜かれた喉から発せられる声にふれてほしい。

 長年の稽古を重ねることによってのみ到達しうる声の芸を、思うぞんぶん楽しんでいただきたい。

 さらに琵琶奏者としての塩高和之の演奏が加わる。

 安田によれば「琵琶は本来、霊を招くことができる楽器」だという。

 『能でよむ~漱石と八雲~』は、鍛え抜かれた声のよる「語り」と、琵琶の演奏という贅沢なコラボレーションだ。

 「語り」の節回しを音楽だと考えれば、三重奏ともいえる試みである。物語を「声」で立ちあげ、「琵琶」を用いて霊を招き、さまざまな仕掛けを用いて、幾重にもよみがえらせていく。
 

■スペシャルトークの開催

 上演を記念して、7月26日(日)午後5時から、ゲストにクリエーターのいとうせいこうを招いて、安田登と木ノ下裕一が鼎談するのも楽しみだ。

 いとうは現在、月刊文芸誌『新潮』で、ジェイ・ルービンと「能十番 日英現代語訳」を連載中であり、謡曲についても造詣が深い。わが国最初のラッパーでもあり、下掛宝生流の演者でもある。

  安田は昨年5月、Eテレの〈100分de名著〉『平家物語』でも名講義を披露していたが、能楽師に加えて、甲骨文字と中国古代哲学にも詳しく、「論語」を学ぶ寺子屋も開催している。わたしも寺子屋へは何度か参加させていただいた。

 そして、木ノ下歌舞伎を主宰する歌舞伎のスペシャリスト・木ノ下裕一を加えた3人によるスペシャルトークは、『能でよむ~漱石と八雲』の魅力を余すところなく語ると同時に、能や歌舞伎などの古典の持つ現代性、その可能性についても語られることを期待している。

配信情報

おうちで見よう!あうるすぽっと2020夏 みんなのシリーズ第五弾
『能でよむ~漱石と八雲~』
 
<リーディング公演/オンライン配信>
■公演配信日:2020年8月18日(火)~ 9月22日(火・祝)
■配信サイト:「あうるすぽっとチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCq6dUXTYor7oEEgwXcS7QRQ
■出演:安田登、玉川奈々福、塩高和之
■聞き手:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)
※配信元の会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術センター)

<スペシャルトークライブ配信>
■配信日:2020年7月26日(日)17:00(予定)
■配信サイト:「あうるすぽっとチャンネル」
https://youtu.be/6oOzBn1-pLY
■出演:安田登、木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)、いとうせいこう
※配信元の会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術センター)

 
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