山崎育三郎「絶対明るい未来が待っているから」 “楽しさと感動の宝庫”となった生配信ライブをレポート
山崎育三郎
山崎育三郎 Special Live “YOU & I” 〜ねぇ、僕だよ?みんなのプリンス~
2020.7.18 “ソワレ”
多くのコンサートやミュージカル、ディナーショー、ファンイベントが見送られるなど、コロナ禍で苦境に立たされているエンターテインメント業界。それでも、どうにか歌を届けようと立ち上がったのが、山崎育三郎だ。『山崎育三郎 Special Live “YOU & I” 〜ねぇ、僕だよ?みんなのプリンス~』と題し、昼公演の“マチネ”、夜公演の“ソワレ”の二部制で、7月18日に行った配信ライブ。それは、出演ミュージカルやドラマ、ディズニー作品のナンバー、オリジナル曲まで、俳優、声優、歌手として幅広く活動する彼ならではの構成で、画面越しであっても楽しさと感動の宝庫だった。ここでは、“ソワレ”の模様をお伝えする。
“マチネ”では黒いタキシード姿だった山崎は、“ソワレ”には白のスーツで登場。「みなさんこんばんは!」と爽やかな笑顔で挨拶し、1曲目はミュージカルの幕開けを思わせるオリジナルナンバー「I LAND」だ。グランドピアノとヴァイオリンの生演奏に映える、伸びやかで豊かな歌声。“Hocus Pocus”というおまじないのフレーズにもワクワクして、日常を忘れて夢のような世界に浸れる“I LAND=育三郎ランド”に、たちまち誘われてしまう。
山崎育三郎
ピアニスト・宗本康兵、ヴァイオリニスト・真部裕と和やかなトークもしつつ、佐藤久志を演じているNHK連続テレビ小説『エール』や、8月からスタートするドラマ『私たちはどうかしている』を撮影している近況を報告。その流れからの「船頭可愛いや」「丘を越えて」「ふるさと」からなる“久志メドレー”には、ドラマの名場面を重ねた人も多かったのではないだろうか。中でも、彼が「一生の宝」と言う「ふるさと」のアカペラパートは、心震わせるものだった。
一転、ステージからアンティークな雰囲気のソファ席へと移動するときには、演奏に合わせて軽やかなステップを踏みながら、「いつまでも踊れる」といい笑顔。また、タブレットを自ら操作してキラキラ音や射撃音で自由奔放に遊んだり、彼の即興力には舌を巻いてしまう。
山崎育三郎
配信視聴者からその場でリクエストを募り、披露したのは“マチネ”では歌わなかったディズニーソング。『塔の上のラプンツェル』の「輝く未来」に、『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」、さらには実写映画の吹き替え版で声優を務めた『美女と野獣』の「美女と野獣」。彼自身のディズニー作品とその音楽への愛が満ちた、女性パートを奏でるヴァイオリンとのデュエットは、あまりにもドリーミーでロマンティックだ。
「次はみんなで一緒に歌おうよ!」という山崎の呼びかけで急遽歌うことになったのは、『エ―ル』の主題歌でもある「星影のエール」。歌いながら耳に手を当てる彼の素振りにもつられて、画面の向こうでもきっとそれぞれに口ずさんでいただろう。「こういう状況だけに、早くみんなで笑顔になれるといいな、という願いを込めて歌います」と前置きしたのは、「春よ、来い」。あふれ出す叙情に加え、途中からは美しい桜の映像を背に歌うというドラマティックな演出も、深い余韻を残した。
できたばかりの特製野球ユニフォームに着替えての“いっくんスタジアム”コーナーでは、ファンクラブ会員全員に直筆サインを届けることを約束。また、10月3日と4日には、ヒューリックホール東京にてファンクラブイベントを開催することも発表。どんな状況でもファンを想い、ファンのためになにができるかを考えてくれるのが、山崎育三郎だ。
山崎育三郎
ブルーとブラックの千鳥格子を配したロングジャケットをまとってバーカウンターに座ると、ミュージカルナンバーのコーナーへ。大人になってからのミュージカル出演作品となった『レ・ミゼラブル』の「カフェ・ソング」では、彼自身の大切な“友”を重ねてもいたのだろうか、彼の瞳から涙がこぼれる場面も。
「もう1曲、僕の大事なミュージカルナンバーをお届けします。客席が見えなくなる瞬間を経験した作品のナンバーです」という言葉が導いたのは、『ミス・サイゴン』の「SUN AND MOON」。その圧倒的な歌力に、瞬きすることさえ忘れてしまった。
「配信ライブは初めてだったけど、これも好きですね。みんなが観てくれているのがわかるし、一緒にライブしている感があって楽しかった!」
素敵な笑顔を見せて、『美女と野獣』の「ひそかな夢 EVERMORE」へ。切なさをたたえた歌声は胸を締めつけ、ラストのロングトーンは圧巻。やはり、彼は歌うため、表現するために生まれてきた人だ。
山崎育三郎
ステージを去ってしまうのかと思いきや、おもむろにジャケットを脱ぎ、またまたタブレットを自分で操作して、2020年1月から2月にかけて開催したライブツアー『山崎育三郎 LIVE TOUR 2020 MIRROR BALL』のときに収録した、オーディエンス一丸となっての“いっくん”コールを流す山崎。ナイスアイデア!
アンコールを受けて届けてくれたのは、彼を支える人々への愛と感謝を綴った楽曲「Wonderland」だ。<ずっと繋いだ この手は離さない><変わらぬ愛をいつも送るよ>というフレーズが、いつにも増して頼もしく感じて、救われたようにも思えたのは筆者だけではあるまい。
山崎育三郎
「まだまだ大変な状況が続くと思いますが、みんなでつながって乗り越えていけば、絶対明るい未来が待っているから。諦めずに、みんなで幸せになろう。なにかあったら相談してほしい、抱え込まないで」
そう言いながら、涙をこらえきれなくなってしまった山崎。
「生きているといろんなことがあるけど、絶対に乗り越えていけると思うし、ひとりじゃないということを忘れないでください。再会できることを楽しみにしています!」
最後には眩しいプリンススマイルを見せてくれた、心優しく、多才で多彩なエンターテイナー。彼の歌と言葉は、出口の見えない暗闇を照らす希望の灯火だ。
文=杉江優花 撮影=大橋祐希