岩井俊二、のん、羽海野チカらが大林宣彦監督に寄せた言葉とは 『海辺の映画館—キネマの玉手箱』俳優・映画監督ら10名がコメント
(C)2020「海辺の映画館—キネマの玉手箱」製作委員会/PSC
7月31日(金)公開の『海辺の映画館—キネマの玉手箱』を鑑賞した映画監督、俳優らのコメントが到着した。
『海辺の映画館—キネマの玉手箱』は、大林宣彦監督の劇場公開映画第44作目。『あの、夏の日』以来20年ぶりに尾道で撮り上げたファンタジー作品だ。大林監督は、当初の公開予定日だった4月10日に82歳で亡くなっている。大林監督が本作で描いたのは、スクリーンの中の戦争の時代にタイムスリップした若者たちの物語。日本の戦争史をたどりながら、無声映画、トーキー、アクション、ミュージカルと様々な映画表現で、さまざまな映画表現を展開していくという。
今回本作にコメントを寄せたのは、作品を鑑賞した映画監督や俳優、評論家ら10名。五十音順のコメント全文は以下のとおり。
井口 昇(映画監督)
始まった瞬間から傑作の予感と鳥肌が立ち、それが1秒も変わらず3時間続く映画体験は生涯初めてでした。
余命を宣告された監督が撮ったと信じられない、この凄まじいパワーと若々しさは何なのだろう。
あらゆる感想も、「大傑作!」という賞賛さえ陳腐に感じるほど、大林宣彦監督の細胞から暴れ出た映画的才気と創作の執念と戦争への怒りの凄絶さに、ただただ打ちのめされました。
大林宣彦監督は亡くなったのではない。この映画そのものになって、辛い現実と立ち向かう現在の観客の心にスクリーンから光を与えてくださるのだと僕は本気で思います。
だからこそ、今こそ、映画舘で大林監督に逢いにいこう!!
岩井俊二
まるで大林宣彦監督の脳内を直接見ているような表現世界。
それはどこか昨日見た夢のようでもあり、明日見るかも知れない夢のようでもあり。
この“ひとつの映画”がこの現世をどう照らすだろう。
羽海野チカ(漫画家)
繰り返される時間たちが岩だらけの入江の
蒼い海の底に沈んだ
カラフルなブリキの宝石箱のよう
もっと思い切り生きていいんだよと
宝石箱たちが一斉に喋り出したような気がして
映画の中に吸い込まれました
笠井信輔(フリーアナウンサー)
映像作家を刺激する自由で大胆な映像構成、リフレインと挿入の魔術師といった大林監督の晩年の輝きはいっそう増している。なんといっても物語が分かりやすく、ぜひとも若い人たちに驚いてもらいたい。
角川春樹(角川春樹事務所 代表取締役社長・俳人・映画監督)
彼こそがキネマの玉手箱。
青春映画から反戦映画まで何が飛び出すかわからない。
最後まで映画監督として生き切った大林宣彦監督の幸せな人生がうらやましくもある。
園子温(映画監督)
映画史に残る最高傑作かつ最高遺作だ。
のん(女優、創作あーちすと)
生きている時間ギリギリまで使って、映画を撮り続けたことに感動します。
時空も次元も渡り歩いて映画を旅する3人が、観客じゃなく当事者になった瞬間に、この『海辺の映画館』を観ている私も観客ではないんだ、と突きつけられた気がしました。
樋口尚文(映画評論家・映画監督)
反戦と放蕩、近代史と極私的記憶、真摯なるメッセージと豊饒なる映画の詩。
あらゆるものがアナーキーな自由さのもとで結い合わされ、沸騰する奇想の大河。
これは大林監督一世一代のウソとマコトの饗宴!
町山智浩(映画評論家)
今、これを言っておかなければ!」という切迫感と共に時代への怒りと映画への愛が怒涛のごとく奔出する!
松本紀子(ドワーフ プロデューサー)
なんと挑戦的な作品!この作品を生み出す監督のエネルギーに圧倒されました。
映画への情熱はそのままで、でも新しい大林監督にここでまた出会うことになるなんて!
そして、しんしんと観客の上に降り積もるメッセージ。
それを丁寧に受け止めるのが、せめてもの私の使命だと思います。
映画『海辺の映画館—キネマの玉手箱』は、7月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国公開。