磯貝サイモンが提案する新しくユニークな配信ライブの形、配信時代だからこそのクリエイティビティの追求

シンガーソングライター・磯貝サイモンが、この夏、新しくユニークな配信ライブの形を提案している。『磯貝サイモンONLINE TOUR「welcome to my SUMMER PARTY!!2020～ダーツで行く!機長の気まぐれフライト」』と題した、7月26日から8月29日まで6回にわたり、毎週末に配信中の生配信ライブ。例年行っているサマーツアーが今年はできない、だったら違うやり方で、配信時代だからこそのクリエイティビティを追求できないか？ そんな発想から始まったこのプロジェクト、早速その様子をチェックしてみよう。

磯貝サイモンといえば、デビュー14年のシンガーソングライターであり、バンド活動、ゆずやflumpoolなどのライブサポート、嵐やJUJUなど数多くの楽曲提供と、マルチロールな才能を発揮するアーティスト。今回の配信ライブはその多才ぶりにさらに磨きをかけ、プライベートスタジオ“hitoride studio”を舞台に、歌、演奏、カメラ、照明、映像を一人でコントロールしている。百聞は一見に如かずだが、見逃した方のために、過去2回の配信をざっくりと振り返ってみると……。

ビリー・ジョエル、カーペンターズなど名盤ジャケットがさりげなく飾られた、居心地よさそうなスタジオ。室内には、アコースティックギターと電子ピアノの名器・ウーリッツアー。それを交互に弾きながらライブは進むが、8台のカメラ(すべてiPhone)を駆使したカメラワーク、曲ごとに変わる照明、背後のスクリーンに映る映像や歌詞とのリンクなど、すべてを自身の手元でスイッチング。普通なら何人もスタッフが必要なことを、たった一人でやってのける演出が秀逸だ。DIYの楽しさと親密さを味わわせてくれる、さすがはマルチロール・アーティスト。飾りのないおしゃべりも絶好調で、サイモンの部屋に招かれているような気がしてくる。

初日は「栃木かんぴょうエアポート」から、2回目は「愛媛かんきつエアポート」からお届け。それって何？というと、“ONLINE TOUR”と銘打った今回のライブには、別番組の楽天ライブ『磯貝サイモンの室内飛行』と連動して、日本地図にダーツを投げて「公演場所」を決め、その土地の名物を織り込み、飛行場にちなんだ名前を付けるという設定があるから。ちなみにサイモンはワサビ入りかんぴょう巻きが好物で、すし屋で注文すると「ツウだね」と言われるらしい。そんな豆知識も手に入る、なんともリラックスした楽しい空間。ライブ中盤には、サイモンが誰も真似できない画伯ぶりを発揮する「お絵描きコーナー」もある。そのヘタ…いや、独創性は実際に見てもらうことをお勧めする。

そんな遊びもたっぷり盛り込みつつ、歌はもちろん本気度100％だ。「welcome to my party」「重々承知のハイジャンプ」「CRAZY FOR YOU」など、アッパーな盛り上げチューンは爽やかなスピード感たっぷりに。「ほくろときみのラブストーリー」「ありんこみたいに生きていこう」など、聴かせる歌は思い入れいっぱいに。ビートを刻むシーケンサー、ハモリを生み出すハーモナイザーマシンなど、多彩なエフェクトを駆使するサウンドは、シンプルな弾き語りとは一味違う華やかさにあふれている。セットリストは毎回変わるので、懐かしい曲や未CD化曲などもどんどん飛び出し、あっという間に時間が過ぎてゆく。

放送予定時間は2時間と書いてあるが、毎回大幅に超過しているのは、歌うのが楽しくて仕方ないサイモンと、リアルタイムのメッセージをくれるファンの熱い思いが支えあっているから。配信ライブ終了後には、楽天ライブ『磯貝サイモンの室内飛行』にて“オンラインアフターパーティー”も毎回行われている。配信ライブは有料だがこちらは無料、一仕事終えたサイモンのさらにリラックスしたフリートークが聴ける、どちらもセットで楽しめるという仕掛けだ。

ギター、ピアノ、ベース、コーラスと、いくつもの楽器を操る磯貝サイモンのプレイヤビリティの高さは、様々なサポートライブですでにおなじみの人も多いだろう。それに加えてこの『磯貝サイモンONLINE TOUR「welcome to my SUMMER PARTY!!2020～ダーツで行く!機長の気まぐれフライト」』では、爽やかな声、キャッチーなメロディ、甘いラブソング、骨太なメッセージを生み出すシンガーソングライターとしての輝きが、いつでもどこでも楽しめる。SPICEではこのあと、8月末まで続く“ツアー”に密着して様々な形でレポートを発信していくことになった。準備はOK、素晴らしい時間を約束する、磯貝サイモンの気まぐれフライトへぜひ同乗してほしい。

文＝宮本英夫