内田理央が中毒性高めなナンセンスコメディに挑む~舞台『星の数ほど星に願いを』開幕
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舞台『星の数ほど星に願いを』(C)引地信彦
2020年8月27日(木)、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて、舞台『星の数ほど星に願いを』が初日の幕を開けた。本作は日本が誇るナンセンス演劇の鬼才・ブルー&スカイが作・演出を手掛け、雑誌「MORE」の専属モデルをはじめTVドラマや映画などで活躍する内田理央が主演を務める注目作だ。
物語の舞台となるのは町工場・高見沢製作所。
かつては、河原で拾ってきた石ころを「どんな願いも叶う神秘の石」としてインチキ占い師たちに売りつけることにより財をなしていた工場なのだが、悪質な霊感商法の評判もすっかり広まり、インチキ占い師も激減、銀行からの融資も絶え、資金繰りに窮する毎日。
そんな中、銀行から融資の回収の命を受けて高見沢製作所にやってくる銀行員のナナ(内田理央)。彼女は工場の看板商品「神秘の石」が本当に「どんな願いも叶う力」を持てば工場の業績が回復するだろうから、がんばって石の品質を向上してほしいと無茶苦茶な要求を突きつける。
工場の誰一人として石の力などもともと信じていない中、ナナの作戦は功を奏するのか……。
舞台『星の数ほど星に願いを』(C)引地信彦
開幕前の会場BGMはディズニー映画『ピノキオ』の主題歌でもある「星に願いを」。ジャズ、ビックバンド、ラテンなどなど様々なバージョンが流れ、心地よさを醸し出す(その心地よさと本編の内容は真逆にも程があるのだが)。
舞台開幕前にブルー&スカイが一人、舞台に登場し、「今回の舞台はキャスト全員がこういったもの(フェイスシールド)を付けています。芝居上不自然ですし、光を反射しますので見づらいかも……」と説明をした上で、フェイスシールドの存在に慣れてもらうため「一人芝居を始めます」といきなりの寸劇を披露。たった1~2分程度の話だったが、ブルー&スカイならではのナンセンスコメディの一端が既に見えており、客席から笑い声と拍手が響いていた。
町工場の作業場をメインの舞台にし、時々バーの一室に変化するセット。そのなかで起きる出来事は、どこか池井戸潤の臭いを漂わせつつ、基本的には上記の「あらすじ」の通りなのだが、キャスト同士が話す内容が常にあらぬ方向に脱線・展開し、その想像の斜め上を行く脱線ぶりがおかしくて何度となく笑いを誘う。ブルー&スカイのカリスマがこれでもかと迸る、まさにナンセンスコメディの「極北」と言える内容となっていた。
舞台『星の数ほど星に願いを』(C)引地信彦
主演の内田は、冷酷な銀行員、実はいい人、おバカキャラなどを自在に演じ分け、芝居経験が少ないとは思えないくらい堂々とステージに立っていた。“いい意味で”、群像劇の1ピースとしてフットワークも軽やかに、物語を描いていた。
舞台『星の数ほど星に願いを』(C)引地信彦
内田、そして他の、クセの強いキャストたち(田村健太郎 安澤千草 吉増裕士 師岡広明 水野小論 神谷圭介・大堀こういち)が、あれやこれやと本筋とは異なる話題を振ってはちっとも回収しないため(笑)、この物語のラストは果たしてどうなるのかとニヤニヤさせられっぱなしの2時間弱の舞台。ラストまでたどり着くと、ああ、あれが本筋だったのか? でも違うかも……と頭の中がモヤモヤとなり、また最初から観返したくなる、実に中毒性高めな芝居だった。
舞台『星の数ほど星に願いを』(C)引地信彦
取材・文=こむらさき
公演情報
内田理央 田村健太郎 安澤千草 吉増裕士 師岡広明 水野小論 神谷圭介 ・ 大堀こういち
会場内ではマスクの着用を必須とさせていただきます。必ずご持参ください。
■公式サイト:https://www.hoshinokazu.com/