より気軽にライヴを楽しむ新シリーズ「リビコン」誕生! 細川千尋&三浦一馬にインタビュー
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MUSISION presentsリビコン「細川千尋トリオ」
「芸術は死なない……エンタメを止めるな!」――をコンセプトに、6月からはじまった【Streaming +】LIVING ROOM CONCERT(ストリーミングプラス リビングルームコンサート)。
有料配信コンサートは数あれど、人気・実力を兼ね備えたミュージシャンたちのエキサイティング極まる演奏を、日本コロムビアとテレビマンユニオンがタッグを組んだ自慢の高音質・高画質、そしてテレビ収録のような優れたカメラワークで楽しめるのが、リビングルームコンサートならではの魅力。自宅にいながらにして、ここまでハイレベルなライヴを体験出来るのかと、初めてご覧いただく方ほど驚かれるはずだ。
9/27(日)「細川千尋トリオ」、10/4(日)「三浦一馬キンテート」
この「リビングルームコンサート」シリーズに、9月末からは「リビコン」という、より気軽に楽しめる新しいシリーズが加わる。配信
三浦:6月に出演した時はリアルタイムでの配信だったんですけれど、確認させてもらったら、とてもリアルタイムとは思えないぐらいの音と映像で驚きました。でも、だからこそ演奏する身としてはすごい緊張感だったんですけど(笑)。
いただいた感想から分かったことは、配信という形ではあっても普段からコンサートに足を運んでくださる方々が
細川:配信だとラフな楽しみ方も出来るのがいいですよね。最初の1回目とかはちゃんと観て、その後アーカイヴが残っている期間内にはBGMとして聴いたり、コンサートとは違った感じで楽しめたりするのがいいね!……って母が言っていました(笑)。見る側としては、演奏者の手元なんかをアップで見られるのはレアな気がしてとても嬉しかったです!
――まさに、配信コンサートを120%楽しむために大事となるのが「配信期間中は見放題」という部分ですよね。1度きりの「ライヴに行く」のと、半永久的に見返せる「ライヴDVDを買う」の間に位置するのが、配信コンサートじゃないでしょうか。何度も見返せるけど、期間限定だからこそより真剣に観てしまう……。そう考えてみると、日々の情報量の多い現代にぴったりの音楽の楽しみ方であるようにも思います。
三浦:確かにそうかもしれないですね。「リビコン」は60分のライヴを、24時間という期間限定で配信するからこそ、集中してライヴを聴いていただけるのかもしれません。
リビコン9月27日(日)細川千尋トリオ予告編①
――新シリーズ「リビコン」は、第1弾として9月27日に細川さんのトリオによるライヴが配信されます。8月に前もって収録されているので、今回事前に聴かせていただいたのですが、ちょっと本当にビックリしましたよ! これまでも細川さんのライヴは生で何回か観ているのですが、ホールやライヴハウスのイマイチな席で聴くよりもトリオひとりひとりの音が生々しくて、3人がどのようなコンビネーションで演奏しているかが、隅々までハッキリ分かるんですから!
細川:私もアーカイブを確認して、音の鮮明さにびっくりしました。コロムビアチームの皆様のお陰ですね。
――たとえば、ドラムのセバスティアン・カプテインさんの歌心あふれるプレイが際立ち、細川さんのピアノと一緒に歌っているのが、今回の配信映像だとハッキリ伝わってきました。
細川:セバスティアンはもともと最初、チェロをやってたそうなんですね。しかも家族は彼以外みんなクラシックの人なんだそうです。なので、とてもクラシック的な感覚をもっていて、初めて音を出した時から自然にフィーリングが合いました。とにかく耳とセンスが良いんです。インテリジェンスのあるクールなプレイで、3人全体のバランスを締めてくれる大切な存在ですね。
MUSISION presentsリビコン「細川千尋トリオ」
MUSISION presentsリビコン「細川千尋トリオ」
――残響の多いホールだと聴き取るのが難しい、ベースの井上陽介さんのテクニカルなプレイも、細部まで聴こえるので、より井上さんのただならぬパフォーマンスが際立ちます(笑)。
細川:(演奏が)超絶技巧ですからね(笑)。収録日の前日がトリオとしては久々の公演だったんですよ。でも真夏だし、陽介さんは過密スケジュールだし……という状況だったんですけど、とにかく本番の演奏がすごすぎて、すごい(笑)としか言いようのない演奏で! どんな時でもベストを更新していく方だなと改めて感じました。
――そもそも、パフォーマンス自体がいつも以上に爆発していたということもあるんですね! そして60分の公演の締めくくりにはアンコールも準備されているんですけど、これは絶対に見逃せない内容です(笑)。
細川:楽しみにしていてください!
リビコン9月27日(日)細川千尋トリオ|本人コメント
――そして翌週、10月4日には三浦さんが人生を賭して取り組まれているピアソラの名曲を、ピアソラの後期と同じキンテート(五重奏)で披露されます。このメンバーで演奏するようになって、結構長いですよね?
三浦:確か、2011年の紀尾井ホールでは、このメンバーで演奏しているので、最低でも9年はやっていますね。
――タンゴの革命児と称されるピアソラの土台には、よく知られているようにクラシック音楽の要素があり、クラシックのミュージシャンも普通にレパートリーにしている作曲家です。ところが三浦さんのように継続的にオリジナルの編成でやっている例は、少なくとも日本で他にいませんよね。
三浦:僕にとってピアソラの後期五重奏団は、どうしたらこんなことが出来るんだって思えて仕方ないほど、未だに酔いしれちゃってしょうがない存在なんです。自分が到達できるかどうかはともかく、追い続けていきたいと思っています。
ただ、もちろん一字一句そのままなぞるのではなく、自分が弾くからにはフィルターを通して現代にアップデートしたものが出来ないかっていつも模索しています。それを叶えさせてくれるのが、この素晴らしいメンバーの方々なんです。
MUSISION presents[リビコン]「三浦一馬キンテート」本人コメント
――現代にアップデートといっても、この五重奏団で独自の大胆アレンジをしたり……というわけじゃないですよね。あくまでもピアソラのオリジナルを尊重している。アップデートというのは、どのような形でおこなわれているのでしょう?
三浦:楽譜に書ききれないようなところ、ちょっと口では説明のつかない、阿吽の呼吸じゃないと話が通じないところがやっぱりあるんですよ。でも時間を経るにつれ、そういう互いの意思疎通が目配せひとつでやれるようになったりする。その上で、オリジナルとは違うんだけど、こんな風にやるのはどうだろう?……っていうアイデアがメンバーからいっぱい出てくるんです。ツアーで全国まわっている途中の打ち上げの席で、そんなひらめきが起こったりしました。それはやっぱり年月を重ねたお陰ですよね。
――阿吽の呼吸でやれるぐらいにピアソラのオリジナルを深く体得した上だからこそ、そうした変更も突飛なものにならず、ピアソラの音楽から実直に新たな可能性を生み出すことになるんでしょうね……。実に深いお話です。
三浦:核となるピアソラの音楽と、表現するものは今後も変わりませんが、きっとこれからもそういうアップデートが出てくるでしょうし、続けるからにはそれがないと終わっちゃいますから。
――ピアソラをオリジナルの編成で演奏することも、他のクラシック音楽を演奏するのと同じぐらい、終わりなき旅であるわけですね……。そうした攻める姿勢を、今回の配信でも注目したいと思います!
10/11(日)IL DEVU 『LOVE CHANGES EVERYTHING』、10/18(日)「長富彩 ピアノ名曲選」
――そして三浦さんの2週間後、10月18日には長富彩さんによる「ピアノ名曲選」と題した配信が続きます。何度も共演されている三浦さんから見て、長富さんってどんなピアニストですか?
三浦:本番前とか緊張したりとかするのかもしれないですけど、一旦舞台に出たら化けるタイプですよね。あの小柄な身体のどこから、あのパワーがみなぎってくるんだろう? 精神的なものも含めて、力強さに惹かれます。かと思うと特に近年、更に音を慈しむかのようなあのスケール感……。何度聴いてもやっぱり凄いなって素直に思うんです。
また別の瞬間には、ここぞっていう時にバーーーーッとスパークする感じ! 共演していても、後ろにアルゲリッチがいるんじゃないかと感じる瞬間がありますよ。本当に大事なアーティストの友人です。
――実は私、長富さんの高校の後輩でして、高校時代の演奏、留学から帰国された頃の演奏、最近の演奏……と折々に演奏を聴いているので、三浦さんのおっしゃること、とても納得いたします。あと技巧的な音楽が得意……というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれないですけど、彼女の音楽の本質は「歌」にあると思うんですよ。お父様が声楽家という影響もあるのかもしれません。
細川:(長富)彩ちゃんが演奏している時って、いつも口が動いているので歌っているのかと勝手に思ってたので、納得です(笑)。
――今回のプログラムでも、彼女が慈しみをこめてピアノを歌わせる演奏を、たっぷり味わえる曲目が並んでいるので、楽しみですね! さて最後になりますが、今後「リビコン」のなかで、やってみたい企画とかありますか?
細川:演奏時間が60分とコンパクトなので、今まで共演したことのない楽器とやったりしたいですね。個人的にクラリネットとピアノがユニゾンで弾いた音色が大好きなので、クラリネットとのコンサートはやってみたい!
三浦:この配信だからこそ実現できる可能性が高い企画って沢山あるんじゃないかと思っていて、実験的なことも色々やれるんじゃないかなって考えています。たとえば、音楽以外の色んな芸術分野で面白いことを考えている人たちと何かやってみたいんです。芸術表現としての映像とか舞台、もちろん美術でもいいし。そういうものと、三浦一馬キンテートを掛け合わせるとか……。実は、そういうことに興味があるんです。
――そうして考えると、配信は決して生演奏の代替品ではないわけですよね。配信だからこそ実現しやすい企画が今後は増えていきそうで、とっても楽しみです!
取材・文=小室敬之