三浦直之 作・演出による〈ロロ〉の“いつ高シリーズ”が愛知初登場、 『グッド・モーニング』がまもなく「長久手市文化の家」で上演

2021.1.20
インタビュー
舞台

ロロいつ高シリーズ vol.6『グッド・モーニング』上演より

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劇団〈ロロ〉を率いる三浦直之が、本公演とは別に2015年からスタートさせ、高校生に捧げるべく脚本と演出を手掛けてきた“いつ高シリーズ”。「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校」を舞台に、俳優はシリーズを通して同じ登場人物を演じ、作品ごとに主人公が入れ替わるスタイルでさまざまな物語を展開している、連作青春群像劇だ。

高校演劇の審査員を務めたことをきっかけに、本シリーズを手掛け始めたという三浦。【まなざし】を一貫したテーマに掲げ、教室、下駄箱、屋上、図書室、駐輪場など学内のあらゆる場所を1作ごとの舞台として、そこで起こる小さな出来事を紡ぎ出し、これまで8作品を発表してきた。作品はすべて、上演時間60分以内など「全国高等学校演劇コンクール」の出場ルールに則って創作し、上演時には10分間で行われる舞台美術の仕込みも公開。また、劇団HPではシリーズ全戯曲の無料公開もしている。三浦は、コンクールに臨む高校生たちの上演準備に対する真摯な姿勢に感銘を受け、その準備に少しでも役立てば…という想いから、こうした取り組みを行なっているという。

そんな“いつ高シリーズ”愛知初お目見えとなる今回は、早朝の学校駐輪場で顔を合わせた女生徒2人のやりとりを描いたvol.6『グッド・モーニング』を、来る1月23日(土)の昼夜2公演に渡って「長久手市文化の家」で上演する。
今年で7年目を迎えた“いつ高シリーズ”にかける想いや、劇団本公演との相違点、また、ポップカルチャーに夢中だったという自身の高校時代の話なども、三浦直之に聞いた。

ロロいつ高シリーズ『グッド・モーニング』脚本・演出を手掛けた三浦直之

【三浦直之 PLOFILE】
ロロ主宰。劇作家。演出家。王子小劇場で上演された『家族のこと、その他のたくさんのこと』にてロロを旗揚げ。「家族」や「恋人」など既存の関係性を問い直し、異質な存在の「ボーイ・ミーツ・ガール=出会い」を描く作品をつくり続けている。古今東西のポップカルチャーを無数に引用しながらつくり出される世界は破天荒ながらもエモーショナルであり、演劇ファンのみならずジャンルを超えて老若男女から支持されている。ドラマ脚本提供、MV監督、ワークショップ講師など演劇の枠にとらわれず幅広く活動。2015年より、高校生に捧げる「いつ高シリーズ」を始動させ、高校演劇の活性化を目指している。『ハンサムな大悟』で第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。2019年脚本を提供したNHKよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞脚本賞を受賞。

──まず、三浦さんが“いつ高シリーズ”を始められた経緯から教えてください。

何年か前から高校演劇の審査員をやらせてもらう機会があって、それまであまり高校演劇って触れたことがなかったんですけど、審査員としていくつか作品を観させてもらって、純粋にすごく面白いなと思ったんですね。感動する作品とかもあって。それで演劇部の顧問の先生からお話を聞くと、上演は60分以内だったり、仕込みも制限時間以内にやらなくちゃいけないとか、いろんな制約があると。生徒たちが台本を自分で書いたり、顧問の先生が書いたりする作品もたくさんあるんですけど、なかなか書くっていうところまで行かない子たちは、既成戯曲を使うんです。それがインターネットとかで公開されてる戯曲を使うことが多くて、あまりその戯曲のクオリティが高くないな、と思ったんですね。それなら僕が書いたものを使って出来るんじゃないかな、と。まず60分の戯曲というのがすごく少ないし、部員の数に合う登場人物の戯曲もなかなかないから、じゃあ60分のシリーズもので、毎回ちょっと登場人物の男女比とか人数が変わるみたいなものでシリーズ化していこう、と思ったのがきっかけですね。それと一緒に、ひとつの作品だけで完結しないで、シリーズとして大きな長編が描かれていくみたいな創り方にも興味があったので、これならそれも一緒にやれそうだな、と思ったのもあります。

── 現在8作品まで発表されていますが、それが全部繋がっている、という感じなんでしょうか。

それぞれ完全に1話で完結した作品なんですけど、一つのキャラクターがまた別の作品にも出てきたりとか、緩やかに繋がっているっていう感じですね。

── シリーズを通してのテーマが、【まなざし】というのは?

僕は俳優の演技演出をする時に、目線をどういう風に作っていくか、ということをすごく大事にしたいなと思っているんです。目線が合う瞬間とか、誰がどこを見ている、喋ってないキャラクターがその時どこを見ているかとか、そういうことを大事にしているのと、このシリーズは一幕モノなので、全部場所が固定されているんですね。〈昼休みの教室〉だったり、ある作品だと〈冬休みの図書室〉とか。そうすると、窓の外の景色とかは観客に想像してもらうしかないんですよね。舞台上しか描かれていないけど、その外側の世界をどういう風に観客に想像させるか、っていうのがすごく演劇の面白いところだと思うので、教室の窓から校庭を見下ろした時の視線で、観ている人たちにその校庭をどんな風に想像させるかとか、今ここじゃない場所にどういう風に目線を注ぐか、っていうことで外の世界を作っていきたいなという想いがあって、【まなざし】というテーマを置きました。

── 一作一作のモチーフは、どこから発想されるのでしょうか。登場人物がリンクしているということで、前作までの物語から派生して展開していったりもするわけですか?

そうですね。あと、僕が中高生の頃、青春小説がすごく大好きだったんですね。本の帯に「青春」みたいなことが書かれていたらすぐに買って読む感じだったから、自分もそういう青春モノを創りたいなとずっと思っていて、毎回一個、たとえば僕が好きだった漫画だったり、小説だったり、アニメだったり、映画だったり、そういうカルチャーを引用しながら創っていこう、と。元ネタとまではいかないけど、そういうカルチャーの引用みたいなところから考えていく、っていうことが多いですね。

── 三浦さんご自身の、青春時代の体験からエピソードを引っ張り出して、というようなことも?

僕は男子校で育ってきたので、共学とかは全く未知のものだから、僕自身の経験っていうのはそんなに反映はされてないかな。むしろその時に出会ったフィクションとかの景色みたいなことが意識されているかな、と思います。

ロロいつ高シリーズ vol.6『グッド・モーニング』上演より

── 中でも特に影響を受けた作品や、シンパシーを感じるアーティストの方などはいらっしゃるんでしょうか。

青春モノだとたくさんいるから難しいですけど、漫画が多いかもしれないですね。最近だと、阿部共実さんが描いた「月曜日の友達」とか。夜の学校に男の子と女の子が集まって超能力の実験をするっていう、秘密のやりとりをする2人の話で、すごく面白かったですね。でも、ほんとにめちゃめちゃたくさんいましたから、特別この人、みたいな感じはないかな。

── 小沢健二さんの曲などもモチーフにされていますね。

「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校」っていう、すごく長い学校名は小沢健二の曲の歌詞から引っ張ってきました。小沢健二さんの歌が持ってる“多幸感”みたいなものを書く時にイメージしましたね。“いつ高シリーズ”は、毎回キーとなる音楽みたいなことを入れるようにしていて、音楽も毎回重要かなと思います。自分が好きなものを詰め込みたい、という想いがあって僕の趣味みたいなものがすごく出ているなと思うので、高校生の頃とかに好きだった音楽が基本的には多く使われているなと思います。

── 本公演とは違う創り方をされているのでしょうか。

そうですね。ロロの本公演だと、時間も空間もどんどん飛んでいくような作品が多いんですけど、“いつ高シリーズ”は基本的にリアリズムで、ダイアローグの積み重ねだけで創っていきます。「昼休みの教室」が舞台だったら、そのまま最後までワンシチュエーションだったりするので、どうしたって違いは出てくるかなと思います。

── “いつ高シリーズ”をこれまで8作品手掛けられてきて、ご自身が感じたことや、現役の高校生の反響などはいかがですか?

今回の長久手もそうですけど、こうやっていろんな場所に呼んでもらう機会が増えてきて、実際に高校生たちに観てもらったり、高校生と一緒に作品を創ったりとか、そういういう経験がすごく増えてきたので、それがとても嬉しいですね。芸術鑑賞会に呼ばれたりすると、1000人くらいの客席が全員高校生なんですよね。なかなか普段そういう状況って無くて、演劇を普段観なれてない生徒たちもいるから、反応がまちまちで。その中でも楽しんでくれたりする子もいたから、そういう場所で上演できた経験は大きかったと思います。

── そこで初めて演劇というものに出会って、興味を持ったり好きになってくれたら嬉しいですよね。一番多感でさまざまな影響を受けやすい年代の方に働きかけられるというのは、すごく面白いお仕事ですね。

そうですね。高校生と仕事するのは毎回楽しいです。

── 今シリーズでは初めての愛知公演ということで、意気込みなどありましたらお願いします。

上演したことのない場所でやるのが毎回とても楽しみなので、どんな人たちが観に来てくれるのかドキドキしますし、すごく楽しみですね。あと僕、サウナが趣味なんです。(長久手市に隣接する)名古屋にはすごく良いサウナがめっちゃあって、サウナ好きには聖地みたいなところなので、今はこのご時世だからなかなか難しいですけど、本当はサウナ巡りもしたいなと思ってました(笑)。
 

ロロいつ高シリーズ vol.6『グッド・モーニング』チラシ表

 

公演情報

ロロが高校生に捧げるシリーズ
ロロいつ高シリーズ vol.6『グッド・モーニング』
■脚本・演出:三浦直之
■出演:望月綾乃(ロロ)、大場みなみ
 
■日時:2021年1月23日(土)14:00・18:00
■会場:長久手市文化の家 風のホール(愛知県長久手市野田農201)
■料金:一般2,500円 高校生以下1,000円
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「藤が丘」駅下車、リニモに乗り換え「はなみずき通」駅下車、北へ徒歩7分
■問い合わせ:長久手市文化の家 0561-61-3411
■公式サイト:長久手市文化の家 http://www.city.nagakute.lg.jp/bunka/ct_bunka_ie.html
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