『分島花音の倫敦philosophy』 最終章 ロンドンのクリスマスと、見つめ直した自分の音楽

2021.1.31
コラム
アニメ/ゲーム

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シンガーソングライター、チェリスト、作詞家、イラストレーターと多彩な才能を持つアーティスト、分島花音。彼女は今ロンドンに居る。ワーキングホリデーを取得して一年半の海外滞在から帰国した分島が今思うこと、感じること、伝えたいことを綴るコラム『分島花音の倫敦philosophy(哲学)』最終回となる今回は、ロンドンのクリスマスの思い出の話。


皆様、遅くなりましたが明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。あっという間に1月が終わりましたがいかがお過ごしでしょうか?

先日ロンドンでは初雪があったようで、現地の友人から写真が送られてきました。東京都同様、ロンドン市内はそこまで雪が積もらないそうなのですが、ヨーロッパの街並みに雪が降っている様子はとても幻想的だったことでしょう。

ロンドンは日本のお正月がクリスマスの時期に当たります。クリスマス前から年末にかけて多くの店はシャッターを下ろし、クリスマス当日はピカデリーもボンドストリートも輝くネオンだけが取り残されて人の気配も消え、街全体が静まり返ります。

一年前、私はクリスマスごろに風邪を拗らせて部屋に篭っていました。そんな中洗濯機を借りに行った際に大家さんから「明日娘のうちでクリスマスパーティーがあるから」と聞かされ、「(そうなのか・・・家の人たちが留守にするなら私がしっかり留守番をしないと・・・)」と思い当日もベッドでおとなしく休んでいました。

3時頃、大家さんとご家族が支度をしているような音が聞こえ、そろそろパーティーに行かれるのかな?と思っていると部屋のドアがノックされ、大家さんが「カノン、準備はできた?行くわよ!」と声をかけられた時、昨日自分も誘われていたことを理解しました。熱は下がっていたので「3分ください」と行って慌てて準備をして大家さんの乗った車に飛び込みました。車を走らせること40秒ほど、娘さんの自宅は同じ区画内のご近所だったのです。

家にお邪魔すると親戚の皆さんが既に集合していて、リビングには15人ほどテーブルを囲んでパーティーの準備をされていました。飛び交う英語のスピードが速く、誰が誰だかもわからぬまま、私はとにかく目があった人と順に挨拶を交わしました。

大家さんは音楽が大好きで、私が部屋で楽器を弾くことも歓迎してくれていました。挨拶をしていると大谷さんの親戚にもホルン奏者の方や映画音楽のコンポーザーなど音楽に携わるお仕事をされている人がいることがわかりました、元々音楽が好きな家系なのでしょう。

photo by Kumicom.

キッチンで慌ただしく働いている3人の女性に「何か手伝うことはありますか?」と聞いても「大丈夫よ!座っててね!」と言われたので手持ち無沙汰に席に着くと、イギリスのオーソドックスなクリスマスディナーが運ばれてきました。ローストターキー、にんじんとジャガイモ、芽キャベツのグリル、マッシュポテト、ソーセージなど、次々とプレートが回ってきて、それを食べたい量だけお皿に取り分けます。シンプルだけど美味しそうな匂いで、これがイギリスの伝統料理なのかと感激しました。

お皿の横にはクラッカーがあって、筒の両方を絞ったリボン状の作りをしています。その両サイドを引っ張るとパン!という音がして、中にはグリコのおまけのようなおもちゃが入っています。こちらもイギリスの伝統的なアイテムだそうで、クリスマスの時にはこのクラッカーでお祝いをするとのことでした。みんなでクラッカーを鳴らし鳴らし、ワインで乾杯をしてからディナーをいただきました。

窓の外はまだ明るく、ディナーというにはとても早い時間です。相変わらず飛び交う英語のスピードについていけず、かろうじて犬の話をしているな……程度しかわからずも相槌を打ったりしていました。多分ほとんどが身内話で、日本語で聞いていたとしてもわからなかったと思いますが、こうしてイギリスのクリスマスパーティーに呼んで頂いたことが嬉しくて、私にはとても貴重な体験でした。

料理も美味しく、風邪の直後で失われた体力が回復していくようでした。食後に出されたケーキは2種類あり、1つは黒い見た目のブランデーが効いたクリスマスプディング、もう一つは上にフルーツが乗ったスポンジケーキのようなものでした。「好きな方を選んで」と言われて、どちらもとても美味しそうで悩んでいると「両方食べてみる?」と言って薄く切ったものをどちらもお皿に乗せてくれました。もちろん両方とも手作りです。目の覚めるような美味しさで、初めて食べる味。             

会話は十分にできませんでしたが、みなさん暖かく迎えてくれて、とても楽しいひとときでした。私は日本のお正月に親戚で集まるような習慣がありません。大家族だったり、たくさん親戚がいるお家のお正月はこんな感じなのかな、と想像しながら過ごしたクリスマスでした。

ロンドンでの出来事一つ一つが本当に貴重な経験で、今でも思い出すと恋しくなります。

この経験を1年間、拙いながらも文章に残し、皆さんにお伝えすることができて嬉しかったです。

日本に帰国したこともあり、『倫敦philosophy』は今回で最終回ですが、また新たな1年、引き続き自分の想いを音楽や言葉で伝えていきたいと思います。

この1年で時代が急激に変化していき、自分と音楽とのあり方を見つめ直すことが増えました。人と音楽の関係性もこれからどんどん変わっていくのかもしれません。不安や憤りを感じる部分もありますが、また会場で音楽を通してみんなが一つになる楽しさや喜びを味わえる日を願って、私は私の音楽を奪われないように、諦めないように守っていきたいと思います。

photo by Kumicom.

たくさんの気付きと経験をありがとうロンドン、そしてまた素敵な再訪ができますように。

文:分島花音

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