「オレの名前は濱マイク」──すべてはここからはじまる。佐藤流司、植田圭輔ら「朗読劇『私立探偵 濱マイク』-我が人生最悪の時-」ゲネプロレポート

2021.2.18
レポート
舞台

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

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2021年2月17日(水)ヒューリックホール東京にて幕を開けた「朗読劇『私立探偵 濱マイク』-我が人生最悪の時-」開幕直前に行われたゲネプロの模様をレポート!


 いくつかのダクトと色あせたチャイニーズテイストの格子パネル、そして椅子が5脚とブルーの扉。シンプルなステージ上で繰り広げられるのは、横浜黄金町の裏社会で起きた“物騒な”物語の顛末。ドブネズミのような人生の中でも「愛」と「友情」を守り抜いた不器用な男たちの生き様だ。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

 少年院上がりで高校生の妹と2人で生きる濱マイクは、地元・横浜黄金町で私立探偵を生業としている。マイクを「濱君」と呼び慕う星野は少年院時代からの友だち。マイクに「星野く〜ん」と呼び出されては白タク稼業で集めた情報を提供し、時には危険な運転手役もこなす。そんなふたりはある日、町でチンピラに絡まれていた台湾人の青年・楊を見かける。圧倒的な喧嘩の強さで彼を助けたマイク。探偵と名乗ると楊は「日本で行方不明になった兄を探して欲しい」と懇願。情に篤いマイクは早速調査を始めるが──。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

 ウェーブのついた髪を撫で固め、細身のパンツとスカジャンに身を包んだ濱マイク=佐藤流司。登場の第一声からマイクの背負う優しさと哀しさの入り混じったバイブレーションをセリフに乗せ、危険な香りで観客を瞬時に物語の舞台、「30年前の黄金町」にタイムスリップさせてくれる。役の感情に合わせて足を組んだり投げ出したり、ちょこんと座ったり、立ち上がって悶絶したり…と、椅子に腰掛ける姿勢のひとつひとつも饒舌で、朗読劇ならではのスタイルと制約を自在に楽しんでいるよう。サングラスをかけたり外したり、リアルにボトルの水を飲む仕草も効果的。本を片手に持ちながら、柔らかな微笑みから殺気に満ちた表情まで様々な顔を見せ、俳優が繊細に演じるからこそ生まれる極上のワイルドさで市井のヒーロー像をその手中に収めていた。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

 星野役の矢部昌暉は、ちょっと気弱だけれど数々の軽犯罪のテクを持った(!)頼れるバディだ。豊かな感情を込めたセリフはまっすぐにこちらの胸に届き、マイクとの掛け合いのテンポもバッチリ! 軽妙なやりとりの中に垣間見える揺るぎない友情に、ふたりが友人として支え合い生きている時間も感じられた。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

 楊を演じる植田圭輔は物語のキーマン。背負う運命の過酷さを抑制の利いたセリフ回しと寂しさを纏った佇まいで魅せる。台湾の言葉を使う場面では感情が露わになるなど二面性の深さも印象深かった。マイクとは一見「陰と陽」の関係、だからこそふたりはいい友だちになれたはずなのだが…。終盤、マイクと楊の対峙は息を飲む強さと美しさが溢れ、いい意味で朗読劇を超えた朗読劇としての感動を味あわせてくれた。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

 マイクの妹・茜役の太田奈緒の“普通さ”も貴重。誰よりもしっかりしていてまっすぐな彼女がストッパーになってくれるからこそ、マイクはマイクらしく生きることができるのだ。この穢れのない明るさも、本作には欠かせない。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

 そして、ストーリーテラー、中山警部、その他いろいろの秋山真太郎! スッと立っただけで場の空気を変えるビジュアルの説得力、聞き取りやすいナレーション、刑事の凄み、いくつもの声色で一手にモブも担当…と、技巧派として大活躍。マイク&星野へのメタな絡みなどお遊びシーンもクスッと楽しく、秋山が土台となっているのであろう座組の絶妙なバランスが伝わり、心地よい。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

 スクリーンに映し出されるモノクロ映像に濱マイクを世に送り出した映画監督・林海象へのオマージュを感じたり、横浜日劇の2階にある濱マイクの事務所が、もともと映画館だった劇場にこうして出現している事実にちょっと胸がキュンとなったり。カンパニーが『私立探偵 濱マイク』という作品への愛とリスペクトを大事にしながら令和の世へと繋いでいる思いも含め、人情に満ちた、味わい深い1作。本を手にしながらも動けるところは動くという自由度の高さ、その一方で身体の利く俳優を集めつつアクションはほぼナレーションで伝えていくという縛りの両極にも創り手の美学を感じた。

 さて、「最悪の時」を乗り越えた濱マイク。次はどんな「困った人」が、マイクの事務所を訪ねてくるのだろうか──。

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

舞台挨拶コメント

(C)朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会/曳野若菜

濱マイク役:佐藤流司
やんちゃでハードボイルドな作品と思われる方も多いでしょうが、それ以上に「心にいい」作品です。忘れかけていた大事なことを改めて思い出させてくるような、心に残る作品になっていると思います。

星野 光役(Wキャスト):矢部昌暉(DISH//)
観に来てくださるお客様のためにも最高の舞台をお見せするのみ、ですね。『人生最悪の時』というタイトルですが、みなさまには『最高の時』と思っていただけるよう頑張ります。

星野 光役(Wキャスト):志村玲於(SUPER★DRAGON)
稽古で何回やっても「いい作品だなぁ」と自分自身必ず感動します。劇場にいらしてくださったみなさにも、とてもとても喜んで帰っていただけるようなひとときを一緒に過ごしたいと思います。

濱 茜役:太田奈緒
人のあったかさ、お兄ちゃんの…マイクの情の熱さとか、それぞれがそれぞれに向けた人の温かさみたいなものを感じさせられる作品です。その温かさを伝えられるよう、精一杯頑張ります!

ストーリーテラー:秋山真太郎[劇団EXILE]
原作の映画の世界観を踏襲しつつ、家族の愛の物語が強調され、「側にいる人たちを大切にしよう」と改めて思えるような作品になっております。みなさまどうぞ楽しみに観劇にいらしてください。

ヤン(楊)海平役:植田圭輔
この令和の時代にこういったトガった作品をやれるというのは、本当に役者冥利に尽きるなと思っております! 自分自身は海外の方を演じるのは初めて。そこも真摯に演じていきたいです。

取材・文=横澤由香

公演情報

「朗読劇『私立探偵 濱マイク』-我が人生最悪の時-」

【日時】2021年2月17日(水)~2月23日(火祝) ※全13ステージ
【会場】ヒューリックホール東京
※開場時間:開演60分前 ※未就学児童入場不可
 
【原作】林海象(私立探偵 濱マイク「我が人生最悪の時 THE MOST TERRIBLE TIME IN MY LIFE」)
【脚本・演出】樫田正剛(方南ぐみ)

【出演】
佐藤流司/
矢部昌暉[DISH//](Wキャスト)、志村玲於[SUPER★DRAGON](Wキャスト)、太田奈緒、秋山真太郎[劇団EXILE] / 植田圭輔
 
一般発売日:2021年1月31日(日)10:00~
【料金】全席指定 8,500円(税込) 非売品グッズ付き 全席指定 9,900円(税込)
※ご購入後の返金・クレーム及びお席の振替は一切お受けできません。予めご了承ください。
※非売品グッズ付き全席指定は、先行販売までの販売となります。
※グッズは公演当日、会場にてお引き換えください。公演期間以降のお引渡しはできませんのでご了承ください。
 
【主催】朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会(エイベックス・エンタテインメント 東映ビデオ Citrolemon)
【お問合せ】公演事務局 event@user-support.jp (平日10:00~17:00)
 
【公式HP】https://hamamike-reading.com/
【公式twitter】@HamaMike_r
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