センスと技術、独創的なミクスチャー感覚を持ったバンド・Kroi 【『SONAR×SPICE』特別コラムVol.2】
-
ポスト -
シェア - 送る
Kroi
FMラジオ局J-WAVE(81.3FM)とSPICEがタッグを組み、3月15日(月)に配信する注目のニューカマー・アーティストのショーケースライブ『SONAR×SPICE ~J-WAVE SONAR TRAX SHOWCASE LIVE with SPICE~』。本稿ではその注目のラインナップから、Kroiのこれまでとその音楽性を紹介する。
ストリーミング、SNSなどが広く浸透したことにより、あらゆる年代、あらゆるジャンルの音楽が並列に存在する現代において、すべてのクリエイター/アーティストには自ずと“何をどう混ぜるか”という命題が課せられている。たとえばOfficial髭男dismやKing Gnuもそうだが、現在の音楽シーンを代表するバンドには、“ジャンルを横断しながら、斬新な音像を提示する”というセンスと技術が備わっている。
昨年あたりから急激に知名度を上げているKroiもまた、独創的なミクスチャー感覚を持ったバンドだ。ロック、ソウル、R&B、ファンク、ディスコ、ジャズ、ヒップホップ。多種多様な音楽を深く掘り下げ、そのエッセンスを抽出しながら、肉体性に溢れたバンドサウンドによって再構築する彼らのスタイルは、単に異なるテイストを混ぜただけではなく、DNAレベルの解析力と優れた演奏能力を活かした解像度の高さが持ち味。全く手触りは違うのだが、初めてKroiの音楽を聴いたとき筆者は、ロバート・グラスパー・エクスペリメントを思い出した。共通点は、ルーツミュージックに対するリスペクト、そして、身体能力の高さと音楽的な知性を兼ね備えたアンサンブルだ。
Kroi「risk」
2018年に結成されたKroiのメンバーは、内田怜央(Vo)、長谷部悠生(G)、関将典(B)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)の5人。同じ中学に通っていた内田、長谷部と、大学の同級生だった関、益田がSNSを通じて出会い、Kroiを結成。その後、千葉が加入し、全員の音楽的志向を重ね合わせながら、Kroiのスタイルを作り上げていったという。メンバーのルーツは見事にバラバラだが、深いレベルでのつながりも確かに感じられる。「結成当初にジャミロクワイの「Space Cowboy」やダフト・パンクの「Get Lucky」をセッションした」というエピソードからも、このバンドのビジョンを感じてもらえるのではないだろうか。
昨年10月に配信された「HORN」がJ-WAVEの「SONAR TRAX」に選出、さらに早耳の音楽ファンから支持されているSpotify「Early Noise Japan」のカバー・アーティストに選ばれるなど、既に2021年のブレイク候補として注目を集めているKroi。1月27日にリリースされた3rd EP『STRUCTURE DECK』は、Kroiの音楽性がさらなる進化を証明すると同時に、より広い層のリスナーに訴求するパワーを持った作品に仕上がっている。
軽快なギター・カッティング、濃密なファンクネスをたたえたベースラインを軸にした1曲目の「Page」は、70年代後半~80年代前半当たりのディスコ・サウンドを想起させるダンス・チューン。レトロな手触りのシンセの音像、洗練されたリズムアレンジを含め、このバンドの音楽性が端的に示された楽曲だ。<開いた目に映るものだけじゃなくて/遠く感じて噛み砕きたいんだ>という、彼らの根本的なスタンスにも繋がる歌詞も秀逸だ。
Kroi「Page」
2曲目の「dart」は、生々しいバンド・グルーヴが渦巻く、ライブ感に溢れた楽曲。一発録りのセッションによって、メンバーの血肉となっているファンク、ジャズ、R&Bなどがナチュラルに注入することで、その瞬間にしか生まれない唯一無二のサウンドを描き出している。緻密なアレンジメントではなく、メンバーそれぞれのプレイヤビリティを活かし、その場のノリ一発で音楽を生み出す。その瞬発力もまた、このバンドの武器なのだと思う。
浮遊感と抽象性を備えたトラック、儚く漂うメロディライン、アコギのサイケデリックな響きなどが溶け合う「Finch」、“ネオソウルの進化型”もしく“古き良きソウルミュージックの最新バージョン”と称すべきメロウなグルーヴが気持ちいい「risk」の流れも素晴らしい。曲によって全く異なるアプローチを施しながら、すべての曲にKroiとしてのアイデンティが刻み込まれているのだ。
一発録りのインタールード「marmalade」に続く「HORN」も、現在のKroiを象徴する楽曲の一つ。70年代のディスコを下地にしつつ、現代的なダンス・ミュージックに昇華させたこの曲は、彼らが一貫して掲げている“踊れる音楽”とダイレクトにつながっている。ブライトな音像、解放感のあるメロディラインなどを含め、彼らのポップサイドを示す楽曲とも言えるだろう。
カードゲームをモチーフにした、CDのアートワークにもぜひ注目してほしい。デザインのおもしろさはもちろん、ここには彼らの“モノ作り”に対するこだわりが強く反映されている。音楽だけではなく、ファッションやデザインにも関わることで、Kroiを様々なカルチャーの発信地にすることを目指す。この姿勢も、このバンドの個性につながっているのだ。
そんなKroiが3月15日にSPICEとJ-WAVE「SONAR MUSIC」の共同企画による配信ライブに出演、こちらは現在
文=森朋之