市川染五郎×市川團子が配信トークライブを開催! 『図夢歌舞伎家話-弥次喜多-』へ向けたリモート取材会レポート

2021.3.12
レポート
舞台

(左から)市川團子、市川染五郎 /(C)松竹

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歌舞伎俳優の市川染五郎市川團子が出演する、オンライン配信歌舞伎作品、図夢(ずぅむ)歌舞伎『弥次喜多』がAmazon Prime Videoで好評独占レンタル配信中だ。これにあわせ2人は、オンライン配信サービス「Streaming+」にて、トークイベント『図夢歌舞伎家話-弥次喜多-』に出演する。生配信は2021年3月14日(日)15時からとなり、アーカイブは1週間視聴可能となる。イベントに先駆け、染五郎と團子がリモート取材に応じた。

図夢歌舞伎『弥次喜多』 Amazon Prime Video 12月26日より独占配信中 /(C)松竹

■もっとグレていても良かったかな

図夢歌舞伎『弥次喜多』は、市川猿之助の演出により、2016年より毎年8月の歌舞伎座で上演されてきた『東海道中膝栗毛』(以下、弥次喜多)シリーズの5作目だ。同時に、2020年6月に松本幸四郎が立ち上げた、オンライン配信歌舞伎作品「図夢歌舞伎」の2作目でもある。過去作につづき染五郎は若君の伊月梵太郎(いづきぼんたろう)役を、團子は供侍の五代政之助(ごだいまさのすけ)役を勤めた。梵太郎と政之助は、これまで真面目でしっかり者だったが、図夢歌舞伎『弥次喜多』では不良少年となって登場する。

ーー役をふり返ってみて、いかがですか?

染五郎:もっとグレていても良かったなと思いました。過去4作とは全く違う梵太郎でしたから、演じていて新鮮でした。

團子:衣裳は、現代風でありながら着物としてマッチしていたところが良かったです。もっと役になりきりたかったです。

金髪の染五郎、赤髪の團子。 図夢歌舞伎『弥次喜多』 Amazon Prime Video 12月26日より独占配信中/(C)松竹

ーーそれぞれの役の「らしさ」についてお聞かせください。

染五郎:グレても子どもなところ、真っ直ぐなところが残っているところに、梵太郎らしさを感じました。これまで弥次さんと喜多さんは大人なのに子どもっぽいところがあり、梵太郎と政之助は子どもなのに大人びているキャラクターでした。1作目から5作目までの間に梵太郎たちも成長したとは思いますが、1作目の時に梵太郎に感じたイメージを大切にして、どこかに子どもらしさを感じていただけたらと思っています

團子:梵太郎さんと政之助、2人に共通することですが、不良っぽく弥次さん喜多さんに「何だよ」みたいな態度をとることもありながら、2人への尊敬とか親しみをどこかに持っていると思いました。たとえば危機的な状況で弥次さんと喜多さんに会えて、梵太郎さんも政之助も「良かった」って素直に子どもみたいにすがりつくんです。必死になった時に出てくるのが、政之助の本性で、らしさなのかなと思います。

ーーそのような「らしさ」は、どなたかから演出があったのでしょうか。

染五郎:台本を読んで台本から感じて、自分でそこを意識して演じようと思いました。

ーーおふたりで打ち合わせなどは?

團子:僕、なんか言ってた?

染五郎:これに関しては言っていなかったと思う。

團子:打ち合わせたりはしませんでしたが、台本から受けとるイメージの量って、とても多いと思うんです。ビックリマークとか句読点の位置、小さい「ッ」の使い方とか、そこから感じるものがお互いに似ていたのかもしれません。

■今の世界の状況とリンクする、図夢歌舞伎『弥次喜多』

原作は劇作家・前川知大の戯曲『狭き門より入れ』。2009年のPARCO劇場で初演された。

ーー世界で謎のウイルスが広まっているという設定です。本作は、そこから想像もしない展開を迎えます。

團子:今の世界の状況にリンクする内容ですから、観た時は、自分の状況に置き換えたりしました。歌舞伎の舞台には、現代では身近にはないものが出てきたりします。それでもお芝居を観る時って、現実と似ている状況と重ねて観たりすると思うんです。自分の生活にリンクできるところがあり、映像からもそれを感じられると思いました。

染五郎:原作『狭き門より入れ』の設定が、今の状況とリンクしています。今だからこそ配信という形で上演することにも意味があると思いました。

図夢歌舞伎『弥次喜多』 Amazon Prime Video 12月26日より独占配信中 /(C)松竹

ーー撮影現場で「すごい!」と思ったエピソードはありますか?

染五郎:今回に限らず『弥次喜多』ではいつも、猿之助のお兄さんをすごいなと思います。出演だけでなく、演出という作る側にも立っていらっしゃいます。自分もいつか新作歌舞伎など、新しいものを作らせていただく機会があればうれしいと思っているので、いちから作品が作られていくところを間近で見られる機会をいただけて、本当にありがたいと思っています。

團子:僕は皆さん全員が、それぞれの役っぽさ、その役らしさを作られるので、本当にすごいなと思いました。ちょっとモノをとる一瞬の仕草もふとした口調も、キャラクターとして統一されています。そこを見習いたいです。

図夢歌舞伎『弥次喜多』 Amazon Prime Video 12月26日より独占配信中 /(C)松竹

ーー図夢歌舞伎『弥次喜多』で梵太郎と政之助以外でやってみたい役、印象に残ったシーンはありますか?

團子:葉刈五郎(市川猿弥/初演舞台では猿之助が演じた役)は、事情もあって頭ひとつ抜けた、ふり切った役でした。「数分前に世界が始まったって言われても分からない頭の構造してるんだから……」と続く長台詞が、印象にのこっています。演じる時も血管が浮き上がってくるくらいに白熱して、すべてを打ち込んでいる雰囲気が好きでした。

染五郎:金髪の不良だった梵太郎が最後は急に……(ネタバレのため省略)なるところが面白いと思いました。やってみたい役は、いまは梵太郎しか考えられないのですが、いつか2人で『弥次喜多』をやりたいねと話しています。

■意外なところ、リスペクトするところ

『歌舞伎家話』とは、2020年5月のコロナ禍にスタートした歌舞伎俳優による配信トークイベントのこと。アーカイブでの視聴も可能だが、生配信であればチャットコーナーも楽しむことができる。歌舞伎の舞台で活躍する俳優たちが、リラックスした雰囲気のトークで、舞台では見せない表情も垣間見せる。3月14日(日)に開催されるのは『図夢歌舞伎』版の『歌舞伎家話』だ。

ーー『図夢歌舞伎家話-弥次喜多-』が決まった時の気持ちをお聞かせください。

染五郎:父(松本幸四郎)が出演する生配信トークを見ていましたが、自分では、生配信が初めてなので緊張すると思います。下手なこと言えないな……というのがあります。かなり緊張しています。

團子:これまでの舞台挨拶は、お客様の反応をみれました。しかし今回はコメント欄を見ながらになると思います。初めての試みではありますが、高校生らしく、しっかりと務めさせていただきたいと思います(笑)。

市川團子 /(C)松竹

ーーお互いの尊敬するところはどこですか?

染五郎:過去の舞台でやっていた『弥次喜多』でも、立廻りをビデオに撮って確認し、自分のお芝居のクオリティを上げていくための努力をしていました。すごいなと思っています。

團子:染五郎さんが南座で『連獅子』を勤められた時、一緒の車に乗せていただく機会がありました。染五郎さんが資料で読んでいたので、何か聞くと、連獅子の資料だったんです。僕は先人の方々のビデオを見て勉強するのですが、染五郎さんは幅広いところから知識を得ているんだなって。すごいと思いました。

ーーお互いの意外な一面をご存じでしたら教えてください。

團子:染五郎さんはクールで面(おもて)にはあまり出しませんが、絶対内心笑っているところがあります。近くでみていると「今笑ってくれたんだ」と分かるんです。ワハハではくフフフで笑うところが好きです。

染五郎:意外といえるかどうかは分からないのですが、初めて会った時からテンションが高い人です。ずっと踊っているか歌っているか(笑)。

「役名(伊月梵太郎)に名前(本名:齋、いつき)が入っている愛着のある役」と市川染五郎。 /(C)松竹

ーーお二方とも『図夢歌舞伎』の撮影後、それぞれに歌舞伎の舞台で古典に出演されています。映像作品での経験は、舞台に生かせそうですか?

染五郎:『四の切』の義経、『雪の石橋』、そして『車引』の桜丸をやらせていただきました。歌舞伎の映像、歌舞伎以外の映像も、いつかやらせていただけたらと思っていますので、今回の経験が直接はつながってはいませんが、役者として、とても大きな経験になりました。

團子:猿之助さんは、「カメラで撮られた時に自分が一番きれい映るのはどの角度か。醜い役であれば、一番醜く映る角度はどこかをまず想像し、そこから逆算して演じる」とおっしゃっていました。それは舞台でも同じだと思い、学んだことです。今度は、上手、下手、1階、2階、3階と意識してお稽古したいです。

ーー最後のおうかがいです。図夢歌舞伎『弥次喜多』を視聴するかまだ迷っている方がいたら、なんと声をかけますか?

團子:同世代の方なら「マジでおもしろいですよ!」と、めちゃくちゃ言います。歌舞伎には、堅苦しいイメージがあると思うのですが、これは現代に近くて、歌舞伎の雰囲気も入っていて、本当に面白いよって!

染五郎:自分が出演していることを考えると、恥ずかしいので見てほしくないのですが(苦笑)、作品としては歌舞伎の難しいイメージとはかけ離れて、台詞も現代語だし、歌舞伎を知らない方も楽しめると思います。おすすめします。

憧れの役として、染五郎(右)は『勧進帳』弁慶、『春興鏡獅子』、『女殺油地獄』河内屋与兵衛を。團子(左)は『四の切』狐忠信と『黒塚』をあげた。 /(C)松竹

図夢歌舞伎『弥次喜多』には、幸四郎、猿之助、染五郎、團子のほか、市川中車や、市川猿弥、市川笑三郎、そして市川寿猿、市川弘太郎(声)も出演する。収録時間は1時間51分、レンタル視聴料は1900円(購入後30日、一度再生した後は48時間で自動返却となる)。

そして配信トークイベントは、3月14日(日)の15時より生配信を開始する。70分程度の予定だ。当日はホワイトデーにちなんで、図夢歌舞伎『弥次喜多』に関するクイズが出題され、それに答えて応募すると染五郎、團子から素敵なホワイトデーギフトが当たる企画も開催。配信の購入は3月20日(土)20時まで、アーカイブ視聴は20日23時59分までとなる。

配信情報

『図夢歌舞伎家話-弥次喜多-』
 
配信日時:3月14日(日)15:00~(約70分)
出演者:市川染五郎、市川團子
聞き手:戸部和久(松竹演劇部/図夢歌舞伎『弥次喜多』企画・脚本)

配信場所:イープラス「Streaming+」
料金:2,000円(税込)
※有料配信は3月20日(土)20:00まで販売。
※配信開始後、配信終了後に購入の方も3月20日(土)23:59までご視聴できます。

配信情報

図夢歌舞伎『弥次喜多』
配信開始日:2020年12月26日(土) より独占配信中
配信元:Amazon Prime Video(国内独占レンタル配信) 
レンタル料:1,900円(税込)
分数:1時間51分
作品ページ:www.amazon.co.jp/kabuki
※Prime Video作品ページの“レンタル”のタブをクリックすると、作品をレンタルすることができます。レンタル期間は30日間で、一度視聴を開始すると48時間でレンタルが終了します。
 
■監督・脚本・演出:市川猿之助
■原作:前川知大「狭き門より入れ」
■構成:杉原邦生
■脚本:戸部和久
■監督:藤森圭太郎
■製作:松竹株式会社
■出演:松本幸四郎、市川猿之助、市川中車、市川染五郎、市川團子/市川猿弥、市川笑三郎、市川寿猿、市川弘太郎(声の出演)
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