『進撃の巨人』AnimeJapanステージレポート:自問自答し続ける苦しさや葛藤、言葉にならない想いに「つらい」と本音も
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アニメ『進撃の巨人』The Final Seasonのステージが、『AnimeJapan 2021』内にて実施された(2021年3月28日)。梶裕貴、石川由依、井上麻里奈、神谷浩史、細谷佳正ら1stシーズンから出演しているキャストに加え、The Final Seasonから参加した花江夏樹、佐倉綾音が初めて登壇。原作は最終回直前、アニメはつらい展開を迎えているなかでの複雑な心境を、キャスト陣が率直に語り合った。
【レポート】『進撃の巨人』The Final Season ステージ
本番直前まで、神谷がキャスト陣を笑わせるなど、とても和やかな雰囲気だった。
神聖かまってちゃんの「僕の戦争」が流れ配信が始まってからも、コロナ禍で大勢のキャストが一堂に集まる機会が減ってしまったからこそ、梶が「このメンバーでお送りできてとてもうれしい」と語ったように、思いの丈を語り合うステージになる期待があった。
ところが、そうはいかないのが『進撃の巨人』だ。印象的なエピソードを振り返りながら、「つらかった」「命がけ」「ごめん」そんな苦しさや葛藤と、言葉にならない想いがこみ上げた熱いステージをレポートする。
ガビの伏線回収エピソードを生んだ諫山先生の思考回路に驚愕
佐倉は、70話「偽り者」より、ガビとカヤが歴史について話すシーンをピックアップ。「ガビが信じていたものが崩れる、始まりのシーン」であり、自分たちが何と戦っているのかがわからなくなっていくマーレ編を象徴するようなシーンでもある。「自分たちも身につまされるし、耳も心も痛いシーン」とコメントした。
サシャにかつて救われたカヤが、サシャを殺したガビと出会うという物語の伏線に驚くとともに、改めて諫山先生の思考回路のすさまじさを梶と佐倉が語り合った。
エレンとライナーの再会シーンの収録裏話
花江は、63話「手から手へ」より、ファルコがガビに想いを打ち明けるも気づいてもらえないシーンをピックアップ。それを見た佐倉は「進撃史上一番楽しかった」と語る。花江は、ファルコが想いを言葉で伝えたことに加え、原作のとあるシーンと対比して、ファルコの成長を感じたことから今回選んだそう。花江が号泣してしまったというそのエピソードが、いつかアニメでも描かれるのが楽しみだ。
一方、選ぼうと思ったものの嫌で選ばなかったのが、ファルコも立ち会ったエレンとライナーの再会シーン。梶・細谷・花江の3人で収録したものの、緊張感あふれるシーンだったため、つらかったという。細谷はその緊張感をほぐすために、ちょくちょく花江に話しかけていたそう。梶は、そんな細谷と花江の気持ちや、視聴者の気持ちが分かるものの「僕はピリピリしてました。それでいいのかなと」と、エレンの威圧感を意識しながら収録に臨んだと明かした。
「そこ攻められるとダメなんだ(笑)」
神谷は、72話「森の子ら」より、「モテたことくらいある」とリヴァイらしからぬ発言が印象的なシーンをピックアップ。目をそらしながら言うリヴァイに、「彼にもそんな一面があるんだ」と思ったそう。
リヴァイは、立場が大きく変化する他のキャラクターに比べ、変化しないキャラクター。エルヴィンを失ったことは大きな変化だったとしながらも、「そこから先はある意味、余生」ととらえているという。そこで出てきた「モテたことくらいある」というセリフは、意外性もあり「そこ攻められるとダメなんだ(笑)」とほほ笑んだ。
また、作中でリヴァイが何度も最終目的を果たしそこなっていることに触れ、「不憫な人ですよね」とも語っていた。
『進撃の巨人』は、声優にとっても命がけ
細谷は、60話「海の向こう側」でライナーが降下しながら巨人化するシーンをピックアップ。クールなライナーが、モノローグではなく、声にだしてしゃべっていたことが「いい意味で違和感だった」という。
また、『進撃の巨人』の収録は喉にも精神的にもかなり負担がかかるため、ライナーの「また壁かよ」というセリフには、自身の思いとシンクロする部分もあったという。梶が「細谷さんにしかライナーはできない」とコメントすると、井上も同意しながら、「それだけ『進撃の巨人』は命がけ」と加えた。声優にとって喉は命。だからこそ、命がけという言葉も納得してしまう。
幼馴染の初めての喧嘩に、石川は涙
井上は、73話「暴悪」より、アルミンがエレンに殴に殴りかかる幼馴染の対話シーンをピックアップ。井上と石川は、「何週も前から、あと何回であのシーンがきちゃうね」「(アフレコを)ボイコットしようか?」と冗談を言わずにはいられなかったほど、幼馴染にとって憂鬱なシーンだったという。石川は、ミカサがエレンに殴りかかるアルミンを止めたことがショックだったそうで、収録時もテストの段階からずっと泣いていたことが井上から明かされる。
収録がふたりと別部屋だった梶が「ごめんね」と石川に謝ると、「ホントバカ野郎ですよ、エレン」と梶を凝視。すると梶が、「でもさ…」とエレンの立場を語り始める。原作がまだ完結していないなかで、キャラクターの解釈を自問自答しながら演じなければいけない苦労と重さに、梶が「つらいね……」と膝に手をあて、うつむいてしまう場面も。
井上が「(幼馴染の)初めての喧嘩だね」とフォローすると、梶も「喧嘩記念日だね」と笑って答えたが、その辛さはこの先も続くのだろう。
このシーンがあったから「踏ん張っていられる」
梶と石川は、69話「正論」の同じシーンをピックアップ。夕陽に頬を赤らめながら想いを語り合う104期のほっこりシーンだ。梶は、このシーンがあったからこそ、「僕が今思って作っているエレンは踏ん張っていられる」と言葉を選びながら語った。石川は、エレン巨人を誰が引き継ぐかを話し合うシーンでみんなが手を挙げたことに、エレンや仲間への思いやりや絆を感じ、「尊いシーン。この時代に帰りたい」とコメントした。
この日、キャスト陣それぞれの想いを聴いた梶は、「今日作品についてみんなでしゃべれることを楽しみにしていましたけど……つらいですね」と一言。語り合うにはあまりにも短い時間だったため、「ダメだ(笑)」と、語り尽くせない想いにもどかしさをにじませる。「いずれすべて終わったときに、みんなで話せる機会がなきゃいけないと思います」と、力強く語った。
作品を見届ける覚悟を再確認
最後は、キャスト陣からメッセージが送られた。
佐倉は、ガビが好き嫌いが分かれてしまうキャラクターであることから、「初めてのイベントが無観客でよかった」としつつ、おそらく視聴者もひとりでは消化しきれないつらい展開だからこそ、「たくさんの皆さんとこの作品の終わりを迎えたい」とコメントした。
花江は、「演じたいシーン、アニメで観たいシーンがたくさんある」と今後の展開に期待を込める。
神谷は、「(『進撃の巨人』が)漫画界のマスターピースになるかもしれない」とコメント。演じるプレッシャーに負けないよう、「最後まで健康で走り抜けられたら」とキャスト陣に語り掛けた。
細谷はそれを受けて、「健康に気をつけながら最後まで頑張りたい」と応える。奇跡の復活を遂げた細谷の言葉は重い。
井上は、作品やキャラクターにいろんな思いが込められていることを感じるとしたうえで、「自分にできる限りをこの作品にぶつけて、アルミンの最後の最後まで演じつくしたい」と語った。
石川は、「ひとつのところだけを見ていたらわからないことがある」と、作品を俯瞰してみることの大切さを語る。そのうえで「見届けなければいけない」と、最後までミカサを演じていく意気込みを語った。
梶は、普段であればしっかりと作品について話せるはずが、今回の『進撃の巨人』The Final Seasonに関しては、想像以上に言葉が出てこなかったため、「もっと伝えたかった」と目を伏せ悔しさをにじませる。「生きている中で、こんなに考えさせるものがある作品は初めてです」と、改めて作品のメッセージの重さを語り、最後まで見届けてほしいと語り掛けた。
最後は全員で心臓を捧げ、キャストと視聴者で、作品を見届ける覚悟を再確認しあった。
アニメ『進撃の巨人』The Final Season第76話「断罪」は、今冬放送予定。
TVアニメ「進撃の巨人」The Final Season Part 2特別映像
放送情報
ガビ・ブラウン:佐倉綾音