岡田准一、阿部寛ら登壇『エヴェレスト 神々の山嶺』完成報告会見【ほぼノーカット】
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阿部寛 映画「エヴェレスト 神々の山嶺」
岡田「もう一度登りたい。撮影場所のもうちょっと上まで登りたい」
全世界で翻訳され、大ベストセラーとなっている夢枕獏の山岳小説「神々の山嶺(いただき)」が、平山秀幸監督のメガホンで映画化されることとなった。「エヴェレスト 神々の山嶺」と名付けられた本作は、主演の岡田准一、阿部寛、尾野真千子らが実際に現地ネパール・エヴェレストに飛び、高度5200m付近という世界最高峰の地で撮影を敢行。
2016年3月12日に公開される本作の完成報告会見が、12月14日(月)都内で催され、岡田、阿部、尾野、平山監督が登壇した。そのトークコーナーの模様をほぼノーカットでお届けしよう。
――個人的にも山登りをされ、写真も撮られる岡田さん。本作とは運命的な出会いだったとおっしゃっていましたが、実際の撮影で活かされたことってありますか?
岡田:そうですね、自分が若いときにカメラを好きになって、また山に登るようになったのは、この作品をやるためだったのかな、と思うくらいの出会いだったし、実際エヴェレストに登って、カメラマン役だったので自分でも首にカメラをかけながら登っていたんですが、阿部さんの役作りを見ながら…ファインダー越しだと少し違うんですよね。自分の目でなくファインダー越しですと、阿部さんが羽生丈二になっていくのを…火の塊のような男になっていくんですよ。そんな先輩の役作りを見ながら登っていくのがすごいいい経験になったし、いい勉強にもなりました。
監督は、演じるということよりも「生身の岡田が出るぞ!」と撮影が始まる前に言ってくださって。生身のお二人から厳しい環境の中、お芝居をするまじめさみたいなものを学ばせていただきました。
――阿部さんは前人未到の登頂を目指す孤高の天才クライマーという役どころでした。阿部さんご自身は登山の経験はおありでしたか?
阿部:僕はないですね。今回スタッフと一緒に2合目まで行って、(山の上は)酸素が薄いので、低酸素室に何回か入って、もうビビりながらスタッフに迷惑かけないよう、トレーニングをしながらエヴェレストに向かいました。
最初、その場所に行くまでは撮影がなかったんです。岡田くんと尾野さんは撮影があったんですが、僕は15日くらい二人のあとをついていくだけだったんです。山に登っていくときも、岡田くんは屈強な体を持つ方ですから、それを超えるクライマーを演じなければならない…弱音を吐けないんで結構つらかったんですけど(笑)、涼しい顔をあえてしながら「大丈夫、大丈夫」って。
岡田:(阿部さんは)すごい涼しい顔をしていたので…
阿部:結構つらかったんです(笑)
岡田:(阿部さんは)孤高に役作りをされていて、どんどんどんどんヒゲも蓄えていきながら山男に変わっていく姿を見て「あ、やっぱすげーなー」って思いながら見てました。
阿部:(岡田くんは)普段から写真もやられているので、すごい上手なんです。ただ、役作りに入っているのはわかるんですが、山に入る2週間くらいずーっと僕をストーカーのように撮っているんです。トイレに行く時もついてくるから(笑)でもそれはもう羽生を追いかけている、羽生の生活の一部始終を追いかけていくという役だったので、すごいことだなと思いました。尊敬しています。
岡田:阿部さんはうまく撮れるんですけどね、尾野さんはうまく撮れないんです。
尾野:(笑)
岡田:なぜかわからないんですけど…(尾野に向かって)すみません!
阿部:僕が撮ってもらったのはすごいかっこいいんですよ!自分でも「俺か!?」って思うくらいなんですが、「おまえ、そういえば尾野さんを撮ってないけど…尾野さんも撮ったら?」って言ったら次の日撮ってましたが、普通のスナップみたいになってました(笑)
岡田:なんなんでしょうね(笑)深町誠になりきっていたのかな?なんかこううまく撮れなくて…羽生さんを撮っていたんですがそれが結構評判がよくって。じゃ尾野さんも撮ってよと言われて撮り始めたのですが、まーうまく撮れない撮れない…(また尾野を見て)すみません!
――尾野さんは、今回二人の男性の間で揺れ動く女性の役を演じるということで、数少ない女性の登場人物を演じられましたけど、演じるにあたって意識されたことはありますか?
尾野:監督から「ラブじゃないよな?ライクだよな?」っていうのをずっと山を登り始める頃から言われ続けていたので、もしラブになってもいいように、あるいはこのままライクのままでもいいように、と考えていました。でもこう登っている姿を見たらだれでもラブになっちゃいますよ。でもそれを抑えるように「ライク!ライク!」と言い聞かせて続けていました。
尾野真千子 映画「エヴェレスト 神々の山嶺」
――そして平山監督、お三方とも難しい役どころだったかと思いますが、監督として求めたことはありましたか?
平山:さきほど岡田さんが「生身の岡田」と言われてましたが、とにかくヒマラヤはでかくて、映画を撮る行為としては、5200~5500mが限界だと思うんです。気温も、朝起きたときはマイナス10何℃という中で「左向け」とか「右向け」とか「ここで泣け」とか「笑え」とか、そういう小手先のちっちゃな芝居が全く通用しない。そういうことはきっと俳優さんもわかってていらしたと思うし、そういう意味でもこの三人の方のドキュメンタリーというか…もちろん与えられた役はあるんですが、カメラを回している僕たちとしては、ナマのこの三人を丸ごと撮っている気がしていました。
平山秀幸 映画「エヴェレスト 神々の山嶺」
――実際にエヴェレストに登って撮影されていたときのお話を。まずは岡田さん、以前の会見のときには「日にちが経つほどつらくなっていくのを楽しみながら撮影をしたい」とおっしゃっていましたが、実際の5200mでの演技はいかがでしたか?
岡田:いろいろ考えていたことが通用しない場所だとは聴いていました。本当に空気が半分というのも経験したことがなかったので…高い山というと富士山しか登ったことがなかったので、それ以上高い5200mくらいというのはなかなか経験したことがなかったので、本当に苦しい中、みんなで共同生活を送って支えあいながら登った日もありました。
身体を良くするために「鼻うがい」を習ったんです。阿部さんに。(横で阿部が苦笑し始める)この話、しないほうがいいんですかね?(笑)健康でいるために5500mで「鼻うがい」を習っていたんです。それをうまくできなくて死にそうになった(笑)普通にいても苦しいのに、むせてうわーってなってなかなかうまくできなくて。でも健康のためにはしたほうがいい、ここで風邪をひく訳にはいかないって。あまり風邪はひかないんですが、ここで体調を悪くすることが怖くて…最後まで高山病にならず撮り切って下山をするためにやれることは最大限にしようということになったんですけど、「鼻うがい」は余計苦しくなりました(笑)
阿部:本当に…すみません(笑)僕は「鼻うがい」を完璧にできるんですけど、岡田くんはちょっと苦しかったんだよね。
岡田:(阿部は)「鼻うがいマスター」なので(笑)
阿部:(笑)本当に5000数百mの世界は、そこにたどり着くことが大変で。お風呂もないしトイレもまずない。さらに、毎日夜寝るのが怖いくらい、低酸素になるんで。ついに5000何百mにたどり着いたときには、昼間は無理して呼吸をするようにしたんですが、夜はどうしても呼吸が薄くなるんです。すると寒いのと頭が痛いのとで、なかなか過酷でした。
今回よくスタッフ全員が登りきれたなあ。そこからは時間との戦いで、そこに長時間いることのつらさ…一週間でギリギリ危なくなって下りた人もいるし、そういう過酷な中でみんな気を引き締めてやっていたという。本当に酸素が半分しかない、呼吸も苦しいし、セリフにも影響が出るだろうし、そういうのをリアルに表現しようと、山屋さん(山の専門の方)がそばにいて「大きく息を吐いちゃだめ、大きく動いちゃだめ」っていうのを聴いて、思いっきりリアルにやってやろうとしていました。
あの環境というのは、すぐ手の届くところにヒマラヤがあるんです。でも距離がわからない。距離感が尋常じゃないんです。すぐそこにあるようだけど…ある種、異常な世界。それを撮り切ってきたということが、僕の俳優としての背中に乗っかって伝わればいいな、それを信じながら、苦しさと闘いながらやっていました。
――尾野さん、こういう話を聴くと女性としてはたじろいでしまうかもしれませんが…。
尾野:山の上に登ると、気圧の問題とかで3Kgくらい痩せるらしいんです。皆さんどんどん痩せていく中、私、3Kg太りまして(笑)なぜでしょう?腹八分目にしておけばいいのに常に満腹食べちゃったから?
岡田:(尾野を見て)誰よりもタフだったと思います(笑)
尾野真千子 映画「エヴェレスト 神々の山嶺」
――今回尾野さんはエヴェレストに登れるということが出演OKの要因だったそうですが。
尾野:台本をいただいて「エヴェレストに登る話ですよ」と言われて「はい、登ります」って(笑顔)
――エヴェレストに登ったからこそ感じられたこと、演技につながったこともあると思いますが、いかがでしょうか?
岡田:実際に何に惹かれているのかとか、どうしてそこまで登るのか…というのが、尾野さんが演じられている役柄のセリフにあるんですが、僕らも登ったことがないので、どうして本気で登りたいのか、そこで何に惹かれたのか、命を燃やしてまでかける情熱とは、生きるとは…。山の気高さというのもありましたね。それらを感じるためにもみんなでその場所を歩きながら苦しさや厳しさというのを感じて登っていました。もしこれがスタジオセットで撮っていたとしたら感じることができない苦しさだった。実際に行けて撮れたのは自分にとっても大事なものとなりました。
阿部:スタッフ一丸となれましたね。そこまでたどり着くのにずーっと山を登って行く訳ですよ、毎日毎日。その中で助け合いながら行く訳ですから、スタッフ一丸となってそこに達成できてからいよいよ撮影となって、始まっていく。口では表現しきれませんが、家一個分もある大きな岩が、1点で乗っかっているのとか…残念ながら震災があったのでもう落ちていると思うんですが、もう見たことのない光景だらけで一歩間違えたら何が起きるかわからない中で撮影できた緊張感…現場に行かなければあのスケールの大きさ、あの空気、あの太陽はわからなかった。あの現場に行って撮影できたことは、すごく大きなことだったんじゃないかなと思います。
阿部寛 映画「エヴェレスト 神々の山嶺」
――最後に、本作のテーマのひとつは「限界を超える挑戦」。今年も残すところ2週間、年の瀬ということもありますので、キャストの皆さまに来年の抱負として「自分の限界を超えて新たにチャレンジしてみたいこと」をお伺いしたいと思います。
岡田:この作品は日本の映画史の中でもトップ10に入る過酷な撮影現場で、限界を超えながら撮影をしてきたものですが…あのう…もう一回行きたいです!もう一回、限界を超える場所で、あの景色が忘れられなくて。自分が立ったあの場所のもうちょっと上に行きたいな…と、ひそかに夢を描いています。
阿部:岡田くんはもう一回行きたいって言ってたけど…でもそういう感じになるんですね、山って。神に近いというか。僕、岡田くんより3日前に撮影が終わったんですよ。5200mくらいのところで。それで、岡田くんもみんなもまだ頑張っているから、僕もその前に10日間くらいいたんですが、「残ろうかな?」って思ったんです。が、くじけて…(笑)すみません、ヘリで「さようならー!」って帰っちゃって。すみません、見送っていただいて。
岡田・尾野:(笑)
阿部:ココロが折れて先に下山しちゃったんですが、そういうことがないように来年頑張りたいと思います(笑)
尾野:私もエヴェレストにもう1回登りたいですね。やはり少し下にいると…5200mだと少しストレスですね。てっぺんが見えているので。来年とは言いませんが、いつかあの山に登ってみたいです。あとはお芝居の上で限界のない演技をやり続けていきたいです。
■日時:2016年3月12日公開
■原作:夢枕獏「神々の山嶺」(角川文庫・集英社文庫)
■脚本:加藤正人
■音楽:加古隆
■監督:平山秀幸
■出演:
岡田准一、阿部寛、尾野真千子
ピエール瀧 甲本雅裕 風間俊介
テインレィ・ロンドゥップ 佐々木蔵之介 ほか
■公式サイト:http://everest-movie.jp/