飯島望未&山本雅也、爽やかに舞う! 熊川哲也 Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』ゲネプロレポート

2021.5.19
レポート
クラシック
舞台

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

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熊川哲也 Kバレエ カンパニー Spring 2021『ドン・キホーテ』が2021年5月19日(木)~23日(日)Bunkamuraオーチャードホールにて催される。Kバレエの看板作品の1つで、3年ぶりの上演だ。開幕前日の5月18日(水)に行われた公開ゲネプロには、4組の主演キャストの中からKバレエデビューを飾る注目のバレリーナ飯島望未、若き気鋭プリンシパルの山本雅也が登板。話題の顔合わせによる舞台の模様をお伝えする。なお飯島&山本が主演する5月23日(日)13:00公演は、日本を含む世界19の国・地域に向けてオンラインライブ同時配信される。

■飯島望未、Kバレエに鮮烈デビュー!

Kバレエ カンパニーに、また新たな息吹が吹き込まれる――。今年8月に入団が決まっている飯島が、一足早く登場した『ドン・キホーテ』において、爽やかな演技を披露した。舞台はスペインのバルセロナ。飯島が演じる旅籠の娘キトリと山本が扮する理髪師バジルの恋物語は明るく華やか。飯島は町の広場に姿を現したその瞬間から、キトリとして役を生きていた。上手から登場した飯島の、ふわりと宙を浮く跳躍の鮮やかなこと。そして深紅の衣裳が実に映える。

飯島は13歳の時に若手バレエダンサーの登竜門「ユース・アメリカ・グランプリ」NYファイナルで第3位入賞。15歳で渡米し、2008年、16歳の時に名門ヒューストン・バレエ団とプロ契約を結ぶ。2019年には同バレエ団の最高位プリンシパルに昇格し、古典だけでなく現代作品でも活躍。さらにファッション雑誌などからも数多く取り上げられ、2019年にはシャネルビューティーアンバサダーに就任するなどファッショニスタとしてモード界からも熱い視線を送られている。そんな注目株が、この度帰国し、Kバレエの一員として新たなスタートを切った。

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

■山本雅也、プリンシパル昇進後初のバジルに注目!

飯島のキトリは、柔らかに背中を反らしたポーズが美しく、扇子さばきも粋である。それでいて非常にチャーミングだ。そこへ山本バジルがギターを手に颯爽と現れる。恋人を一途に想うキトリと、彼女と相思相愛だが浮気なところもあるバジルのやりとりは微笑ましく、リフトも含め息の合ったデュエットの弾け具合もよい。相性もプロポーションのバランスもぴったりであることが直ちに見て取れる。山本は2018年に続く2度目のバジル役で、プリンシパルとしては初めて。弾むようなジャンプや緩急自在なピルエットも冴え、序幕から盛り上げた。

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

■熊川哲也のこだわりが満載!

熊川にとって『ドン・キホーテ』はトレードマークといっていい。10代でローザンヌ国際バレエコンクールでゴールド・メダルを受賞した際に踊り、以降十八番となった。2004年初演の熊川版『ドン・キホーテ』は、プティパ/ゴールスキーの原振付を基に、創意工夫を凝らす。最大のこだわりが、熊川のデザインによる舞台美術と衣裳であろう。石造の建造物に囲まれたバルセロナの街の風景。穏やかな色調による洗練された衣裳。地中海の港町の情景を、繊細に煌く陽光や乾季のある風土を立体的に立ち上げ、そこに多彩な登場人物たちによる踊りとドラマを描く。

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

第1幕、キトリの父ロレンツォ(伊坂文月)、彼が娘と婚約させようとする貴族ガマーシュ(ビャンバ・バットボルト)らが入り乱れる。そこへ遍歴の騎士ドン・キホーテ(ニコライ・ヴィユウジャーニン)、サンチョ・パンサ(酒匂麗)が登場。ドン・キホーテは、キトリを愛しの姫ドルシネアだと思い込んでしまうーー。プロローグから一貫してタイトル・ロールのドン・キホーテにしっかりと光を当てているのもこだわり。踊りの見せ場も豊富だ。メルセデス(戸田梨紗子)、エスパーダ(杉野慧)は町の人気者で花形の存在にふさわしい豪胆で押しの強い踊りで魅せる。花売り娘(成田紗弥、毛利実沙子)には、とび切り踊れる面々が配され充実。

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

■変化に富んだ第2幕

第2幕冒頭、ジプシーたちの野営地でキトリとバジルが踊るアダージョは情感豊かに迫って来る名場面だ。ここではジプシーたちが人形劇を披露するおなじみの場面がないが、その分テンポよく進み、彼らのダイナミックな踊りを堪能できる。続く夢の場面では、ドン・キホーテの夢の中にドルシネア(片岡美紅)だけでなくキトリも登場。通常一人二役で務めるが、ここではキトリとドルシネアは別の存在だとはっきりと示す。最後の居酒屋の場面では、バジルが「キトリとの結婚を認めてくれないならば死ぬ!」と狂言自殺を図る。ドン・キホーテとガマーシュの剣闘場面もあって楽しい。

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

■高揚感あふれる大団円

第3幕はキトリとバジルが結ばれる大団円。飯島は白を基調に黒をあしらったチュチュ姿で、シャープな存在感が際立つ。山本は躍動感に富んだジャンプを連発し、ポーズもカッコよく決めた。今やKバレエを背負って立つプリンシパルとしての風格もあるが、それ以上にのびのびと踊り満喫している様子で、それが観る者を楽しませる。フレッシュなペアの輝きは得難い。全幕を通して、井田勝大の指揮によるシアター オーケストラ トーキョーが踊りと演技のツボを心得て演奏し、バレエ=舞踊劇にとって、いかに音楽が大事かということ実感させられた。

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

■日本のバレエ、新時代へ

早くから海外で活躍してきた飯島。ローザンヌで将来を嘱望され、英国留学を経てKバレエ一筋の山本。キャリアは異なれど才能豊かな旬の2人が、日本で踊ることを選び、清新に魅せる。ちなみに飯島はBunkamuraオーチャードホール芸術監督でもある熊川が総合監修を務めた『オーチャード・バレエ・ガラ~JAPANESE DANCERS~』に2015年、2019年の2回とも出演。山本のローザンヌ出場時の審査員の1人が熊川であった。コロナ禍の厳しい時代だが、蒔かれてきた種は自ずと未来への布石となり、今に結び付いているに違いない。世界を知る名伯楽・熊川を起点に、日本のバレエに新たな実りが生まれていることをうれしく思う。

Kバレエ カンパニー『ドン・キホーテ』 (C)Hidemi Seto

取材・文=高橋森彦

公演情報

Kバレエカンパニー Spring 2011『ドン・キホーテ』

(C)Toru Hiraiwa


[公演日]2021年5月19日(水)~5月23日(日)
[会場]Bunkamura オーチャードホール 
[芸術監督]熊川哲也 
[演出・再振付・舞台美術・衣裳デザイン]熊川哲也 
[原振付]マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴールスキー 
[音楽]レオン・ミンクス 
[照明]足立 恒 
[指揮]井田勝大 
[管弦楽]シアター オーケストラ トーキョー 
[出演者] 
キトリ:飯島望未、日髙世菜、小林美奈、毛利実沙子 
バジル:堀内將平、山本雅也、髙橋裕哉、杉野 慧 
他 K バレエ カンパニー 
 
<料金> 
料金(税込):S席15000円 / A席 11000円 / B席 8000円 / C席 6000円 A親子席 15000円 ※大人1名 +子供 1 名 (5歳以上小学6年生以下)(A席エリア) 学生券 3500円 ※中学生以上 25歳以下 / 当日学生証を提示の上引き換え 
※A親子席・学生券はぴあ WEB のみ取り扱い。
 
【ライブ配信】
■配信日時:2021年5月23日(日)13:00
キトリ:飯島 望未
バジル:山本 雅也
エスパーダ:杉野 慧
ほか Kバレエ カンパニー
※実際の公演同様、開演が遅れる場合もございます


■配信国 ※今後追加される可能性もあります
日本、アメリカ、カナダ、ブラジル、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランド、オーストラリア、台湾、香港、マカオ、韓国、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン


■ライブ配信視聴
視聴券(国内):3,800 円(税込・手数料別)
視聴券(海外):4,373 円(税・手数料込)

購入先
【日本向け】
Streaming + : https://eplus.jp/sf/detail/0091860048

※販売期間:5月12日(水)12:00~5月29日(土)20:00

主催:TBS 
特別協賛:大和ハウス工業株式会社 
協賛:SL Creations 
オフィシャルエアライン:ANA 
協力:Bunkamura 
制作:K‐BALLET/TBS
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