中村倫也が誘う、覆面アーティスト・バンクシーの世界　『バンクシーって誰？ 展』記者発表会レポート

2021年8月21日（土）から12月5日（日）まで、天王洲アイルの寺田倉庫G1ビルにて『バンクシーって誰？ 展』が開催される。世界中の街角にゲリラ的に作品を残すスタイルで知られる、神出鬼没の覆面アーティスト・バンクシー。作品が高額取引されたニュースがアートシーンを賑わすなど、もはやストリートの落書き（グラフィティ）を超えて完全にアート作品としての地位を確立している。

本展では謎に包まれたバンクシー活動の軌跡を、個人蔵のオリジナル作品＆体感型コンテンツでたどる。この “体感型コンテンツ” というのが非常に特徴的なポイントで、世界中に分散するバンクシーのストリートアート代表作を、テレビ局の美術チームが街並みごとリアルに再現するのだという。どこかでその名は聞いたことあるような気もするけど「実際のところ、バンクシーって誰？」という人にとって、その魅力に浸ることができる絶好の機会だ。

『バンクシーって誰？ 展』の公式アンバサダーは、俳優の中村倫也。5月27日に行われた記者発表会には中村も登場し、展覧会の見どころやアンバサダーとしての意気込みを語った。

ーーアンバサダーとしての意気込みのほどは？

バンクシー作品と僕が出会ったのは、2018年のシュレッダー事件（※）のときなんです。テレビやニュースで色々取り上げられてたのを見て、「何してんだこの人はー！」って。で、色々調べてみたら素性は謎だし。その作品もメッセージ性が強くて、かつセンスが良くて、すごく興味が湧いたんですね。今回はそんなバンクシーの魅力を皆さんに伝えられるアンバサダーになりたいと思ってます。

※シュレッダー事件：2018年、イギリスの老舗オークションハウス「サザビーズ」の競売でバンクシーの《Girl with Balloon》が約1億5000万円で落札された直後、バンクシー本人があらかじめ額縁に仕込んでおいたシュレッダーが作動して作品が細断された事件。世界中のアートファンが度肝を抜かれ、バンクシーの名がさらに広く知られることになった。

ーーアンバサダーのオファーをもらったときはどんな気持ちでしたか？

「アンバサダーって何？」って思いましたね、最初は（笑）。アンバサダーって何ですか？（と、逆に司会者に質問）。なんとなくニュアンスは知ってたんですけど……。なんで自分のところに話が来たんだろうと思いましたね。でもそれこそ気になってたバンクシーだし、面白そうな展示の仕方だったので、その説明を聞いてぜひ自分でよければとお受けしました。

ーーバンクシーの作品にはどんな印象を抱きますか？

やっぱり、すごくセンスがいいですよね。（バンクシーみたいに）いろんなメッセージ性をアート作品で表現しようとすると、きっと、ちょっと間違えると “お寒い” 感じになりかねないと思うんです。でもそれがこれだけ世界中で注目されて、影響力を持って。25億円で落札されるくらい価値のあるものになっているというのは、それだけセンスが光ってるんだろうなって思いますし、そういうアウトプットの仕方は、同じ表現者としてとてもかっこいいなって憧れる部分もありますね。

ーー中村さんご自身も絵を描かれるそうですね。インスピレーションはどんなときに湧くのでしょうか？

いやあ、僕はそんな対した絵を描いてるわけじゃないんですけど……。だいたい現場とかで特徴的な顔立ちの人を見ると、ムクムクっと描きたい気持ちが湧いて来ますね。「あっなんか描けそうだな」って。で、一回その人を描いたら、次からはもう見ずにチャチャっと描いて、現場のいろんなところに貼るっていうね。そんなストリートアートを僕もやってます（笑）。でもそれを名乗らないんですよ、自分では。だからよく現場では「これ描いたの誰？」ってなってますよ。

ーーなるほど！　中村さんもバンクシー現象を起こしてるんですね。

ええ、バンクシってますね。撮影現場を探すと絵が隠れてるかも……。なんて、すみません僕のくだらない話に付き合わせてしまって（笑）。

ーーバンクシーの作品を見て、絵を描く上で影響されることはありますか？

彼のやっているのがスプレーアート（ステンシル）じゃないですか。それはなかなかやったことはないですけど……。あ、でも、家の家具にやりましたね、そういえば。市販のステンシルシートを買って。それをスプレーのりで家具にペタッと貼って、シャーっとスプレーしてって。

ーーでは、もしかしたら既にバンクシーに影響を受けているかも？

影響受けてますね。でもこれを日本の街ではやっちゃダメですよね。ちゃんと許可取らないと。

ーーバンクシーは覆面アーティストとして活動されていますが、中村さんはバンクシーって一体どんな人だと想像されますか？

どんな人なんですかね……。バンクシーって、実はいなかったら面白いですけどね。それか、初老の男性。もしくは、天才中学生みたいな？　ちょっと、ゴメンなさい大喜利は不得意なもので（笑）。でも、ずっと分からないほうが面白いのかなとも思うんです。もちろん勝手に作品とかから色々想像するけど、「結局わかんない」っていうのが一番楽しいんじゃないかって思ってます。

ーーバンクシーは秘密の多いアーティストですが、中村さんの秘密を教えてもらえませんか？

うーん、あんまり無いんですけど、秘密が多そうだとはよく思われます。謎が多そう、とか。それは10代の頃から結構言われてて。自分としてはすごくオープンに生きてるつもりなんですけどね。そのおかげでいいように解釈してもらえたりもしてて。秘密か……。弱点でいうなら、高いところが怖いっていうのと、暗いところがよく見えないっていうのと、ゆで卵の殻が剥けない……っていうのは思いつきますね。

ーー芸能人の方は顔バレしているので行動に制限がかかることも多いかと思います。もし（バンクシーのように）顔バレしていなかったら、やってみたいことはありますか？

それが僕、顔バレしないんですよね。ちょっと前とか、舞台の帰りに電車乗ったら、すぐ隣にその舞台の感想話してるお客さんがいたこともあるくらい。だから逆にちょっとくらい顔バレしたいですね（笑）。特に最近はマスクもしてますから全く支障が無くて、普通に歩いてるんですよ。

ーー『バンクシーって誰？ 展』の見どころ、楽しみなところを教えてください。

巨匠の作品を見たいと思ったら置いてある美術館に行けば見られますけど、バンクシーの絵ってストリートにあるスタイルなので、例えばイスラエルだとか、なかなか現地に行けないじゃないですか。アートって体験が伴ったほうがより自分に得るものや感じるものが大きいと思うんです。今回は寺田倉庫さんで映画セットのような体験型の展示をされるので、僕自身も見てみたいなって思いますし、すごく楽しみです。

花束を投げる男（※）なんて、あんなにデカイんですね。あれだけの大きさのものを紛争地帯で描くっていうのは、それだけあの絵に対するモチベーションというか、思いがあるわけじゃないですか。そのサイズでもそのリスクがうかがい知れますし、ぜひ体感したいですよね。

※展覧会会場に再現される予定の、ベツレヘム郊外に描かれた《Flower Thrower》は高さ約5mを超えるバンクシーの代表作。花束を投げる男のモチーフは本展フライヤーにも採用されている《Love Is In The Air》でも見ることができる。

ーー今回は音声ガイドナビゲーターにも挑戦されるそうですね。

そうです。その絵を見て自由に感じてほしいのはもちろんなんですが、補足する別の視点というか、鑑賞する上でのちょっとした手助けになれたらと思ってますので、まあ参考程度に。まずは自分の目で見て感じて、それから音声ガイドもプラスして見ていただく、そんな楽しみ方もいいんじゃないかなと思いますので、来てくださった方は音声ガイドもぜひ聞いていただければと思います。

『バンクシーって誰？ 展』は、2021年8月21日（土）から12月5日（日）まで、天王洲アイルの寺田倉庫G1ビルにて開催。その後、名古屋、大阪、郡山、高岡、福岡への巡回を予定している。

東京展の前売券は、日テレゼロチケとイープラスにて、5月27日（木）より発売中。なお中村倫也のアンバサダー就任を記念して、前売券を購入すると抽選で「アンバサダー・中村倫也サイン入り展覧会フライヤー」や「展覧会オリジナルマスク」のプレゼントが当たるキャンペーンも実施中なので、お見逃しなく。

文＝小杉美香　撮影＝大橋祐希