緑黄色社会、 全国ホールツアー『リョクシャ化計画2021』を完走 ファイナル・大阪フェスティバルホール公演の公式レポート到着
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『リョクシャ化計画2021』 Photo by ハヤシマコ
緑黄色社会が全国ホールツアー『リョクシャ化計画2021』を完走した。本記事では2021年8月21日(土)に大阪・フェスティバルホールで行われたファイナル公演のオフィシャルレポートをお届けする。
緑黄色社会の全国ホールツアー『リョクシャ化計画2021』の最終公演が2021年8月21日、大阪・フェスティバルホールにて開催された。
5月23日の広島・JMS アステールプラザ 大ホールを皮切りに、東京ガーデンシアターを含め全国9会場を巡る、自身初の全国ホールツアー『リョクシャ化計画2021』。昨年(2020年)の『SINGALONG tour 2020』が新型コロナウイルス感染拡大の影響でわずか1公演の開催となったこともあり、緑黄色社会の全国ツアーは2019年の『リョクシャ化計画2019』以来約1年半ぶりの開催となる。
当初はツアー中3公演目・5月30日に予定されていた大阪・フェスティバルホール公演は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため開催延期、8月21日・同会場の振替公演がツアーの最後を飾る形となった。
『リョクシャ化計画2021』 Photo by ハヤシマコ
昔懐かしいRPG風のオープニング映像と「パスワード:FINAL」の文字が舞台の白幕に映し出され、場内から大きな拍手が湧き上がる。そして、長屋晴子(Vocal & Guitar)、小林壱誓(Guitar)、peppe(Keyboard)、穴見真吾(Bass)とサポートドラマー=比田井修の5人が最初に演奏したのは「夏を生きる」だった。
アルバム『SINGALONG』がコロナ禍により発売延期となった際、新たにアルバムに追加された楽曲「夏を生きる」。困難な時代の中、それでも決然と音楽を表現しようとする緑黄色社会の象徴のようなこの曲が、真夏の開放感そのもののように高らかに鳴り渡った。
感染防止対策のため、場内には歓声も歌声も響くことはなかったが、「LADYBUG」「スカーレット」のアグレッシブな熱演に沸き立つ客席一面のクラップは、この日を待ち侘びたオーディエンスの多幸感をリアルに伝えるものだった。
「大阪、お待たせ! みんなの目とか、表情とか、動きとか、マスクしてても全部ちゃんと伝わります。だから、声が出せなくても、身を任せて、この時間を楽しんでもらいたいと思います。私たちも全力で、みんなのことを『リョクシャ化』しに行くので!」――「regret」をひときわ伸びやかに歌い上げた後、長屋が呼びかけるまっすぐな言葉に、熱い拍手が広がる。
『リョクシャ化計画2021』 Photo by ハヤシマコ
モータウンビートの「恋って」では4人のコーラスに合わせて会場一丸の手拍子が響き、4つ打ちのリズムと鮮烈なアンサンブルが印象的な「Bitter」に一面のハンドウェーブが巻き起こる。さらに、メロディアスなバラード曲「Copy」が重なり合い――と1曲ごとにカラフルな景色を描き出すライブ展開に、オーディエンスは刻一刻と歓喜の熱量を増していく。
「僕らは音源っていう形でCDを作ったり配信したりするんだけど。『届いてるな』『聴いてくれてるんだな』って実感できるのがライブで。生きる糧なんですよ」と語りかけるのは小林。「ライブができるっていうことだけで最高じゃないですか? ライブ最高だ!」とエモーショナルに叫び上げるコールが、場内の一体感をよりいっそう高めていった。
『リョクシャ化計画2021』 Photo by ハヤシマコ
歌詞にちなんで長屋が丸・三角・四角のバルーンを手にして歌った「愛のかたち」や壮大なバラードナンバー「想い人」など、アルバム『SINGALONG』の楽曲も多く披露されていたこの日のライブ。しかし今回の軸は、「今の私たちの『したい』『やりたい』を詰め込んだセットリスト」という長屋の言葉通り、「たとえたとえ」「結証」など『SINGALONG』後にリリースされた楽曲群だった。
そして終盤、「壱誓と真吾が、本当に素敵な曲を書いてきてくれました。初めて演奏します」(長屋)とライブ初披露したのは、テレビ朝日系 木曜ドラマ『緊急取調室』の主題歌「LITMUS」だった。peppeのピアノの調べに小林のギターサウンドと穴見の強靭なベースラインが絡み合う中、長屋の鮮烈な歌声がドラマチックに高まり、圧巻の音世界を繰り広げてみせた。
『リョクシャ化計画2021』 Photo by ハヤシマコ
「大阪のみんなに、5月30日にようやく会えるかな?って思ったら、延期になってしまって。すごく待たせたのに、『待ってます』ってあったかい言葉を言ってくれて。コロナでみんな不安や孤独を抱えてると思うし、『私たちが支えてあげなきゃな』って思ってたんですけど……みんなの方がカッコよくて、逞しくて。みんなの存在に助けられてました。みんなが私たちのファンでいてくれて、本当に救われています。いつもありがとう!」
『リョクシャ化計画2021』 Photo by ハヤシマコ
万感の想いに声を震わせながら、感謝の気持ちを伝える長屋の姿に、惜しみない拍手がホールの空間を埋め尽くしていった。その直後、割れんばかりのクラップとともに、「sabotage」から「あのころ見た光」「始まりの歌」と怒濤のクライマックスへと突入。最後はミラーボールと特効の火花がきらめく中、「Mela!」の躍動感あふれる歌と音像、そして「会いに来てくれてありがとう! もっともっといい景色、目指していこうね。大好きだよ!」という晴れやかな長屋のシャウトで、本編を目映く締め括った。
メンバーが一度舞台を去った後、RPG風の映像が「メンバーはつかれている。どうしますか?[コマンド:拍手]」と「BONUS STAGE」=アンコールへと観客を誘う。熱い拍手に応えて再びステージへ姿を見せたメンバーは「Shout Baby」、さらに8月25日発売のシングル『LITMUS』からSEA BREEZEのCMソング「これからのこと、それからのこと」を披露。セットリストの半分以上がタイアップ曲という今回のライブの構成は、さまざまな方向性から時代に求められ時代と共鳴する緑黄色社会の在り方と、そこに紛れもない「緑黄色社会の表現」としての訴求力とポップの輝きを宿らせる4人のポテンシャルの高さを、改めて証明するものだった。
「無観客ライブを配信したりとか、誰もいないライブハウスでライブをしたり……やっぱりすごく寂しかった。こうしてみんながライブに来てくれることはすごいことなんだなって、日に日に思ってます。みんなが何も怖がらずにライブに来れる日が、早く来るといいなと思ってます。それまで、どうか元気で。絶対に元気で!」
そんなふうに語りかける長屋の言葉とともに、この日のラストに演奏したのは、アルバム『緑黄色社会』からの名曲「Re」。《見据えてた世界が突然 姿を消して置き去り》というフレーズに始まり《やり直せないことなんてないさ/何度でも言うよ 僕らもう一度》という終幕に至るこの曲が、暗闇に差す光のように美しく響いていた。
尚、『リョクシャ化計画2021』は、8月23日(月)にM-ON LIVEにて、7月4日に行われた東京公演(東京ガーデンシアター)の模様がオンエアされる。
文=高橋智樹 撮影=ハヤシマコ