劇団王道の音楽劇を鮮やかに再演 劇団鹿殺し 活動20周年記念公演『キルミーアゲイン’21』公演レポート
劇団鹿殺し活動20周年記念公演 『キルミーアゲイン’21』舞台写真 写真:和田咲子
劇団鹿殺し 活動20周年記念公演『キルミーアゲイン'21』が、2021年9月30日(木)に紀伊國屋ホールで開幕した。本稿ではゲネプロの様子をレポートする
2016年に初演した『キルミーアゲイン』をリクリエイトした本公演は、作品の新たな魅力を引き出した「劇団鹿殺し」王道の音楽劇となっている。歌あり、ダンスあり、楽隊による演奏ありの賑やかな舞台で、どこか抜けている愛おしい登場人物たちの奮闘をコミカルに描いた。
ダム建設に揺れる山間の村に、1人の男が帰ってきてこの物語は始まる。
写真:和田咲子
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東京で演劇活動をしている同級生の藪中(真田佑馬・7ORDER)を村に呼び戻した河本(丸尾丸一郎)。2人は村にある古い劇場「たにし座」で再会する。村がダムの底に沈むことを阻止するために芝居を作り、劇作家である藪中の力を借りようと考えたのだ。村のダム建設反対派の人々はメッセージを込めた芝居を作ろうと奔走する。しかし反対運動のための芝居が、なぜか本筋から外れたアングラ劇になってしまう。
写真:和田咲子
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ベースは喜劇なのだが、村には16年前に起きた悲劇の深い傷跡が残り、心に影を落とした登場人物たちそれぞれの物語が背景にある。舞台は、現在と過去の追想とを交互に描きながら展開していく。
写真:和田咲子
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本公演でまず目を引くのは、劇中劇で登場する人魚たちによるダンス。鹿殺しの男優はもちろんのこと、客演の真田佑馬(7ORDER)、梅津瑞樹らにも遠慮なくマーメイドの衣装をまとわせて、華やかに、愛嬌たっぷりのダンスで魅せてくれる。
劇中でまず人魚の姿を披露するのは、美形の梅津。女装がしっくりきてしまう男性がたまにいるが、梅津の場合、女装感が抜け切らない、絶妙な愛らしさがあった。本作ではこういった楽しい場面が目白押しとなっている。
写真:和田咲子
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梅津に限らず、ゲスト出演者が鹿殺しカラー満載の舞台での差し色となり、世界観に厚みを持たせていた。アングラ劇を書いてしまう藪中を演じる真田佑馬、脱線していく芝居にツッコミを入れる不動産屋の大蔵を演じる小林けんいち(動物電気)、村に残る「劇団たにし」の2代目館長でけれん味たっぷりのキャラクター市川たにしを演じる谷山知宏(花組芝居)たちの好演が光る。
写真:和田咲子
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また『銀河鉄道の夜』では、劇団鹿殺しの身体表現や宮沢賢治の繊細なSFの世界と融合し、突き抜けるような鮮やかさを見せたタテの楽曲は、今作でも存在感を放っていた。謎の女性・及川やまめを演じる菜月チョビがタテの新曲「キルミーアゲイン」を歌い上げるシーンでは、歌詞と歌声を通じて物語の核となるテーマが、鮮明に浮かび上がった。
そして悲劇の真相が明かされる場面以降は、ダイナミックなストーリー展開を見せていく。巨大なパネルを複数使って交錯する時間や心の葛藤を表現した演出は見どころのひとつとなっているので、刮目してほしい。
写真:和田咲子
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劇団の20周年を記念する本公演は、初期衝動に立ち戻り、エナジーが蘇生されるような情熱的な舞台となっていた。心の中に火が灯るような、明るい気持ちにさせてくれる。東京公演は2021年10月10日(日)まで。10月15日(金)からIMPホールで大阪公演が行われる。
写真:和田咲子
写真:和田咲子
取材・文=石水典子
公演情報
『キルミーアゲイン’21』
■演出:菜月チョビ
■音楽:タテタカコ
■出演:
丸尾丸一郎 菜月チョビ 鷺沼恵美子
浅野康之 メガマスミ 長瀬絹也
内藤ぶり 藤綾近 前川ゆう
真田佑馬 梅津瑞樹
小林けんいち 谷山知宏
ほか
■料金:全席指定5,900円
パンフレット付・台本付前売券各7,300円/パンフレット+台本付前売券8,700円
ヤング券(U-22)3,500円
■問合せ:オフィス鹿 Tel. 03-6265-8518/Email: ticket@shika564.com
■日程:2021年9月30日(木)~10月10日(日)
■会場:紀伊國屋ホール
■開演時間:平日19:00、土曜13:00/18:00、日曜13:00、4日休演
■日程:2021年10月15日(金)~10月17日(日)
■会場:大阪IMPホール
■開演時間:15日19:00、16日13:00/18:00、17日12:00/16:30