横山だいすけらが再び熱い青春の物語を紡ぐ ミュージカル『オープニングナイト』~桜咲高校ミュージカル部~再演ゲネプロレポート
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横山 だいすけ
2021年7月に初演が行われたミュージカル『オープニングナイト』~桜咲高校ミュージカル部~。横山だいすけを主演に、ミュージカル部の生徒を男性メイン・女性メインの2パターンで演じるというユニークな取り組みで注目を集めた。
高校生たちの熱い青春の物語であると同時に、彼らを見守る大人たちの想いも丁寧に描いている本作は、10月29日(金)より早くも再演がスタート。初日を前に行われたteam Blueのゲネプロの様子をお届けしよう。
キャスト陣はほとんどが7月の初演から続投。そのおかげもあるのか、カンパニー全体のチームワークが強まり、本当に学校のような雰囲気が感じられた。また、初演を踏まえて各々のキャラクターがさらにブラッシュアップされており、それぞれの個性がしっかりと伝わってくる。教師・生徒たちともに、一人ひとりが主人公と言っても過言ではない存在感と輝きを放っていた。
三倉佳奈、横山だいすけ
横山演じるテッペイ先生は、初演よりさらにチャーミングなイメージに。前回は(運動は苦手だが)体育会系な雰囲気の元気な先生だったが、今回はよりコミカルで少年のような無邪気さと愛嬌がある。それでいて、生徒たちを見守る温かい視線や生徒たちのために奔走する様子からは、大人としての優しさが感じられる。そのギャップにより、親しみやすいテッペイ先生のキャラクターが際立っていた。
そんな彼が想いを寄せる保健室の先生・ミオは、恋に落ちてしまうのも納得の癒し系。他の教師たちとは少し違う立場だからこその温かさをもち、お姉さんのような優しさでミュージカル部を見守る、清涼剤のような存在だ。
武藤潤(原因は自分にある。)
生徒の一人で、ミュージカル部設立の立役者・マイトは、物語の冒頭、憧れの音楽会館に足を踏み入れるシーンの希望に満ちた表情が素晴らしい。ミュージカルに挑戦するという夢がようやく叶うという喜びに溢れた笑顔と明るい声に、見ているこちらもつられてワクワクしてしまう。武藤が表情豊かにマイトを演じていることで、彼の情熱に動かされるテッペイ先生・仲間たちもよりイキイキと魅力的に見えてくる。
マイトの親友・ヒロキ役の杢代は、親友の新たな一面に戸惑いつつ、夢を叶えるために協力をする、クールだが情に厚い男子高校生を好演。「ミュージカルってなんか恥ずかしくない?」と言っていたヒロキが積極的に部を牽引するようになるまでの心の変化を丁寧に表現し、二人の友情を鮮やかに描いている。
大倉が演じるのは、理事長の息子で、龍神カンパニーの後継になることを期待されているオウタ。親の希望とファッションデザイナーという自らの夢の間で揺れる様子を繊細に見せてくれる。父親と対峙するシーンでは、落ち着いた佇まいの中に葛藤や苦悩が見え、一つひとつのセリフが重く響く。そんな彼がマイトと出会い、ミュージカル部の仲間と過ごすうちに、普通の高校生らしい笑顔が増えていくことにグッときた。
杢代 和人(原因は自分にある。)
大倉 空人(原因は自分にある。)
瑛は態度や口調こそ乱暴だが優しく面倒見のいいユージを魅力たっぷりに演じる。ミュージカル部においては兄貴的な立場の彼が、おませで口の達者な妹に振り回される様子は実に微笑ましい。力強い歌声やダンスにも、キャラクターらしさが詰まっている。
いじめられっ子のソースケは、ビクビクしながらも不良っぽいユージに果敢に話しかけたり、ダンスシーンでは誰よりも楽しそうに飛び跳ねたりと、気弱なだけではない一面が垣間見えるのがかわいらしい。演じる村上のキレのあるダンスと伸びやかな歌声にグッと心を掴まれた。
中谷は今回も抜群の歌唱力を発揮し、存在感を放っている。より厚みを増した歌声や美しいハーモニーは聴いていて心地良い。また、人懐っこいが冷めた口調や態度で、計算高いタロウの一筋縄ではいかない性格をうまく見せている。
パワーアップしたのはミュージカル部の仲間たちだけではない。
湖月 わたる
湖月演じる校長は、理事長や教頭とのやりとりのコミカルさが増したことで、テッペイ先生や生徒たちの前に立ちはだかるシーンの威光や凛々しさも強くなった。厳しい“壁”でありながらも、どこか憎めないチャーミングな人物として物語を盛り上げている。
そんな校長を側で支える教頭役の野々村は、頼りなさの中にも強かさが感じられる。校長や理事長に服従しつつ、どこか飄々とした雰囲気があるのも楽しい。
オウタにとっての大きな壁である理事長役の福井は、息子への期待と愛情を滲ませる演技と歌声で複雑な親心を表現。親子の不器用なやりとりやすれ違いに、ぎゅっと胸が締め付けられる。
野々村 真
福井 貴一
アンサンブルの面々も抜群の安定感で作品を支えており、初演を経てさらに各シーンにメリハリがつき、パフォーマンスが磨かれたという印象。ミュージカル部のメンバーを筆頭にキャスト陣の熱量もアップし、一度観た方も新鮮に楽しめる作品となっている。
ミュージカル部の前に立ちはだかる理事長や校長、教師たちの厳しい言葉や態度も、それぞれの理念や生徒への愛情があってのこと。青春を懐かしく思い出す大人、子供を持つ親世代、これから青春時代を過ごす子供達まで、全ての世代に響くメッセージが込められている作品だと言えるだろう。
初演を観た方もまだ観ていない方も、情熱と希望に満ちたミュージカル部と彼らを取り巻く人々の物語を、劇場で見届けてほしい。
本作は10月29日(金)より11月7日(日)まで、新国立劇場 中劇場にて上演される。
横山だいすけ コメント
「オープニングナイト」はとても元気と勇気をもらえる作品なので、ポジティブなエネルギーを客席にお届けしたいです。team Blueは再演の稽古序盤から、会わない間もずっと役を演じ続けてきたかのような深みを感じて、僕も刺激を受けました。チームワーク抜群で、みんなで一歩ずつ前に進みながら補い合っている6人を見て、「仲間っていいな、これが青春だ!」って思いましたし、揃った瞬間のエネルギーが凄いです。あと全体を通して、出演者が一つの役を最初から最後まで演じるので、一人一人にちゃんとストーリーがあって、細かく見てみるとそれぞれのキャラクターの面白さが伝わってくるのも、この作品のポイントなので、注目して頂けたら嬉しいです。一度来てくれた方はもちろん、迷っている方も、一歩踏み出して劇場で「オープニングナイト」の世界に触れて頂けたらと思います。
武藤 潤(原因は自分にある。)コメント
「オープニングナイト」という作品を再演できて、みなさんに観てもらえることが嬉しいですし、キャストの熱量がさらにまして、迫力を感じて頂けるんじゃないかって思います。個人的に見どころだと思うのは、生徒の将来のためにエンターテインメント性のある部活を廃止しているという厳しい学校で、「大切なのは勉強だけじゃない!」と考える生徒たちが、教師と対立しているシーン。熱さが伝わってくる部分ですよね。一つの目標に向かって進んでいく力が詰まっている作品なので、「オープニングナイト」を観て背中を押せるような、みなさんのエネルギーになれるような舞台にしたいです。楽しみにしていてください。
杢代 和人(原因は自分にある。) コメント
感動や熱さはもちろん、くすっと笑える部分、team Blue の団結力、カンパニーが一丸となっていい作品を作り上げたいという気持ちが初演よりパワーアップしているので、より多くの方に楽しんで頂けるような作品になっています。ミュージカル初挑戦だった前回を経て、演出が変わっていたりもするので、新たな発見もあると思います。稽古中、改めて「夢を追いかけている人はかっこいいな」と僕自身も感じていました。高校生が無謀な夢を叶えようとする気持ちに感化されて、学校全体が変わるって、凄いことだと思います。観ていて心揺さぶられたり、前を向こう!と勇気をもらえたり、さまざまな未来・夢を描いていきたい!と思える内容になっているので、幅広い世代の方に足を運んで頂けたら嬉しいです。
大倉 空人(原因は自分にある。) コメント
オウタという役を一度演じていることを踏まえて、一から考え直して、新たな一面のある、前回とは一味違うオウタを観て頂きたいです。初演の空気感や到達点、エンディングまでの感情の高ぶりを知っている僕たちだからこそ、そこを越えたいという気持ちでそれぞれが取り組んでいるので、⻘春の熱さの度合いがグレードアップしていて、初演と比べると全然違うと思います。マイトが筆頭になって、バラバラな思いを持っていた生徒たちが、目標が同じなら前に進める、団結したときの熱量も見どころですし、ミュージカルと向き合ってからの輝きに、演じる側の僕も⻘春を感じています。初演をご覧頂いた方には違いを観てもらいたいですし、今回の再演で初めて観て頂く方は、⻘春の熱さや夢を追いかけることのカッコよさを、直接感じて頂けたらと思います。劇場でお待ちしています!
取材・文=吉田沙奈 撮影=中岡美樹