[Alexandros] 立つべくして立った初の幕張メッセ公演に見えた確信、そして飛躍

レポート
音楽
2015.12.20
[Alexandros]

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[Alexandros] TOUR 2015 “ご馳走にありつかせて頂きます” FINAL
2015.12.19 幕張メッセ

満員の観客に埋め尽くされた幕張メッセの場内にいつものように「5、4、3…」とカウントダウンが流れ出し、地鳴りのような歓声が湧き上がる。フロアから見てステージを隠すように設置された”檻”のようなオブジェと左右のモニターにカラフルな映像が映し出され、目まぐるしく切り替わっていく。「Burger Queen」をSEに”檻”がゆっくりと上昇していくと、そこには各々楽器を構えたメンバーの姿が。川上洋平(Vo/G)を中心に、磯部寛之(Ba/Cho)と白井眞輝(G)が上手(かみて)下手(しもて)に広がった姿は、まるで”檻”から解き放たれた鳥が大きく羽を広げるかのようだ。しかもそのまま演奏された1曲目が「ワタリドリ」なのだから、もうたまらない。出来過ぎなくらい格好良い演出がばっちりハマる[Alexandros]『“ご馳走にありつかせて頂きます” FINAL』の幕開けである。

[Alexandros] 磯部寛之

[Alexandros] 磯部寛之

万雷のハンドクラップに導かれた「ワタリドリ」。後半には川上がステージ中央から10mほど前方まで設置された花道まで歩み出て歌い、四方を指差し、鼓舞する。ラスサビで明るく照らされた場内を見渡すと、2万人のオーディエンスは隅々まで歌い飛び跳ねている。いきなりクライマックスのような光景だが、当然これは序章に過ぎなかった。花道からゆっくりとステージに戻る川上の背中越しにノイジーな電子音が流れ出し、「Boo!」へ。「準備できてるか!?」との叫びに会場は一層熱を帯び、庄村聡泰(Dr)のスネア連打に合わせて背後で光る「ALXD」の巨大オブジェが点滅したり、赤や黄色、そして白のレーザーが乱舞して客席を貫いたりと、視覚効果でも畳み掛ける。「ワンテンポ遅れたMonster ain’t dead」でもフィラップ部分で歌詞が後方に映し出されたりと、大会場ならではのド派手な演出は続く。

[Alexandros] 白井眞輝

[Alexandros] 白井眞輝

冒頭から「Famous Day」までの4曲は、このツアーを開催するキッカケであるアルバム『ALXD』の曲順をなぞっていたが、ここでサポートミュージシャン・ROSEのキーボードと甘く優しいメロディが絡み合う「Underconstruction」を披露し、白井による情感たっぷりのギターソロでも魅せた。川上は「広いね、幕張!」と口にしつつも「悪いけど、今日はここをライブハウスと思ってやらせていただきます」と力強く宣言。そこからは、アルバムではインタールードとして一部分のみ収録されているため、初めて全容を聴けた「Buzz Off」(この日のセットリストには「JAZZ Off」と表記)や、川上がアコギに持ち替えてラテンのリズムをかき鳴らした「Waitress, Waitress!」、<ここはどこですか 私は誰ですか>の箇所をみんなで叫んだ「city」など新旧織り交ぜた構成で楽しませた。

実に10曲を演奏したところでようやく訪れたMCを挟み、そこからさらにギアを一段上げる。「犬になれますか!?」のシャウトに歓喜し、オーディエンスも磯部も、尾っぽならぬ頭を振りまくった「Dog 3」からの「Cat 2」という”犬猫対決”では、そこまでほとんど表情を変えずクールにプレイしていた白井のテンションもついに振り切れ、「行けるか、幕張ィー!!」と渾身の絶叫。大股にフライングVを構え、スラッシーなリフを刻む姿は最高にかっこいい。白井だけではない。会場全体がもう、完全にスイッチが入ったなという感じだ。そこへさらに「Kick&Spin」を投下してだめ押しという容赦ない展開を見せるのだからたまらない。白井が、川上が、そして磯部が花道まで出て演奏し、最後は「愛してるぜ、幕張!」と沸かせ、中盤のハイライトを激しく鮮やかに彩ってくれた。かと思えば「Thunder」「Leaving Grapefruits」では、オートチューンをかけたボーカルとダンサブルなグルーヴ、そして美メロの合わせ技で大人な音世界を展開する。この振り幅も[Alexandros]の魅力に他ならない。

[Alexandros] 庄村聡泰

[Alexandros] 庄村聡泰

後半に入ると、お待ちかねの「Starrrrrrr」や「Run Away」といったキラーチューンが高らかに歌われ、オーディエンスも大合唱で応えていく。「Oblivion」では「ALXD」ロゴが左右に開き、そこから村田泰子率いるストリングスチームが登場するという演出で驚かせた。抑えの効いたミドルテンポの楽曲だけに、ストリングスの演奏がよく映える。最後はアルバム『ALXD』の中でも新境地といえる「can’t explain」で、圧巻の本編は終了。当然アンコールとなったが、そこでも嬉しい仕掛けが用意されていた。

広大なメッセのど真ん中、中ブロックの中央に設営されたセンターステージ。アンコールはそこで始まった。メインステージから現れたメンバーがセンターステージに向けて歩みを進める間、川上と会場全体によるコール&レスポンスがこだまし続ける。四方のオーディエンスが中央に押し寄せる中で、4人が向かい合うようにして奏でたのは「Adventure」。ふとメインステージに目をやると、スクリーンには4人それぞれの映像が分割して映し出されたり、上空からの映像が映っていて、後方のファンにも嬉しい演出である。さらにいうと、庄村の華のあるドラムプレイを真後ろから見れるのも相当レアだ。

[Alexandros]

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「よく見える?」とファンを気遣いながら、「デビュー前から大事にしている曲です」と、センターステージでもう一曲。「Untitled」をドロップ。抑えたミュートギターが導いていくサウンドとは対照的にどんどんボルテージの上がっていく場内に、開放感のあるサビのメロディが響き、まばゆい光が4人を照らす。本当にブリリアントな名曲だ……と感傷に浸りかけていたら、唐突にサイレンの音が鳴り響く。メインステージのロゴやスクリーンはノイズで乱れている。サイレンの周期がどんどん早くなっていって繰り出したのは、新曲「Girl A」! 様々なモチーフや断片的な歌詞の文字列が映ったり歪んだりしながら、ダーティなデジタルロックサウンドが暴れまくる。思わずトリップしてしまいそうな危険な魅力に溢れた一曲から「Dracula La」へと繋ぎ、「俺たちが[Alexandros]だ、覚えておけよ!」と言い残し、クールに去っていった。

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まだまだ鳴り止まない拍手に、姿を現した4人。ツアーファイナルは2度目のアンコールへと突入だ。ここで「今日、良い日すぎてスペシャルなプレゼントを用意しました」と披露されたのはなんと、曲名はおろか、歌詞も構成も未完成という新曲。「みなさんのリアクションがこの曲の構成を決めるかも」という川上の言葉もあったが、デモ状態の楽曲をあっさり提示してしまえるあたりに、今の彼らがどれだけ充実し、自信が漲っているのかが垣間見える。7拍子という変則的なリズムながらアンセミックなメロディとスケール感を持ったこの新曲に、どんなタイトルと歌詞がついていつ我々の耳に届くのか。ライブ中の楽しさだけでなく、先々への楽しみまで受け取ることができた。

ラストナンバーとなったのは、「Forever Young」。ストレートに歌われる言葉の数々を全員で合唱したのち、川上が右手で高々とギターを掲げ、充実の表情を浮かべたメンバーそれぞれがステージを後にしていく。およそ3時間にも及ぶステージは幕を下ろした……かに見えたが、アコギを手にした川上一人だけが残り、「ワタリドリ」を1コーラスを弾き語るというサプライズ。これは本当にセットリストにも載っていなかったのだが、実はこの日の幕張は、電車が止まるというアクシデントに見舞われていた。ライブもスタート時刻を遅らせたものの、序盤に間に合わなかった人が多くいたのである。そんな中での1曲目「ワタリドリ」の再演は、彼らがファンに向けて抱く想いがそのまま形になった瞬間だった。きっとこの後行われる仙台公演でも、待ったぶんだけの特別な光景が広がるに違いない。[Alexandros]とは、そういうバンドだ。

[Alexandros] 川上洋平

[Alexandros] 川上洋平

バンドにとって初の幕張メッセで行った過去最大規模の公演。だがこの日、そのことに対しての感慨はほとんど語られなかった。当然、もとより世界一のバンドを公言する彼らが、ここで満足するはずもないというのはある。それに川上はこう言った。
「この前の武道館もそうだったけど、そのもっと前で言うと、Zepp、AX、QUATTRO  一個一個、俺たちはステップを踏んでるなと思っていて。変な背伸びはしない。我々と同じ世代のバンドがZeppでやっているときに、AXでやっていたりとか。それは自分たちが本当にそこに行くのに相応しいバンドかどうか、考えていたから」

そう。彼らは、僕らに見せてくれる華々しく堂々とした「ロックスター」像の裏側にあるクレバーな視点で、自己の現在位置を見つめ、一歩一歩進んできたバンドなのだ。だから、この日のメッセも立つべくして立ったし、そこで発表された2016年6月の大阪城ホールでの『Premium V.I.P.Party』も行われるべくして行われる。

もし彼らがステージ上で感慨に浸ることがあるとするならば、グラストンベリーのヘッドライナーを務めたときなのかもしれない。もっとも、そこでも颯爽と、いつものステージを展開してくれる気もするけれど。その日まで彼らと、彼らのストーリーを追いかけたい。

 

文=風間大洋

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オンエア情報
[Alexandros] TOUR 2015 “ご馳走にありつかせて頂きます” FINAL​
WOWOWにてオンエア決定

放送日:2016年1月10日(日)よる8:30
放送局:WOWOW
収録日:2015年12月19日
収録場所:千葉 幕張メッセ

 

ライブ情報
“Premium V.I.P. Party”

2016年6月26日(日)大阪城ホール

詳細は後日発表!
 

 

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