甲斐翔真の多彩な魅力が詰まった、クリスマスに相応しいスペシャルなひと時 『KAI SHOUMA MUSICAL CONCERT』レポート
甲斐翔真
2020年、初舞台である『デスノート THE MUSICAL』で主演・夜神月を演じた甲斐翔真。その後は『RENT』、『マリー・アントワネット』、『ロミオ&ジュリエット』などに出演し、高い歌唱力と存在感を武器に躍進を続けている。そんな甲斐が、2021年12月25日(土)、自身初の単独ミュージカルコンサートを開催。ゲストに真彩希帆、平間壮一を迎えて行われた公演の様子をお届けしよう。
コンサートがスタートすると、まずステージ上に現れたのは甲斐ではなく平間。弾けるような笑顔で「December 24th……」と歌い出し、2020年に開幕するも日程半ばで中止となってしまったミュージカル『RENT』より「Turn Up#1」を甲斐と共に熱唱。2020年の『RENT』でロジャーを演じた甲斐のコンサートゲストが同作でマークを演じていた平間ということで2人の歌唱を聴けるだろうと期待していたが、一曲目から客席のボルテージをMAXにする選曲にワクワクが高まる。
平間壮一
(左から)甲斐翔真、平間壮一
オープニングから堂々とした歌いっぷりを見せた甲斐だが、MCでは少し緊張が見え、そのギャップも魅力的だ。自己紹介を兼ね、ミュージカルを志したきっかけがラミン・カリムルーであること、様々な韓国ミュージカルに触れる中でミュージカル作品への想いが強くなったことなど、自身のルーツを語る。
その流れで披露されたのは、韓国発&韓国での大人気作品より『マタ・ハリ』、『フランケンシュタイン』『ジキルとハイド』のナンバーによるメドレー。『ジキルとハイド』の「時が来た」は韓国語ver.を披露した。コンサート冒頭から重厚な曲を次々と歌いこなす姿に圧倒された。
続いて、ラミン・カリムルーがオリジナルキャストを務めた『Love Never Dies』より「’Til I Hear You Sing」。包み込むようなあたたかさと厚みのある歌声は、初舞台を踏んでから2年足らずとは思えない貫禄がある。ミュージカル界において今後ますます存在感を放っていくだろうという予感を覚えた。また、年を重ねた甲斐がより幅広い役を演じる姿を観てみたいという期待も膨らむ。
甲斐翔真
そして、ここからは『デスノート』、『RENT』、『マリー・アントワネット』、『ロミオ&ジュリエット』と、甲斐が出演してきたミュージカルの曲が立て続けに披露された。この前に歌ったメドレーと「’Til I Hear You Sing」で、憧れの作品や俳優について話していた時のはにかむような笑顔と初々しさから一転、凛々しい表情と堂々とした姿に惹きつけられる。いずれの曲も公演中と変わらない完成度を保っているのに加え、舞台経験を積む中で表現力が増しており、各作品の舞台セットや衣装が見えるような錯覚さえ起こした。
月とLがお互いの腹を探り合う「ヤツの中へ」は平間がLのパートを歌い、天才同士の駆け引きを緊張感と迫力たっぷりに見せる。「エメ」は真彩がジュリエットを務め、可憐で澄んだ歌声によって会場を一気にロマンティックで甘い空気に塗り替えた。この組み合わせでも観てみたい! と思わせてくれるスペシャルな歌唱も、ミュージカルコンサートの醍醐味のひとつと言えるだろう。
(左から)平間壮一、甲斐翔真
(左から)真彩希帆、甲斐翔真
ゲストも出揃ったところで、3人が改めて挨拶をしあったり、クリスマスの思い出を話したりと、ゆるーいトークが繰り広げられる。アドリブでクリスマスエピソードについて尋ねた平間が「翔真は彼女とかじゃなくて男友達とウェーイって感じのイメージ」と話すと、実際に友人たちと連れ立ってイルミネーションを見に行っていたという甲斐が「なんで分かったんですか!?」と驚いたり、小学生の時に女の子から手作りマフラーをもらったが、恥ずかしくて父親にあげてしまったという思い出を語る平間に真彩が「なんで!?」と笑ったり、稽古中心の生活だったためあまり思い出がないという真彩に平間と甲斐が「これ終わったら近場のイルミネーションを見に行こう」と提案したりと、贅沢な歌唱の合間に一息吐くのにちょうどいい和やかさが嬉しい。
ゲストによるソロは、真彩が『オペラ座の怪人』より「スィンク・オブ・ミー」を、平間は2022年2月から上演される『The View Upstairs』より「The Future is Great」を一足先に披露。2人のファンにとっても、たまらないクリスマスプレゼントとなったのではないだろうか。
真彩希帆
さらに甲斐は現在公開中の『Dear Evan Hansen』を含むミュージカル映画より、難易度の高い楽曲たちも危なげなく聴かせ、真彩と共に『Greatest Showman』の「Rewrite the Stars」をドラマチックに歌い上げる。真彩の切ない表情と意志の強さを感じさせる歌声のギャップ、それに向き合う甲斐の真摯な情熱が素晴らしい。平間と共に歌った「ヤツの中へ」とはまた違う、剥き出しの感情をぶつけ合うような表現に圧倒された。
ここまでMCを挟みつつほぼノンストップで進んできたこのコンサート。3人の歌声にすっかり浸り、甲斐の「もう終盤です」という言葉で初めて時間の経過に気付いた。
このタイミングで披露されたのは、甲斐が2022年3月より出演する『next to normal』より「I’m Alive」。甲斐が演じるのは主人公の息子・ゲイブ役だ。2013年に日本初演が行われた本作だが、2022年は日本独自の演出とデザインで上演されるということで、こちらも期待が高まる。
甲斐翔真
甲斐が単独初主演を務めた日本初演ミュージカル『October Sky-遠い空の向こうに-』の「星を見上げて」では、リハーサルの時にはなかったという星空が出現し、甲斐が驚く一場面も。
そしてラストは、『RENT』の作曲家、ジョナサン・ラーソンを主人公にした伝記ミュージカルより「Louder Than Words」。3人の透き通るような歌声と、すとんと心に落ちてくるような歌詞によって、爽やかであたたかい気持ちで満たされる。
(左から)真彩希帆、甲斐翔真、平間壮一
(左から)真彩希帆、平間壮一、甲斐翔真
あっという間に過ぎてしまった時間が名残惜しいが、ミュージカルファンにはお馴染みの曲から最新のミュージカル映画まで、様々な楽曲を通して、甲斐翔真の歌声や表現を楽しむことができたこのコンサート。
演じたことのないタイプのキャラクターや作品の曲はもちろん、これまでに歌ってきた楽曲においても新たな魅力に気付くことができ、非常に満足度が高かった。ますます飛躍していくと予想される甲斐の活躍から目が離せない。
(左から)真彩希帆、甲斐翔真、平間壮一
取材・文=吉田沙奈
ライブ情報
on Christmas Day 2021
Featuring MAAYA KIHO and HIRAMA SOICHI
会場:オルタナティブシアター
出演:甲斐翔真
ゲスト:真彩希帆、平間壮一
ギター:会田敏樹 ピアノ:金井央希
ベース:河野友弥 ドラムス:菅野吉也
キーボード+リード:金山徹
M1. Turn Up#1 〜RENT from RENT
M2.メドレー
普通の人生 from マタ・ハリ
君の夢の中で from フランケンシュタイン
時が来た from ジキルとハイド
M3. ’Til I Hear You Sing from Love Never Dies
M4.デスノート from デスノート
M5.ヤツの中へ from デスノート
M6.One Song Glory from RENT
M7.遠い稲妻 from マリー・アントワネット
M8.エメ from ロミオ&ジュリエット
M9.スィンク・オブ・ミー from オペラ座の怪人
M10.The Future is Great from The View Upstairs
M11.メドレー
Waving Through a Window from Dear Evan Hansen
Santa Fe from NEWSIES
Go the Distance from ヘラクレス
M12.Rewrite the Stars from Greatest Showman
M13.I’m Alive from next to normal
M14.星を見上げて from October Sky-遠い空の向こうに-
M15.Louder Than Words from tick,tick…BOOM!
甲斐翔真Twitter https://twitter.com/kai_shouma/
甲斐翔真Instagram https://www.instagram.com/kai_shouma/