Nothing’s Carved In Stoneの"最高傑作"『ANSWER』 白熱のツアーファイナルを観た
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Nothing's Carved In Stone 撮影=西槇太一
ANSWER TOUR 2021-22 2022.2.25 豊洲PIT
「メッセージは曲に込めたつもりだから。『ANSWER』は最高傑作だと思ってるんで、これからも聴いてください」
ライブ終盤、村松拓が放った言葉がすべてだろう。ロックバンドはいつだって、最高傑作を作り、ツアーに出て、観客の前で全力のパフォーマンスを出す。それがすべて。2022年2月25日、豊洲PIT、『ANSWER TOUR 2021-22』ファイナル。これまでもこれからも変わらない、これがNothing’s Carved In Stoneのリアル。
暗闇を切り裂くスポットライト、生形真一の鋭いリフ一閃、1曲目「Deeper,Deeper」が始まった瞬間に空気が変わる。ロックバンドのライブとダンスミュージックのパーティーを足して2で割らないような、強力な音圧と爆風がステージから吹きつける。「Bloom in the Rain」から「Spirit Inspiration」へ、大喜多崇規と日向秀和の叩き出すリズムは、精密なドラムンベースやトリッキーな変拍子などテクニカルな側面と、サビでは痛快メロディックに突き抜ける豪快な側面と、コントラストがとても鮮やか。村松が「オニィ!」と叫んでドラムソロ、そしてギターソロへと、それぞれスポットを浴びる「白昼」の大時代な仕掛けがむしろ新しく見える。バンドの中にロックの歴史が畳み込まれて見える。
「帰ってきました。ANSWER TOURファイナル。最後までついてきてください。よろしく」
村松の最初の挨拶は最小限。「Rendaman」から「No Turning Back」へ、日向の、親のカタキとばかりに打ち続けるスラップがすごい。村松の、若い日のエディ・ヴェダーを思い出すような、とんでもないシャウトがすごい。大喜多のドラムはなんであんなに正確なんだろう。生形のギターはファンクやダンスミュージックのミニマルなリフと、オールドなハードロックの速弾きソロと、メロコアの高速カッティングと、どうしてあんなにうまく弾き分けられるんだろう。「Wonderer」では、村松の煽るクラップでフロアが一体化する。
見事なアカペラで幕を開ける「Flame」から、ヒップホップ的なループと幻想的な逆光ライトがかっこいい「We’re Still Dreaming」、そしてミニマルな80’sニューウェーブ風リズムが狂乱のディスコビートへと進化する「Milestone」。奇妙な構成なのになぜか心地よい、これがナッシングス流のミクスチャーロック。
「めっちゃ楽しい。ほんと、最高の景色。ラストブロック、ノンストップで行きます。いいですか?」
しゃべるよりも早く曲をやりたい。村松の言葉はぶっきらぼうだがとても優しい。「Beginning」から「Recall」へ、一体感を煽るキャッチーなサビと、推進力いっぱいのリズムに乗せて、観客の手が上がりっぱなしになる。聴かせどころで思いっきり歌詞を忘れた村松が「間違えた!」と笑い、さらにテンションを上げる。これがライブ。
エレクトロなダンスミュージックのシーケンスに合わせ、全員がリズム楽器と化した「Like a Shooting Star」の凶暴な快感と、90’sビックビートの香りがする「Impermanence」の精密かつ豪快な興奮。そして、生形のピックスクラッチが稲妻のように空間を切り裂く「Out of Control」へ。この3曲はある意味、ナッシングスらしさの核心部。ロックとダンスとメッセージ、過去と現在と未来、衝動と知性と娯楽、すべてがハイレベルで組み合わさったかっこよさ。
「あと2曲。みんなの名前を呼ぶつもりで歌います」
曲は「Beautiful Life」、そして「Walk」。『ANSWER』の中でも特にメッセージ性の高い2曲は、すでにアンセム化している。その手が明日を変えてく。大喜多が高々と掲げた手に、フロア全員の手が呼応する。今を生きる、前を向いて。村松と生形が歌声を合わせ、溢れ出す強烈な逆光に目がくらむ。アルバム『ANSWER』の曲をすべてやり切った全18曲。あっという間だが、とんでもなく濃密な80分。
「みんなをもっと信頼してもいいんだなと思えたツアー。クサいけど、絆みたいなものを感じたツアーでした。面白いことで、みんなを引っ張っていくんで、これからもよろしくね」
アンコール。「Diachronic」を歌い終えた村松が、日々変わるコロナ感染状況の中で、ツアーを無事に乗り切ったファンへの感謝と、これらからの抱負を力強く告げる。まだまだ面白いニュースがあると、思わせぶりに笑う。ラストチューン「November 15th」を終えたメンバーが、笑顔で手を振る。最後に残った大喜多が深々と礼をする。思うがままにプレーしているように見えて、非常にシステマチックに計算されたロックショー。バンド演奏、シーケンス、照明、すべてが連動して「ここぞ」の快感を生みだす、プロフェッショナルなロックバンドのすごみ。これがナッシングスからのアンサー。
取材・文=宮本英夫 撮影=西槇太一
セットリスト
2. Bloom in the Rain
3. Spirit Inspiration
4. 白昼
5. Rendaman
6. No Turning Back
7. (as if it’s)A Warning
8. Wonderer
9. Flame
10. We’re Still Dreaming
11. Milestone
12. Beginning
13. Recall
14. Like a Shooting Star
15. Impermanence
16. Out of Control
17. Beautiful Life
18. Walk
[ENCORE]
19. Diachronic
20. November 15th
ライブ情報
“Bring the Future”
4/9(土)大阪城野外音楽堂
OPEN 16:00 / START 17:00
4/20(水)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
OPEN 17:30 / START 18:30
※学生の方は会場にて学生証提示で1,500円キャッシュバック
※高校生以下の方は2,000円キャッシュバック