「継承と進化のさらに先へ」「テイルズ オブ アライズ」舞台化に向けて 本田響矢 飯窪春菜 プロデューサー富澤祐介氏が語り合う(前編)
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飯窪春菜 本田響矢 撮影:荒川潤
25周年を迎えた歴史ある国産RPG『テイルズ オブ』シリーズの最新タイトル、「テイルズ オブ アライズ」がオンラインで舞台化される。『テイルズ オブ アライズ オンラインシアター リベレイターズ -希望を託されし解放者たち- New Attempt』と銘打たれた本公演では、バンダイナムコエンターテインメント本社ビル内にある、MIRAIKEN studioよりリアルタイムで演者による生の演技と映像技術が融合される新機軸の作品となる。
数々の賞を受賞しているシリーズ屈指の名作と言われる本作が今回どういう形で舞台化されるのか、主人公アルフェンを演じる本田響矢、シオンを演じる飯窪春菜、更に「テイルズ オブ アライズ」ゲームプロデューサーの富澤祐介氏もオンラインで参加。今回の舞台化、そして「テイルズ オブ アライズ」を今一度紐解く。前後編の前編となる今回は、それぞれが演じるキャラクターについての印象、そして「テイルズ オブ アライズ」という作品に込めた思いについて聞いた。
『テイルズ オブ』シリーズ ゲームプロデューサー 富澤祐介氏
■是非舞台は舞台で、ゲームを越えた感情表現を目指してもらいたい
――まず、今回のこの『テイルズ オブ アライズ オンラインシアター リベレイターズ -希望を託されし解放者たち- New Attempt』がどういう経緯で動き出したのか、プロデューサーの富澤さんにお聞きしたいです。
富澤:もともと「テイルズ オブ アライズ(以下アライズ)」という作品自体は『テイルズ オブ』シリーズの5年ぶりの新作、しかもシリーズ25周年記念作品にもなるということで、会社全体としてはゲームを中心として、それ以外の二次展開にも積極的に取り組もうと発売前から各部署が連携して企画を練っていた形があったんです。舞台化もその一つです。
――『テイルズ オブ』シリーズの舞台化は過去もされていますが、オンライン配信のみ、MIRAIKEN studioから全面LEDを使った映像との融合というのは新機軸の試みだと思います。
富澤:そうですね、舞台化自体は、過去数年前から他の作品でもチャレンジをしていまして、ご好評もいただいたという経緯もあったので、アライズも発売後なるべく早いタイミングで、ゲームをプレイしてくださった方の気持ちを、また別の形でリアルに表現できる場を持てたらいいねと話をしていたんです。ちょうど今回コロナ禍などの状況もあり、それでもこの新しいコンセプトで、イマーシブルな映像と生身の舞台の融合というものが、これまでにないものとして動いていくのを僕も横で見ていて、凄く楽しみにしているところです。
――なるほど。では、そんな「アライズ」に出演する本田さん、飯窪さんにそれぞれの演じられるキャラクターと、アライズという作品に対する印象をお聞きしたいです。
Tales of Arise™ & (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
本田:そうですね、「アライズ」という作品の、アルフェンという役をやらせていただくって聞いてからプレイさせていただいたんです。僕はアニメも凄く好きなんですけど、「アライズ」は本当にアニメを観てる感覚でゲームやってる感じがするというか。僕は今までやったゲームで、ここまでストーリー性も楽しみながらプレイしたのが初めてだったので、そういったところを舞台で表現するのは頑張らなきゃいけないと思っています。
――ご自身が演じる主人公、アルフェンへの印象はいかがですか?
本田響矢 撮影:荒川潤
本田:アルフェンは真っ直ぐで、自分の事より仲間の事を優先するような……本当に奴隷が必要ない世界を目指す、熱い芯のある想いがある人間だと感じていています。それをしっかり演じていきたいですね。
飯窪:私もこの「アライズ」で『テイルズ オブ』シリーズに初めて触れたんですけど、ゲームの作り込みの凄さに圧倒されました。曲や映像が豪華で綺麗というのもそうですが、モーションキャプチャーで役者さんがキャラを演じているゲームを今までやったことがなかったので、それにまず感動して。シオンを演じる時もゲームの動きの癖とかを意識しながら演じたいなと思います。そもそもシオンは物凄く様々なものを抱えて、今までずっと人に触れ合わずに生きてきた女の子なので、その辛さや孤独というものを表現するのは凄く難しいと思うんですけど、私個人の挑戦として、本番をとても楽しみにしています。
富澤:お二人のお言葉嬉しいですね。アルフェンは痛みも記憶も無いという非常に特殊な設定というか境遇にありながらも、その実凄く真っ直ぐな人間というギャップも、主人公として愛されている大きなポイントだなと思いますね。なかなか彼の心持ちを自分のものにしながら演じるというのは難易度が高いんじゃないかなと思います。
――アルフェンは過酷な境遇にありながらも、最後まで前を向き続けるまさに主人公というキャラクターですよね。
富澤:本田さんのおっしゃった「自分よりも周りを気にする、真っ直ぐさと優しさを持っている存在」という解釈は凄く良いと思っていて、この舞台で演じて頂く中でも、そこを大事にしていただくと彼らしさというものが出てくると思いますね。本作は6人でパーティを組む形になるんですが、最終的にはその中でそれぞれが自分を見つけていく、『テイルズ オブ』は常にそういう物語を目指しています。
――確かに『テイルズ オブ』シリーズは冒険の中での関係性の変化、成長というのもプレイしていて感じる面白さの一つですね。
富澤:周りのキャラクターとの関係値の中で、自分らしさとか成長というものを見い出せる。そういうイメージを持って演じたり、物語を反芻していただければ、また見えてくる物もあるのかなと思いました。
――飯窪さんのシオンに関してはいかがでしょうか。
富澤:先程、飯窪さんがおっしゃっていましたが、最近のキャラクター作りはモーションキャプチャーを使っていて、全てアクターさんが一度演技をしたものをCGにして、さらに表情をアニメ調にチューニングするような作り方をしています。演劇ではないんですが、一度人が演じたものがゲームになっている。そこを参考にしようって言って頂けてるのは、ゲームの制作メンバーにとっても凄く嬉しいことだと思います。
――モーションアクターさんが演じたものをさらにブラッシュアップして舞台に乗せる、ということですもんね。
富澤:『テイルズ オブ』も表現の進化を続けてきたわけですけど、やはり生身の演者さんと切磋琢磨できるぐらいのものを目指してきましたから、そういったコメントは凄くハッとさせられましたし、嬉しいと思いました。でも是非舞台は舞台で、ゲームを越えた感情表現を目指してもらいたいですね、その部分に関してはとはいえゲームではやりきれていない所も沢山あると思うので。アルフェンとシオンの2人の関係性とか、お2人の演技で更に熱く盛り上げていただけるならゲームファンのみなさんも嬉しいんじゃないかなと思いますので、是非そこも頑張っていただきたいと思います。
■『テイルズ オブ』シリーズで伝えて行きたいのは「キャラクター達の絆と成長」
――「アライズ」は「心の黎明を告げるRPG」と銘打たれ、発売1週間で100万本を超えるなど、純国産RPGとして2021年を代表するようなヒット作だと思います。今作は支配からの開放、異種族であるレナとダナの対立と融和が描かれていて、ヘビーなストーリー展開が繰り広げられます。改めて「アライズ」のテーマを富澤さんからお聞きできれば。
富澤:本作は「継承と進化」を開発上のテーマとしています。本作に限らず必ず『テイルズ オブ』シリーズで伝えて行きたいのは「キャラクター達の絆と成長」という所ですね。ここを一番大事にして作ってきました。かけがえのない仲間達がいて、初めてみんな1歩進める。ゲームが終わってもそのキャラクター達を応援し続けたくなるような気持ちになってもらいたい。そういう読後感に気をつけながら各作品を作っています。
――それはクリア後にすごく感じましたね。
富澤:まさにこういった舞台化とかで、ゲーム内ストーリーで語られなかった事などがどんどん繋がっていくことがキャラクター達にとっては大事な事だと思っています。そういう意味ではこの舞台化は僕達も注目していますね。
――ストーリーに関して、なぜ支配する側であるレナと、支配される側であるダナという構成にされたのでしょうか?
富澤:これは個人的な想いかもしれませんけど、昨今世界中が様々な課題を抱えていて、みんなが必ずしも生き易い時代ではないと思っているんです。人によって課題は色々だと思いますが、何かしらで自分自身が常にマジョリティではいられないというか、マイノリティの部分を持ちながら、隣人と本当に仲良く一緒に生きていけるのか、というか。
――現代の社会が抱えるテーマでもありますね。
富澤:ニュースを見ると世の中が分断されていたり、戦争が始まってしまったりという事で、決して生きやすい環境ではない。その中でも自分自身がそこに甘んじるのではなくて、例えば作中でアルフェンは解放を求めて立ち上がるわけですけど、それが自分の為だけではなく周りの為、仲間の事を想って立ち上がるその“熱さ”というか。制作にあたってそういう想いは強くありますね。かつ簡単な答えを出すゲームではないとも思っています。
――それはどういう部分でしょうか?
富澤:世界中の大きな問題について、「これが解決だよ」とはなかなか提示できないですよね。だからこそゲームの中では物語として1つの答えを出すんですが、エンディングを迎えた後でも、作中の全ての事柄、人が幸せになる訳ではないんです。まだまだ人生も課題も続いていく、というのはゲームを終えた後のプレイヤーさんの中にも残るでしょうし。
――そうですね、僕もクリアした後は達成感と共に少しだけビターな、ダナとレナという世界への思いが残りました。
富澤:それでも、1歩でも歩みを進めてみようとか、自分の目の前にある課題に対して取り組んでみようとか、そういった気持ちに少しでもなっていただければ、そういう物語を作れれば、と思って制作しました。舞台は長いストーリーの中の一部分を描いているかもしれませんけど、非常に熱い想いを込めたパートだと思ってますので、そこは是非演者の皆さんには汲んでいただいて、ゲームより更にファンの気持ちを動かしていただけると嬉しいですね……ちょっと喋り過ぎましたね(笑)。
――とんでもないです。なかなか舞台の現場で、原作のゲームを作り上げたプロデューサーさんのお話をうかがうのも無いと思うので。
飯窪:あまりないですね。おっしゃられていたように、今回のアルフェンもそうですけど、まず自分が行動を起こして立ち上がろうっていう意思を持つ事が凄いなって思うんです。私は私生活が本当に面倒くさがりなので、そういうところも直さないとなって思いました(笑)。 でも舞台をやる時はとにかく熱く熱くやりたいっていう想いは凄くあります。でも今回なかなか出演者のみなさんと顔を合わせる日数が少なくて。
飯窪春菜 撮影:荒川潤
――新型コロナの状況もありますもんね。
飯窪:そうですね……全員が集まって稽古をする時間が少ないので、その中でもみんなで一丸となって熱いものを作りたいという気持ちで、積極的にコミュニケーションを取ってみんなでいい舞台を作れたらと思います。
本田:ここまで細かい部分まで想いや考えを込めて作られてるんだなっていう事に、純粋に凄さを感じましたね。僕も共演する役者さんのみなさんと、もっと仲良くなりたいなって思いました。
後編に続く
インタビュー・文=加東岳史 撮影=荒川潤
公演情報
『舞台TALES of ARISE Online Theater「リベレイターズ希望を託されし解放者たち」』(配信公演)
2022年3月26日(土)13:00 / 17:00
2022年3月27日(日)13:00 / 17:00 全4公演
■公演場所:
MIRAIKEN STUDIO
https://miraikenstudio.bn-ent.net/
現在発売中~2022年4月27日(水)12:00まで(3月28日以降はアーカイブ配信)