ザ・モアイズユーとreGretGirl、盟友同士が繰り広げたエモーショナルな一夜ーー『モアイズム!!2022』大阪編
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『ザ・モアイズユーpresents.対バン企画「モアイズム!!2022」大阪編』 写真=オフィシャル提供(photo by 伊藤実咲)
『ザ・モアイズユーpresents.対バン企画「モアイズム!!2022」大阪編』2022.05.14(SAT)大阪・心斎橋Live House ANIMA
5月14日(土)、心斎橋Live House ANIMAで、『ザ・モアイズユーpresents.対バン企画「モアイズム!!2022」大阪編』が行われた。本公演は、大阪出身のスリーピースロックバンドザ・モアイズユーの自主企画で、2020年2月ぶりの開催となる。5月8日(日)に新代田FEVERで行われた東京編には、リュックと添い寝ごはんが登場。大阪編の対バン相手は盟友・reGretGirl。ともに大阪で活動を続けてきた仲間がガチンコで激突した。多くのミュージシャンにとって、コロナ禍はライブができなくなった苦しい時期。ザ・モアイズユーも、無観客配信ライブを行ったり、泣く泣く見送ったライブもあった。ようやく開催できた、地元大阪で、長年の苦労を分かち合った同志との対バン企画。ザ・モアイズユーにとっては特別な夜だったことが、彼らの姿からよくわかった。今回はそんな一夜の様子をレポートしよう。
「変わりながらも変わらずにいてくれる、ザ・モアイズユーがすごく心強い」
reGretGirl
満員になった会場には、Tシャツやタオルを身につけた双方のファンが集った。先攻はreGretGirl。SEが流れ、メンバーが手を挙げて登場。平部雅洋 (Vo.Gt)が「盟友ザ・モアイズユーと対バンできるの、今日すごく楽しみにしてきました!」と叫び、『ロードイン』からライブをスタート。疾走感と爽やかさであっという間に会場を満たす。十九川宗裕(Ba)が煽ると一斉にクラップ。勢いと丁寧さが共存する演奏で、着実にフロアの熱を上げてゆく。前田将司 (Dr)が力強いドラムソロで華麗に2曲目の「ルート26」へとつなぎ、今度は激しくもクールな一面で魅せていった。
reGretGirl
そして「ザ・モアイズユーと対バンするの3年ぶりなんですよね。4年ぶりの曲やります! ずっとずっとずっと一緒にいたい、そんな曲歌います!」と「after」をドロップ。高く叫ぶように歌いながら、平部が「ザ・モアイズユーに最大の拍手を!」と賛辞を贈る。同じライブハウスで切磋琢磨した両者の関係性が伺える瞬間だった。
reGretGirl
MCでは、3人とも「楽しいねー」と笑顔。平部は「ザ・モアイズユーは何だかんだで、続けてるバンドで1番付き合い長いんちゃう? ホームの心斎橋でライブができるのは感慨深いですね」と、しみじみ述べたかと思えば、急に「ベースのいとちゃん(以登田豪/Ba.)あるある言う?」と、「ザ・モアイズユーのメンバーあるある」を披露。本多真央(Vo.Gt.)とオザキリョウ(Dr.)のあるあるも披露された。これは現場にいた人のお楽しみということにしておこう(笑)。
reGretGirl
ライブ本編に戻り、4月にデジタル配信リリースした「best answer」をプレイ。さらに3人のコーラスから始まる「シャンプー」、情熱的かつ情緒的なバラード「デイドリーム」を立て続けに演奏し、歌い方と表現力の幅の広さを提示、彼らの世界観をぐんぐん広げていった。
reGretGirl
「続けることの難しさを年をとるごとに感じる」と口にした平部。「昔は心斎橋のライブハウスでザ・モアイズユーを含め5バンドくらいでやってたけど、気がつけば僕らと彼らしかいなくなってしまった。時間というのはすごく残酷やなと思う時があります。それでも、変わりながらも変わらずにいてくれるザ・モアイズユーがすごく心強いし、そんな音楽を届けてくれる彼らに、最大の敬意と愛を込めて歌って帰りたいと思います」と「スプリング」へ。言葉を大切に届けるように、はっきりと紡ぐ。十九川のコーラスがエッセンスを加え、優しく切ない春の風を吹かせた。
reGretGirl
ラスト2曲は一気に加速! 「ホワイトアウト」と「ピアス」をこれでもかと力強くぶち込み、フロアもその情熱に応えて最高の一体感を生み出し、ライブは終了した。ザ・モアイズユーと目の前のオーディエンスに歌いたい、届けたい。そんな彼らの強い想いが伝わるエモーショナルなステージだったし、確実に届いていたと断言できる、素敵な時間だった。
「どんな瞬間だって1番近くで鳴ってる、そういう音楽でありたい」
ザ・モアイズユー
後攻、ザ・モアイズユー。ブルーの光とSEのピアノの音が美しくステージに混ざり合い、順にメンバーが登場。後日行われた打ち上げインスタライブで明かしていたが、この日からSEを一新したそうだ。『モアイズム』にかける彼らの気合いを感じるエピソードではないだろうか。
1曲目は「秒針に振れて」。本多の透明感のある伸びやかな歌声と3人のアンサンブルが、爽やかに空気を満たしてゆく。豊かさと切なさが同居した情緒的な歌詞と良質なメロディは彼らの特徴であり武器だ。心が一瞬で持っていかれてしまう。
「ANIMA始めようぜ! 特別な1日にしような!」と本多(Vo)が叫び、疾走感がピカイチの「光の先には」へ。以登田(Ba)はダイナミックに体を動かしてベースを弾き、オザキ(Dr)の鋭いバスドラが下腹に響く。1曲目はほんの挨拶だった、と言わんばかりに激しくパワフルなプレイで魅了する。客席はもちろん手を挙げて応える。情熱的なメンバーの姿に牽引され、会場の温度がまたひとつ上がったのがわかった。キャッチーで明るい「MUSIC!!」では、気持ちの良いリズムに体が跳ね、クラップで客席の一体感が増す。
ザ・モアイズユー
「改めまして、俺たちがザ・モアイズユーです! 来たぜ『モアイズム』!」と本多。「嬉しすぎるなこれは。楽しいし嬉しいし」と喜びを噛み締める。以登田も「まだ3曲目やけど楽しすぎる」と笑顔。そして本多は「イズムは主義、主張という意味が入ってまして、『モアイズム』は俺たちなりのカッコ良い音楽、カッコ良い音楽の在り方を自分たち自身で提示していく。それを皆に感じて楽しんで帰ってもらえたらと思います。reGretGirlだって俺たちなりのカッコ良いの一部でもあるわけです。全員に歌って帰ります。最後までどうぞよろしく!」と想いを込めた。
「いいことばかりじゃないけれど、」「求め合うたび」と、優しい楽曲を続けてプレイ。「環状線」で背中を押され、「理想像」ではキレキレのビートとうなるギターで加速する。生きていれば誰もが感じるだろう感情を代弁し、未来へ送り出してくれる彼らの音楽。次々と繰り出される曲たちはシンプルに良曲で舌を巻く。「理想像」の曲中、吠えるように上を向いたオザキの姿が印象的だった。
青いベールがステージを横切る演出が美しい「花火」では、夏の湿った空気をリアルに感じるほど、見事なサウンドスケープを描き出す。切なくも存在感のある「悲しみが消える頃」を情緒たっぷりに歌い上げると客席は聞き入り、全身で彼らの「イズム」を受け止める。
ザ・モアイズユー
2度目のMCでは本多が「reGretGirlは付き合いの長いバンドで、出会ってから仲良くなるのがめっちゃ早かった記憶があります。平部も言ってたけど、昔からやってたバンドが今もおってくれるのは心強いよね。同世代やし、音楽的にも人的にも俺は通ずる部分がいっぱいあると思ってて。だからこそ仲間でもあるけどライバルだと思ってる。reGretGirlと久しぶりに2マンをやれたのは、俺たちにとってめちゃめちゃデカいことでした。力を貸してくれてありがとう!」と感謝を述べる。
会場のANIMAは2年前に初めて無観客配信のワンマンライブをやった場所。その時はメンバー同士がステージで向かい合う形で行った。「その時力を貸してくれたのがANIMA。それが今、帰ってきたらこんだけお客さんおって。本当に感謝してます。ありがとうございます!」とANIMAにも感謝を口にする。そして「正直、本番1分前まで期待と不安でいっぱいでした。でもステージに立って皆と向かい合ったら、何かすげえ力が湧いて。多分力をもらってるのは俺たちの方なんやなと。だからあなたに向かって曲を作りたい、歌いたい。それだけでいいと思った。あなたに届かんと意味がない。これからも俺たちが作っていくから、またライブハウスで、またイヤホンの中で、また音楽の中で、会いたいです」と力を込めて語った。
そして渾身のラスト2曲をドロップ! メロディアスなギターラインが印象的な「すれ違い」。どこか懐かしさも感じられるグッドメロディだ。「来いよ、来いよ!」と本多が客席を煽ると、一斉に手がアップ。勢いそのままにラストの「何度でも」へと駆け抜ける。感謝を伝えるように、フロアの端から端まで残さず見つめて歌う本多。以登田は大きく頭を振りかぶってステージを暴れまわる。感極まったのか、以登田が地声で「ありがとう!!!」と叫ぶ姿には思わずグッときた。3人のハーモニーがパワフルに重なってキラキラ輝き、大きな多幸感をもたらしてライブ本編は終了。
ザ・モアイズユー
フロアから惜しみなく贈られた大きな拍手はすぐさまアンコールに変化。メンバーはグッズTシャツに着替えて再びステージに登場。「企画の何がいいって、普段のライブでは1日に2回衣装を変えるってできないんでね、レアなんです(本多)」とゆるいトークを繰り広げる。話を促され、オザキは「こうやって楽しくできたのも本当に来てくれた皆さんのおかげですし、裏で動いてくれてるスタッフもそう、皆が頑張ってくれたから今日があるんだと思ってます。自分自身に拍手を贈りましょう! 次は地方でもやりたいし、『モアイズム』がデカくなればいいなと僕たちも思ってるんで。今日は本当にありがとうございました!」と伝えた。
以登田は「ANIMAって、照明がお客さんの方に当たってて、めっちゃ顔見えてるんですよ。皆の顔見てるとね、本当に嬉しくて。前にANIMAでやった時はお客さんが画面の向こうにいてくれる状態やったけど、いざこうやって目の前におってくれてライブができるのは、ほんまにすごく嬉しくて、ありがとうという言葉しか出てこないぐらい感謝してます」と、大きくお辞儀をした。
ザ・モアイズユー
本多は心底嬉しそうに「今日、ANIMAでやることも、対バンがreGretGirlなのも、その他いろいろ、俺たちにとっては全部のこだわりを詰め込んだ1日でした。あなたに見てもらえて、あなたの前で歌えて嬉しかったです。これからもザ・モアイズユーはあなたに向けて歌います。苦しい時、悲しい時、楽しい時、どんな瞬間だって1番近くで鳴ってる、そういう音楽でありたいと思います。期待しといてください。以登田とオザキと俺の3人で全部超えていきますんで。今日みたいな日を作って、また絶対に会おうな!」と力強い約束のあと、「桜の花びら」をしっとりと奏でる。メンバーの絆を思わせる言葉に、涙を流しているオーディエンスもいた。あまりに美しく優しい空気に、終わってほしくないという気持ちになる。そして最後に「fake」。「全部込めてあなたに! ANIMA行こうぜ!」という本多の気合いから、勢いよくサウンドを叩き込む。フロアもクラップで懸命に応え、最高潮の盛り上がりをみせた。最後はステージに倒れこむほど魂を込めて演奏、大迫力で駆け抜けた。
「やりきった!」と言わんばかりの清々しい表情で、とびきりの笑顔を浮かべる3人。地声で「ありがとうー!!!」と挨拶して深々とお辞儀をする。人もバンドも、ずっと同じように在り続けることは難しい。ただ本当に、続けてくれることが幸せなんだということ、約束の場所で交われる尊さを改めて感じさせてくれた、素晴らしいライブだった。両バンドはもちろん、オーディエンスとの絆もより深まった夜だったと思う。いつまでも鳴り止まない拍手が、それを表していた。
取材・文=取材・文=ERI KUBOTA 写真=オフィシャル提供(photo by 伊藤実咲)
セットリスト
■ 5月14日(土)【大阪】心斎橋ANIMA
1.ロードイン
2.ルート26
3.after
4.best answer
5.シャンプー
6.デイドリーム
7.スプリング
8.ホワイトアウト
9.ピアス
1.秒針に振れて
2.光の先には
3.MUSIC!!
4.いいことばかりじゃないけれど、
5.求め合うたび
6.環状線
7.理想像
8.花火
9.悲しみが消える頃
10.すれ違い
11.何度でも
EN02.fake