「時代を経て再解釈された美」を追求——『BALLET TheNewClassic』舞踊監修・堀内將平インタビュー

2022.6.6
インタビュー
クラシック
舞台

堀内將平

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 この夏、コロナ禍による1年の延期を乗り越えて、現代の美意識に貫かれた挑戦的な公演が幕を開ける。世界各国で踊る最高峰のダンサー陣に、第一線で活躍中のファッションデザイナーやヘア&メイクアップ・アーティストらを迎えて上演される『BALLET TheNewClassic』。その革新的な全容を、舞踊監修を務める堀内將平(Kバレエ カンパニー プリンシパル)に聞いた。

■突如始動したプロジェクトに、様々な分野のアーティストが集結

――まず、『BALLET TheNewClassic』を立ち上げたきっかけを教えてください。

もともと"いつか舞台を作りたい"という想いをずっと持っていたのですが、ある時、自分が理想とする公演の構想を、今回の企画者でありダンスに特化したウェブマガジン「Alexandre」編集長も務めるフォトグラファーの井上ユミコさんにお話ししたところ、瞬く間に実現へ向けて動き出すことに。ふたりの間で「踊り手の魅力を最大限に引き出す」というコンセプトは即座に一致し、「時代を経て再解釈された美」を突き詰めていくことで、衣裳やヘア&メイク、空間づくりにも、従来とは一線を画す斬新なアイディアが次々と生まれてきたのです。

――会場が恵比寿ザ・ガーデンホールというのもバレエ公演では珍しいですね。

こちらは通常、コンサートやファッションショーなどに使用されることも多く、せっかくならホールの特性を生かして客席との距離をできる限り近くする(2.26m!)ことで一体感を生み出したい、と考えました。全15列477席ですので、いずれの席を選んでいただいても、これまでに味わったことのない臨場感を感じていただけると思います。僕もここまでお客様の間近で踊るのは初めての経験でとても緊張していますが、踊り手の身体性や動きの機微を存分に堪能していただけると嬉しいですね。また、気軽にお越しいただけるようにスタンディング席も設けましたので、ぜひ何度でも足を運んでいただきたいです。

――ウィーン国立バレエ団専属ピアニストの滝澤志野さん監修による音楽、トップクリエイターたちが生み出す衣裳やヘア&メイクにも期待が高まります。

本公演は全2部構成なのですが、プログラムに一連の流れを持たせるため、第1部はほぼピアノとチェロの演奏で統一されています。以前『ドン・キホーテ』のリハーサル中に第3幕のアダジオ部分のピアノ伴奏を耳にした際、“なんて素敵なんだろう”と感銘を受け、そこから想を得てこの形態にたどり着きました。滝澤さんには演奏のほか編曲もお願いしたのですが、見事にアレンジされた音楽を聴くたびにインスピレーションが沸き上がってきます。さらに、衣裳はバレエをモチーフにしたファッションブランド「Chika Kisada」デザイナーの幾左田千佳さん、メイクは歌舞伎役者・松本幸四郎丈とのプロジェクト『Kesho』でも話題の鷲巣裕香さん、そしてヘアデザインを、名立たるメゾンのヴィジュアルに携わってこられたKENSHINさんが手がけてくださいます。各々の感性が融合し、化学反応が生まれる瞬間に立ち会えるのも大きな喜びですね。

■選りすぐりのダンサーが多彩な演目で魅せる!

――堀内さんは舞踊監修として、キャストや演目をどのように決められましたか?

純粋に、僕が大好きなダンサーたちにお声がけしました。今回の出演者は皆、唯一無二の個性が輝くメンバーですが、特に海外のカンパニーに在籍中の方々は日本で踊る機会も限られていますので、これを機にもっと多くの皆さんに知っていただきたいと思います。演目に関しては、開催が決定した際、まず中村祥子さんに『瀕死の白鳥』をオファーさせていただいたところから、ソロとパ・ド・ドゥやパ・ド・トロワ、古典と現代作品とのバランスを考えて第1部のプログラムを組みました。そして第2部は、出演者全員・総勢11名の『ライモンダ』ですが、こちらも各々の美質が存分に発揮されるよう、何度も編成を吟味しました。この上なく豪華なディヴェルティスマンになると思いますよ!

――昨年よりアクラム・カーン・カンパニーに所属し、宇多田ヒカル氏のツアーにも出演するなど幅広く活動中の高瀬譜希子さんが二山治雄さんに振り付けた新作『ボレロ』や、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパル水谷実喜さんと4人の王子による『眠れる森の美女』よりローズ・アダージョ、東京バレエ団プリンシパルの秋山 瑛さん、同団ファーストソリストの池本祥真さん、ボルドー国立オペラ座バレエ団プルミエール・ダンスール太田倫功さんによる新作『Moment in Time』など、多彩な演目が名を連ねています。そして堀内さんご自身も、前述の『眠り』に加え、ジョージア国立バレエ団プリンシパルの横山瑠華さんと『シェヘラザード』を踊られますね。

横山さんとは初共演となりますが、とてもテクニックの強いダンサーで、『ライモンダ』では回転の多いソロも踊っていただきます。ジョージア国立バレエ団の芸術監督を務める世界的プリマ、ニーナ・アナニアシヴィリから薫陶を受け、ますます評価も高まっている彼女と作品を作り上げていくことが、今からとても楽しみです。

■「自分にしかできないこと」を求めて

――はじめてのプロデュース業の手ごたえはいかがですか?

振り返ってみると、海外で踊っていた頃は、さまざまな面で自分が西洋のスタンダードに及ばないことをとても辛く感じていました。帰国してKバレエ カンパニーで踊りながらこのようなプロジェクトを始めた今、やっと“自分の居場所を見つけた!”と実感し始めているところです。また、コロナ禍での延期を経て、様々な学びも得ました。只々やりたいことのみを詰め込むのではなく、客観性も担保しながらディレクションすることや、ダンサーやスタッフ、そして応援してくださる方々との繋がりの大切さを改めて噛みしめています。何より、こうしてトライ・アンド・エラーを繰り返しながら唯一無二の「オリジナル」を生み出していくことこそ、自分がこれから進むべき道なのではないか……、そんな予感に突き動かされながら、可能性をどんどん広げていきたいですね。

――最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

「自分たちにしかできないこと」を模索し続けた結果、ようやく公演が結実するに至りました。会場にいらしてくださる皆さまに僕たちの熱量が伝わり、何かを感じ取っていただけると大変光栄です!

取材・文=吉野美山 撮影=奥田祥智

公演情報

『BALLET TheNewClassic 2022』
日程:2022年8月5日(金)~8月7日(日)
会場:恵比寿 ザ・ガーデンホール(〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-2)
 
プログラム:
【1部】
『眠れる森の美女』よりローズ・アダージョ
水谷実喜
堀内將平 池本祥真 太田倫功 高野陽年
 
​『HOMEM』
振付: Alessandro Giaquinto

菅野茉里奈
 
​『シェヘラザード』よりパ・ド・ドゥ
横山瑠華 堀内將平

『Moment in Time』(新作)
振付: Arshak Ghalumyan
秋山瑛 池本祥真 太田倫功

​『ジゼル』よりパ・ド・ドゥ
森田愛海 高野陽年

『瀕死の白鳥』
中村祥子

『ボレロ』(新作)
振付: 高瀬譜希子
二山治雄
 
【2部】
​『ライモンダ』より抜粋
※日程別キャスト表は公式サイトにてご確認ください
 
料金:
[FrontRow]20,000円 SOLD OUT 
[S]16,000円 
[Standing]3,000円 SOLD OUT
に関するお問い合わせ:光藍社センター
koransha_info@koransha.com 050-3776-6184 (12時~16時 土日祝休み)
 
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