スターダスト☆レビュー、『東西あわせて108曲 煩悩ライブ』大阪公演オフィシャルレポートが到着

レポート
音楽
2022.6.14
スターダスト☆レビュー 撮影=加藤正憲

スターダスト☆レビュー 撮影=加藤正憲

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スターダスト☆レビューが6月11日に大阪城ホールで開催した『スタ☆レビ40周年 東西あわせて108曲 煩悩ライブ』のオフィシャルレポートが到着した。


2021年に40周年を迎えたバンド、スターダスト☆レビューが6月11日に『スタ☆レビ40周年 東西あわせて108曲 煩悩ライブ』の大阪公演を開催した。6月4日に行ったさいたまスーパーアリーナ公演に続いて、大阪城ホールでも計59曲を披露。この日つめかけた8500人のファンとともに、とてつもない試みを見事達成してみせた。

13時すぎ。ほぼ定刻通りに照明が落ちると、スタ☆レビファンであり35周年記念ライブにゲスト出演もした、松たか子がナレーションを務めるオープニング映像へ。続いてステージに、根本要(Vocal&Guitars)、柿沼清史(Bass&Chorus)、寺田正美(Drums&Chorus)、林“VOH”紀勝(Percussion&Chorus)というスタ☆レビの面々、サポートメンバーの添田啓二(Keyboards&Chorus)、岡崎昌幸(Acoustic Guitar,Keyboards&Chorus)が登場する。「みんな楽しんでってくれよー!」そんな根本の呼びかけからの1曲目は、東西公演共通の「僕らの本能」。そこから「もうチョットだけ何か足りない」「今夜こ・れ・か・ら」「もっとそばに来て」と軽やかなナンバーを続け、81年5月25日に、アルバム『STARDUST REBUE』と同時にリリースされたデビュー曲「シュガーはお年頃」(※東西共通曲)へ。

そこからこの日最初のMCに入り、根本は「大阪で僕たちのライブは育てられました。いつかやりたい思っていた周年ライブを、ここでやれてうれしいです」と感慨深げ。「今日のライブは6時間を予定してるけど、終わるはずがない。ある意味、修行です。自分のペースでゆっくり楽しんでください」と、笑わせながらファンを気遣った。

今回のライブは、東西共に、テーマを添った曲目を集めたパートを連ねることで、セットリストを構成。まずは、作品ごとの顔とも言える曲を選りすぐった“アルバム1曲目”コーナーで、ホーンセクションも交えて、「Thank You」「All I Do」「BEATに愛を込めて」とにぎやかに並べていく。MCを挟み、続いては“アルバム2曲目”コーナーと銘打ち、「夏のシルエット」「Lovers In The Sky」「Heaven」。ストレートな1曲目とは異なり、バラエティ豊かな曲が連ねられる。心情を叩きつけるように歌う、やや彼ららしからぬ曲「Heaven」を終えると、引き込まれていた観客を前に「…どうするんだよ、この重たい雰囲気(笑)。ちょっと今、後悔しています」と根本。ふっと、空気を緩ませてみせるあたりも、さすが。

そして、40周年ライブらしい企画“MVやLIVE映像とともに40年を振り返る”コーナーへ。背後に当時の映像を映し出されるのと合わせ、目と耳で、彼らの歩んだ道をたどる。89年の万博お祭り広場ライブ映像を収めた「Be My Lady」から、「君のすべてが悲しい」(90年)、「Joanna」(02年)、「今日もいい日でありますように」(12年)、「はっきりしようぜ」(20年)。「Be My Lady」で、当時のスタ☆レビの姿(色の異なるスーツを着、根本はもちろんサングラス着用。シティ・ポップを奏でるオシャレなバンドというイメージもあった)や、ファンの姿(ちょっと大人びた女性が多かった)などといったことに、懐しい思いを重ねたファンも多かったはず。しかし加えて印象的だったのは、最後に流れた「はっきりしようぜ」だ。これはコロナ禍のまっ只中で制作された楽曲。これまでの流れた月日と共に、あらためて私たちが生きている、今という時代を思うことともなった。

次は“おばかソング”コーナー。「さ、休憩タイムです」と笑った根本は「アマチュアのころから、ウケたくて作ってきた。ここ大阪でもやらせてもらってきたけど」と紹介。なお、「せっかくそんな曲を聴いてもらうんだし」ということで、ここの間は携帯電話での写真撮影自由。「恋はバレーボール」「今年の夏こそは」「ニッポンの汗」と、おばかというより“能天気に楽しい”楽曲が続いた。

そこから一転、彼らのもうひとつの真骨頂とも言えるバラードのスタ☆レビ。“人生の悲哀を歌った悲しい曲”のコーナーと題して、「Crying」「涙」「1%の物語」をしっとり、じっくりと聴かせる。バイオリンの調べ、メンバーのコーラスワークが、聴く側の感情を増幅する。演奏後に会場に満ちた、これまでとは違う、しずやかに降り積もるような拍手もまた印象的だった。

彼らの幅広い音楽を一通りなぞったと思えるこのタイミングで、根本は「そろそろ飽きてきてませんか? いや、俺たちは平気だよ。そもそもやれる曲を全部やろうと企画したライブだし」と客席に笑いかける。しかし返ってくる拍手は「私たちも平気」と答えているよう。そこからは前半最後のコーナー“歌い回し”。メンバー間で歌い繋ぐ曲を連ねていく。「Rock'n Roll Blues」「銀座(あらため大阪)ネオン・パラダイス」「恋は医者でも治せない」、そしてサンバのリズムに乗せて全員がステージ前に展開して踊る「オラが鎮守の村祭り」(※東西共通曲)。ここまでで約3時間。26曲を演奏し終えて、30分間の休憩となった。

16:10過ぎ、ライブが再開。コーラスが響き渡り、花道から根本を筆頭にメンバーが現れる。アカペラでの「トワイライト・アヴェニュー」だ(※東西共通曲)。ここからは、センターステージでの“アコースティックバージョン”のコーナー。アコースティックバンドセットは、そもそも要望があれば全国津々浦々に音楽を届けたいスタ☆レビが、もろもろの都合で通常のセットを持っていけない場合への対応として、編み出したもの。「クレイジー・ラブ」「月の輝く夜に」、再度アカペラでの「ジャスミン」を挟んで、荒井(松任谷)由実のカバー「翳りゆく部屋」。こちらは伴奏がピアノのみ。アカペラに続いて、彼らのコーラスワークが輝いていた。そして「2011年の震災を忘れたくないとの思いから」と、13年のチャリティライブでも披露した「Farewell Night」。さらには、これももちろん東西共通曲の「木蘭の涙~acoustic~」。バイオリンの響きが重なることで、センターステージを核として、メンバーとファンの思いが交わり、増幅していくような感覚が会場を覆った。

後半のコーナー分けも、スタ☆レビらしい。“期待に応えられずすみません”のコーナーでは、タイアップ・CM曲でありながら、ランキングが振るわなかった曲を披露。「もう一度ハーバーライト」(86年「コンフェクショナリーコトブキ」のCMソングで、オリコンの最高位は62位)、「心の中のFollow Wind」(87年のアニメ映画「バツ&テリー」の主題歌で最高位は66位)、「Nothern Lights-輝く君に-」(89年のオーツタイヤのCMソングで最高位は38位)と続けたが、どの曲もライブで映えるスタ☆レビ印の良質な楽曲たちだ。つくづく、何をどうすればヒットになるのかわからないものだ、などとしみじみ思ってしまう。

続いては、根本以外のスタ☆レビメンバーがリードボーカルを務める“俺にも歌わせろ”。柿沼が自身のありようを切々と訴える「B型を愛してください」、林がファルセットを存分に聴かせる「星になるまで」、寺田正美が音頭をとるコミカルな「アカペラな夜」。スタ☆レビというバンドの懐深さ、奥行き、仲の良さを十全に示していて、とにかく楽しい。

そんなバンド自体にもっとフォーカスする流れで、次はそれぞれメンバーがチョイスした楽曲を演奏する“美味しいところを見繕って”コーナー。寺田が、根本と歌詞を書いた「言葉じゃいえないLonliness」、林もこれまた根本と二人で歌詞書いた「この胸で泣けばいい」、柿沼は「ギターソロがいい」という理由で「君のために・・・」、根本は、「『木蘭の涙』の歌詞も手掛けた山田ひろしさんの歌詞がカッコいい」と理由で「少年」をチョイス。また、長年のサポートメンバーである岡崎による「海月~UMIZUKI~」、添田が挙げた「ワイン恋物語」を披露したところで、最後にもう一曲。根本が、敬愛するエリック・クラプトンの波乱の人生を思って書いたという「Gently weeps」を、「みなさんへのメッセージとして」と添えて歌いあげた。

実は彼らは、6月4日の公演の前、5月21日に2021年1月からスタートした40周年ライブツアー『「年中模索」~しばらくは、コール&ノーレスポンスで~』を終えたばかりでもある。全部で102公演、スタ☆レビ史上最長期間にして、最多公演数だった。根本は共に走り抜けてきたスタッフへ、あらためて感謝を示す。そこから、次のコーナーは20~70代までと幅広い“スタッフリクエスト”。「Find My Way」「ふたり」「もう一度抱きしめて」「愛してるの続き」とシングル曲を披露した。東西合わせた総曲数が100曲を超えたが、まだまだスタ☆レビにはいい曲があるのだと、つくづく感じ入ってしまう。

いよいよ、終わりが見えてきた。「最後は盛り上がっていきましょう」と、まずは「夢伝説」(※東西共通曲)。そこからまさに怒涛のように、「君は大丈夫!」から「HELP ME」「太陽の女神」「と・つ・ぜ・ん Fall In Love」「還暦少年」と、これまでの歴史で生み出してきた、ライブで大盛り上がり必至のキラーチューンを惜しみなく連発する。ファンは、声は出せなくても身体では示せるぞ、と言わんばかりに拳を振り上げ、飛び跳ね、手を叩く。そう、こんなグルーヴ、そして一体感もまたスタ☆レビだ。ライブのスタ☆レビ、ここにあり。人生における喜怒哀楽を、それに伴う風景を、色を。派手な演出はなくとも曲だけで見せてくれるのが、スターダスト☆レビューというバンドなのだ。

残すところ、あと2曲。「みんなも、心の中だけで歌ってくれ」と呼びかけ、「愛の歌」(※東西共通曲)を歌い出すや、感動的な光景が。観客が携帯のライトを掲げ、振り出したのだ。根本は「すげえな!」と声を上げ、歌い進めながらも、目の前の景色に感極まったように、顔を覆う仕草を見せる。鳴りやまない拍手も、この空間のかけがえのなさを物語っていた。根本が語る。「僕らは、スタ☆レビ好きのみんなとできるだけ一緒にいたかった。いつもは3時間で、あっという間。みんなが楽しんでくれてる顔を見て、僕らも楽しくなって歌ってると終わっちゃうんだよ。40周年だし、もうちょっと一緒にいようよ、じゃあ60曲歌ってみようかって」。そして絞り出すように「やってみて、本当に幸せなバンドだなと。こんな言葉で申し訳ないけど……ありがとう」。最後の58曲目は「悲しい詞だけど、笑顔で聴いててくれたらうれしいです」と、「今夜だけきっと」。背後には、過去の同曲のライブをつなぎ合わせた映像が映し出され、会場はさまざまな思いと、それでいて幸福な感情で満ち溢れた。

最後の最後。「ノーカウントということでさ。もう1曲、聴いてく?」と根本。これまた彼が敬愛するグラハム・ナッシュの言葉を引きながら、会場に語り掛ける。「普通に暮らすしさをひとりひとりが見つけられたら、いざこざなんて起こらない、国同士で争うこともないだろうなって。おおげさかもしれないけど、僕らには何の力もないけど、それを伝えることしかできないだろうと思います。だからこそ、みんなの心に届けられたことがぼくたちの最大のヒットです」。そこから万感の思いを込めて、「めぐり逢えてよかった」(※東西共通曲)。携帯のライトがきらめく会場を見渡しながら、根本は時折、目をぬぐっていた。

「幸せなバンドに育ててもらいました。どうお礼を言っていいかわかりません。でも僕らはまだまだ大器晩成バンドとして、上を目指したいと思います。こうなりゃ最後まで添い遂げてくだい」。そうして最後の最後の最後に、一本締め。すると根本は、いいや言っちゃおうといった感じで「早いうちに次のツアーをやろうと思ってるんです!」。彼らと同じく、今日も結局“もう終わっちゃった”と感じていたファンからの喝采を浴びた。『スタ☆レビ40周年 東西あわせて108曲 煩悩ライブ』は、これにて大団円。公演時間は予定をやはりオーバーし、時刻は19:50を指していた。

撮影=加藤正憲

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