スターダスト☆レビュー、怒髪天、フラワーカンパニーズ、笑い飯が『OYZ NO YAON』で競演ーー格好良い大人たちが死ぬ気で楽しませてくれた大阪城野音
『OYZ NO YAON #007~オヤジを愛したスパイ~』2025.10.19(SUN)
関西の名物イベンター・清水音泉が主催するライブイベント『OYZ NO YAON』が10月19日(日)に大阪城音楽堂にて、2年ぶりに『OYZ NO YAON #007~オヤジを愛したスパイ~』として開催された。メインもサブもけったいなタイトルでしかないが、要は親父世代のバンドが楽しく本気で暴れる祭。2016年に始まり、今年で7回目であり、なので、〝7〟にちなんだ映画タイトルがサブに付いている。グッズデザインも本家映画を匂わせる素敵なイラストであり、とにかく大人のユーモアが盛り込まれまくり。
今年の出演者は、初出演のスターダスト☆レビュー(以下、スタ☆レビ)と笑い飯、常連組の怒髪天(以下、怒髪)、フラワーカンパニーズ(以下、フラカン)。各出演者が登場する際の音楽は、『007』シリーズのテーマ曲「ジェームズ・ボンドのテーマ」という凝りよう。
フラワーカンパニーズ
まずは一番手のフラワーカンパニーズ。約1か月前の9月20日に二度目となる日本武道館公演を終えたばかりで、超・今が旬の4人。1曲目「ロックンロール・スターダスト」では鈴木圭介が赤い星型のタンバリンを鳴らし、続く「ただいま実演中」ではそれこそ本気の実演をして、「少年卓球」では今年56歳ながら少年ばりの卓球素振りをしながら歌う。あまり熟練のという言葉は好きじゃないが、熟れまくって練られまくったロックンロールをシンプルにナチュラルにぶつけてくれる。「NUDE CORE ROCK 'N' ROLL」では竹安堅一のギターカッティングがキレッキレだし、鈴木は舞台の端から端まで動きまくっている。
MCでは、楽屋でスタ☆レビ&怒髪天の両ボーカルがそれぞれの持ち場でしゃべりまくっているというOYZならではエピソードが飛び出るが、その後の曲が「深夜高速」というのがたまらない。なんだ、この緩急の幅は……。OYZだからこそ成せる技……。OYZワード連発もふざけているわけでなく、それこそふざけたというか、けったいな変わったタイトルだが、酸いも甘いも全て知る歴史を重ねてきたバンドたちがただただ良いライブをぶちかますイベントだと、フラカンのライブを観ながら再認識する。2回目のMCでは、このタイトルだから演者も観客も出にくかったり来にくかったりなんて冗談交じりに、鈴木とグレートマエカワが話していたが、こういう大人のユーモアが素敵なことも再認識する。
「メンバーチェンジ無し! 活動休止無し! ヒット曲は次回作!」
ロックンロール三段活用からの、年がら年中バンドワゴンで全国各地のライブハウスを隈なく回る結成36周年のロックンロールバンドが歌う「最後にゃなんとかなるだろう」。沁みないわけが無い。そして、今年発表されたアルバム『正しい哺乳類』収録の新曲「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」が歌われるというのも振れ幅がエグすぎる。最後は「サヨナラBABY」を観客全員のハミングに乗せて、鈴木がシャウトしていく。大人の本気の生き様は格好良すぎる。一番手から泣きそうになったOYZな祭。
笑い飯
舞台上空に吊られていた『OYZ NO YAON』のバックドロップこと黒幕が舞台に下ろされて、それをバックに現れるのは……。出囃子のジャクソン5「I Want You Back」が聴こえてきて、いよいよ笑い飯。特にイベントを意識することもなく、いつも通り、ふたりのペースで漫才をする。
2002年、「M-1グランプリ」に超新星として現れて、2010年に9年かけて優勝をして、今や「上方漫才大賞」コンビ。芸人本の話題から童話の話へ。ガバイな話も出たかと思いきや、ニュースの話題になり、給食の話でセンター長から八宝菜の話になるが、気が付くとマナーが悪い行列割込み客の話題へ。ベテラン世代になっても、若手時代と何も変わらぬ、飄々としたおちょけ具合に嬉しくなってしまう。
スターダスト☆レビュー
そしてスタ☆レビが降臨。メンバー全員お揃いの宇宙服モチーフ衣装なのもポップでキャッチーながらも、何とも言えない重厚感すらある。当の本人である根本要は「オヤジの野音ならぬオジイの野音!」と笑い飛ばして、ピアノに合わせて、「楽しんで~!」などとロングトーンで歌う。ユーモアがある上に、のっけからリスペクトの拍手を送りたくなる。ユーモアから入って何気なく歌い出すのだが、当たり前ではあるが、その歌の実力に腰を抜かすしかない……。そこから「AMAZING GRACE」へ。歌だけで、声だけで、全てを持っていってしまう。
<遠い昔のことさ>
そのまま代表曲「夢伝説」に繋がれて歌われる。思わずゾクッとする……。ドラムのビシッという的確なビートにも耳を奪われる。よく色褪せないメロディーなんて言うが、これこそが色褪せない1984年からのメロディー。初っ端から完璧すぎて、ぐうの音も出ない。
曲終わり、すぐMCに入り、今回の出演について面白おかしく話し出すのだが、まるでトークショー。まだセットリスト表で観る限りは1曲目の流れでしかないのに、充分すぎる満足具合。しかし、御本人は初めて観る人もいるのでベストメニューで挑みたいと、続く2曲目も代表曲「今夜だけきっと」と全力で挑んでくれる。丁寧に曲のナビゲーションまでしてくれて、先に歌詞までナビゲーションして、我々観客まで歌えるようにしてくれる。至れり尽くせりすぎるし、てか、根本が本格的に歌い出すと我々は聴き入るのみ。続く3曲目も代表曲「木蘭の涙」と本当に全力で挑んでくる。凄すぎる……。
この3曲をやったら後は何もないなんて笑っているが、とんでもないのは、続くのが代表曲「トワイライト・アヴェニュー」ということ。47歳の私もリアルタイム世代では無いのだが、聴く曲聴く曲全てを知っている。懐かしのメロディーではなく、現在進行形のメロディーになっているのだから太刀打ちできない。それでもスタ☆レビ、怒髪、フラカンはヒット曲がないから肩身が狭くて傷をなめ合っているとか、ボーカル全員小っちゃいとか、自虐ジョークを交えてくるのだが、45年間ライブを信条としてやってきて、今日も死に物狂いだと明かす。怒髪・フラカンを後輩というよりは、ライバルとして負けたくないと確実に思っている。だから。ライブが凄まじいのだ。
ロックをやり出した時の気持ちを忘れぬように作った「還暦少年」。サンバリズムで楽しませて躍らせる「オラが鎮守の村祭り」。歌は勿論、パフォーマーとしても魅せるライブであり、ラストナンバー「Get Up My Soul」まであっという間。45年のキャリアがあり、68歳の根本が最後に「私の魂よ起き上がれ」なんていう意味がある「Get Up My Soul」をぶつけてくるなんて……。凄まじいとしか言えない。
笑い飯
舞台上空に吊られていた『OYZ NO YAON』のバックドロップこと黒幕が舞台に再び下ろされて、それをバックに再び現れるのは……。出囃子のジャクソン5「I Want You Back」が聴こえてきて、再び笑い飯が登場。全てを持っていったスタ☆レビの後だが、音楽とは異なるジャンルである漫才を、いつも通り笑い飯はかけていく。様々な話題で魅せた1本目とは異なり、子供に歌ってやりたい歌というひとつの話題で突き通していくストロングスタイルな2本目。しかし、飄々と話していき、徐々に熱を帯びていくWボケ漫才の真骨頂。或る意味、異種格闘技戦な『OYZ NO YAON』。
怒髪天
大トリは怒髪天。SEは「男祭」。1曲目の「押忍讃歌」から「OUT老GYUS」「あおっぱな」とぶちかまし、立て続けにOYZならではの「オトナ」をテーマにした選曲で会場を盛り上げる。最初のMCで、「雨が天気予報より早く降り出すし、フラカンは武道館を2回経験しているし、笑い飯よりウケないし、スタ☆レビは大人げないし(特に最初の3曲のヒット曲連発)』と愚痴りながらも(笑)、「令和(狂)哀歌」「ザ・リローデッド」「決意の朝に」「孤独くらぶ」と、人生の喜怒哀楽がすべてつまった、これぞ怒髪天といえる楽曲を歌う。怒りを笑いに哀愁は胸に、まさにJAPANESE R&E(リズム&演歌)な世界観で大阪城野音を魅了した。
増子は、自分たちが他より優れている点を死ぬ気でやることと言い切る。
いい歳したOYZたちが、一期一会、死に物狂いでライブに挑んでいる姿に胸を打たれるし、これこそが『OYZ NO YAON』なのだろう。
今年リリースした新曲「yallow magic orchestra」で楽しませて、最後はバッチリと「オトナノススメ」で〆る。袖に引っ込むことなく、「これで終わらないのが『OYZ NO YAON』!」としゃべり始める増子。スタ☆レビとフラカンメンバーがイベントTシャツを着て再登場して、まずはしゃべりだす。ボーカル3人とも小っちゃい話題から『シルバニアファミリー』という今日一番の名言が増子から出たとこで、ザ・大阪な選曲のアンコールタイムへ!
アンコール1曲目は「ダンシング・オールナイト」。歌い終わり、本家のモノマネも繰り出され、フラカン小学生・怒髪中学生の時に聴いていた「ダンシング・オールナイト」もスタ☆レビは既に大人だったとオチがついたところで、アンコールラストナンバーな2曲目は「悲しい色やね」。<大阪 ベイ ブルース>という歌詞が頭から離れない強烈な歌を、根本は舞台前方まで出て根本でしかない凄みある歌声で歌う。そんな根本を挟む増子と鈴木の魂の叫びにも震わせられる。
最後は出演者全員が横一列に並び手を取り合い、高く手を上げる、増子いわく「正式名称がわからない!」挨拶で締め括られる。エンディングテーマとして「ジェームズ・ボンドのテーマ」が流れると、このイベントは一体何だったんだという気持ちにさせられるが、何だかよくわからないけど、兎にも角にも格好良い大人たちが死ぬ気で楽しませてくれたことだけは紛れもない事実。そして、大充実した気分で帰れるのが『OYZ NO YAON』。
大人も親父も捨てたもんじゃないし、何歳になっても死ぬ気&死に物狂いで生きていたら、きっと良いことがあるはず。そんなことを、ふと思わせられた。次いつになるかはわからないけど、また必ず『OYZ NO YAON』には出逢いたいのだ。
取材・文=鈴木淳史 写真=オフィシャル提供(撮影:昴)