MUCC 新体制初のアルバム『新世界』は“ゆったりしたアルバム”? その真意と制作の舞台裏を訊く
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アルバム『新世界』【通常盤】
――トオルさんの鍵盤も最高にロックンロールでカッコイイよね。ということで、「R&R darling」。これには裏切られたなと。全く曲調とかは違うんだけど、「死んでほしい人」(2014年6月発売アルバム『THE END OF THE WORLD』収録)と並ぶ裏切られ具合。
逹瑯:あははは。全然ロックンロールじゃねぇじゃんって感じだったでしょ(笑)。
――そう。
逹瑯:Aメロで《Hey! R&R darling》っていうのをデモの段階でなんとなく付けてたら、そこのハマりが良すぎて、そこが頭から離れなくなっちゃって。そこから抜け出せなくなっちゃったの。何の意味も考えずに付けてたんだけどね。でも、歌詞をちゃんと書くときに、そこに意味を持たせて書いていこうって思って書き始めた感じだったんで、ロックンロールでも何でもないのに、そうなっちゃったんだよね(笑)。
――でも、そこがちょっと甘酸っぱい感じになって良かったんじゃないかな。全然ニュアンス的なものなんだけど、『ママレード・ボーイ』って漫画知ってる?
逹瑯:知ってる(笑)。俺、あのオープニングテーマ大好きなんだよ。
――なんかあの世界観というか、キラキラした感じの空気感があったなと思って。
逹瑯:あははは。なんか言いたいことはめっちゃ分かる(笑)。ゆったりと自然に委ねる感じの曲が欲しいね~っていう打ち合わせをして、その後すぐに作った曲がこの曲だった。
ミヤ:俺的には、くるりなんだよね、この曲。なんかさ、たまに無性にくるりを聴きたくなる気分になるときってあるんだよ。そういう曲調ないなぁと思ったから、すごく良かったなって思う。
ミヤ
――なるほど。ギターソロのドラマティックさもいいよね。
逹瑯:そう。いいよね。
――フェードアウトにしたんだね、ラスト。
逹瑯:ゆったりとしただけじゃなくて、サビとかちょっとエモくしようって植え付けていって、アウトロどうしようかなって考えたときに、スパンッと終わるのもいいけど、頭の中に広がっている風景が広がりながら、余韻に浸りつつ終われたらいいなぁと思ってフェードアウトにしたんだよね。俺的には「未来」からの曲の流れがすごく良かったなって思ってんだよね。
――「未来」はすごく深く心地良く沈んでいくイメージの気持ち良さがあるからね。「未来」の後半部分の少し鮮やかな景色になるところから、静かに優しく柔らかな感じで「R&R darling」に繋がっていくのは美しい流れだよね。
ミヤ:本当はこの辺りに入れたかった曲もあったんだけどね。一番シンプルでゆっくりな曲。
YUKKE:一番ゆっくりだったね、あの曲は。
――YUKKE作詞作曲の「COLOR」も、リズムの難しさや、曲中の展開や、いろんな要素がふんだんに詰め込まれている、MUCCにとってもYUKKEにとっても新世界だったのでは?
YUKKE:そうかも。一番ビックリした曲だったって言われることも多くて。今回最初から2回曲出しが設定されていたのね。自分の中で、最近ミディアムな曲調を作っていない気がしたのもあって、今回はそっち系の曲ばっかり持っていった気がする。そんな中の2曲の良いところを合体させたのが「COLOR」。子供が合唱してる英詞の部分がサビなんだけど、もともとはラップの曲を作ってみたいなってとこから始まったのね。歌詞を書く前からずっと子供が合唱してるイメージが頭の中にあったんだけど、仮歌ではもっと壮大なイメージで、そこを自分で歌ってデモを作っていたんです。それをリーダーに聴かせたら、“これだったら子供が合唱してる感じも似合うんじゃない?”って言われて、そこからちょっとメロディを作り直して、煮詰めていった感じ。
――「COLOR」はギターのアプローチも素敵だよね。アコースティックで魅せる部分もすごく魅力的で。こそはYUKKEからのリクエストで?
ミヤ:もともと原曲の雰囲気がそういう感じだったから、それをなぞっているところはあるし、シンセだった部分をエレキに変えたりはしたけど、2曲を1曲にくっつける作業に一番力を注いだかな。
――リズムに関しては?
ミヤ:Allen的に普段はやらないビートだし、レガートはジャズドラムですごく奥が深いから難しいとは言ってたけど、結構自分のものにしてたと思う。
――Allenはメタルドラマーだって言ってたのもあって、「零」のドラムを聴いたときは“なるほど”って感じがしたけど、「COLOR」は1曲を通して難しさを感じたから。
ミヤ:いや、今回のアルバムの中でAllenが一番苦戦してたのは「零」だったんだよ。
――そうなの?
ミヤ:そう。(ツーバスが)全然踏めなくて。「零」はスラッシュメタルだから、長いんだよ。Allenは速いのを短く踏むタイプだから。速くて長いのは苦手みたい。
――おぉ、それは意外。すごく綺麗なツーバスだな、さすが! って感じだった。アルバムの流れとしては、「Paralysis」「零」で、アルバム冒頭のMUCC色に戻っていく感じがあるよね。「Paralysis」はAllen曲なんだね。
ミヤ:そう。2曲作ってきたんだけど、もう1曲はドラムトラックだけ作ってきてた感じだったから、この曲は完全なデモがあってセレニティ・イン・マーダーのメンバーに手伝ってもらってMUCCっぽいトラックを仕上げてもらって、俺がメロを付けて完成させたんだけど。Allenの場合、すごく思考が分かりやすくて、作りたい曲が明確に分かるから、すごく作りやすかった。アイツ、メタル野郎だから、本当に分かりやすいの。絶対にツーバスにしたいでしょ、っていう分かりやすさもあったし、ギターもすっごいクサいソロにしたの。恥ずかしいくらいツインリードのイナタイ、クサいソロにしたら、Allenが、最初に“あそこがすごい良かったです! めちゃくちゃ熱いですね!”って言ってきて。
逹瑯:あははは(大爆笑)!
ミヤ:コイツ、ちょろいなって思った。
YUKKE:あははは(大爆笑)。
ミヤ:“ギターソロの後にシャウトが入ったことによって、よりエモさが増しましたね!”とかも言ってたなぁ。
逹瑯:あははは(大爆笑)! 分かりやすいのが好きなんだな、Allen(笑)。
ミヤ:でも、そうやって想像力を掻き立てる曲を書いてくれたから、すごく楽しくやれたし、そこに昔からあるMUCCのメロディ感や歌詞の世界観が意外とマッチしたなって思った発見もあったしね。
――そうだね。不思議だったのは、「Paralysis」はすごくヘヴィでスピード感もあるのに、歌は結構ゆったりと歌い上げているよね。
逹瑯:「Paralysis」は速く感じるけど、メロだけで言ったら、歌謡曲っぽくて意外とゆったりしてるんだよね。すごいMUCCっぽいメロだから、めちゃくちゃ歌いやすかった。
ミヤ:この曲はアコースティックライブでやったら、“あ、こんなにしっとりした曲なんだ”って思うと思うんだよね。
YUKKE
――すごいMUCCっぽいっていうのはめちゃくちゃ分かる。しっとりした曲なんだなって感じる要因として、YUKKEのベースラインも大きいのかも。
YUKKE:「Paralysis」のイントロとか前半部分とかは、これまでのMUCCにない風が吹いてるのを感じたんだよね。でも、サビでちょっと懐かしいMUCCメロがくるとこで、“あぁ、MUCCの曲だわぁ”って思った。なんかね、カップリング曲の逹瑯曲で弾くベースフレーズっていうイメージだったんだよね、俺としては。
――なるほどね。「零」も今までのMUCC感を強く感じた1曲だったな。
逹瑯:「零」は最初アウトテイクだったんだけど、どうしてもやっぱり「零」はアルバムの中に欲しいよね、って話になってリーダーが戻したんだよね。
ミヤ:今回、アルバムの流れも最初から決めないようにしてたんだよね。曲が全部できるまで、“(アルバムの流れとか)知らねっ”って思って、全くそこを考えずに曲作りだけに集中した感じだったから。でも、「零」だけは入れた方がいいなって、直感で思った。入れると入れないとだと、アルバムの印象も変わるし、「零」が無いとライブが作れないなって思ったんだよね。実際、アルバムに入りきらなかった新曲が3、4曲あって。それはライブではやっていこうかなって思ってる。「零」もその内の1曲になってたんだけど、いや、これは入れた方がいいなと思って入れたんだよね。
――「零」はライブを作る上でも必要だけど、この曲調に《泣きじゃくって笑えよ》っていう歌詞が載るところがMUCCだし、それを待ってるからね、夢烏は。「いきとし」の前っていう位置もベストだったと思う。
ミヤ:今までの流れだと、SATOちの曲の“曲”に引っ張られて消化していくっていうライブの流れが多かったんだよね。もうSATOちが作る新たな曲はこの先出てこない訳だから、その流れを変えたいなっていう思いもあって。別の魅せ方、流れを作りたくて。そこに変わるものが「Paralysis」とか「零」だったんだよ。SATOちの曲って、いい意味でも悪い意味でもSATOちの曲なのよ。何と何の要素がくっ付いてそれになってるっていうタイプじゃなくて、“SATOちの曲”でしかない。だから名曲が多いんだけど。だけど、もっとMUCCらしさを別のテイストに注入した曲をやりたいなと思っていて。それが分かりやすくできたのが、「零」だったのかなって思う。「零」は、最初“何何っぽく始まる”んだけど、サビですごくMUCCになるっていう感じ。曲調とかコード感とかじゃなく、それ以外のメッセージ性とか雰囲気でね。トータルでそういう曲ってあんまりなかったから。SATOちの曲だとそういう歌詞が書けないんだよね。今回「零」ではそれができて。そこは新しい発見だったのかなって思う。
リハーサルでもすごく良いツアーになる想像ができてるのもあって、実際のライブで見えるもっといい形が想像できないから、そこも本当に楽しみ。(YUKKE)
――なるほど。いやぁ、今までもいつもアルバムが出る度に“今度はどんな感じのMUCCが来るの?”っていうドキドキがあったけど、今回もいろんな意味で期待を裏切りつつ、また夢中にしてくれるアルバムを作ってくれたなと思います。『MUCC TOUR 2022「新世界」~The Beginning of the 25th Anniversary~』は、どんなツアーになっていく感じ?
ミヤ:このメンツでのツアーは2回目になるんだけど、今回は全くどうなっていくか想像が付いてない。
――どういう意味で?
ミヤ:ライブに対して気分が違い過ぎて。どうなるか分からないっていうのが本音だね、正直。今までツアーに向かうときって、本番に対して不安しかなかったとこがあったんだけど、今回はリハーサルの段階でOKで、その時点で満足感を得ているから、ライブになったらどうなっちゃうの? って感じ。やっぱりライブって、会場にお客さんがいて何倍にも広がっていく感じなんだけど、もうこの時点で最高に楽しいから、ここからどうなっちゃうんだろう? っていう。演者が楽しんでいることが一番で、それってお客さんに伝わるから、今回いつもよりも楽しんでたら、それがもっと伝わる訳でしょ。どう伝わるんだろうっていう楽しみがあるね。
YUKKE:本当にここまで長いツアー自体が久しぶりだから、やっと行ける場所もあるから本当に楽しみでもあるし。リハーサルをやってる感覚だと俺もすごく良いツアーになる想像ができてるのもあって、そっちもすごく楽しみなんだけど、実際のライブで見えるもっといい形が、どんなものになるのかが想像できないから、そこも本当に楽しみだし、期待してます。お客さんも、前よりはライブに対していろんな不安要素も少なくなっていると思うから、純粋に楽しみに来てもらえるんじゃないかなと思うと、嬉しい。
逹瑯:新しい楽しみ方を発見できそうな新譜だから、これまでライブで感じたことのなかった高揚感や楽しみ方があるんじゃないかなっていう期待が大きいかな。こんな楽しみ方知らなかった! こういうライブの形もあるんだ! っていう楽しみ方を探せたらいいなって思ってます。
取材・文=武市尚子
リリース情報
【初回限定盤】
CD+Blu-ray MSHN-161~162 ¥4,950(tax in)
<初回限定盤、朱ゥノ吐+会員限定生産盤 共通特典(Blu-ray)>
・「Documentary of 新世界」収録
・「いきとし」MV収録
初回盤
【通常盤】
Only CD MSHN-163 ¥3,520(tax in)
通常盤
<CD収録曲>
01. 新世界
02. 星に願いを
03. 懺把乱
04. GONER
05. パーフェクトサークル
06. HACK
07. NEED
08. 未来
09. R&R darling
10. COLOR
11. Paralysis
12. 零
13. いきとし
14. WORLD
ライブ情報
※終了公演は割愛
2022年6月25日(土) 神戸Harbor Studio
2022年6月26日(日) 大阪 BIG CAT
2022年7月2日(土) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
2022年7月3日(日) 高松 festhalle
2022年7月10日(日) 仙台 GIGS
2022年7月16日(土) 札幌 cube garden
2022年7月17日(日) 札幌 cube garden
2022年7月23日(土) 浜松 Live House窓枠
2022年7月24日(日) 名古屋 DIAMOND HALL
2022年7月26日(火) 京都 KBSホール
2022年7月30日(土) 福岡 BEAT STATION
2022年7月31日(日) 福岡 BEAT STATION
2022年8月19日(金) Zepp Nagoya
2022年8月21日(日) Zepp Osaka Bayside
2022年8月28日(日) Zepp DiverCity TOKYO
【一般発売中】※6-7月地方公演 https://mucc25th.55-69.com/live/
【一般発売日】 ※8月公演 2022年7月16日(土)
イベント情報
NEWアルバム「新世界」の制作中、またはライヴツアー中に使い捨てカメラでメンバーを撮影した
▼インストアイベントの詳細はコチラ https://55-69.com/news/8189
【イベント概要】
▼オンラインイベントの詳細はコチラ https://55-69.com/news/8213