DOG inThePWO、13年分の想いを伝えた活動休止前最後のツアー最終公演オフィシャルレポート

2022.6.16
レポート
音楽

DOG inTheパラレルワールドオーケストラ 撮影=横山 晶央

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6月12日に豊洲PITで開催されたDOG inTheパラレルワールドオーケストラの活動休止前最後のライブ『パラレルワールドオーケストラ』のオフィシャルレポートが到着した。


5人組バンド、DOG inTheパラレルワールドオーケストラが、全国ツアー『パラレルワールドオーケストラ』の最終公演を、6月12日に東京・豊洲PITにて行った。本ツアーをもって無期限の活動休止に入ることを発表し、“想いはすべて唄で、ライブで届ける”と心に決めて、4月から全国14箇所を回ってきた彼ら。活動休止前最後のライブとなる15公演目では、全26曲というボリュームに人気曲を惜しみなく詰め込み、DOGというバンドの個性と魅力を存分に発揮しながらも、ファンへのメッセージをドラマティックに表現。集まったファンと、13年間に生み出された楽曲を通して、これからも共に生きて行こうと誓い合った。

本編のライブを一言で言うならば、それは“いつも通りのDOG”だった。犬の鳴き声を組み入れたおなじみのSEから客電が落ちて幕が開くと、ステージにはお立ち台の上でポーズを決める5人の姿が。そしてボーカルの春が「東京、全員両手をあげろ!」と喉から血が噴き出しそうな勢いでシャウトし、1stシングル「ハルシオンキャンディ」のイントロが鳴れば、オーディエンスはミルキーリングを着けた手を大きく振り手拍子を繰り出して、客席をカラフルな光の海に変える。トレードマークの三日月ギターでギターヒーロー然とかき鳴らす準々、ベースを大きく掲げるメイ、オーラを纏う長身がさらに大きく目に映るミズキと、それぞれから放たれる気合も凄まじく、まるでフロアに突き刺さるかのよう。サビではドラムの緩菜も身を乗り出し、メンバーやオーディエンスと共に勢いよくスティックで十字を切って、早くも一体感を見せつける。

「今日、このかけがえない夜を俺たち全員で忘れられない夜にしようぜ!」という、この日にピッタリの春の煽りも、実はいつも通り。すべてのライブを“かけがえのない夜”にしてきた5人は、以降、彼らの持ち味を走馬灯のように確認させるステージを繰り出していく。ポップな「星月夜」ではファンタジックな世界の中へ「一緒に行くんだよ」と誘い、「7th WONDER」では曲名通り驚くべき何かが起きる期待で胸をときめかせてくれた。考えてみれば“WONDER”というのはDOGにとって、一つのキーワードでもあるだろう。誰も想像のつかない“ワンダー”や“ミラクル”を、いつだって彼らは提供してくれたのだから。

「各地でたくさんの大切な気持ち、大事な想いを噛みしめて重ね合って、そして辿り着いた今日だと思う。今日久々に来てる人もいると思うから、いつもと同じこと言うね。俺たち今日、ココに今までで一番カッコいいDOGをやりに来ているんで、皆さん、今日は今までで一番のDOGをやりましょう!」(春)

そこからのパートで5人が訴えたのは、“これからも傍にいるから、共に痛みを乗り越え、共に進もう”というメッセージ。アグレッシブな中にも荘厳さを漂わせる「Re:quiem」で、“きっといつかは消えてくなら きっといつかは忘れてくなら”とリアルな恐れを口にしながら、「この誓いがいつか種になって花を咲かせて……俺たちの大好きな真っ赤の林檎の実になりますように!」と繋いだのは「APPLE[WORLD]GO-AROUND」だ。13年歌い続けられてきた曲にオーディエンスが跳ねれば、“だから大丈夫なんだ”と歌詞をポエムのように綴る春の声も弾む。それでも「まだ、ちょっとだけ緊張してる人がいる。俺もそう。だからね、心を込めて“大丈夫だ”って歌う」と前置き、贈ったのは名曲バラード「Dear My」。どんなに離れていても同じ空の下いつでもキミを想っていると歌って、その温かな音色でオーディエンスの心を解きほぐすのは、誰一人置いて行かないという彼らの優しさの表れだろう。さらに「HeartAche」で心の痛みを真正面から描写した上で、「ココにいるすべての君を連れて、俺たちは夜明けを目指す」という言葉から「青空ハレーション」へと続く流れは、そんな痛みごと引き受けて進んでゆくという彼らの意志表明。両サイドに賑やかなツインギターが展開し、中央でブンブン鳴るベースと鉄壁のセンターラインで織りなす晴れやかなサウンドは紛れもなくDOGの黄金形で、結成から13年の間に産声をあげた数多の楽曲が、これからも我々を導いてくれることを確信できた。

準々

「嬉しみも悲しみも切なさも、いろんな気持ちが重なり合って一つの炎になるみたいな、そんな夜だと思います。あっという間に終わっちゃうから心開いて、思いっきり楽しんでいってね。この曲が、まさに今この瞬間、歌うためにあったんだと、心からそう思えます様に」

そう春が告げての「シュガーノイズ」は、作曲者である準々の個性が爆発した超高速ビートのプログレ奇天烈チューンなだけあり、彼の動きも一際エモーショナルに。そこで繰り返される“響く唄と 響く音と 響くメロディだけで良い”というリリックの通り、ここからはDOGの音楽を純粋に楽しむターンへと突入する。「いくぜ、乾杯だ!」と叩きつけた「ALCOHOL」では、ほろ苦さを併せ持った爽快感にフロアがワッと沸き立ち、最年少のミズキがお立ち台で堂々とギターソロを披露。オーディエンスが掲げる手に光るミルキーリングがキラキラとハッピーオーラを振りまく「Wonderful!!!!!」の間奏では、緩菜からメイ、ミズキとソロを繋ぎ、ラストの準々は巧みなライトハンドも炸裂させる。この日、演奏された楽曲のほとんどに彼のギターソロが含まれていたが、常にも増して熱がこもっていたように感じたのは筆者だけではないだろう。

そしてDOGの音楽が、常に聴いてくれる“君”ありきであることを実感したのが終盤。春の「大好きだよ」という台詞から始まったバラード曲「Re:WORLD」では、いつでも“同じ空”を見つめていると熱く訴え、“そんな夜を 想い出して 忘れないで”という歌詞が指すところの“そんな夜”を今日、作るのだという気合を見せる。「今まで過ごしてきた夜が、全部覚えてるその夜が、あの一緒に過ごした、俺たちが消えたくなる夜が……いっつもこんな夜だったら!」という春の言葉から雪崩れ込んだ「JOY TO THE WORLD」は、ライブのたびにファンの声と想いが積み重なることで名曲へと育った曲。“ずっと大切な事なんて……忘れるわけねぇだろうがっ!”と春は歌詞に繋げて叫び、「初めて俺たちのこと好きになった夜のこと思い出してくれ!」とオーディエンスに呼びかける。極めつけにコロナ禍以前は共に合唱していた大サビでは、「今までみんなで歌ってきた音を集めてきたから、今からそれに合わせて心で一緒に歌おう」と、なんと過去のライブ音声をスピーカーから再生。メンバーも演奏止めてフロアを見つめ、その心の歌を刻み込むようにメイが左胸を叩けば、春は「13年間、ありがとうございました!」と想いの丈を振り絞る。たとえ今日、声を出すことができなくとも、13年もの間DOGとファンが重ねてきた歴史と絆は本物だ。

ミズキ

活動休止を発表してからの半年間、“ライブですべてを伝える、ライブで想いを届ける”と言い続け、実行し続けてきたDOG。そんな自分たちの不器用さを「素直だったなぁと誇らしく思う」と振り返りつつ、「みんなに気持ちが伝わってたら嬉しいな。もし何か受け取ってくれてるなら、そんな君に向けて。残り4分間、俺たちのすべてをかけて届けます」と贈ったのは、活動休止発表直後にリリースされた最新曲「Pandora」だ。本来の歌詞には無い“俺たちは”という主語を付け加え、“『愛している』って叫び続ける”と謳い上げた通り、ラストに春は「愛してるぜ!」と絶叫。そしてアンコールではメンバーが一人ひとり、今の偽らざる心境を語り始めた。「あったかいみんなとスタッフに囲まれてDOG、ホントに幸せなバンドだったと思います。ホントにみんな好きになってくれてありがとう」と伝えた緩菜は、「ちゃんとマイク通して言ったことないんだけど……みんな、愛してるよ!」とレアすぎる一言を発声。メイはツアーの中で「心を壊してしまった」こと、そんなときもメンバーとファンとスタッフのおかげで立ち上がれたことを告白し、「みんなのお陰で俺は今日ココに立ててるので、ホントに感謝しかないです。みんなにとっての俺たちや俺が、大切な誰かになれてたら嬉しいです。ホントに見つけてくれて、出会ってくれてありがとう。ホントはもっとそばにいたいです」と素直すぎる心の内を漏らす。

ミズキは「この13年間、とても素敵な日々を過ごさせてくれてありがとうございました!」と断言し、「みんなの笑顔に支えられてここまでやってこれたと同時に、みんなの笑顔を見たいから自分も頑張ろうと思わせてもらえた。ホントにみんなは自分にとって大切な存在です。DOGという歴史が消えることはないんで、これからも共に歩んでいってほしい」と、常に笑顔を大事にしてきた彼らしい言葉をくれた。いつも機転の利いたコミカルな喋りで楽しませてきた準々も、今日ばかりは「カッコつく話しよう」と真顔に。「これからもDOGの曲をずっと聞いてほしい。それを聞いている時間はみんなのものだと思って僕も曲を作ってきたから、自分の人生のBGMとして一緒に生きていってくれたら幸せです」とキメた直後、「“準ちゃんはファンサービスしない”って言われるけど、ステージでハンサムでいることが一番のファンサービスだと思ってた。俺、やっぱりアーティストだから、俺の想いはMCとかギターじゃなくツイッターで書いてるんで」と笑わせるのが流石だ。

メイ

最後に春は、開演前にメンバーで円陣を組んだときに出てきた言葉が「メチャクチャいいツアーファイナル見せよう!」だったと告げ、「それが俺たちにできる一番カッコいいライヴだから、半年間詰め込んだ想いを出そうとしたのが本編。で、アンコールは……俺ら、自信持って言うわ。俺らって超楽しいライブやってるからカッコいいと思ってて、だから今までで一番カッコよく、今まで一番楽しいDOGをやろうぜ!」と「チューリップ中毒」へ突入。ポップチューンに笑顔で跳ねるフロアを受け、春が準々に後ろから抱きついたり、ミズキとメイが一つのお立ち台に乗ったりと、目からも耳からもハッピーな情景を流し込んでくれる。「Doggy’s Party!!」では嵐のような手拍子の中で全員が交互にボーカルを取り、文字通りのパーティ感を演出。オーディエンスを“夢の魔法の世界”へ招待する「エレクトリックパレード」を挟み、メイが自身の前のお立ち台でベースをかき鳴らして「豊洲!気合入れて来い!」と幕開けたのは2ndシングル「アルトラ。」だ。コズミックな世界観の中で切なさとポジティブが融合したメロディと歌詞はDOGの最高峰と言え、彼らをシーンの表舞台に押し上げた楽曲の輝きは、リリースから11年が経っても全く色褪せることはない。

さらに「楽しいついでに大事なこと伝えとくね。みんな今みたいに笑ってる時が一番かわいいよ」という、『キャンディ・キャンディ』の丘の上の王子様ばりの殺し文句からの「PPP」に、「思い残すことないよう“大好きだよ!”って気持ちをみんなに伝えるよ!」とラブコールした「many many Daily」と、アグレッションとキュートさを併せ持ったナンバーで場内のテンションもうなぎ上り。大事な場面で必ず演奏されてきた鉄板曲「ミラクルGO!」に大きく揺れるフロアは、「それじゃあ俺たちが一番大好きな景色見せてくれよ!」という春の願いに応え、ミルキーリングを煌めかせて両腕で大きな花を咲かせる。そんなファンから届けられる特大の愛に、春が「最高!」と呟いたのも当然だろう。

「今、すごく不思議な気持ち。今、あるのは“楽しかった”。これは今夜が楽しかったのもそうだし、ココにいる一人ひとり全員と出会って、好きになって、過ごした夜が愛おしかったからだと思います、本当にありがとうございました。ライブで、唄で、全部伝える。その覚悟で走り抜けてきて、その中で今日、こういう伝え方が一番カッコいいなと思って作ってきた新曲があります。この歌はバンドが、DOGがみんなに伝えるべき言葉、想いを込めた1曲です。そして、俺たちからみんなへの約束の歌。その約束の歌に俺たちが付けた名前は『夢咲ヶ丘』。大切に聞いてください」

緩菜

ダブルアンコールで現れるなり、そう春が口を開いて始まった歌も演奏も、まるで自分自身に言い聞かせるかのように力強く、熱い。“夢が咲いたあの丘で 心から笑える夜を約束するよ”“僕のこと忘れないで”“もう二度と離さない”“七色のあの丘の上 君にキスをするんだ”――そこに綴られたリリックは泣けるほど嬉しいもので、また“白百合の詩”に“向日葵の詩”と、DOGの楽曲を象徴するワードもしっかりと盛り込まれていた。続いて、ミズキのアルペジオをバックに「次はみんなが俺たちに約束してよ」と披露した「ララバイ」では、“君にまた逢えるまで”の優しいリフレインで確かな約束を交わし、「Wishing」でも“サヨナラは 言わないよ”“僕達は1つだから”と情熱的に歌いかけた直後、「ラスト2曲だ!」とフロア中に拳を振り上げさせたのは「極世界-夜と音-」。初期からDOG随一の人気曲であり続けたアッパーチューンで、一語一語を叩きつけるように歌う春の“本当は悲しいよ 苦しいよ 淋しいよ 痛いよ”が胸に刺さるが、そんな痛みを振り切って走るだけのパワーを5人のパフォーマンスは放っていた。

そして春がラストの“がむしゃらに”をマイクレスで叫び、「ラスト!」と号令して「WONDER×WONDER」のイントロが鳴ると金テープが舞って、毎回ライブをクライマックスへと導いてきた楽曲の登場にフロアは沸き返る。DOG inTheパラレルワールドオーケストラというバンドの姿を、13年で築き上げてきた力を観る者の記憶に刻み付けるべく、フロント陣も全員お立ち台にあがり、オーディエンスに向けて精一杯にアピール。“降り注ぐのは 夢咲ヶ丘”と、先ほど初披露された最新曲へと道筋を繋げながらも、これまで数えきれないほど繰り返された春と準々のハイタッチに胸が締めつけられる。さらなる金吹雪が舞うなか、常に冷静なプレイでDOGの多彩な楽曲表現を支えてきた緩菜のドラミングが未だかつてないほどエモーショナルに轟いたのも、やはり今までとは異なる感慨の証だろうか。全員が彼を取り囲んで最後の一音を鳴らすと、メンバー同士それぞれに感謝のハグや握手を交わし、5人で手を繋ぎ生声で「13年間ありがとうございました」と叫んで、活動休止ライブは幕を閉じた。

君らしく。僕らしく。これは約束。――DOGがこの世に最初に生み出した楽曲「APPLE[WORLD]GO-AROUND」で歌われていたメッセージは、13年経っての最新曲「夢咲ヶ丘」でも同じく“君らしくいられますように”と記されていた。DOGが残した200を超える楽曲は、これからも“君らしく”生きるための道しるべとなるに違いない。その果てに再会の日が待っているのかどうか誰にもわからないが、いつか再び出会えたときに互いに胸を張れる“僕”や“私”でいること、そうなれるように生き続けることこそが、彼らが一番叶えたい“約束”ではないだろうか。本公演は映像化され、当日のオフショットや全国各地でのツアーダイジェストも加えて9月28日にDVDリリースされることが決定している。前を向けない時が来たら、どうか、この日のステージを観返してみてほしい。彼らはいつだって、貴方を想って歌ってくれるだろう。

取材・文=清水素子 撮影=横山 晶央

リリース情報

LIVE DVD
『DOG inThePWO TOUR 2022 『パラレルワールドオーケストラ』 TOUR FINAL 2022.6.12 豊洲PIT』
2022年9月28日発売
 
RSBD-060 (2DVD) \16,500(税抜価格¥15,000)
*豪華フォトブックレット
 
[DISC1]
DOG inThePWO TOUR 2022 『パラレルワールドオーケストラ』 TOUR FINAL 2022.6.12 豊洲PIT
 
[DISC2]
DOG inThePWO TOUR 2022『パラレルワールドオーケストラ』
●TOUR FINALオフショット
●TOURダイジェスト
 
発売元:Resistar Records
※収録曲・曲名・曲順、仕様は変更の可能性がございます。予めご了承ください。
 
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