連続企画『アニメソングの可能性』第二回 DJ和の視点から見た ”J-POP / アニメソング” 両音楽ジャンルの接点
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■独自進化を続けるアニメソングDJカルチャーの魅力
――2000年代のお話を伺ってきましたが、その頃からアニメソングオンリーDJする機会が増えていったのでしょうか?
いえ、当時はまだアニメソングオンリーDJを主戦場としている方との接点もなくて、なかなかそういう機会は訪れませんでしたね。アニメソングオンリーDJをする機会が増えたのは2012年に『J-アニソン神曲祭り [DJ和 in No.1 胸熱 MIX]』をリリースしてから。
――CDがリリースされて、アニメソングでDJをしている人のもとに名前が知れ渡ったんですね。
そうかもしれません。それこそCDをリリースしてからmograさんでやっているアニソンインデックスにゲストで呼んでいただいたりしたんです。あれがCDのリリースと同年のことでしたね。それまでは全くmograさんとも縁がなかったですから。
――mograさんではじめてDJをした時の印象はいかがでしたか?
びっくりしました(笑)。アニメソングやJ-POPが流れるDJイベントは当時あちこちで見かけるようになっていたんですが、会場自体がそういったことに特化している場所はなかった。すごい所があるんだな、そう思いましたね。加えて、mograさんでアニメソングのDJをした時はアニソンクラブイベント独特のルールに驚かされたと言いますか……。
――独特のルール、とはどういったものだったのでしょうか?
アニメソングでDJをする時に、アニメの主題歌として使われない二番をかけちゃいけない、というルールがあるじゃないですか? あれに初めて出会ったのがmograさんに出演した時だったんですよ。あれを知った時は焦ったな……。「選曲が間に合わない!」って思って(笑)。
――確かにあれはアニメソングDJの世界にしかないルールですね。他の音楽ジャンルでは一番で曲を変える必然性はありませんから。
そういう意味ではアニメソングDJってすごく独自進化しているカルチャー、それが本当に素晴らしいと思うんですよ。自分達でルール作って、それをお客さんと共有して一緒に楽しんでいる。これってすごくクリエイティブなことだと思うんです。
――アニメソングDJということで、特殊なルールだったり、独自の文化ができあがっている。
僕なんかはDJでアニメソングを使いますけど、そのルールには割と則っていない。普通に二番までかけたりしますから。そういう意味で自分を”アニメソングDJ”だと言っていいのかは迷う時があります。
■DJが何をしている人なのか、それを多くの人に知ってもらいたい
――DJ和さん自身、今後のDJカルチャーがこうなってほしい、というものはありますか?
まずはもっと多くの人に、DJって何をしているのかを知ってほしいと思います。僕は最近クラブ以外でDJをすることが多いのですが、そういう時には決まって「初めてDJを聴きました!」って誰かからは言われるんですよ。DJというものが日本入ってきてかなり年月が経っているはずなんですけど、まだまだDJを見たことがない人も多い……。
――思った以上に浸透していないと言いますか……。
DJを見たことはあっても、何やっているのか理解していない人はもっともっといますからね。ピアノニストやギタリストってほとんどの人が何をやっているか理解しているじゃないですか。それに対してDJはまだ全然理解されていない。やっと、DJって怖い人じゃないってことがみんなに伝わったかな、ぐらいの肌感覚ですからね。
――DJの面白さを伝えるための手段として、DJ和さんの中で思い浮かぶ方法はあるのでしょうか?
クラブ以外の場所でDJをするということだと思います。クラブって行き慣れている僕らからすればすごく楽しい場所。でも、いまだに怖い場所だと思っている人は多いと思うんですよね。そういう人にもDJに触れてもらう機会は積極的に作るべきなんじゃないかな、と。例えば屋外だったり、カフェだったりバーだったり、そういうところにBGM係としてDJをする人が増えるともっとDJって身近なものになると思うんですよ。
――街中のいたる所にDJがいて、街ゆく人は簡単にDJに触れることができる。そういうイメージですね。
そうですね。そういうところでDJカルチャーに触れて、DJって面白そうじゃん、そう思ってくれる人が増えればDJカルチャー全体も盛り上がる。結果的にはそこからクラブに行く人も増えるんじゃないかな、僕はそう思っています。
――その結果、DJ和さんのようにプロとして活動しているDJの方も増えるかもしれませんね。
そうなると僕のライバルが増えることになっちゃいますけどね。でもその盛り上がりに乗じて僕の仕事も増えてくれるのかな? そうなってくれると嬉しいですね(笑)。
インタビュー・文=一野大悟 撮影=岩間辰徳
普段クラブに行くことに慣れている人にとって、今やクラブで邦楽を聴けるのは当たり前のことになっている。さらに言えば、今やクラブでアニメソングを聴けることすら驚くことですらない。しかし、その”当たり前”も誰かが少しづつ作り上げた先に出来上がったカルチャーの上に成り立っている。そんな先人たちが作り上げたものからカルチャーというものができあがってくる、ということを今回のインタビューでそれを大いに感じさせられた。
同時に、誰かの築いた”当たり前”を堪能する我々にも、自分たちのため、そして次なる世代に向けて”当たり前”を築く責務がある。果たして我々が築くべき”当たり前”はどんな形なのだろうか? もしかしたらそれは、DJに触れることが”当たり前”になっている社会の想像なのかもしれない。
クリエイター情報
DJ和
『時間旅行 [DJ和の"あの頃"アニソンMIX]』