<2015年末回顧>町田麻子の「演劇」ベスト5
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『ミス・サイゴン』を上演中のプリンス・エドワード劇場(ロンドン)
<2015回顧>私の「演劇」ベスト5
1位 東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』(4/17~6/1 帝国劇場)
オリジナル演出版時代から30年近くにわたり、数えきれないほど観てきた作品。今回は2年前に日本初演を迎えた新演出版のほぼ同じキャストによる再演とあって、今度こそいい加減「観飽きる」のではないかと思っていたのだが、またしても「こんな作品だったのか」と驚くことだらけの観劇となった。作品自体の絶対的強度と懐の深さはもとより、新演出版を定着させようとするのではなく、新たな解釈を次々加えていく作り手側の姿勢には頭が下がるばかりだ。
2位 マームとジプシー『cocoon 憧れも、初戀も、爆撃も、死も。』(6/27~7/12 東京芸術劇場シアターイースト)
筆者が普段ミュージカルを中心に観ているのは、様々な要素が有機的に絡み合った総合的な表現に惹かれるからであり、ストーリーの面白さとキャストの魅力の2点のみが前面に押し出たストレートプレイには物足りなさを覚える傾向にある。その意味で、この作品はカテゴリー的にはストレートプレイと言えど、ある種ミュージカル的。役者の動き、映像、音楽、照明などが混然一体となって力強いストーリーを伝える舞台に、初演に続いて強い衝撃を覚えた。
3位 スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』(10/7~11/25 新橋演舞場)
歌舞伎には明るくなく、原作漫画に至っては主人公が海賊であることすら知らないほど無知だったが、そんな人間こそ想定観客なのではないかという予感がして観てみたら大正解だった。歌舞伎ファン、原作ファンからしたら色々思うところもあるだろうが、先入観を持たずに観る限り、確実に大興奮できる舞台。ミュージカルについては数を観すぎてどうにもジャッジメンタルな目線になりがちななか、繰り広げられるいちいちに純粋に驚ける、貴重な観劇体験となった。
4位 ブロードウェイ『Something Rotten!』(4/22~ St.James Theatre, New York)
シェイクスピアに対抗心を燃やす劇作家が、占い師に未来で流行っている演劇を占わせてその通りの新作を上演しようとするのだが、これが未来を「断片的に」見る占い師だったため、新作が結果的に現代の人気ミュージカルのパロディーとなる。…という構造がまず抜群に面白く、そしてミュージカル愛にあふれた傑作コメディー。同じくミュージカル愛にあふれた『[タイトル・オブ・ショウ]』の日本版を最高の形で成功させた製作陣でぜひ翻訳上演を、との願いを込めて4位。
5位 ウエストエンド『Miss Saigon』(2014/5/21~2016/2/27 Prince Edward Thatre, London)
2014年の日本版をこよなく愛していたため、外国人キャストには馴染めないのではないかと思っていたのだが、要らぬ心配だった。なんだかんだ人が良く、続編があった暁には彼がバンコクでタムを育ててるんじゃないかと思わせる日本のエンジニアたち(※私見です)に対し、何があってもアメリカに行きそうなJon Jon Brionesを筆頭に、全く異なる役作りが何とも新鮮で面白い。そして、キャスト各々の解釈を越えたところにある、絶大な作品力に改めて感じ入った。