“てきと~”なテーマパークで、ユル〜い休日を。『てきと~な鉄道展』レポート
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『てきと~な鉄道展』
2022年8月6日(土)、横浜・アソビル2FのYOKOHAMA COASTに『てきと~な鉄道展』がオープンした。
会場エントランス付近
本展は、『うんこミュージアム』などを手掛けた企画プロデュースチーム(株式会社たのしいミュージアム)による新感覚の展示会。タイトルに『てきと~な』と銘打つくらいである。果たして、何がどれだけ “てきと〜” なのか……? この記事では、会期前日に開催された内覧会の様子をレポートし、そのユルい秘密のヴェールをてきと〜に暴いてみる!
カモン! 僕らのてきと〜鉄道
会場風景
会場冒頭で迎えてくれるのは「てきと〜お絵かき電車」。約2.7m×9mの巨大なスクリーンに、実物大に近い手描きの電車が続々と滑り込んでくる。色とりどりのこの車両は、すべて来場者によってデザインされたものである。
隣のお絵かきスペースに、専用シートとペン、クレヨンなどが用意されている。
さっそく筆者も「SPICE号」を制作。猫を乗せてみた。
描き上がった用紙をスキャン係の駅員さん(スタッフ)に渡すと、「こちらの電車は◯時◯分の発車です!」とにこやかに教えてくれた(ちなみに、お絵描きした用紙は持ち帰ることができる)。
本物そっくりな電光掲示板。
電光掲示板を見上げてドキドキ。時計は正確なものの、よく見ると下部のメッセージは非常に “てきと〜” だ。「電車が参ると思います」や「参らないかもしれませんがてきと〜にお待ちください」。鉄道といえば、日本が世界に誇るとっても正確な(言ってしまえばマジメな)交通機関。それだけに、ギャップが可笑しくてたまらない。
到着! 大きい!
やがて、ゴーっという爆音とともに……。来たーっ! これは大人でもテンションが上がってしまう。自分の描いた電車がホームを出て行くのを見送り、妙に満ち足りた気分で次のコーナーへ。
電車が曲がってたっていいじゃない
全長42.5mもある「てきと〜線」
会場の真ん中を走るのは、全3両からなる「てきとー線」列車。電車なのに、車両自体がくねくねと曲がっている。企画・プロデュースを務めた香田遼平氏いわく、これは “てきと〜” の “〜” をイメージしているのだとか。先頭部分はフォトスポットになっており、中に入ってマスコットキャラクターの「てつどうさぎ」と一緒に写真を撮ることができる。
内部は結構リアルにつくられている
1両目で注目すべきは、電車内のゆる〜い広告たちだ。ジムに転職サイトに美容サロン、どこかで見たことあるような広告を、絶妙にアレンジしている。ここは日頃電車に揺られて中吊りを眺めている人ほどニヤニヤが止まらない、通勤・通学に電車を使用している方ほど楽しめるであろうエリアである。
会場風景
一つひとつにツッコミを入れたいところだが、とりあえず言わせてほしい。右上のグルメマガジンさん!『特集 極上海老』って書いてあるけど、それカニだから!
他にも多数の広告が貼られているので、ぜひ、現地でじっくりと眺めて噴き出してほしい。
たくさんの忘れ物たち
そして、2両目では雰囲気が一転。鉄道で実際にあったという忘れ物たちを、一言コメントともに再現配置している。傘、スマホ、眼鏡くらいまではスルーできても、やがて登場してくる楽器、武器、謎の物体などには「そんなバカな……」と目を奪われること必至だ。改めて、電車はひとの人生を丸ごと乗せて走っているのだなぁと思う。
センスがキラリ★駅風景のインスタレーション
会場風景
続いては「メチャコミ・スクエア駅」と名付けられた空間へ。駅の雑踏をイメージして、老若男女さまざまな人物のパネルが並べられている。足元にはホワイトボード用のマーカーとイレーザーがセットしてあるので、それを使って自由にパネルに落書きすることが可能だ。
会場風景
壁際にはとってもカラフルなベンチが。特に解説が見当たらなかったので「これは何ですか?」と駅員さんに尋ねてみると……
「あっ、こちらはハトスポットです」
「え、フォトスポット?」
「ハトスポットです。鳩と写真をどうぞ」
ハトスポット……(アップ)
もしやこのベンチのペイントがイメージしているのって、鳩の……? しかし今日はここまでの展示を経てすっかり “てきと〜” な気分なので、構わず座っちゃおう。壁のポスターは近くで見るとただの鳩の群れなのだが、写真に写すと文字が浮かび上がってくるふしぎな仕掛けだ。
欲望という名の駅弁
会場風景
「エキベン・タウン駅」では、お弁当箱の描かれた台紙に食べ物のスタンプを押して、自分だけの「てきと〜駅弁」を作成する。スタンプは約28種類もあり、組み合わせは無限大だ。これは腕が鳴る!
スタンプにはそれぞれ食品模型が乗っかっていて可愛い。
奥が最初に作った駅弁。全然てきと〜になれていないことに気づいて、悔しいので再チャレンジしてみたのが手前の駅弁だ。高級食材のウナギをここぞとばかりに押しまくり、日頃ならアレルギーで食べられないエビを奔放に押しまくる。しかしどれほど荒ぶってみても、プチトマトをお弁当カップに入れてしまったところに己の限界を感じた……固定観念を壊すのって難しい。
壁に飾られたほかの来場者による駅弁を眺めると、なんとなく作った人の個性が見えて面白い。家族や仲間どうしで見せ合いっこしても盛り上がりそうだ。
ゲーム! ゲーム! ゲーム!
「ゲーム・ステーション駅」では、アナログなものからデジタルなものまで、鉄道をモチーフにしたゲームが勢揃い。どこか懐かしいレトロなゲームたちを満喫しよう。
ぐらぐら銀河鉄道
例えば、アナログながらルールの単純さゆえについ夢中になってしまう「ぐらぐら銀河鉄道」。太陽に届けとばかりに、天高く列車を積み重ねていくバランスゲームだ。
てきと〜鉄道の達人
「てきと〜鉄道の達人」は、昔懐かしいアーケードゲームのような雰囲気。車掌見習いとして、電車に乗せてOKな人とNGな人を瞬時に判別してドアの開閉を行う。反射神経を研ぎ澄ませるゲームとしての楽しさはもちろんなのだが、“乗せてはいけない人” の線引きについて改めて考えたり、意見を交わしたりすることも、とても意義のあることだと思う。
てきと〜鉄道の達人2
「てきと〜鉄道の達人2」では、カメラで撮影した自分の写真がテトリス的に上空から降ってくる。操作キーで向きを変えながら、車両にできるだけたくさんの人物(自分)を詰め込んで満員電車を作るという、なかなかシュールなゲームだ。
動物と、の〜んびり
最後のエリア「てつど〜ぶつパーク駅」では、ゆるい鉄道×動物のキャラ「てつど〜ぶつ」が登場。緑に囲まれた空間で、力を抜いて過ごすことができる。
会場風景
右手には、駅と一体化した「てきと〜鉄道」の3両目が。緑が敷き詰められた座席は、まさにグリーン席だ。「てつど〜ぶつ」はどれもクスッと笑えるキャラクターだが、特筆すべきは角にいる「ちえん」である。「ぴえん」の顔文字と電車の「遅延」を掛け合わせたキャラで、うるうるした瞳がすごく可愛い。
試しに駅員さんにくつろいでもらった。ご勤務中にすみません!
ロープネットが張り巡らされたこのエリアは、その名も「寝レール」。会場巡りに疲れたら、ここに「ふ〜っ」と背中を預けてみては。やっぱり姿勢がリラックスすると、気持ちもてきめんにほぐれていく気がする。
出口の扉の描かれた暖簾が、なんともユルい。
電車のドア風ののれんを潜ると、ミュージアムショップを経て出口へ。“てきと〜” の居心地よさを知ったあとでは、ここでこの世界とお別れかと思うと、ちょっと寂しくなるのだった。
てきと〜って、なぜかクセになる
ミュージアムショップ
ミュージアムショップでは「てつどうさぎ」などをあしらったオリジナルグッズが多数取り揃えられている。なお余談だが、本展ではどのポジションに立つ駅員さんもノリが良いのが印象的だった。ショップでも、カメラを向けるとスタッフさんたちがビシッと敬礼してくれて、ちょっとほっこりした。
「アソビル」は横浜駅から直結、わずか徒歩2分というのも面白いポイント。いつもはマジメな鉄道の、裏の表情をチラリと覗き見たような気分になれる。
内覧会では制作陣がインタビューに応える時間も設けられたが、本展の企画意図としては、「“これくらいでイイ” という感覚を味わってほしい」とのことだった。息苦しさを感じてしまいそうな世の中だからこそ、ここでは完璧を追い求める必要は無く、自分にとっての適当な温度で楽しめばいい。『てきと~な鉄道展』は確かに “てきと〜” なのだが、その根底にある想いは意外なほど深い。
『てきと~な鉄道展』は2022年11月27日(日)まで、横浜・アソビル2FのYOKOHAMA COASTにて開催。ここで楽しむひと時を持つことで、大人も子どもも、日常を見る視点がほんの少し自由になれるのではないだろうか。
文・写真=小杉美香
展覧会情報
所在地:神奈川県横浜市西区高島2-14-9 アソビル 2階 YOKOHAMA COAST
オープン日:2022年8月6日(土)
営業時間:10:00~19:00 ※最終入場受付 18:00 ※定休日は施設に準ずる
施設面積:約300坪
入場料金(下記、全て税込価格):
・事前予約
・事前予約
・当日券:大人(高校生以上) ¥2,300/小学生~中学生¥1,500/未就学児 無料
※グッズつき